企業概要と最近の業績
株式会社ハウスコムは、全国に240店舗以上を展開する不動産賃貸仲介の専門企業です。賃貸物件を探す個人や法人に向けて幅広いサービスを提供し、近年はAIやオンラインサービスの導入を積極的に推し進めています。2024年3月期には売上高が135億2,900万円を記録し、前期比で4.6%減少しました。しかしながら、徹底したコスト管理と業務の効率化により、営業利益は5億200万円(前期比27.4%増)と大きく改善を果たし、経常利益は6億8,500万円、当期純利益は4億1,000万円を確保しています。店舗運営費や人件費など固定コストがかさむ不動産仲介業界において、デジタル技術の活用や業務プロセスの見直しが功を奏した形です。今後は人口動態の変化や賃貸需要の地域格差などの課題を抱える一方で、オンライン接客やAIレコメンドシステムなどによる差別化戦略がどこまで収益の拡大とブランディングに寄与できるかが注目されます。店舗網とテクノロジーの相乗効果を上手く取り入れることで、さらなる成長を見込める企業として期待が高まっています。
ビジネスモデルの9つの要素
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価値提案
ハウスコムが顧客に提供する最大の価値は、テクノロジーを活用した迅速かつ正確な物件紹介です。店舗スタッフによるきめ細かなヒアリングに加え、AIを活用したデータ分析を行うことで、一人ひとりの希望条件やライフスタイルに合った賃貸物件をスピーディに提示しています。これにより、「問い合わせをしてから内見できるまでの時間が短い」「条件に合った物件を効率的に比較できる」というメリットが生まれます。なぜそうなったのかというと、不動産仲介業界ではポータルサイトの普及など競合手段が増え、スピードと精度が差別化の鍵になったからです。さらに実店舗では地域に根付いたコミュニティ情報を共有でき、オンラインでは24時間いつでも問い合わせを受け付ける体制を整えるなど、複数のチャネルを駆使して顧客体験を最大化しています。こうした「必要な情報を素早く得たい」「不安なく契約したい」というニーズに応える仕組みこそが、同社の強みとなっています。 -
主要活動
物件情報の収集・管理・提供、および顧客対応が同社の主要活動です。全国の店舗を通じてオーナーや物件管理会社から最新の空室情報を集め、それをデータベース化して一括管理しています。スタッフはAIシステムのサポートを受けながら、候補物件を精査し内見の日程調整や契約手続きまでをトータルサポートするのが特徴です。なぜそうなったのかといえば、賃貸仲介では物件情報の鮮度と顧客との丁寧なコミュニケーションが契約成立の決め手になるからです。さらにオンライン上で内見予約を完結できる仕組みを整えたことで、忙しい社会人や遠方から物件を探す方の利用が増えています。また、仲介後のアフターフォロー体制も重視しており、入居後のトラブル相談や更新時期のフォローなどを行うことでリピート契約や口コミによる新規顧客獲得を狙っています。 -
リソース
同社が持つリソースとしては、全国240店舗以上の拠点網に加え、高度なAIシステムや賃貸仲介の専門知識を身につけたスタッフが挙げられます。特にITインフラに注力している点は大きな強みで、独自に開発したレコメンドエンジンや物件データベースを有効活用することで、業務効率化とサービスの質的向上を同時に推進しています。なぜこうしたリソースに力を入れるのかというと、賃貸市場が人口減少による需要変動や競合激化の影響を受ける中でも、効率よく成果を出す仕組みづくりが必要だからです。また、スタッフが築いてきた地域密着のネットワークや契約ノウハウも無形資産として大きな価値を発揮しています。店舗が多いことで地域に根差したサービスができ、IT技術があることで広域かつ迅速な情報提供が可能になるのが大きな強みです。 -
パートナー
主なパートナーは物件オーナーや管理会社、そしてデジタルツール・プラットフォーム提供企業です。物件供給元となるオーナーや管理会社とは長期的な信頼関係を築き、空室状況の共有や契約に関する情報連携を密に行っています。一方でAI技術やオンライン接客システムを開発するITベンダーとの協業も進めており、最新のテクノロジーをいち早く導入する体制を整えています。なぜパートナーとの連携が重要かというと、不動産仲介は紹介できる物件数と情報の正確性が勝負の決め手になるためです。加えて、顧客が多様化する中で、自社だけではカバーしきれないサービス領域も増えており、外部の専門企業と協力することで付加価値の高いサービスを提供できるようになっています。 -
チャンネル
店舗、ウェブサイト、モバイルアプリ、不動産ポータルサイトなど、複数のチャンネルを使い分けて顧客とつながっています。来店予約や内見予約をオンラインで済ませたいというニーズに応えるため、ウェブやアプリを使ったサービスを強化してきました。それでも実際に物件を見たいという顧客には店舗での対面対応を提供することで、「オンラインで手軽」「対面で安心」という双方のメリットを生かしたハイブリッド型の接客を可能にしています。なぜこうしたチャンネルを整備しているかといえば、若年層のネット利用率が高まり、さらに法人やファミリー層など幅広い顧客セグメントに対応する必要があるからです。利便性を最大化することでリードを逃さず、顧客満足度向上とリピート利用につなげています。 -
顧客との関係
オンラインとオフラインを組み合わせた丁寧なサポートが、ハウスコムの顧客との関係構築の要となっています。物件検索や問い合わせはオンラインで完結できる一方、契約手続きや現地見学では専門スタッフが対面でサポートするため、安心感を得られる仕組みを整えています。なぜそうなったのかは、不動産の契約には大きな金銭的・心理的負担が伴うため、完全にデジタル化しにくい部分もあるからです。そのため、店舗スタッフとオンラインシステムの連動が重要視され、顧客満足度向上を目指す形になりました。問い合わせ対応もチャットボットやメールでの自動化を進めつつ、最終的にはスタッフがフォローするハイブリッド体制を整えています。 -
顧客セグメント
顧客層は単身赴任や学生、ファミリー、さらには法人向けの社宅ニーズまで非常に幅広いです。なぜ複数の顧客セグメントをターゲットとしているかというと、賃貸の需要はライフステージや勤務地の変化など多様な要因で生まれ、単一セグメントに依存すると経営リスクが高まるからです。地方から首都圏への進学や就職の需要、転勤族や企業社宅需要など、幅広いターゲットに対して店舗網とオンラインを駆使して最適な物件を提案しています。さらに、法人契約では企業との継続的な取引関係が得られるため、安定的な収益源にもなっています。 -
収益の流れ
主な収益源は賃貸契約成立時に発生する仲介手数料です。それに加えて引っ越し業者やライフライン手続きの取次、保険商品などの関連サービスからも収益を得ています。なぜこうした収益の多様化が図られているかというと、賃貸仲介の手数料だけでは景気や需要変動の影響を受けやすいため、周辺サービスによる付加価値ビジネスを確立する必要があるからです。顧客が一度の契約で複数の手続きをまとめて済ませたいというニーズがあることも後押ししており、それが結果的に顧客満足度の向上と収益基盤の安定につながっています。 -
コスト構造
コストの大部分を占めるのは人件費と店舗運営費ですが、近年はIT投資も大きなウェイトを占めるようになっています。なぜこのような構造になったのかというと、全国規模での店舗展開を維持するには一定の固定費が必要な一方、DX(デジタルトランスフォーメーション)を進めるためのシステム開発や保守コストが増加しているからです。しかし、IT活用による業務効率化の進展により、長期的にはコスト削減とサービス向上が同時に進むことが期待されています。オンライン接客やAIレコメンドによってスタッフ一人当たりの接客件数を増やし、売上の拡大や人件費の最適化を図っている点も特徴です。
自己強化ループ
ハウスコムが推進するAI技術やオンラインサービスは、顧客満足度を高めるだけでなく、自社の収益構造を安定させるフィードバックループの役割を果たしています。たとえばAIを駆使した物件提案で契約率が上がれば、オーナーや管理会社からの信頼も得やすくなり、より魅力的な物件情報が集まりやすくなります。するとさらに多様な物件を提示できるようになり、新規顧客の獲得やリピート利用にもつながるという好循環を形成します。またオンライン内見の強化は遠方客や忙しい社会人への利便性を高め、契約数増加に直結しやすい上、コスト面でも効率化が進みやすいです。こうした取り組みが続くことで業務プロセスはさらに洗練され、営業利益の向上や新規事業への投資が可能になります。結果としてサービスの品質向上が加速し、口コミや評判によるブランド力向上が生まれ、さらに顧客と物件オーナーを引き寄せる自己強化ループが完成するのです。
採用情報
初任給は大学卒で月給23万100円から24万950円(固定残業代を含む)となっており、不動産業界では比較的手厚い水準だといえます。年間休日は120日を確保し、ワークライフバランスにも配慮している点が魅力です。新卒・中途合わせて年間51~100名程度の採用を行っており、社内研修やOJTを通じて店舗運営やAIシステムの活用ノウハウを学べる環境が整っています。採用倍率は年度や地域によって変動しますが、ITスキルや接客スキルを兼ね備えた人材が重宝される傾向にあるため、不動産知識だけでなくデジタルリテラシーが重要視されているようです。
株式情報
同社の銘柄コードは3275です。2025年3月期の予想配当金は1株あたり10円とされており、安定した株主還元を掲げています。2025年1月27日時点の株価は1,341円で推移しており、同業他社の動向や金利、賃貸市況の影響を受けながら、これからの成長余地を模索している段階です。配当利回りの面でも一定の魅力があり、業績が安定傾向にある間は投資家の関心を集めそうです。
未来展望と注目ポイント
今後の焦点は、やはりAIやオンラインサービスをどこまで高度化し、収益の安定と拡大に結びつけられるかにかかっています。特に人口減少や地方から都市への流入など、地域ごとの賃貸需要のばらつきが一段と顕在化する見込みです。その中でハウスコムは多店舗展開の強みを生かしつつ、DXを通じた業務プロセスの効率化をさらに推し進めることが重要となります。また、社宅需要や転勤需要への対応力を高め、法人取引を強化していくことで、景気や賃貸市場の変動リスクを分散できる可能性があります。さらにリモートワークやオンライン内見が当たり前となりつつある時代に対応し、契約手続きをオンラインで完結できるサービスの拡充も注目すべきポイントです。こうした取り組みが広がれば、従来型の店舗営業だけでは得られなかった新規顧客層を取り込むチャンスが生まれ、企業としての持続的な成長戦略の柱となるでしょう。社員育成とデジタル技術を融合させながら、安定収益と新サービス開発の両立を目指す姿勢が、今後の動向を占う鍵になりそうです。
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