企業概要と最近の業績
フリー株式会社
2025年5月15日に発表された2025年6月期第3四半期の決算について、業績の状況をご報告します。
この第3四半期までの累計売上高は238億5,000万円となり、前年の同じ時期と比較して29.5%の大幅な増収となりました。
利益面では、前年の同じ時期には71億7,300万円の経常損失(赤字)でしたが、本年度は10億3,400万円の経常利益(黒字)へと転換し、著しい改善を見せています。
同様に、親会社株主に帰属する純損益も、前年の86億3,600万円の損失(赤字)から、10億1,100万円の利益(黒字)となり、四半期累計で初めての最終黒字を達成しました。
この好調な業績は、継続的な課金売上を示すARR(年間経常収益)が前年同期比で29.0%増加したことや、有料課金ユーザー企業数が順調に増えたことなどが背景にあると説明されています。
価値提案
クラウド会計や人事労務管理に関する専門知識がなくても、直感的な操作だけでバックオフィス業務を完了できることが最大の特徴です。
さらに、銀行口座やクレジットカードなどの金融データを自動連携する仕組みによって、経理作業にかかる時間や手間を大幅に削減できます。
また、アップデートはすべてクラウド上で行われるため、法令改正や税制変更への対応が迅速に実施されるメリットがあります。
【理由】
なぜそうなったのかという背景には、会計や労務管理の領域でITが十分に普及しておらず、煩雑な手入力や紙ベースの作業が多かった現状を解決したいという思いがあったといえます。
これによって、ユーザーが自分のビジネスに専念できる時間を増やせるだけでなく、不慣れな業務に費やすコストを削減できるため、多くの中小企業やスタートアップから高い支持を得ています。
主要活動
バックオフィス向けクラウドソフトの開発と運用が中心に据えられています。
ユーザーフィードバックをもとに機能強化や改修を進めるだけでなく、金融機関のAPI連携や電子申請システムの拡張など、多様なパートナー企業との協業も重要な活動の一つです。
さらに、新たなユーザーを獲得するためのマーケティング施策や、既存ユーザーの満足度を高めるサポート体制の構築にもリソースを投じています。
【理由】
なぜこうした取り組みを行うのかというと、中小企業のニーズは業種や規模によって多岐にわたり、個別に最適化したソリューションを提供するためには、開発力と顧客理解の両立が欠かせないからです。
これらの主要活動は、ユーザーにとって価値あるサービスを持続的に提供し、顧客ロイヤルティを高めることを目指しています。
リソース
クラウド環境を維持・運営するインフラはもちろん、専門技術を持つエンジニアやデザイナー、税理士などの専門家と連携するスキルを持ったスタッフも大きなリソースです。
ユーザーサポートの充実を図るためにコールセンターやチャットサポート要員をそろえ、素早く疑問や不具合に対応できる仕組みが整備されています。
また、インターネット上のセキュリティ対策や大容量のデータ処理を可能にするサーバー運用技術も重要です。
【理由】
なぜこれらが重要なリソースとなっているのかというと、クラウドサービスは常に最新かつ安全な状態で提供されることが求められるからです。
特に会計や人事情報など機密性の高いデータを扱う企業として、信頼性の高いインフラや人的リソースに投資する必要があります。
パートナー
銀行やクレジットカード会社などの金融機関とのAPI連携は、フリーのクラウド会計におけるデータ自動取込機能の要となっています。
さらに、税理士事務所や社労士事務所との提携は、専門家ネットワークを活用することでユーザーに対してきめ細かなサポートを提供できる仕組みを生み出しています。
また、他のクラウドサービスベンダーやスタートアップへの積極的な出資や業務提携も行っており、freeeアプリストアを通じた拡張機能の提供によって、利用者に多彩な機能をもたらすエコシステムが形成されています。
【理由】
なぜこうしたパートナー戦略がなぜ重要なのかというと、あらゆる業種・規模の中小企業に対応するには自社リソースだけでは限界があるため、専門性の高い知見や機能を取り込むことでサービス全体の価値を引き上げる必要があるからです。
チャンネル
公式ウェブサイトを中心にオンライン広告やSEOを活用したデジタルマーケティングを展開し、無料トライアルの申し込みを促しています。
さらに、税理士や社労士などの専門家を通じた紹介や、展示会・セミナーなどオフラインイベントでのプロモーションもチャンネルとして活用しています。
【理由】
なぜこうした多様なチャンネル展開が重要かというと、中小企業や個人事業主はITリテラシーにばらつきがあり、オンラインのみならず対面での丁寧な説明やサポートを求める層も少なくないからです。
複数の接点を用意することで、幅広い顧客層との接触機会を増やし、クラウドサービスへの移行を後押ししています。
顧客との関係
ユーザー向けのオンラインサポートやヘルプセンターは、時間や場所を問わず疑問を解消できるように設計されています。
また、コールセンターやチャットサポートを通じて、リアルタイムでの問い合わせ対応を行う仕組みも強化されています。
さらに、ユーザーコミュニティの形成にも力を入れ、導入事例やノウハウを共有することで利用者同士が学び合える場を提供しています。
【理由】
なぜこうした顧客との関係づくりがなぜ重視されるかというと、クラウドサービスの継続利用を促すうえで利用者満足度の向上や、サポート対応のスピード・質がリピート率を左右するからです。
ユーザーが安心して使い続けられる環境を整えることで、サービスの継続率とブランドロイヤルティを高めています。
顧客セグメント
中小企業や個人事業主、スタートアップなど、幅広いビジネス規模を対象としています。
特に経理や人事労務の専門知識を持たない小規模事業者が使いやすいように、操作画面やサポート機能が簡易化されている点が特徴です。
【理由】
なぜこうしたセグメントに注力するのかというと、日本国内には中小企業が多数存在し、その多くがバックオフィス業務を最小限の人数で行っているからです。
既存の大企業向けソフトではコストや操作が複雑で導入が難しい場合が多いため、シンプルかつ自動化されたクラウドサービスへのニーズが高まっています。
ここを積極的に取り込むことで、確実なユーザー基盤の拡大が図れます。
収益の流れ
月額もしくは年額のサブスクリプション型での料金体系を基本としており、利用プランのアップグレードによる追加機能の提供なども収益源となっています。
さらに、会計や人事労務以外の周辺サービスや、有料サポートオプションを提供することで付加価値を高め、ユーザーが抱える複数の課題をワンストップで解決する方向へと拡張しています。
【理由】
なぜサブスクリプション型が選ばれているのかというと、安定的なキャッシュフローを得られるだけでなく、継続課金による長期的な顧客接点が確保しやすいからです。
ユーザー自身も導入時の初期費用を抑えながら常に最新の機能を利用できるため、双方にとってメリットの大きい収益モデルとなっています。
コスト構造
自社開発によるソフトウェアの研究開発コストや、クラウドインフラを利用するためのサーバー維持費、マーケティングや広告宣伝費が主なコストとなっています。
加えて、ユーザーサポート要員やカスタマーサクセスチームなど人件費も大きな割合を占めており、サービス品質向上のための投資が継続的に行われています。
【理由】
なぜこうしたコスト構造になっているのかというと、クラウドサービスである以上は常に安定稼働と迅速な機能改修が求められるため、インフラ費用と人的リソースは不可欠だからです。
また、成長戦略を進めるうえで新規ユーザー獲得に必要なマーケティング投資が大きく、投下資本を回収するまでに一定の期間を要する傾向があります。
自己強化ループ
フリーでは、利用者からのフィードバックをもとにサービスを改善し、より多くのユーザーが満足して使えるように機能を強化するというループが定着しています。
具体的には、ユーザーコミュニティやカスタマーサクセスチームから寄せられる要望や課題を開発チームが素早く吸い上げ、新バージョンのリリースで反映する流れが確立されています。
これによって顧客満足度が上がり、ユーザーが周囲にサービスを推奨する口コミ効果や、専門家ネットワークを通じた紹介が活性化するため、新規導入数の増加につながります。
また、導入企業数が増えるほど多様なケーススタディが蓄積され、さらに完成度の高い機能改修が可能になるという好循環が生まれます。
この自己強化ループを回していくことが、フリーのビジネスモデルを支える重要な鍵です。
採用情報
フリーではバックオフィスのDXを推進する開発エンジニアやデザイナー、カスタマーサクセス担当など、幅広い職種を募集しています。
初任給や平均休日、採用倍率などの具体的な数字は公表されていませんが、リモートワークやフレックスタイムなど柔軟な働き方を取り入れており、新たなチャレンジを応援するカルチャーがあるとされています。
スモールビジネスを世界の主役にというビジョンに共感し、成長意欲が高い方にとっては魅力的な環境といえます。
株式情報
銘柄は東京証券取引所グロース市場に上場している株式会社フリーで、IR情報は公式ウェブサイトで随時更新されています。
配当方針は成長企業らしく、事業投資や研究開発に利益を回す傾向が強いため、現状では配当金の支給を重視していないとされています。
1株当たり株価は市場環境や業績見通しに左右されるため変動しやすく、SaaS銘柄として投資家からの注目を集めていることもあり、日々の出来高や値動きが活発です。
将来的に配当を検討する可能性もありますが、当面はサービス拡充による成長にリソースを集中させる方針がうかがえます。
未来展望と注目ポイント
今後はさらなる成長戦略の一環として、クラウド会計や人事労務管理だけでなく、幅広いバックオフィス業務を統合するプラットフォーム化が進むと考えられます。
特にAIや機械学習を活用した自動仕訳や予測分析機能の強化、電子申請や電子契約への連携など、業務効率を高める取り組みが加速するでしょう。
こうした新機能を迅速に提供するためには、アプリストアを通じた外部サービスとの連携や、金融機関や専門家コミュニティとの協業がますます重要となります。
また、中小企業への導入はまだまだ拡大の余地が大きく、地方の事業者やスタートアップ支援などを軸に市場開拓を続ければ、長期的な売上増と利益改善が期待できます。
ユーザーの声を吸い上げながらサービスを磨き上げる自己強化ループを維持し、さらにIR資料でも示されるデータをもとに投資家との対話を深めていくことが、多様な顧客ニーズに応えつつ成長を持続させるカギとなりそうです。
今後のサービス拡充や新たな技術活用に関する発表に注目が集まり、国内SaaS市場をリードする存在としてさらなる飛躍を期待できます。
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