中堅中小企業を支援するビジネスモデルに注目 株式会社ユナイトアンドグロウのIR資料で読み解く成長戦略

情報・通信業

企業概要と最近の業績

株式会社ユナイトアンドグロウ

2025年5月13日に発表された2025年12月期第1四半期の決算についてご報告します。

売上高は10億7,300万円となり、前年の同じ時期と比較して14.8%の増収となりました。

一方で利益面では、本業の儲けを示す営業利益が1億6,000万円で、前年の同じ時期から1.2%のわずかな減少でした。

経常利益と最終的な親会社株主に帰属する四半期純利益も、それぞれ1.2%、1.8%の微減という結果でした。

決算短信によりますと、企業のIT人材への需要は引き続き高く、主力のインソーシング事業で顧客数と稼働人数がともに増加し、売上は順調に成長しました。

しかし、将来の成長を見据えて新卒や中途採用を積極的に進めた結果、人件費や採用費といった先行投資が増加したため、増収ながらもわずかな減益になったと説明されています。

【参考文献】https://www.ug-inc.net/

価値提案

中堅中小企業のIT部門が抱える人材不足やスキルミスマッチを解消するため、必要なスキルを持つ社員を必要な時間だけ提供しています。

フルタイムの採用コストや教育コストを大きく下げつつ、高度な専門知識を持つ人材のサポートを受けられます。

【理由】
IT部門は企業の規模が大きくなるほど専属人材が必要になりますが、中堅中小企業ではそこまで人員を割くことが難しい場合が多いからです。

そのため、複数の企業で人材をシェアする仕組みを整え、最小限のコストで最大限のITサービスを享受できるようにする必要があり、このモデルが誕生しました。

ITにまつわる多様な課題に迅速かつ専門的に対応することで、クライアント企業の事業成長に寄与する点が同社の大きな強みです。

主要活動

シェアード社員のタイムシェア提供。

ITコンサルティングやナレッジシェアなどの付帯サービス。

【理由】
単にIT人材を派遣するだけではなく、顧客企業の業務効率を高めたり、新たなデジタルトランスフォーメーション戦略を立案したりするところまでサポートする必要があるためです。

現場でのノウハウを共有する「ナレッジシェア」も行うことで、複数の企業が蓄積した知見を有効活用できます。

これにより、IT分野での課題が多角的に解消されるため、長期的な信頼関係が築かれています。

リソース

多様なITスキルを持つ人材プール。

社内に蓄積されたナレッジシェアプラットフォーム。

【理由】
シェアード社員を提供する上で欠かせないのが豊富な人材です。

プログラミングやネットワーク、セキュリティなど幅広い分野のスキルを持つ人材を社内に確保し、さらにこれらをプラットフォーム上で整理しておくことで、どの企業にも適切な人材をマッチングできる体制を整えています。

このプラットフォームは、実際に顧客企業が遭遇した課題や解決策が集約されているため、新しい担当が変わってもスムーズに引き継ぎ可能です。

パートナー

ITベンダーや教育機関との提携。

他社サービスとの連携によるソリューション拡充。

【理由】
IT人材の育成には専門的な教育が必要であり、さらに最新のITツールやソリューションを活用できるかがサービスの品質を左右します。

そこで、教育機関やITベンダーと協力することで、社員のスキルアップや顧客向けサービスの拡充を実現しています。

外部パートナーとの連携を強めることで、より幅広い顧客ニーズに対応できる仕組みを持つに至りました。

チャネル

自社営業チームによる直接提案。

ウェブサイトやSNSによる集客。

パートナー経由での紹介。

【理由】
ターゲット企業の規模が50名から1000名と幅広いため、オンラインとオフラインの両面でアプローチが必要となります。

直接訪問して具体的な課題をヒアリングしやすい一方で、オンラインからの問い合わせも増えているため、幅広いチャネルを活用して潜在顧客を獲得する体制を整えています。

パートナー経由の紹介は、顧客企業に対して既に信頼関係のある相手からのリファラルとなるため、高い契約率が期待できるポイントです。

顧客との関係

長期的なパートナーシップと定期的なコミュニケーション。

保守運用だけでなく経営課題の相談相手として機能。

【理由】
IT部門はシステムが稼働し続ける限り常にサポートが必要で、突発的なトラブルも起こり得ます。

また、企業の経営課題をITで解決するには長期的な戦略が重要です。

そのため、お客様とのコミュニケーションを密にすることで、迅速な問題解決と将来を見据えたシステム構築を実現しています。

結果として、継続契約が増え、安定した収益源につながっています。

顧客セグメント

社員数50から1000名程度の中堅中小企業が中心。

DX推進やIT化に積極的な成長企業。

【理由】
急速に成長している企業ほどIT部門を強化する必要がありますが、フルタイムのエンジニアや専門家を多数雇用する余裕がないことも多いからです。

そこで、タイムシェアで必要なスキルを得られるシェアード社員のメリットが最も活きるセグメントとなります。

こうした企業は、IT投資による成長戦略を重視する傾向が強いため、同社サービスとの相性が高いと考えられます。

収益の流れ

月額料金による継続課金。

プロジェクト単位のコンサルティングフィー。

【理由】
IT運用の維持やサポートは常に必要なため、定期的なフィーによる安定収入が基本となります。

さらに、顧客企業のIT課題が発展的に増えていく過程で、追加のコンサルティングやプロジェクトが発生することも多いです。

そのため、ストック型とフロー型の両方を組み合わせた収益構造が確立されており、顧客との取引規模が拡大するほど売上も拡張していく仕組みになっています。

コスト構造

人件費と教育研修費。

営業マーケティング費用。

【理由】
多様なスキルを持つ人材を確保するには適切な給与と研修が欠かせません。

また、認知度を高めるためのプロモーション活動や顧客への訪問提案も重要です。

サービス品質を維持しながら販路を拡大しようとすると、人材確保と広告宣伝の両方にコストがかかる構造になるのは必然と言えます。

自己強化ループ

株式会社ユナイトアンドグロウでは、シェアード社員の導入で顧客企業がIT課題を解消し、生産性や売上を向上させることによって「導入してよかった」という実績を積み重ねています。

この成功事例が他の潜在顧客にも伝わり、新たな導入案件が生まれやすくなるのが大きな特徴です。

また、一度契約した顧客企業からの追加要望も多く、プロジェクト単位の受注につながります。

さらに、社員が現場で得た知見やノウハウはナレッジシェアプラットフォームに集約され、新しい担当者でも短期間で高度なサービスを提供できる仕組みとなっています。

こうして、サービスの品質向上と顧客満足度のアップが相互に作用し、さらなる新規顧客獲得や長期継続契約につながるという自己強化ループが継続的に働いているのです。

採用情報

同社の初任給は固定給30万円プラスインセンティブ給が予定されており、高い専門性と成果を重視する姿勢がうかがえます。

平均休日や採用倍率については公表されていませんが、人材育成に力を入れていることから、研修制度やキャリアパスもしっかり用意されていると考えられます。

成果主義がベースとなっているため、自身のスキルを磨きたい人にとっては大きな魅力があるでしょう。

株式情報

株式会社ユナイトアンドグロウの銘柄コードは4486です。

2023年12月期の配当金は1株当たり22円で、投資家に対して一定の還元を意識している企業といえます。

2025年2月3日時点での株価は1,029円となっており、今後の業績や成長性に応じて株価がどのように推移していくかが注目されます。

未来展望と注目ポイント

IT人材不足は引き続き社会課題となる見込みであり、シェアード社員というタイムシェア型のビジネスモデルは今後も需要が高まると期待されています。

中堅中小企業のDX推進が政府や業界団体からも後押しを受ける中、必要な部分だけ外部リソースで補う柔軟な働き方がさらに注目されるでしょう。

また、同社の拡大に伴い、人材育成や教育研修にかかる費用が増大する可能性がありますが、ナレッジシェアプラットフォームを活用して効率化を図ることで、事業のスケールアップをスムーズに進める戦略が取られるのではないでしょうか。

競合も増える一方で、豊富な実績や継続契約率の高さが差別化のカギとなると考えられます。

これからの成長戦略を支えるIR資料にもぜひ注目し、決算報告やサービス拡充の動向を随時チェックすることが重要です。

ビジネスモデルと人材戦略がいかに噛み合い、自己強化ループを回し続けられるかが、さらなる成長を左右するとみられます。

コメント

タイトルとURLをコピーしました