企業概要と最近の業績
イントランス株式会社
2025年3月期の連結業績は、売上高が2,145百万円となり、前期比で35.2%の大幅な増収となりました。
営業利益は258百万円(前期は134百万円の営業損失)、経常利益は189百万円(前期は211百万円の経常損失)を計上し、黒字転換を達成しました。
親会社株主に帰属する当期純利益は175百万円となり、前期の225百万円の純損失から黒字に転じています。
主力の不動産事業において、インバウンド観光客の回復を背景に、運営するホテルの稼働率や客室単価が大幅に改善したことが業績を牽引しました。
また、保有不動産の売却も利益に貢献しています。
引き続き、ホテル運営事業の収益力強化と、新たな不動産関連事業の展開を進めていく方針です。
価値提案
中古不動産の付加価値を高め、投資家や賃貸利用者に魅力的な物件を提供する
ホテル運営受託により、高品質な宿泊サービスと安定収益を両立させる
【理由】
同社はもともと中古物件を再生するリノベーション技術に強みを持っており、既存の資産を再評価し、より高い価値を提供するビジネスを得意としてきました。
新規開発に比べると初期投資額を抑えやすく、供給不足が叫ばれる首都圏の中古不動産市場で戦略的にシェアを伸ばしています。
また、ホテル分野に進出することで不動産セクターだけに依存しない収益の多角化が図れる点も大きな魅力です。
ホテル運営ノウハウを蓄積することで、観光需要が高まった際に高稼働率を獲得しやすい強みを築き、資産オーナーや投資家にも安定感のあるソリューションを提案しています。
主要活動
中古不動産の仕入れとリノベーション
賃貸管理や物件運営における入居者・オーナーサポート
ホテル運営の受託やファンド組成による資産運用サービス
【理由】
同社は最初にリノベーション技術を用いた中古物件再生事業で実績を積み、そこから派生する形で賃貸管理や物件オーナーのサポートに力を入れてきました。
リノベーションされた物件を長期的に運営・管理することで安定収入を得られる構造を目指しつつ、ノウハウを横展開してホテル運営にも参入しました。
観光需要の波があるホテル業界では、運営受託形態をとることで設備投資リスクを抑えつつ、ブランドやオペレーションの実力で収益を上げることができる仕組みを構築しています。
ファンド組成も手掛けることで、新たな投資家を取り込みながら資金を効率的に活用できる体制が整っています。
リソース
中古不動産の豊富な情報ネットワークと仕入れルート
ホテル運営に関わる専門人材とノウハウ
リノベーションを中心とした不動産価値向上の技術力
【理由】
同社は市場に出回らない中古物件の情報も得られるパイプを築き上げ、仕入れ段階でのコスト競争力を確保しています。
さらに、ホテルに関しては運営スタッフの育成やノウハウの蓄積を重視することで、他社にはないオペレーション体制を作り上げています。
不動産のリノベーション技術についても、独自のノウハウを開発・標準化しており、物件の付加価値を高めるスピードと品質を両立しています。
これらのリソースを活かすことで、中古不動産とホテルという一見異なるセクターをカバーしつつ、シナジーを生み出している点が同社の強みといえます。
パートナー
不動産仲介会社やデベロッパーとの連携
建設会社やリノベーション業者との協業
ホテルブランドや予約サイト(OTA)との協力関係
【理由】
同社が扱う中古不動産の仕入れには、仲介会社やデベロッパーとのパイプが欠かせません。
大手から中小まで幅広いパートナーと連携することで、好条件の物件情報をいち早く得られる仕組みを構築しています。
また、リノベーションや建設に関しては、自社で一から施工するのではなく、信頼できる業者に委託しつつ、品質管理とコスト削減を両立しています。
ホテル事業では、ブランドやOTAとの連携により、幅広い顧客層へアプローチしやすく、稼働率を高めやすい利点が生まれています。
こうしたパートナーとのネットワークが、同社の事業展開を支える重要な基盤となっています。
チャンネル
自社サイトや不動産ポータルを通じた賃貸物件の紹介
提携仲介会社による募集活動
ホテル予約サイトや旅行代理店経由の宿泊予約
【理由】
不動産は直接ユーザーとの取引が可能である反面、広範な認知度を得るためには多様なチャンネルへの露出が欠かせません。
特に賃貸物件は、ポータルサイトや提携先からの集客が大半を占めるため、常に物件情報を更新し続ける必要があります。
ホテルに関しては、OTAや旅行代理店との連携を強化することで、国内外からの予約を獲得しやすくなり、稼働率アップに直結します。
さらに、自社サイトでブランドイメージを発信し、リピーターを増やす施策にも注力することで、より高い利益率を目指していると考えられます。
顧客との関係
賃貸契約者や入居者へのアフターフォロー
ホテル宿泊客への接客・リピーター向け会員サービス
不動産投資家へ定期的な運用報告やセミナー開催
【理由】
同社は物件を手掛けるだけでなく、その後の運用や管理を継続的に担い、長期的な信頼を築く方針をとっています。
賃貸物件では入居者満足度が空室率の低減に直結するため、管理体制やサポート体制の充実が必要不可欠です。
ホテル事業では、高い接客水準を維持しつつ、会員プログラムやリピート施策を設けることで、安定した稼働率を獲得しています。
不動産投資家向けには、ファンド組成や運用報告を丁寧に行うことで、新規投資や追加投資を促し、資金の回転と拡大を狙っています。
顧客セグメント
住居用および事業用物件の賃貸利用者
観光やビジネスでホテルを利用する宿泊客
不動産ファンドや物件の投資家・資産オーナー
【理由】
中古不動産事業は個人や法人の幅広いニーズに合わせてリノベーションを実施し、賃貸や販売を行うため、ターゲットが多層的です。
ホテル運営においても国内外からの旅行者やビジネスパーソンを受け入れるため、顧客層はさらに多様化しています。
さらに、不動産投資家や資産オーナーは同社にとって安定的な収益をもたらす重要セグメントであり、長期的なリレーションを築くことで、追加投資や紹介など新しいビジネスチャンスが生まれやすくなっています。
このように複数のセグメントをカバーすることで、市況の変動によるリスク分散も図っています。
収益の流れ
リノベーション後の賃貸運営から得られる家賃収入
ホテル運営受託による手数料および運営利益
ファンド組成や不動産売却時の手数料
【理由】
中古不動産の再生だけでは収益のタイミングが限定されやすいという課題があるため、賃貸管理やホテル運営といった継続収入を得られる分野に注力する必要がありました。
リノベーション後の物件を高い稼働率で回すことで安定キャッシュフローを得られ、ホテル運営では委託費用や宿泊料の一部を受け取るなど、複数の収益源を確保しています。
さらに、ファンド組成時に得られる手数料や、物件を売却する段階での利益を組み合わせることで、成長と安定のバランスを図っているのが特徴です。
コスト構造
不動産の仕入れ費用およびリノベーション費用
ホテル運営に必要な人件費や設備投資費
マーケティング費用や管理費などの一般経費
【理由】
中古物件の仕入れ価格やリノベーションの規模は、事業の成否を大きく左右します。
市場価格の変動に応じて仕入れコストが変化し、それが業績に直結します。
ホテル事業でも、稼働率を高めるには一定の人件費と設備メンテナンスが不可欠であり、コスト管理が難しい領域です。
さらに、賃貸募集やホテル集客のための広告宣伝費にも投資が必要であり、これらを適切にコントロールしながら、収益性を最大化するマネジメントが求められています。
多角的に事業を展開している分、コスト項目も幅広く、戦略的な配分が重要になっています。
自己強化ループ
株式会社イントランスの事業構造を支えるのは、不動産とホテルの双方でキャッシュフローを循環させる自己強化ループです。
具体的には、中古物件のリノベーションによって資産価値を高め、賃貸収入や売却益を得ることで、新たな物件取得やホテル事業への投資資金を生み出します。
ホテル運営で得た収益や運営ノウハウは再投資に回され、さらに複数のエリアで宿泊施設を展開することでブランド力や集客力が高まります。
こうした好循環の中で、リノベーションの技術や運営ノウハウが蓄積され、事業拡大と利益体質の強化が同時に進むのが特徴です。
市場環境の変動はリスク要因となりますが、複数の収益源を持つことで耐性を高め、得られた利益を次の投資に回し続けることで、さらなる事業拡大が期待できます。
採用情報
現在、具体的な初任給や平均休日、採用倍率などの詳細情報は公開されていないようです。
不動産事業やホテル事業に興味を持つ方にとっては、多角的な業務や幅広いキャリアパスが魅力のひとつとなりそうです。
新卒採用や中途採用の各種枠でどのような人材を求めているのかをこまめにチェックすると、同社の事業方針や社風も垣間見えるでしょう。
株式情報
株式会社イントランスは証券コード3237で上場しており、2025年3月期の予想配当金は0円となっています。
2025年1月30日時点の株価は1株あたり105円で、PER(予想)は300.6倍、PBR(実績)は5.21倍です。
時価総額は約49億円で、投資家からは成長期待を込めた評価が一定程度なされているとも考えられます。
ただし、依然として利益面が安定しておらず、赤字からの早期脱却が大きな課題です。
未来展望と注目ポイント
今後の展望としては、不動産市況の変動や観光需要の回復が、同社の成長ペースを大きく左右すると考えられます。
中古物件の仕入れやリノベーションには、仕入れ価格や在庫の確保がポイントとなり、ホテル事業においては稼働率と客単価のアップが重要な課題となります。
これらの課題をクリアするためには、経営リソースの集中と戦略的なパートナーシップの強化が不可欠です。
特に、ホテル運営についてはブランド力を高める施策が求められ、OTAや旅行代理店だけでなく、企業コラボや地域観光資源との連携など、新しい取り組みが期待されます。
中古不動産とホテル運営という2つの柱をバランスよく拡大できれば、複数の収益源を持つ強靭なビジネスモデルへと進化する可能性があります。
投資家にとってはPERやPBRの水準が高めに映る一方、赤字からの早期黒字転換が果たせるなら、さらなる評価向上も期待できるでしょう。
中長期的な視点で、同社が描く成長戦略とIR資料の動向に注目が集まっています。
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