株式会社東邦銀行が描く地方創生のビジネスモデルと成長戦略

銀行業

企業概要と最近の業績

株式会社東邦銀行

福島県福島市に本店を置く、福島県内最大手の地方銀行です。

「すべては、お客さまとともに、地域とともに。」をパーパス(存在意義)として掲げています。

福島県内全域にわたる店舗網を通じて、地元の中小企業や個人のお客様に密着した金融サービスを提供しています。

預金や貸出といった銀行業務を中核としながら、事業承継やM&A、DX推進支援など、企業の経営課題解決に向けたコンサルティング機能の強化に力を入れています。

東日本大震災からの復興支援にも継続的に取り組んでいます。

2026年3月期の第1四半期の連結業績は、経常収益が前年の同じ時期に比べて13.7%増の263億9,800万円となりました。

貸出金利息の増加に加え、有価証券の売却益が増加したことなどから、経常利益は55.9%増の85億7,600万円と大幅な増益を達成しました。

親会社株主に帰属する四半期純利益は、56.2%増の60億1,100万円でした。

役務取引等利益については、投資信託や保険商品の販売が伸び悩んだことなどから減少しました。

【参考文献】https://www.tohobank.co.jp/

価値提案

・地域社会に根ざした金融サービスを通じて、個人や企業の資金ニーズに合わせたソリューションを提供しています。

特に、地元企業の事業拡大や新規プロジェクトへのサポートを積極的に行い、地域経済の活性化に直接貢献できる点が大きな特長です。

預金や融資だけでなく、資産運用やコンサルティングといった付加価値の高いサービスを提供することで、顧客の多様なニーズに応える体制を整えています。

【理由】
こうした価値提案が生まれた背景としては、地域企業や住民との結びつきが強い地方銀行だからこそ、単なる金融商品を超えた総合的なサポートが求められてきたという事情があります。

福島県を中心に数多くの事業者が存在する一方で、都市圏に比べて資金調達の選択肢が少ない現実があり、東邦銀行はそれに応えることで信頼を獲得してきました。

今後も地方創生を見据えた新たな商品開発や経営支援の強化によって、地域全体を支える重要な金融パートナーとしての役割を果たし続けることが期待されています。

主要活動

・預金や融資といった銀行の基本業務に加え、地元企業への事業アドバイスやコンサルティング、さらには証券関連のサポートも積極的に行っています。

個人向けには、住宅ローンや資産運用商品の紹介、相続相談などのサービスが充実しており、人生設計を支援する総合金融機関としての機能を発揮しています。

【理由】
こうした主要活動が確立された背景には、都市部の大手銀行にはない小回りの良さや地域事情への深い理解が挙げられます。

東邦銀行は福島県内に広がる支店網や担当者の現地知識を活かし、地元企業との日常的なやり取りから細やかな資金ニーズを拾い上げ、素早く融資や支援策を提案してきました。

さらに、企業の成長ステージに合わせた多彩な金融商品をラインナップし、様々な経営課題に応えられるように工夫していることも強みです。

これらの活動を通じて、取引先企業の経営体質を強化するとともに、地域経済の底上げを図るという好循環が生まれています。

リソース

・最大のリソースは、福島県を中心に築かれた強固な顧客基盤と支店網に加え、地域事情に精通した人材の存在です。

人材面では、金融知識だけでなく、地元の文化や産業構造を理解できる行員を育成する取り組みが行われています。

地元企業とのネットワークや自治体との連携実績も貴重なリソースとなっており、それらを活用して新たなサービスの開発や地域課題の解決に取り組んでいます。

【理由】
このようなリソースが集積されてきた経緯として、地方銀行としての歴史の中で培われた地域貢献意識と、顧客を深く理解しようとする姿勢が挙げられます。

大手金融機関と比べると規模の面で劣る部分があっても、地元企業との信頼関係や現場感覚を大切にすることで、差別化を図っているのが特徴です。

これらの独自リソースを活かし、地域への密着度をさらに高めていくことで、金融サービスだけにとどまらない総合的な支援を提供し続けることができるのです。

パートナー

・地元企業や自治体、他の金融機関との連携が盛んに行われています。

例えば、地方創生事業の一環として自治体と協力し、地元の中小企業を対象とした補助金や支援策の情報提供を行うケースも多く見られます。

さらに、他の地域金融機関やベンチャーキャピタルとの協働によって、新産業の育成や起業家の支援プロジェクトにも積極的です。

【理由】
こうしたパートナーシップが生まれた背景には、単独の銀行だけでは解決できない地域課題が数多く存在するため、それぞれの強みを組み合わせて相乗効果を生み出す必要があるという認識があります。

株式会社東邦銀行は長年の実績を通じて信頼を築いてきたため、自治体や地場企業にとっても相談しやすい存在です。

多方面との協力関係を構築しながら、地域経済全体を底上げする取り組みを行っていることが、銀行本来の収益にも好影響をもたらしています。

チャンネル

・店舗窓口やオンラインバンキング、モバイルアプリなど、複数の接点を用意しています。

特に福島県内の店舗では、対面での相談に力を入れており、融資や資産運用の相談をじっくり受け付けることで、顧客との信頼関係をより深めています。

一方で、若年層や遠方の顧客にも利用しやすいよう、オンラインバンキングやアプリを積極的に改善し、操作性を高める工夫が進んでいます。

【理由】
こうした多様なチャンネルが拡充されたのは、都市部と異なり地域によってインフラや顧客ニーズが異なる現状に対応するためです。

インターネットやスマートフォンを使い慣れない年配の利用者と、デジタルネイティブの若年層では求められるサービス形態が違うため、複数のチャネルを並行して整備することで、幅広い層に対応できるようになっています。

今後も店舗とオンラインのハイブリッド化を進め、どちらのチャネルでも満足度を高めるサービス提供を目指す方針です。

顧客との関係

・地域に密着した対面サポートから、オンラインでの迅速なやり取りまで、複合的なコミュニケーションを重視しています。

担当者が定期的に取引先企業を訪問して経営課題をヒアリングし、適切な金融商品や支援策を提案するスタイルが根付いており、きめ細やかな対応が好評です。

個人顧客に対しても、資産運用やライフプラン相談などを通じて信頼関係を構築しています。

【理由】
このような顧客との関係性が重視されるようになった背景には、地方銀行としての役割が単なる金融仲介にとどまらず、地域住民や企業の生活や事業に深く寄り添う存在であることが求められてきたからです。

大手銀行が提供する大規模で効率的なサービスとは異なる、地域ならではのアットホームな接遇や迅速な相談対応が評価され、長期的なリピーターや紹介案件の増加につながっています。

顧客セグメント

・福島県内の個人顧客から中小企業、さらには自治体や公共団体まで、多岐にわたる層をカバーしています。

特に、地元密着の中小企業にとっては資金調達やビジネス拡張に欠かせないパートナーとして位置づけられており、新規事業への融資や設備投資のサポートが活発化しています。

個人顧客に対しては、住宅ローンや教育ローン、年金関連のサービスなど、ライフステージに合わせて選択できる商品を提供することで、幅広い世代が利用しやすい環境が整っています。

【理由】
こうしたセグメントが形成された理由としては、地方で暮らす人々や企業が抱える資金面の課題は多種多様であり、地域のインフラを支える金融機関としてワンストップで対応できる体制が求められたことが挙げられます。

結果として、個人と法人の両輪で取引先を拡大し、地元経済全体の発展に寄与する存在となっています。

収益の流れ

・融資に伴う利息収入が主要な収益源ですが、手数料収入や投資収益も少しずつ増えてきました。

特に、資産運用商品の販売や法人向けコンサルティングサービスなど、付帯業務からの収入も成長傾向にあり、金利差による収益だけに頼らないビジネスモデルの確立を目指しています。

【理由】
このように収益源を多様化させている背景として、超低金利環境が続く中で、従来の融資利ざやだけでは十分な収益を確保しにくい現実があります。

そこで、顧客ニーズに合わせた金融商品の提供や、経営支援を通じた手数料モデルの構築が重要性を増してきました。

株式会社東邦銀行は地元企業との強い結びつきを活かして、新たなサービス開発や提携ビジネスを展開し、持続的な収益を確保するための取り組みを進めています。

コスト構造

・人件費や店舗の維持費が大きなウエイトを占めますが、近年はITシステムへの投資も拡大しており、デジタル化に対応するためのコストが増えています。

店舗網を活かした対面サービスは、地域顧客の信頼を得るためには必要不可欠である一方、運営コストの増加につながるジレンマもあります。

【理由】
こうしたコスト構造が形づくられた経緯として、地域に密着したサービスを続けるには、一定数の支店や行員が必要なことが挙げられます。

さらに、大手銀行との競争やフィンテック企業の台頭に対応するには、オンラインバンキングやモバイルアプリの機能拡充が欠かせず、それに伴う開発費やシステム維持費が重くのしかかります。

ただし、こうした投資を怠れば顧客離れに直結する可能性があるため、限られた経営資源の中でバランスを取りながらコストを最適化する努力が続いています。

自己強化ループについて

地域企業への積極的な融資や経営支援を行うことで、地元の景気が底上げされ、新規事業や雇用が生まれます。

その結果、取引口座の拡大や融資依頼の増加につながり、銀行の収益が向上する好循環が生まれます。

また、顧客からの紹介や口コミが集まることで、新たなビジネスチャンスが開拓され、さらなる資金需要が発生するという循環も起こりやすくなります。

これらの自己強化ループが定着しているのは、地域に密着して日々対話を続け、現場の課題を迅速に把握してきたからです。

店舗網や行員の知見を活かし、貸し手と借り手の関係を超えたパートナーシップを築くことで、地域社会と銀行がお互いに発展していく仕組みが整っているのです。

デジタル化が進む中でも、この相互信頼に基づくループは大きな価値を持ち続けると考えられ、地方銀行としての差別化要因にもなっています。

採用情報

初任給は大卒総合職で月給およそ20万円台後半とされており、地域銀行としては比較的安定した水準と言われています。

年間休日は120日前後で、金融機関として一定の休暇制度が整っています。

採用倍率は公表されていませんが、地元志向の学生や金融ビジネスに興味を持つ方が多く受験するため、一定の競争率があるとみられています。

地域密着の業務を行いたい人や、将来的に地元でキャリアを積みたいと考える人にとって魅力的な職場環境となっています。

株式情報

銘柄は東邦銀行で、証券コードは8346です。

2025年3月期の配当金は1株あたり8円が予定されています。

2025年2月時点の株価はおよそ318円で推移しており、銀行株としては比較的安定感があるといわれています。

地方銀行の株価は地域経済の影響を受けやすい特性がありますが、比較的堅調な業績や安定配当を好む投資家も少なくありません。

未来展望と注目ポイント

今後はデジタル化やDX推進によって、オンラインチャネルの強化がさらに重要になっていくと考えられます。

顧客の利便性を高めるサービスを整える一方で、店舗での対面相談という従来の強みをどう生かしていくかが大きな課題です。

さらに、地域創生の流れを追い風としながら、自治体や他機関との連携を強化することで、新しいビジネススキームを生み出す可能性があります。

たとえば地域企業の海外進出支援や、観光資源開発に向けた協調融資など、地方銀行ならではの役割が求められる場面は多彩に存在しています。

これに合わせて、経営の安定を左右するのがコスト構造の最適化です。

IT投資や店舗網維持に必要なコストをバランスよく配分しながら、持続的な成長エンジンを築けるかどうかが将来の鍵になるでしょう。

また、将来的に地方の人口減少が本格化する中で、地域経済の活性化に欠かせないパートナーとしての役割を果たすことで、安定した収益を確保しながら長期的な企業価値の向上を実現する姿勢が期待されています。

すべてのステークホルダーにメリットを生み出す総合金融サービス機関としての進化が、株式会社東邦銀行の今後の大きな注目ポイントと言えるでしょう。

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