企業概要と最近の業績
株式会社東京衡機
当社は、様々な材料の強さや耐久性を測る「材料試験機」を専門に開発・製造しているメーカーです。
鉄鋼や自動車、航空宇宙、プラスチックなど、あらゆる産業分野で使われる素材や製品の品質管理、研究開発を支えています。
主力製品である万能試験機は、材料に引張りや圧縮などの力を加えて、その強度を精密に測定します。
100年以上にわたって培ってきた高い技術力で、社会の安全・安心に貢献しています。
2025年8月8日に発表された2026年3月期第1四半期の決算によると、売上高は17億8,100万円で、前年の同じ時期に比べて5.9%増加しました。
営業利益は6,300万円となり、前年同期の1,100万円の損失から黒字に転換しています。
経常利益は6,800万円(前年同期は900万円の損失)、親会社株主に帰属する四半期純利益は4,500万円(前年同期は800万円の損失)となりました。
官公庁や民間企業の設備投資が堅調に推移したことを背景に、主力の試験機の受注が好調だったことが業績を牽引したと報告されています。
価値提案
株式会社東京衡機の価値提案は、高品質な試験機やエンジニアリング製品を通じて、産業や研究の現場に安心と確かな技術基盤を提供することです。
特に試験機事業では、材料や構造物など多種多様な対象に合わせてカスタマイズできる強みが評価されており、研究機関や製造業の実験データの精度向上に寄与しています。
エンジニアリング事業では、ゆるみ止めナットやスプリングなど安全性と信頼性が重視される製品を扱うことで、社会インフラを支える要としての役割を果たしています。
【理由】
なぜそうなったのかというと、1923年の創業以来培ってきた技術とノウハウがあることに加え、顧客の求める製品性能や仕様を丁寧にくみ取る企業文化が根づいているためです。
また、研究や建築など幅広い領域と関わる中で、実際の課題を解決する確かなソリューションを提供する必要性が高まり、結果として高品質と精度を第一に打ち出す価値提案が生まれています。
主要活動
株式会社東京衡機の主要活動は、試験機やエンジニアリング製品の開発・設計・生産、そして受注後のメンテナンスサポートです。
試験機事業では、研究用途から大型構造物の検証まで多彩なニーズに応えるため、オーダーメイド方式を多く採用しています。
そのため、一品一品の設計や製造工程の管理が重要になり、高い技術力と柔軟な生産管理が欠かせません。
エンジニアリング事業においては、建築現場などで使用されるゆるみ止めナットやスプリングの製造・販売を手掛けており、これらの製品が実際の現場で正しく機能するかどうかの検証や品質管理が大きなポイントとなります。
【理由】
なぜそうなったのかというと、創業以来積み上げられた試験技術と製造ノウハウを最大限活かすには、設計から生産、そしてアフターサービスに至るまでを一貫して行うことが最適だったからです。
また、顧客の多様な要望に合わせた対応が求められるため、製造ラインをフレキシブルに調整できる体制を整える必要があり、現在の主要活動へとつながっています。
リソース
株式会社東京衡機のリソースは、長年にわたり培われた高度な技術力と豊富な経験を持つ人材、それに加えて試験機開発に不可欠な研究設備や工場設備です。
試験機をゼロから設計・開発していることもあり、社内には力学や電気、制御など複数領域に精通したエンジニアが在籍しています。
さらに受注生産が多いため、プロジェクト管理のノウハウも重要な経営資源です。
【理由】
なぜそうなったのかを考えると、創業当初から研究機関や製造業と密接に関わってきたことで、複合的な知見が自然と蓄積されました。
また、安全や品質が厳しく求められる分野に取り組むうちに、熟練の技能者や高精度の設備が会社の競争力に直結することを認識し、投資を継続してきた結果、現在の充実したリソース体制を築いています。
パートナー
株式会社東京衡機のパートナーとしては、公的研究機関や大手製造業、建設会社などが挙げられます。
同社は試験機を納品するだけでなく、製品性能を一緒に検証したり技術指導を行ったりすることもあるため、深い協力関係を築くケースが多いです。
エンジニアリング製品においても、実際に使用される現場からフィードバックを受けながら改良を重ねることで、より安心かつ高品質な製品を開発しています。
【理由】
なぜそうなったのかというと、試験機やエンジニアリング製品は社会基盤を支える重要な役割を担っているため、使い手となるパートナーとの密接な連携が不可欠だからです。
さらに、一度導入された機器は長期間にわたって運用されることが多いため、日々の保守や改良を共同で行うことで、安定した稼働と高い顧客満足を維持する構造が生まれています。
チャンネル
株式会社東京衡機のチャンネルは、直接営業と公式ウェブサイトを中心としています。
試験機は高い専門性を要する製品であり、顧客の研究目的や運用環境に合わせた詳細なヒアリングが欠かせません。
そのため、同社では営業担当が顧客のもとへ足を運び、実際に課題や要望を聞いたうえで提案を行うケースが多いです。
また、公式ウェブサイトでは製品情報や導入事例などを公開し、必要に応じて問い合わせができる仕組みを整えています。
【理由】
なぜそうなったのかというと、高価格帯かつオーダーメイド要素の強い試験機を取り扱うため、インターネットだけでは十分に魅力や機能を伝えきれない部分があるからです。
さらに、安全に直結するエンジニアリング製品に関しても、直接説明や打ち合わせを行ったほうが顧客の信頼を得やすいことから、これらのチャンネルに重点を置いています。
顧客との関係
株式会社東京衡機は、顧客との関係を密接に保つことを重視しています。
試験機の導入やエンジニアリング製品の利用は、一度きりの取引ではなく長期的なサポートが必要な場合が多いです。
例えば、定期的な点検やメンテナンス、あるいは新素材に合わせた試験装置の改修など、継続的に連絡を取り合うことで現場の課題を解決に導いています。
【理由】
なぜそうなったのかというと、高品質の試験機を提供して終わりではなく、その後のフォローを充実させることで顧客に安心感を与え、リピート受注や信頼関係の強化につながることを実感しているためです。
また、過去の不適切会計処理によるイメージダウンを払拭するためにも、顧客の声を丁寧に拾う姿勢を貫くことが重要だと考えているからです。
顧客セグメント
同社がターゲットとする顧客セグメントは、公的研究機関や大学の研究室、製造業の品質管理部門、さらに橋やトンネルなどを取り扱う建設業者など幅広い分野にわたります。
研究機関では、新素材や先進技術の開発に試験機が欠かせないため、カスタマイズされた精密な測定機器の需要が高まります。
製造業では、品質管理の向上や製品の耐久性検証のために試験機が活躍します。
建設業では安全性を確保するためのエンジニアリング製品が重宝されます。
【理由】
なぜそうなったのかというと、試験技術は製品開発や安全基準の策定に直結しており、社会基盤に広く関わる必要があるからです。
試験や品質管理の重要性が高まるほど、このような多様な顧客層からの需要が生まれ、同社のビジネスモデルを支える基盤となっています。
収益の流れ
収益の流れは、主に製品の販売収益とメンテナンス・サービス収益に大別されます。
試験機事業では、受注生産の特性上、高額なカスタマイズ製品が納品されるため、一度の受注における金額が大きくなる傾向があります。
さらに、試験機が導入された後も定期点検や部品交換などのメンテナンスサービスが必要となり、継続的な収益源となります。
エンジニアリング事業においては、ゆるみ止めナットやスプリングなどを量産し、建築資材の販売からも収益を得ています。
【理由】
なぜそうなったのかというと、試験機は長期間使用される製品であるため、保守を含めたアフターサービスが顧客にとって重要な付加価値となるからです。
また、社会の安全に直結するエンジニアリング製品は、景気に左右されにくい需要を持ち、安定的な収益を生み出す仕組みとなっています。
コスト構造
コスト構造としては、製品開発や生産にかかる原材料費や人件費が大きな割合を占めます。
試験機は高い精度や特殊な技術を必要とするため、熟練エンジニアの技術料や、品質を保証するための検査装置の維持費などがコストに含まれます。
また、顧客と直接やりとりを行う営業担当の人件費や、オーダーメイドに伴う設計コストも無視できません。
エンジニアリング事業においては、製造ラインの設備投資や管理費、在庫管理のコストが発生します。
【理由】
なぜそうなったのかというと、試験機やナットなどの品質を維持し続けるためには高精度の製造装置や人材育成が欠かせず、そのための投資や維持費用が相応にかかるからです。
特に高難度の検査や試験システムを提供するためには、多くの人員をかけた技術開発と品質管理のプロセスが必要となります。
自己強化ループ
株式会社東京衡機では、技術力と顧客信頼の向上が自己強化ループを生み出しています。
具体的には、高品質の試験機を提供すると顧客から高い評価を得ることができ、その評価が新たな受注につながります。
さらに受注が増えれば、会社としては新たな研究開発や設備投資に予算を回すことができるため、より高度な技術を獲得する機会が生まれます。
そして、高度化された技術を反映した製品を提供することで顧客からの信頼度がさらに上がり、リピート注文や大型案件の受注につながります。
この好循環はエンジニアリング事業においても同様で、ゆるみ止めナットなどの安全を守る製品が信頼を集めることでリピーターが増え、販売実績が拡大していきます。
こうした自己強化ループのおかげで、短期的な業績向上だけでなく、長期的にも競合他社との明確な差別化を実現しているのです。
採用情報
初任給は月給25万円から37.5万円までと幅があり、個々のスキルや経験に応じて決定される傾向があります。
勤務地は主に神奈川県相模原市にある相模原工場で、年間休日は126日ほどとされており、仕事とプライベートのバランスを取りやすい環境が整っています。
採用倍率の詳細は公表されていませんが、専門技術を要するポジションが多いため、技術者を中心に高い専門性が期待されていると考えられます。
自分の知識やスキルを活かして社会インフラや研究開発の分野を支えたいという意欲のある人には、やりがいの大きい就職先といえます。
株式情報
銘柄は7719で、株価は184円です。
時価総額は13億円ほどと比較的コンパクトですが、1株当たり純利益は12円78銭と収益力の改善がうかがえます。
配当金に関しては公表されていないため、今後のIR資料や決算発表でどのような方針が示されるかが気になるところです。
経営再建を進めている段階でもあるため、今後の業績推移や成長余地を見極めたい投資家にとっては、注目すべきポイントが多いといえるでしょう。
未来展望と注目ポイント
今後は試験機事業でのオーダーメイド需要がさらに高まり、高度な検査や品質保証を求める産業分野が増えると想定されます。
また、インフラメンテナンスの重要性が叫ばれる中、ゆるみ止めナットやスプリングなどのエンジニアリング製品も安定的な売上を確保できるでしょう。
社会全体が安心や安全に対する基準を引き上げる傾向にあり、そのニーズに応える製品群をそろえる株式会社東京衡機には大きなビジネスチャンスがあります。
今後の成長戦略としては、受注のさらなる拡大とともに、プロジェクト管理をより厳密に行い、期ずれリスクを最小化して安定した収益を確保することが求められます。
技術力の強化と顧客密着型のサービス提供を軸に、持続的な成長を目指す姿勢が投資家や就職希望者の関心を集めるポイントになっていくでしょう。


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