企業概要と最近の業績
株式会社ビザスクは、ビジネス領域に特化した知見プラットフォームを運営し、さまざまな業界の専門家を企業とつなぐサービスを提供しています。日本国内で培った豊富なマッチング実績と、世界規模のエキスパートネットワークを武器に、国内外の企業から多様な相談を受け付けています。特に、1時間単位のインタビューをはじめとするスポットコンサルは、意思決定の迅速化や新事業の仮説検証に大きく貢献しており、多くのリピーターを獲得してきました。
直近の業績では、2024年度第3四半期の累計営業収益が約73億円となり、前年同期比で約10%の増収を果たしています。調整後EBITDAは約6億5700万円、親会社株主に帰属する四半期純利益は約1億9600万円となっており、拡大局面でも黒字をしっかり維持しています。また、2024年2月期通期で見ると、売上高は約896億円を確保し、前期比7%の伸長となりました。特筆すべきは、米国子会社Colemanの買収に関連するのれんの全額減損を行ったことで、特別損失として144億円を計上し、最終的には当期純損益が約126億円の赤字に転落した点です。これはあくまでも会計上の一時的な影響であり、国内の知見プラットフォーム事業やグローバル案件の拡充など、コア事業自体の成長力は引き続き堅調とみられています。実際、海外案件にも対応可能な統合プラットフォームの利用が拡大し、四半期ベースで10億円以上の取扱高を記録するなど、案件数・単価ともに着実な伸びが見られます。海外景気や為替変動の影響はあるものの、ビザスクは国内外問わず需要に柔軟に対応できる体制を整えており、長期的にはさらなる伸びが期待できるでしょう。
ビジネスモデルの9つの要素
・価値提案
ビザスクが提供する価値の中心は、企業が自社内にない専門知見を「短時間」で補完できる点にあります。従来、大企業が新市場へ参入する際やスタートアップが仮説検証を行う際、外部の専門家とコンタクトを取るには多大な時間と労力がかかっていました。しかし、ビザスクでは専門家ネットワークをオンラインで一括管理し、約60万人の登録エキスパートからニーズに合った人材を迅速にマッチングします。これにより、必要な情報を1時間程度のスポットコンサルで得られるため、課題解決のスピードが加速するメリットがあります。さらに、短時間であっても実務や研究の最前線で活躍する専門家から生の声を聞くことができるため、市場動向や技術トレンドの把握が効率化されます。なぜこうした仕組みが生まれたかというと、グローバル化やデジタル化の進展に伴い、企業が自社外部の最新情報にアクセスしないと競争力を維持しづらい時代に突入したからです。スピード感ある意思決定が求められる中、煩雑な手続きなしで幅広い分野の専門家と対話し、最新かつ実践的なノウハウを吸収できる場としてのプラットフォームが大きな存在感を示すようになりました。こうした価値提案により、クライアント企業のリピート率も高く、結果的にビザスクのブランド力向上にも寄与しています。
・主要活動
ビザスクの主要活動は、エキスパートと企業を結びつけるマッチングプロセスの提供と、それを支えるプラットフォーム開発です。クライアント企業からの依頼内容をヒアリングし、それに合致する専門家をデータベースから選定して日程調整、契約手続きのサポートまでを一気通貫で行います。その際、依頼の内容によっては海外拠点と連携したり、複数のエキスパートに同時にアクセスするアンケート方式を利用したりと、多様なニーズに応じたアレンジを実施することも特徴的です。なぜこのような活動が重視されるようになったかといえば、スポットコンサルが一度きりの取引に終わるのではなく、企業の継続的な知見獲得のインフラになる可能性を高めるためです。特に大手企業の場合、マーケティング、研究開発、新規事業企画など社内の各部署で専門家の活用ニーズが常時発生します。ビザスクは単発のコンサル紹介にとどまらず、クライアントと信頼関係を構築して「いつでも必要なときに頼れる窓口」であることを目指しており、これは日々の運営とシステム改善が欠かせません。こうしたフルサポート型の活動に加え、セルフマッチング型のビザスクLiteを展開しているのも、サービスの利便性向上やエンゲージメント強化の一環として機能しています。
・リソース
ビザスク最大のリソースは、何と言っても約60万人の登録エキスパートです。医療・製薬、製造、IT、金融、消費財など幅広い領域の実務家や研究者、コンサルタントが在籍し、それぞれが最新の知識や実務の裏側を把握しているため、多角的なテーマにも対応が可能です。また、エキスパートのプロフィールを管理する自社開発プラットフォームも重要な資産であり、大量の登録情報やクライアント側のニーズを的確にマッチングできるアルゴリズムやシステム基盤が稼働しています。なぜここまで専門家ネットワークとIT基盤を重視するかと言えば、この両輪がスピードと精度を生み出す源泉だからです。エキスパートがどの業界・職種でどのような実績を持ち、どれだけのインタビュー経験があるかをデータとして蓄積することで、依頼内容に最適な人材を素早く提示できます。さらに、複数国にわたる案件や語学・専門分野が細分化されたテーマにも対応できる柔軟性は、この豊富なリソースがあってこそ成立します。社員のコンサルタントやカスタマーサクセス担当もリソースの一部で、システム開発やユーザービリティ改善を担うエンジニア陣と連携しながら、社内外の知識やノウハウを活用してサービスを進化させています。
・パートナー
ビザスクにとって最重要のパートナーは、サービスの核を担うエキスパートそのものといえます。単に「外部登録者」という関係性ではなく、彼らがより多くの案件に参画し、適切な報酬を受け取り、活動しやすい環境を整備することがプラットフォームの持続的成長につながります。さらに、海外展開の面では、米国子会社のColemanとのシナジーを高めるべく、現地拠点スタッフや欧州、アジア各地のビジネスパートナーとも協力体制を強化しています。こうした協業によって、国境をまたぐ専門家の発掘が進むだけでなく、日本企業の海外調査案件を一気通貫で請け負うことも可能となりました。なぜこうしたグローバルパートナーシップが重視されるかというと、海外案件をカバーできるかどうかが、国内大手企業にとっても非常に重要だからです。海外市場調査やグローバル規模の新規事業立上げを検討しているクライアントにとっては、一社でワンストップに知見を得られるプラットフォームの方が利便性が高く、そのニーズに応えられる協力体制がビザスクの競争力を押し上げます。
・チャンネル
ビザスクは、主に法人営業とオンラインプラットフォームの両方をチャンネルとして活用しています。大企業やコンサルティングファーム、金融機関などには専任の営業担当やカスタマーサクセスが付き、利用方法やインタビュー設定のサポートを密接に行い、継続的なプロジェクト獲得を狙います。一方、中小企業やスポット的なリサーチを希望する個人事業主、スタートアップなどには、Webから自己完結的に依頼できるビザスクLiteを中心に展開しています。なぜこれらのチャンネルを併用するのかというと、利用頻度や規模感、コンサルティングのサポートレベルなど、クライアントごとに求められる対応が大きく異なるためです。大企業向けには深いコミュニケーションを通じた伴走支援が必要ですが、個人や小規模企業に対してはシンプルかつスピード感あるオンライン利用が好まれます。こうした複数チャンネルの運用が、多様な顧客層を取り込むうえで不可欠であり、どの入り口からでも専門家の知見にアクセスできる利便性が評価されています。
・顧客との関係
ビザスクの顧客との関係は、スポット契約による単発利用が基本となりながらも、リピート率が高く継続的なパートナーシップへ発展するケースが多いです。初回の相談を通じてプラットフォームのメリットを実感すると、追加のインタビューやグローバル調査の依頼など、案件が重なるほどビザスクへの信頼が高まります。なぜこうした継続利用が生まれるかというと、スピードと精度を重視する企業にとっては、社内で一から専門家を探すのが手間だからです。また、ビザスク側も専任担当者がクライアントの課題をヒアリングし、過去の取引実績やテーマの内容を蓄積していくため、利用を重ねるほどニーズを的確に把握できるようになります。その結果、プロジェクト開始からエキスパート選定までの時間が短縮され、顧客にとってさらに使いやすくなる好循環が形成されているのです。こうした関係性の深まりこそが、企業の知見インフラとして定着し、持続的な売上拡大をもたらす要因といえます。
・顧客セグメント
ビザスクの顧客層は実に幅広く、大手コンサルティングファームや投資ファンド、金融機関をはじめ、製造業、IT企業、スタートアップ、さらには個人事業主まで含まれます。最初は市場調査や技術動向の把握など、明確な目的を持った企業が利用するケースが多いですが、利用経験を通じて「自社にないノウハウを効率よく補える」と感じると、多部門での横展開が進む傾向があります。なぜこうした幅広い顧客セグメントを獲得できるかというと、知見へのニーズは業界や規模を問わず普遍的に存在するからです。とりわけ海外展開を視野に入れる企業や新規領域に挑戦するスタートアップは、国内外で実務経験を積んだエキスパートに直接話を聞けるメリットが大きいと感じるでしょう。さらにColeman買収以降は、米国や欧州の拠点でも同様のマッチングサービスを提供しており、海外の投資家やコンサルティング会社からの問い合わせも増えています。このようにエキスパート数と案件数が増え続けることで、あらゆる分野の知見需要を網羅できるプラットフォームへと進化しているのです。
・収益の流れ
ビザスクの収益は、企業クライアントが1時間単位のインタビューやオンライン調査を依頼した際に支払う利用料が中核となります。そこから、エキスパートに支払う謝礼などの変動費を差し引いた残りがビザスクの売上となる仕組みです。利用料は案件の種類やインタビュー時間、専門家のレア度などによって変動しますが、件数と単価の上昇がそのまま売上拡大に結びつきやすいモデルです。なぜこのような形態になっているかというと、プラットフォームの本質は「必要な情報を必要なときに買う」モデルであり、ユーザーにとっては成果報酬型に近い感覚で利用しやすいからです。定額制のサブスクモデルではなく、あくまで必要に応じてスポットで支払うため、初回導入のハードルが低く、多様な企業が試しやすいメリットがあります。一方で、企業がスポットコンサルを重ねていくと、累計利用料が増えていくため、ビザスクとしては継続的な収益を確保できます。グローバル案件の増加や大企業の長期プロジェクト支援など単価の大きい取引が増えれば、売上全体がさらに跳ね上がることが期待されます。
・コスト構造
ビザスクの主なコストは、エキスパートへの謝礼を含む売上原価と、プラットフォーム維持・拡張のための固定費です。売上原価については、契約が成立した際にエキスパートに支払う報酬が変動費として発生し、これは案件数が増えるほど増加します。固定費としては、社員の人件費、営業やマーケティングにかかる広告宣伝費、システム開発およびクラウドインフラの維持費用などが含まれます。特に海外子会社を買収した後は、統合に伴うシステム連携や現地拠点の運営コスト、のれん償却などが利益を圧迫しやすい構造になっています。なぜこうしたコストが発生するかというと、国内外で一貫したサービス品質を保ち、かつエキスパートとクライアントの双方に使いやすいプラットフォームを提供するには、継続的な開発投資が必須だからです。さらにM&A後のアフターケアや組織統合にもリソースが必要であり、この投資を先行して行うことで、長期的にはスケールメリットを享受し、安定的な収益構造を築く狙いがあります。
自己強化ループ
ビザスクが成長を続けられる背景には、ネットワーク効果を活かした自己強化ループが大きく影響しています。エキスパートの登録者数が増えれば、企業の多彩な要望により正確かつ迅速に対応できるようになり、顧客満足度が高まります。すると、評判や口コミによって新たなクライアントが参入し、依頼件数が増加してエキスパートにもメリットが広がり、さらに登録が加速するという好循環が生まれます。これがネットワーク効果の核心であり、プラットフォームが大きくなるほど、ビザスク自体の価値も高まり続けるわけです。加えて、Colemanの買収により海外案件への対応力が飛躍的に向上し、日本企業が海外市場を調査するときも、海外拠点がローカル専門家を容易にアサインできるようになりました。結果として、国内顧客の国際案件が増えるほど海外エキスパートネットワークも充実し、海外から日本市場を探る案件も呼び込みやすくなるという多面的なループが成り立っています。さらにシステム改善とクライアントからのフィードバックを踏まえ、新機能やセルフマッチングなどの使い勝手を向上させる施策を打ち出せば、ビザスクの利用回数がますます増え、結果として案件数やリピーターの拡大にもつながります。こうした連鎖的な成長構造こそがビザスクの強みといえるでしょう。
採用情報と株式情報
ビザスクの採用では、新卒社員の初任給が月額約29万3000円(固定残業代含む)とされており、現状のベンチャー企業としては比較的高水準です。年間休日は約127日で、完全週休2日制に加えて長期休暇が整備されており、ワークライフバランスを重視する姿勢がうかがえます。新卒採用人数は毎年十数名程度と比較的少なめであり、応募者数との割合を考えるとかなりの競争率になることが予想されます。厳選採用によって、知見プラットフォームを支えるコンサルタントやエンジニアなど幅広い人材を育てていることが特徴です。
株式情報では、東京証券取引所グロース市場に上場しており、銘柄コードは4490です。成長途上の企業という位置づけから、これまで無配を継続しているため、株主還元よりも事業拡大やM&Aなどの投資を優先しています。直近の株価は1株あたり約1150円で推移しており、時価総額は約105億円規模とされています。ただし、のれんの減損や海外拠点強化などの影響で一時的に最終損益が赤字転落となったため、現状のPER算出は難しく、PBRは高めの水準を示す場面もあります。投資家としては、国内知名度のさらなる向上や海外案件の拡大による業績改善を見極めながら判断する姿勢が必要でしょう。
未来展望と注目ポイント
今後のビザスクは、グローバル展開を加速させつつ、国内市場でもより多角的なサービスラインナップを深耕していくことが重要になるでしょう。海外では米国子会社Colemanをはじめ欧州やアジア拠点との連携が進み、現地の専門家データベース拡充とともに、日本企業が海外進出する際のワンストップサポートが強化される見通しです。逆に海外の企業が日本での調査・進出を検討するときにも、ビザスクを利用することでスムーズに国内専門家へアクセスできるようになり、案件を世界規模で循環させる仕組みが整いつつあります。こうした国際的なネットワーク効果がさらに拡大すれば、規模の大きな企業でも「まずはビザスクに依頼してみよう」という動機が生まれ、取引実績の積み上げによってブランド認知がさらに向上する可能性が高いです。
また、国内ではスポットコンサルだけでなく、セルフマッチング型のビザスクLiteや、一斉アンケート型のExpert Surveyといった多様なサービスが普及し始めています。利用者が増えるほどプラットフォーム上のデータやマッチングアルゴリズムが進化し、さらに使い勝手が良くなっていく循環が期待されます。特に、新規事業や研究開発のスピードアップが競争力に直結する社会情勢の中で、必要な知見をすぐに得られるプラットフォームの存在意義は高まる一方です。今後はAIを活用したエキスパート選定の自動化や、特定領域の高度な知識を持つアドバイザーとの長期連携など、さらなるサービス進化が見込まれます。海外買収に伴う一時的な損失やコスト増を乗り越えて収益性を高め、より大きな飛躍を遂げられるかどうかが、ビザスクの成長戦略を語る上での大きな焦点となるでしょう。企業の成長に欠かせない知見獲得のプラットフォームとして、今後の動向から目が離せません。
コメント