共同印刷のビジネスモデルに迫る 成長戦略とIR資料から読み解く魅力

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企業概要と最近の業績
共同印刷は、印刷分野から始まりながらも、ICカードやBPO、パッケージ分野など幅広い事業を手掛ける総合印刷企業です。昔は雑誌や書籍などの印刷が中心でしたが、情報セキュリティや先端素材の開発にも注力し、新しい事業領域を拡大しています。最近では紙器や軟包装などの包装資材、交通系ICカードや乗車券分野で存在感を高めています。
2025年3月期の第2四半期決算を見ると、売上高は481億8,300万円となり、前年同期比で5.3%増という結果を出しました。さらに、営業利益は6億2,300万円(78.8%増)と大きく伸びており、経常利益は9億1,800万円(32.3%増)、親会社株主に帰属する中間純利益は8億7,000万円(159.2%増)と、すべての指標で前年を上回っています。これらの数字からもわかるように、ICカードや乗車券といった情報セキュリティ分野と、包装資材の売上拡大が好調なことがわかります。コストの上昇分を適切に価格へ転嫁できたことも追い風になっています。印刷企業としての伝統を活かしながら、先端テクノロジーや海外展開を積極的に取り入れているところが、共同印刷の強みになっていると言えます。

ビジネスモデルの9つの要素

価値提案
共同印刷は「高品質な印刷技術」と「高度な情報セキュリティ」を組み合わせ、多様な業界に向けて最適なソリューションを提案しています。印刷物の制作だけでなく、ICカードの開発やデータ処理のBPOなど、幅広いサービスを一貫して提供できる点が特長です。なぜこうした形になったのかというと、出版や商業印刷の長い経験で培った技術と設備を基盤に、セキュリティ需要が高まる時代の流れに合わせて新領域へ参入していった結果、自然と「安心・安全」の付加価値を兼ね備えた総合印刷会社へ成長できたからです。

主要活動
出版物の印刷から、ICカードの製造、データプリントの封入・発送といったBPO業務、食品や日用品向けのパッケージ製造など、多種多様な製造・加工プロセスを社内で行っています。これによって顧客の要望に対するスピーディーな対応が可能になり、フルラインナップでサービスを提供できるようになっています。なぜそうなったのかというと、単一の印刷物だけを扱っていた頃と比べて、顧客のニーズが大きく変化してきたためです。特に企業や自治体は「情報を守りながら大量のデータを処理する」「環境に配慮した包装を使う」といった多面的な要求を持つようになり、それに合わせて事業範囲を拡大していった結果です。

リソース
自社工場における高いセキュリティ基準の設備や、漫画雑誌や宝くじなどの大ロット印刷を可能にする生産ライン、そして高度なデザイン力やシステム開発力を持った人材が大きなリソースとなっています。海外にもベトナムやインドネシアの拠点を確保し、ラミネートチューブなどをグローバルに提供できる体制を整えています。なぜこのようにリソースが充実しているかといえば、印刷市場が国内だけに留まらなくなったことと、ICカードやセキュリティ分野など、新分野へ入るための設備投資を積極的に行ってきた結果です。

パートナー
出版社や自治体、金融機関、化粧品・医薬品メーカーなどと長年にわたる信頼関係を築いており、データ処理のBPOやパッケージ開発で協業しています。また、物流企業や海外現地のパートナーとも連携し、製造から配送までシームレスに対応できる仕組みが整っています。なぜここまで幅広いパートナーを持つようになったかというと、印刷分野だけでなく、システム開発やパッケージ制作、海外展開などを行うためには、多方面の企業との協力が不可欠だからです。

チャンネル
直接的な営業担当による提案のほか、オンラインプラットフォームや代理店を通じた受注など、複数のチャンネルを使って顧客にアプローチしています。共同印刷は大企業や自治体が顧客になることが多いですが、一部では中小企業向けのサービスも展開しています。なぜこのようなチャンネルが必要になったかといえば、大口案件では直接のコミュニケーションが重要になる一方、包装資材などはオンラインや代理店を通じてスピーディーに発注したいニーズがあるからです。

顧客との関係
長期的な契約を結び、プロジェクトごとに細かい調整を行う形が主流です。印刷物やICカードのように、精密さやセキュリティが求められる製品に対して、継続的に信頼を維持することでリピート受注につなげています。なぜこうなったかというと、交通系ICカードや宝くじのように、機密度や品質の継続性が重視される製品では、一度築かれた信頼関係が次の受注にも大きく影響するからです。

顧客セグメント
出版社をはじめ、金融機関、自治体、化粧品や医薬品メーカー、食品・日用品を扱うメーカーなど、多岐にわたります。また、海外ではASEAN地域を中心に現地企業との取引も進んでいます。なぜこのように多様な顧客セグメントを持っているかというと、印刷需要が紙媒体だけでなくICカードや産業資材などにも拡大していき、それぞれの業界からの依頼に対応していく過程で業種が広がっていったためです。

収益の流れ
出版印刷や商業印刷による印刷物の製造・販売収益、ICカードや乗車券、宝くじなどの受託製造収益、BPOサービスによるデータ処理・封入作業の報酬、食品や医薬品向けパッケージ・ラミネートチューブの販売収益などが主な柱となっています。なぜこのように収益源が多彩かといえば、一つの分野に依存せず、複数の市場から安定的に利益を得ることで、経済環境の変化にも柔軟に対応できる体制を作り上げてきたからです。

コスト構造
紙やインク、プラスチックフィルムなどの原材料費や、工場設備の維持費、人件費、物流費、研究開発費などが大きなウェイトを占めます。セキュリティを保つためのシステム投資や工場設備の維持管理にかかるコストも高い傾向にあります。なぜコスト構造がこうなっているかというと、高品質を保ちつつ多角的な事業を展開するには、専用設備や技術者が必要であり、それらを継続的にアップデートするためのコストが発生するからです。

自己強化ループ(フィードバックループ)
共同印刷は、顧客から得たフィードバックを新たな製品開発やサービス改善に活かす仕組みを整えています。例えばICカード事業では、交通系ICカードの需要が増えればノウハウが蓄積し、新規の受注を獲得しやすくなるという循環が生まれています。また、パッケージ分野でも、顧客の要望に応える形で紙器や軟包装の改良を進めると、その実績が評価されて別の企業からの発注につながる場合があります。こうした成功事例を営業部門が再び宣伝材料として活用し、さらに案件が増えるという自己強化の流れができあがっているのです。さらに、BPOやデータプリント事業でも、自治体や金融機関との信頼関係をベースにシステム開発ノウハウが蓄積し、今後の高度なセキュリティサービスを展開する際の大きな武器になっています。このように、各部門での成功事例や技術的な改良が会社全体の評判や受注にポジティブな影響を与え、結果的に売上と利益をさらに伸ばす好循環が成立しています。

採用情報
共同印刷では、新卒や中途採用に力を入れており、IT関連やデータ処理、デザイン分野など幅広い職種で人材募集を行っています。初任給や年間休日数、採用倍率などは一般公開されていませんが、情報セキュリティや海外展開といったテーマに興味がある人には活躍の場が広がっているでしょう。研修制度や福利厚生については公式サイトから詳細を確認できます。

株式情報
共同印刷は証券コード7914で上場しており、市場からの評価を受けながら事業拡大を進めています。配当金に関しては年度ごとに変動することが多く、IR資料にて最新の情報を公開しています。株価についても日々変動するため、興味を持たれた方は金融情報サイトや証券会社を通じてチェックしてみると良いでしょう。

未来展望と注目ポイント
共同印刷は、紙媒体だけでなくデジタルやセキュリティ分野に進出していることから、今後も幅広い業界で需要を獲得する可能性があります。特にICカードやBPOは、個人情報保護や業務効率化のトレンドによって引き続き拡大が見込まれています。また、海外生産拠点を活かしたラミネートチューブやパッケージの事業拡大は、ASEAN地域の経済成長とともに大きく飛躍するチャンスでもあります。さらに、環境への配慮が求められる時代だからこそ、紙器や軟包装の分野でも新しい素材や技術を投入することで差別化を図ることができるでしょう。成長戦略の一環として、研究開発や新設備への投資を続ける姿勢は、さまざまな新興国市場でのビジネスチャンスを生むはずです。これからも印刷企業の枠を超えたサービスを展開し、IR資料にも表れているように継続的な成長をめざす共同印刷は、注目に値する企業だと言えるでしょう。

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