クラウドやセキュリティに強い企業のビジネスモデルを徹底解剖 成長戦略を見据えたIR資料の読み解きポイント

情報・通信業

企業概要と最近の業績

株式会社インターネットイニシアティブ

2025年3月期第3四半期の連結累計期間における売上高は、前年同期比10.1%増の2,176.6億円となりました。

これは主に、ストック収益であるWANサービスとネットワークサービスの継続的な利用増加や、法人向けモバイルサービスの需要が引き続き好調であったことによります。

また、システムインテグレーション(SI)事業においても、大型案件の売上計上やクラウド関連のSI案件の増加が寄与しました。

利益面では、売上総利益は前年同期比11.9%増の500.5億円、営業利益は同15.6%増の237.5億円、経常利益は同15.5%増の238.1億円、親会社株主に帰属する四半期純利益は同12.2%増の162.0億円といずれも2桁成長を達成しています。

事業セグメント別に見ると、ネットワークサービス事業の売上高は前年同期比11.1%増の1,335.7億円、セグメント利益は同16.1%増の203.0億円となりました。

システムインテグレーション事業の売上高は前年同期比8.6%増の847.0億円、セグメント利益は同14.1%増の34.5億円となっています。

ATM運営事業については、売上高は前年同期比2.6%増の23.1億円、セグメント利益は同7.5%減の3.3億円でした。

【参考文献】https://www.iij.ad.jp/ir/

ビジネスモデル

価値提案

IIJが提供している価値は、高品質なインターネット接続サービスと、それに付随するクラウドやセキュリティソリューションの一体型パッケージです。

ネットワークの安定性と安全性は企業にとって欠かせない要素であり、独自の技術力を活かした付加価値の高い接続サービスで顧客満足度を獲得しています。

さらにセキュリティ分野では、運用監視や脅威分析など高度なノウハウを組み合わせることで、ユーザーの多様なニーズに対応できる総合力を持っています。

【理由】
インターネット普及の黎明期からサービスを展開してきた実績により、ネットワーク技術の知見が豊富であることが大きいです。

また、セキュリティの重要性が高まるにつれ、接続と保護をセットで提供する必要性が増し、これまで培ってきたインフラと技術者のスキルが強みになりました。

顧客側も運用負荷の軽減を求めるようになっており、接続から保護までワンストップで任せられる企業を求める声が高まったことが背景にあります。

主要活動

主要活動は、ネットワークの構築運用とクラウド・セキュリティサービスの提供です。

大規模なデータセンターや独自の通信回線を整備し、そこで培った技術力をもとに法人向けのソリューションを展開しています。

さらにクラウドサービスでは、国内企業のニーズに合わせた柔軟なカスタマイズを行い、セキュリティ対策や各種管理ツールと組み合わせることで付加価値の高いサービスを開発しています。

【理由】
企業のITニーズが多様化し、ネットワークだけでなくクラウドやセキュリティが一体となったパッケージ提供が求められているためです。

単に接続するだけではなく、運用や管理、セキュリティ強化に至るまで一括で任せられる体制があれば、顧客の利便性が向上します。

こうしたトータルソリューションを実現するために、ネットワーク技術をコアとしつつ周辺領域を強化してきた経緯があります。

リソース

リソースとしてまず挙げられるのが、幅広いネットワークインフラを運用できる設備と、それを支える高度な技術者集団です。

自社データセンターの運用実績やクラウド基盤の開発力など、長年の経験を積み重ねることで他社には真似できないノウハウを蓄積しています。

さらに情報セキュリティやAIなどの先端技術にも積極的に取り組み、サービスの幅を拡充しています。

【理由】
IT業界は技術進歩が速く、常に最新の知識やスキルが求められるからです。

特にネットワークやセキュリティは一度大規模障害が発生すると信頼を失いかねないため、堅牢な設備投資と専門家の確保が必須となります。

実績を重ねることで顧客が安心して任せられるリソースを育成し、それが同社の大きな競争優位につながっています。

パートナー

通信キャリアやハードウェアメーカー、ソフトウェアベンダーとの協業が重要なパートナー関係となっています。

ネットワーク機器の導入やシステム連携においては専門的な技術や製品を組み合わせる必要があるため、複数の技術パートナーとの連携が欠かせません。

また、代理店や販売パートナーを通じて、自社のサービスを幅広い顧客に届けるチャネルを構築しています。

【理由】
ITサービスは多種多様な機能を組み合わせる必要があり、単一企業で全てをまかなうのは難しいからです。

自社の強みを活かしながら、他社との協業によってソリューションを最適化し、顧客にとって使いやすい形にすることが競争力の向上につながります。

こうしたエコシステムを築くことで、新規技術や新分野へのスピーディな対応も可能となっています。

チャンネル

直販営業やパートナー営業、オンラインプラットフォームを通じてサービスを提供しています。

大手企業には専門チームが直接アプローチし、中小企業や官公庁向けには代理店チャネルを活用するなど、ターゲット顧客に合わせた戦略を展開しているのが特徴です。

最近ではオンライン上での問い合わせや資料請求をスムーズに行える仕組みを整えることで、新規顧客開拓にも注力しています。

【理由】
法人向けサービスは顧客規模や業種によってニーズが大きく異なるからです。

一律のチャネルでは潜在需要を十分に取り込むことができないため、セグメントごとに最適化された営業ルートを確立しています。

また、オンラインでの情報収集が一般化した現代では、ウェブを通じた集客が重要になってきたこともあり、デジタルマーケティングの強化が進められています。

顧客との関係

購入前の技術コンサルティングから、導入後の運用サポートまで継続的に顧客を支援する姿勢が重要なポイントです。

特に高度なセキュリティ対策やネットワーク構築では導入後のサポートが欠かせないため、専任スタッフが問題解決をサポートする体制が整えられています。

技術者同士が直接コミュニケーションをとることも多く、迅速なトラブル対応が実現できるよう工夫されています。

【理由】
ITサービスは導入したら終わりではなく、運用・保守を通じて価値が継続的に提供されるモデルだからです。

顧客からの信頼を得るには、定期的なメンテナンスやアップデート、万が一の障害時の迅速な対応が非常に大切になります。

長期的な契約を結ぶストックビジネスにおいて、良好な顧客関係は安定した収益の礎となります。

顧客セグメント

大手法人顧客や官公庁、教育機関から個人ユーザーまで多彩な顧客層をカバーしています。

ただし、メインとなるのは企業ユースであり、セキュリティやクラウドを含めた総合ソリューションが求められるケースが多いです。

加えて中堅・中小企業や地方自治体も、デジタル化の流れを受けて積極的にIT投資を行うようになっており、こうしたセグメントが新たな成長エンジンにもなりつつあります。

【理由】
通信やクラウドはあらゆる業種・規模の組織で必須となりつつあるからです。

特に日本国内では官民問わずデジタル化が進んでおり、セキュアなネットワーク環境を構築するニーズが拡大しています。

幅広いセグメントに対応できる総合力が同社の強みとなり、多様な顧客基盤を獲得している背景があります。

収益の流れ

主にサービス利用料や保守・サポート費用、ライセンス料などのストック収益が中心です。

顧客はネットワークやクラウドを継続的に利用するため、毎月または年単位で利用料が発生し、安定的なキャッシュフローを生み出します。

また、新規プロジェクトの構築費用やコンサルティング報酬といったスポット収益もありますが、ビジネスモデルとしてはストック収益を軸に据えている点が特徴です。

【理由】
ITサービスは導入後の運用やサポートが不可欠であり、定期課金モデルが顧客側にもメリットをもたらすからです。

月額や年額で支払う形をとれば、大きな初期投資が発生せずに最新のサービスが使えるため、多くの企業がこうしたモデルを選びやすくなります。

さらに提供側としても収益が継続的に積み上がることで、安定経営が可能となるわけです。

コスト構造

ネットワークやデータセンターの維持管理、セキュリティ強化などにかかる設備投資、人件費が大きなコスト構造を占めています。

特に運用監視やセキュリティ分析のための専門知識を持つエンジニアを多数雇用する必要があるため、人件費が重要なウエイトを占めるのが特徴です。

加えて、定期的な機器リプレースやソフトウェアのアップデートなどもコストとして計上されます。

【理由】
高品質なサービスを提供するためには安定したインフラと高度なセキュリティ体制が必須であり、そのために大規模な設備投資と人材投資が必要となるからです。

特に通信障害やセキュリティインシデントは企業の信頼を大きく損ねるリスクがあるため、コストをかけてでも堅牢なシステムを維持しなければなりません。

これがコスト構造の根幹を成している理由といえます。

自己強化ループ(フィードバックループ)

IIJの事業はストック型の収益モデルが中心であり、ここに自己強化ループが働いています。

具体的には、毎月・毎年の利用料金収入が堅調に確保できるため、長期視点の設備投資や新サービスの研究開発に資源を投入しやすくなります。

そうして開発された新サービスがさらなる顧客満足度を高め、新規顧客を呼び込み、結果的にストック収益がさらに積み上がる好循環が生まれるのです。

この好循環が続けば、企業は収益基盤を強固にするとともに、既存顧客へ追加サービスを提供することでアップセルやクロスセルの機会が広がります。

安定した資金力を背景に、先端分野への投資やグローバル展開なども視野に入れやすくなり、企業としての競争力とブランド力が強化されます。

こうしたポジティブサイクルこそがIIJの強みといえます。

採用情報

初任給や平均休日、採用倍率などの具体的な数値は公表されていませんが、IT業界は技術者不足が深刻化しているため、有望なエンジニアやネットワークスペシャリストを採用するうえで、給与水準や福利厚生面などを手厚く用意している可能性があります。

また、システム運用やセキュリティに関するスキルを持つ人材を中心に幅広く募集していることが考えられます。

大規模ネットワークの運用やクラウド基盤の構築といった先端領域での経験を積める環境は、若手にとっても魅力的なキャリア形成の場になりやすいです。

株式情報

IIJは東京証券取引所プライム市場に上場しており、銘柄コードは7374です。

直近の株価としては、2025年1月30日時点で1株あたり約2,896.5円が確認されています。

配当金に関しては最新の公表情報が見当たりませんが、ストック型ビジネスを中心とした安定収益が続けば、将来的に株主還元を強化する余地があると考えられます。

成長余地と安定収益のバランスが投資家にとっての魅力となっており、市場からの評価も高まりつつあるようです。

未来展望と注目ポイント

今後はクラウドサービスやセキュリティ分野の需要がますます高まる見込みがあり、IIJの強みがより一層活かされる局面が増えていくと考えられます。

特に官公庁や地方自治体でのIT導入や、産業分野におけるIoT活用などが進めば、セキュアなネットワークを構築しつつ運用保守までカバーできる同社の総合力が評価されるでしょう。

また、5GやAIといった先端技術と連携することで、さらに付加価値の高いサービスを開発できる可能性があります。

新技術への先行投資と既存顧客へのクロスセル戦略がうまくかみ合えば、より強固なストック収益モデルが実現できるはずです。

持続的な成長を狙ううえでは、顧客との長期的な信頼関係を維持しながら、市場の変化に柔軟に対応する経営判断が鍵になるでしょう。

収益性と社会的役割を両立させることで、IIJは今後も国内ITインフラを支える重要プレイヤーとして存在感を高めていくと期待されます。

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