企業概要と最近の業績
株式会社TOKYO BASEは国内外で複数のファッションブランドを展開し、高品質な日本発ファッションを世界に発信している企業です。近年は海外マーケットへの進出と新規事業の立ち上げが奏功し、2024年1月期には売上高199億8,600万円を記録しました。これは前期比で約4.2パーセントの増収にあたります。海外での認知度強化とブランドポートフォリオの拡充が、安定した収益基盤を築くうえで大きな役割を果たしています。さらにセレクトショップ事業と自社ブランド事業の両輪を活かし、市場ニーズに合わせた柔軟な商品開発や効率的な店舗運営を実現している点も注目されています。今後は国内外でのさらなる拡大に向け、既存ブランドのブラッシュアップはもちろん、新たな販売チャネルの模索や他社との協業など、多角的な成長戦略を展開していく見通しです。こうした積極的な動きが継続していくことで、売上のみならず収益性と企業価値の向上にも期待が寄せられています。
ビジネスモデルの9要素
● 価値提案
TOKYO BASEの価値提案は、国内で培われた高い技術力と独自のクリエイティブを結集した日本発のファッションを、世界のステージで魅力的に発信することにあります。STUDIOUSに代表されるセレクトショップ事業では、有名デザイナーズブランドだけでなく、新進気鋭のブランドを幅広く取り扱うことで、日本独自のファッション文化を世界へ届けています。自社ブランドのUNITED TOKYOやPUBLIC TOKYOにおいては、完全国内生産や高原価率を武器に品質で差別化を図りながら、より幅広い顧客ニーズに応えているのが特徴です。なぜそうなったのかといえば、日本ブランドが持つ丁寧なものづくりやデザイン性の高さに着目し、それを国内外で求める消費者層が増えていると判断したためです。さらにグローバル市場での存在感を高めるためにも「日本製の価値」を正面から打ち出す必要があったことが背景にあります。
● 主要活動
主要活動としては、まずSTUDIOUSを中心としたセレクトショップ事業におけるブランドの発掘と販売戦略があります。国内外のデザイナーやメーカーとの交渉を通じて魅力的な商品を仕入れ、店舗とオンラインの両方で提案する流れを確立しています。またUNITED TOKYOやPUBLIC TOKYOといった自社ブランドを企画開発し、国内の生産ラインでの製造を行うことも大きな柱です。こうした自社ブランドの確立により、他社にはない高品質と独自性を持ったアイテムを継続的に供給することが可能になりました。なぜそうなったのかについては、アパレル市場におけるセレクトショップの成長ポテンシャルを見極めたことと、自社ブランドによる収益安定化をめざしていたことが理由です。結果として、仕入れと製造の両面からノウハウを蓄積でき、ビジネスモデル全体の強化にもつながっています。
● リソース
TOKYO BASEのリソースは、まず国内生産を主体とする堅固なサプライチェーンと製造ネットワークが挙げられます。UNITED TOKYOでは生産県をタグに明記するほどに国産のクオリティを重視しており、こうした生産背景が「高品質」のイメージを支えています。さらにSTUDIOUSのバイヤー陣が持つ独自の目利き力も重要なリソースであり、国内外のブランドを選定する際のセンスや情報収集力が事業を下支えしています。加えて、店舗のスタッフやデザイナーを含む人材も重要な財産であり、ファッション産業のトレンドを的確に捉え、商品企画や接客サービスに落とし込む能力が求められています。なぜこうしたリソースを重視するようになったかというと、差別化を図るうえで「日本発の高品質」や「確かな目利き力」が不可欠だと考えたからです。
● パートナー
パートナーとしては、国内外のデザイナーズブランドや製造パートナーとの協業が挙げられます。STUDIOUSの場合、他社がまだ扱っていない新鋭ブランドをいち早く発掘し、共同でプロモーションを行うことも多いです。また国内生産を重視するUNITED TOKYOやPUBLIC TOKYOでは、生産地域や工場と密接に連携し、素材選定や縫製工程を綿密に管理する体制を築いています。こうしたパートナーシップによって安定供給と品質維持が実現できるのです。なぜそうなったかといえば、自分たちだけではすべての工程を補えないアパレル産業の特性を踏まえ、信頼できるデザイナーや工場とのネットワークを強化する必要があったからです。また新しいブランドや技術と手を組むことで、常に新鮮な商品を市場に送り出す狙いもあります。
● チャンネル
チャンネル面では、国内外の実店舗展開とオンラインストアの両軸を活用しています。店舗はSTUDIOUSやUNITED TOKYOなどブランドごとにコンセプトを明確化し、立地や内装にもこだわり抜くことで世界観を発信しています。一方でオンラインストアでは幅広い商品を一括して販売し、デジタルマーケティングを積極的に展開することで遠方の顧客にもリーチを拡大しています。なぜこのようにチャンネルを強化しているかといえば、近年の消費行動がオンラインとオフラインを行き来するハイブリッド化に対応するためです。店舗でしか味わえない接客体験と、ネットならではの利便性を両立させることがブランドイメージと売上増のカギになっています。
● 顧客との関係
顧客との関係性は、まず高品質な商品と丁寧な接客によって信頼感を築くことに重点を置いています。店頭ではブランドコンセプトや生産背景をスタッフが詳しく説明し、オンラインでも素材やサイズ感などの情報を充実させることで顧客の不安を解消しています。加えて、リピーターの獲得をめざすために会員プログラムの充実やSNSでのコミュニケーションも強化しています。なぜこうした戦略をとっているかというと、アパレル市場では顧客が商品を手に取る体験やブランドストーリーへの共感が非常に重要だからです。特に高品質や国内生産といった付加価値を理解してもらうためには、丁寧な情報提供が欠かせないという判断があります。
● 顧客セグメント
顧客セグメントは高感度なファッションを求める国内外の幅広い層をターゲットとしています。STUDIOUSは日本の若手デザイナーズブランドを中心に、トレンドを追いかける層や独自のスタイルを持ちたい層にアプローチしています。一方でUNITED TOKYOはビジネスからカジュアルまで対応可能なラインナップにより、大人志向の層を中心に支持を広げています。PUBLIC TOKYOはさらにカジュアル寄りのデザインを取り入れ、若い世代を中心に広いターゲットを設定しています。なぜこのように多様なセグメントを狙うかというと、ファッション市場のトレンドが細分化しており、ひとつのブランドだけでは取りこぼす需要が大きいからです。
● 収益の流れ
収益の流れは主として商品販売によるものです。仕入れ商品を扱うセレクトショップモデルと、自社で企画・生産するブランドモデルを組み合わせることで収益源を分散し、リスクを抑えながら安定した売上を確保しています。さらにオンライン販売の拡充によって店舗の立地に依存しない売上機会を増やし、海外顧客へのアプローチも可能になりました。なぜそうした体制になったかというと、消費者行動のデジタル化に合わせて多面的に収益を得る仕組みが必要だと判断したからです。さらに独自ブランドを持つことで、中長期的なブランディングと他社との差別化を図り、利幅を高める狙いもあります。
● コスト構造
コスト構造では、まず店舗運営費や人件費、国内生産に伴う原価率の高さが大きなウエイトを占めます。特にUNITED TOKYOなど、完全国内生産を打ち出すブランドではクオリティを維持するために一定以上の製造コストをかける必要があります。またセレクトショップ事業ではブランドからの商品仕入れや在庫管理にもコストが生じます。なぜそれでも国内生産や多様なブランドを扱い続けるかといえば、品質と差別化の両立こそが顧客からの支持を得るカギだと認識しているためです。高コスト体制であっても、それを上回る付加価値を提供できるという自信が、ビジネスモデルの基盤になっています。
自己強化ループ
TOKYO BASEの自己強化ループは、高品質な商品がもたらす顧客満足度の向上から始まります。顧客が商品に満足すればリピーターになり、SNSや口コミを通じてブランドを推奨してくれます。そうした好意的な評価がさらに新規顧客を呼び込み、ブランド全体の認知度と価値を高めることにつながります。加えて海外展開が進むことで、新たな市場からの収益が投資余力となり、国内外での店舗展開や新ブランド立ち上げに再投資できます。この循環が途切れずに回るほど企業としての競争力は強化され、さらなる成長を促進します。ここで大切なのは、商品クオリティやブランドストーリーに共感してもらう仕組みを継続的に用意することです。アパレルビジネスはトレンドに左右されがちですが、TOKYO BASEのように確固たる世界観と品質を維持しながら柔軟に変化に対応する姿勢が、長期的なファンの獲得と事業拡大を後押ししています。
採用情報
TOKYO BASEでは初任給を月給40万円に設定しており、固定残業代80時間分を含む形になっています。また月に9日の休みが確保され、年間では118日の休日を用意しているのが特徴です。採用倍率に関しては公表されていませんが、高めの給与水準やキャリアアップのしやすさに魅力を感じて応募する人が多いと考えられます。アパレル企業としては福利厚生や働きやすい環境の整備をアピールポイントとしており、人材の確保と定着に力を入れている印象です。
株式情報
銘柄コードは3415で、市場でもアパレルセクターの中で成長戦略を掲げる企業として注目が集まっています。配当金や1株当たりの株価に関しては最新の情報が公開されていない状況ですが、IR資料を通じて今後の方針や決算動向をチェックすることが大切です。アパレル企業はトレンドや景気に左右されやすい面がありますが、高付加価値戦略の成功により株価パフォーマンスにも期待が寄せられています。
未来展望と注目ポイント
TOKYO BASEはセレクトショップと自社ブランドのハイブリッド展開により、市場ニーズの変化にも柔軟に対応してきました。今後は海外向けの戦略をさらに強化し、アジア圏や欧米での店舗拡大やオンライン販売の強化を図ることで、より大きな収益基盤を築く可能性があります。また、生産コストが高い国内製造を継続していくためには、ブランド価値をさらに高める施策が求められます。具体的にはファッション以外の異業種コラボレーションやサステナブルな取り組みを進めることで、消費者に対して「共感」や「ストーリー」を提供できるかがポイントとなりそうです。さらに新規事業の開発や他ブランドの買収など、多角的な動きが期待されるのも同社の特徴です。これからも既存ブランドの強化と新分野の開拓を両立しながら、グローバル市場における発信力を高めていくことで、安定した成長軌道を描くことが見込まれています。国内外の顧客を取り込み、高品質を武器に持続的な収益拡大を目指す同社の動向から目が離せません。
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