ビジネスモデルを深掘り 成長戦略で読むハリマ化成グループ最新IR資料

化学

企業概要と最近の業績
ハリマ化成グループは、松やにを活用したパインケミカル事業をはじめとして、樹脂・化成品、製紙用薬品、電子材料など多彩な領域で事業を展開している化学メーカーです。環境に優しい天然資源を活用する取り組みや高度な技術力を武器に、多方面の顧客ニーズに応えてきました。近年は需給バランスの変動や原材料価格の上昇などを背景にコスト負担が増大し、2024年3月期決算では売上高923億円と前年同期比2.3パーセント減少しました。さらに営業利益はマイナス2.11億円、経常利益はマイナス2.75億円、当期純利益はマイナス11.6億円と赤字に転落し、コスト増加への対応や売上構成の見直しが課題となっています。しかし、長年培ってきたパインケミカル技術や多角化された事業ポートフォリオが強みとして機能しており、今後はビジネスモデルの再構築や成長戦略の明確化を通じて新たな収益機会の創出が期待されます。特にIR資料にも示されるように、環境配慮型の素材開発や電子材料分野での先端技術への投資が、次の収益ドライバーとなる可能性が高まっています。

価値提案
・松やにをはじめとする天然資源から、安全性や環境負荷低減を重視した化学製品を提供しています
・樹脂や製紙用薬品、電子材料など多様な事業領域にわたる製品を通じ、幅広い産業のニーズに応えている点が特徴です
・なぜそうなったのか
環境意識の高まりや持続可能性を重視する社会的要請が大きくなり、再生可能な資源をベースにした製品が注目を集めています。ハリマ化成グループは長年の研究開発で培ったパインケミカル技術をいち早くビジネス化し、多様な市場に向けて付加価値の高い商品を展開してきました。これにより、環境対応が必須となる時代においても競争力を維持できる価値提案が生まれているのです。

主要活動
・研究開発で新しい化学素材や製品の可能性を追求し、自社工場での製造を通じて高品質な製品を安定供給
・顧客からの要望を踏まえた製品カスタマイズや技術サポートの提供
・なぜそうなったのか
高度化する市場ニーズに迅速に応えるには、製品の企画から開発、製造、販売までを一貫して行う体制が必要になります。特に天然資源を活用した製品では供給安定性の確保と品質管理が重要であり、それを担保するために研究開発力と生産技術力を社内で結集させる必要があります。また、競合他社との差別化を図るには、顧客企業に合わせたきめ細やかなカスタマイズや技術支援が不可欠となりました。

リソース
・松やになどの天然資源を高度に加工・応用できる独自技術
・製造設備や精密分析を行う研究所、人材育成システム
・なぜそうなったのか
同社の最大の強みは、パインケミカルを中心とした長年のノウハウの蓄積です。この技術は一朝一夕で真似できるものではなく、多様な化学反応プロセスや品質管理プロトコルを要します。さらに、先進分野である電子材料や粘接着剤向け樹脂を製造するためには、高度な設備投資と専門人材が欠かせません。こうした独自技術と人材が、他社にはない希少性の高いリソースとなっています。

パートナー
・原材料を安定供給する海外サプライヤーや国内林業関連企業
・最先端の研究を行う大学や専門機関との共同開発
・なぜそうなったのか
天然資源の供給元である松の樹脂は国内だけでは限界があり、海外サプライヤーとのパートナーシップが重要です。また、高機能材料への需要増や市場動向の変化に対応するため、大学や研究機関と連携して新技術を育成しています。グローバルな供給体制とオープンイノベーション型の研究開発手法を導入することで、事業拡大とリスク分散を実現しています。

チャンネル
・国内外の代理店ネットワークを通じた販売
・研究開発ステージからの直接提案による受注
・なぜそうなったのか
製紙用薬品や電子材料など、顧客業界の専門性が高い製品を扱うため、きめ細かな技術サポートを提供できる営業チャネルが必要です。また、グローバルでの売上拡大を狙うためには代理店との連携が不可欠です。さらに、研究開発段階から顧客企業と密にやり取りすることで早期に課題を把握し、カスタマイズしたソリューションを提案できる体制を整えています。

顧客との関係
・製品導入後のアフターサービスや技術サポートを重視
・共同開発案件では早い段階からの連携を図り、継続的な改善を実施
・なぜそうなったのか
化学製品は導入時だけでなく、使用環境や生産工程の変化に合わせて継続的な調整が必要となる場合があります。そのため、顧客企業と長期的なパートナーシップを構築し、トラブルや新たな課題に対して即応できる関係性が求められました。また、共同開発によって顧客側のニーズを製品設計に活かすことで、製品の優位性と顧客満足度を同時に高められます。

顧客セグメント
・製紙業界、印刷インキや塗料メーカー、粘接着剤メーカーなど化学関連事業者
・電子機器メーカーなど高機能材料を必要とするハイテク産業
・なぜそうなったのか
パインケミカル製品の用途は紙のサイズ剤や接着剤、塗料など多岐にわたるため、顧客セグメントも広範囲にわたります。さらに電子材料という新たな成長マーケットに注力することで、既存の化学領域からハイテク産業まで顧客層を拡大しているのです。これによりリスク分散を図りつつ、複数市場でのシェア拡大を狙っています。

収益の流れ
・製品販売による売上とライセンス収入
・特殊樹脂や高機能材料の付加価値による利益確保
・なぜそうなったのか
化学製品の収益モデルは基本的に製品販売が主体ですが、ハリマ化成グループは長年培った樹脂やパインケミカル技術を他企業にライセンスする場合もあります。とりわけ高機能性の原材料や電子材料で独自技術を保有していると、ライセンス契約の可能性が高まります。また、高付加価値製品を中心にポートフォリオを組むことで、汎用品の価格競争リスクを低減しながら利益率を確保しています。

コスト構造
・原材料費や研究開発費、人件費、製造コストが主な構成要素
・天然資源の不安定供給や為替変動リスクがコスト構造に影響
・なぜそうなったのか
パインケミカルの原料である松の樹脂は、天候や地理的条件、国際情勢の変化による影響を受けやすいため、調達コストが変動しやすい側面があります。また、先端材料の開発には多額の研究開発投資が必要であり、高度な人材確保や設備導入にかかる費用も大きくなります。こうした要因が同社のコスト構造を複雑化させており、利益を圧迫する一因にもなっています。

自己強化ループ
ハリマ化成グループの自己強化ループは、顧客からのフィードバックをいち早く研究開発に反映し、改良や新製品化を素早く行う点に特徴があります。具体的には、製紙や電子材料のユーザー企業から寄せられる使用感やパフォーマンスの評価を次の研究テーマに落とし込み、より高付加価値な製品として市場に投入します。その結果、製品力と顧客満足度が高まり、さらなる需要を獲得できるポジティブサイクルが生まれます。また、天然資源を活用している特性から、環境配慮型メーカーとしてのブランドイメージが強化され、サステナブル製品を求める新規顧客も取り込みやすくなります。この循環が進めば進むほど、新たな顧客接点が増えて研究開発力が高まり、さらなる市場開拓へとつながる好循環が形成されるのです。

採用情報
初任給は博士課程修了者が272,190円、修士課程修了者が242,660円、学部卒が220,710円、高専卒が196,150円と公表されています。年間休日は本社や研究所が120日、工場勤務が114日を確保しています。採用倍率に関しては公表されていませんが、化学系・材料系の専門知識を求める職種が多い傾向があります。

株式情報
同社は銘柄コード4410で上場しており、2023年3月期の配当金は1株あたり35円が支払われています。株価は市況や業績見通しなどで変動するため、常に最新の証券取引所情報や金融情報サイトを確認するのが望ましいでしょう。研究開発の成果が株価の動向に影響を与える可能性もあるため、長期的な視点で業績推移をウォッチする投資家が多いといえます。

未来展望と注目ポイント
今後は、環境配慮型製品への需要増と電子材料などハイテク分野の市場拡大が追い風となる見込みです。ハリマ化成グループとしては成長戦略の一環として、海外サプライチェーンの安定化と研究開発投資を一段と強化し、高付加価値製品におけるシェア拡大を狙う方向性が考えられます。赤字転落という厳しい現状を克服するには、ビジネスモデルの再構築が必要不可欠です。具体的には原材料のリスク分散や商品ポートフォリオの最適化に加え、顧客企業との共同開発で新しいマーケットを開拓する取り組みがカギになるでしょう。さらに、松やになど天然資源を核とした独自技術に磨きをかけることで、他社が参入しにくい高付加価値領域を広げることが期待されます。このように、中長期的には環境配慮型の素材や高度機能材料の需要拡大が見込まれるため、同社がいかに技術革新を継続し、新市場を開拓するかが注目ポイントとなっています。

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