企業概要と最近の業績
株式会社オールアバウトは、専門家が提供する信頼性の高い情報を軸に、多彩なデジタルサービスを展開している企業です。看板メディア「All About」によるコンテンツ発信だけでなく、企業向けマーケティングソリューションや個人向けEコマースなども手がけています。2024年3月期には売上高157億円を計上した一方、営業利益はマイナス4.6億円と赤字に転落し、取扱高も444.98億円とわずかに減少しました。主力のマーケティングソリューションセグメントで広告収入が落ち込んだほか、コンシューマサービスセグメントの「サンプル百貨店」で売上が減少したことが影響しています。ただし、デジタルマーケティングの需要や専門家ネットワークの価値は今なお高く、今後の巻き返しに向けて事業構成の見直しや成長戦略の強化が期待されています。
ビジネスモデルの9つの要素
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価値提案
・専門家が執筆する高品質なコンテンツを提供し、ユーザーが安心して情報を得られる環境を整えています
・企業に対しては広告やプロモーションなど、的確なデジタルマーケティング施策を提案しています
なぜそうなったのかというと、インターネット上には情報が氾濫しており、ユーザーが「正しい情報」を選びにくい状況があります。そこで、専門家による信頼性の高い記事を軸に据えることで、ユーザーの満足度と広告主のブランド価値向上を同時に実現しようとしたのです。さらに、多角的なマーケティングサービスを加えることで、企業の課題解決につながる提案がしやすくなっています。 -
主要活動
・Webメディア運営によるコンテンツ作成と編集
・広告枠の販売やタイアップ記事の制作
・自社Eコマースでのサービス提供と商品流通管理
なぜそうなったのかというと、まず専門家ネットワークを活用した記事制作によって高いアクセス数を確保し、その結果として広告主へ広告枠を提供できます。また、ECサイトやトライアルマーケティングにより収益源を増やすことで、広告市場の変動リスクを分散する戦略が取られました。専門家コンテンツとEコマースの連携によって、ユーザーが商品購入に至りやすい導線を用意できることも大きな理由です。 -
リソース
・数多くの専門家と連携するネットワーク
・大規模メディアを支えるデジタルプラットフォームと技術力
・企業との信頼関係やノウハウの蓄積
なぜそうなったのかというと、信頼できる情報を作るには専門知識を持った人材が欠かせません。そこで、幅広い分野の専門家を獲得することによって高い記事品質を維持できます。さらに、多くのユーザーを集客するには安定したシステム運用やSEO対策のノウハウが必要となり、デジタル技術への投資が不可欠でした。企業からの相談や協力要請に迅速に応えられる体制を構築してきたことも重要なリソースとなっています。 -
パートナー
・広告代理店や商品提供企業との連携
・NTTドコモなどの大手企業との業務提携
・外部サービスやプラットフォームとの共同開発
なぜそうなったのかというと、広告枠の販売は代理店との協力が欠かせません。また、Eコマースやトライアルマーケティングを行う上では商品提供企業の協力が必要です。さらに、大手通信企業やIT企業と手を組むことで、新たなユーザー基盤を得たりサービスの多様化を図れます。こうしたパートナーとの連携が強いほどビジネス拡大がスムーズになるため、さまざまな業界との関係構築を進めてきました。 -
チャンネル
・自社運営のウェブサイト「All About」
・スマートフォンアプリやモバイルサイト
・外部提携サービス上でのコンテンツ配信
なぜそうなったのかというと、ユーザーの行動がPCからスマートフォンへ移行し、多くのプラットフォームを利用する時代に合わせる必要があるからです。自社サイトだけでなく、アプリやSNSなど複数のチャネルで情報を発信することで、多様なユーザーを取り込みやすくなります。さらに、提携プラットフォームに記事を提供することで、オールアバウトのブランド力と認知度を効率的に広げられるのが狙いです。 -
顧客との関係
・専門家による信頼性の高い情報提供でリピーターを獲得
・ユーザー参加型のイベントやキャンペーンを実施
・カスタマーサポートを通じた不明点の解消
なぜそうなったのかというと、一方的な情報発信だけではユーザーの満足度を維持できません。専門家による記事に加えて、ユーザー自身が意見を共有したり、お得なキャンペーンに参加する場があれば、サービス全体への愛着が高まりやすいのです。また、カスタマーサポート体制を整えることで、問い合わせやクレームを真摯に受け止め、改善に生かす姿勢をアピールし、長期的な関係を築くことを目指しています。 -
顧客セグメント
・専門家が執筆する情報を求める個人ユーザー
・広告主などの企業クライアント
・Eコマースやトライアルマーケティングを利用する購買意欲の高いユーザー
なぜそうなったのかというと、個人ユーザーが増えればアクセス数やサイトの知名度が上がり、広告を出したい企業にとって魅力的な媒体になります。一方、企業クライアントからの広告収入が安定すると、自社メディアの投資に回せる資金が確保できます。さらに、積極的に試供品や商品を試したいユーザーが集まれば、Eコマースや「サンプル百貨店」の利用が活性化し、収益拡大につながるからです。 -
収益の流れ
・広告収入やタイアップ記事の制作費
・Eコマース事業やトライアルマーケティングによる売上
・サブスクリプションモデルなど新サービスでのマネタイズ
なぜそうなったのかというと、ネット広告市場が拡大する中で、広告主は魅力的なメディアを探しています。そこで専門家コンテンツを強みに広告枠を販売し、タイアップ記事などで収益を得る仕組みを構築しました。また、自社Eコマースを運営し、ユーザーが商品を購入したりサンプルを試す場を提供することで、広告以外の収益源も生み出せます。安定した経営基盤をつくるために、新しいマネタイズ手法にも常にチャレンジしています。 -
コスト構造
・専門家への報酬やコンテンツ制作費
・システム開発や保守運用コスト
・プロモーションや広告宣伝費用
なぜそうなったのかというと、高品質なコンテンツを維持するためには専門家に対する適正報酬の支払いが必要です。また、メディア規模が拡大するほどシステムの安定稼働や新機能開発などにコストがかかります。さらに、ユーザーを集めるためにはSEOや広告出稿といったプロモーションが不可欠であり、そのための費用も積み重なるのです。
自己強化ループ(フィードバックループ)
専門家ネットワークを拡大していけば、それだけ多種多様なコンテンツを生み出せるため、ユーザーがサイトを訪問する回数や滞在時間が増えやすくなります。すると、広告主にとって魅力的なメディアとなり、広告収入やタイアップの依頼が増加します。収益が増えれば、さらに専門家への報酬やシステム投資に回す資金を確保でき、より魅力的なサービスを提供できます。こうした循環が「専門家による情報の質の向上」→「ユーザー満足度の上昇」→「広告主やパートナー企業からの信頼強化」→「投資余力の確保」へとつながり、オールアバウト全体の価値が高まり続ける仕組みとなっています。
採用情報
初任給は総合職とエンジニア職(高専・学部卒)が同額で308,334円、大学院卒のエンジニア職は333,334円となっています。休日は完全週休2日制を採用し、土日祝日に加えて年末年始休暇や夏季休暇も整備されています。採用倍率は明らかにされていませんが、事業領域の拡大に伴い、多様な人材が求められているようです。
株式情報
銘柄コードは2454で、1株当たり配当金は2024年3月期で3円です。現在の株価は359円前後で推移しています。広告収益やEコマースの動向が株価の変動に影響する可能性が高く、今後の業績回復が期待されます。
未来展望と注目ポイント
デジタルマーケティングの需要は引き続き拡大すると見られており、専門家ネットワークを活かした高品質な情報提供は重要性を増していくでしょう。オールアバウトは、この強みを活かして広告事業だけでなく新たなサービス展開を進める可能性があります。例えば、ユーザー参加型のイベントやサブスクリプションモデルをさらに充実させることで、収益源を多角化できると考えられます。また、既存事業の「サンプル百貨店」やECサイトへのテコ入れによって取扱高の回復を目指し、より多様な商品ラインナップやキャンペーン展開を図る方針です。今後はパートナー企業との協業や新規領域への参入による成長戦略が注目されるため、経営の方向性をチェックしておくとチャンスを捉えやすくなるでしょう。
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