企業概要と最近の業績
ランサーズ株式会社
2025年3月期の通期決算では、売上高が45億89百万円となり、前の期に比べて0.3%増加しました。
営業利益は1億9百万円で、前の期から44.7%増える結果となりました。
経常利益は1億15百万円となり、こちらは42.9%の増加です。
親会社株主に帰属する当期純利益は1億76百万円で、前の期と比較して59.2%の大幅な増益を達成しています。
利益が大きく伸びた背景には、プラットフォーム事業における生産性の向上や、費用対効果を重視したマーケティング施策の展開などがあります。
新しい働き方への社会的な関心の高まりを受け、企業のデジタルトランスフォーメーションを支援するサービスや、個人の学び直しをサポートするリスキリング関連のサービスが順調に推移したことが、業績に貢献したようです。
なお、事業はプラットフォーム事業の単一セグメントとなっています。
価値提案
「企業の人材不足」と「フリーランスの仕事獲得ニーズ」をつなぐオンラインマッチングプラットフォームを提供しており、時間や場所にとらわれない柔軟な働き方を推進しています
業務委託や副業といった新たな労働形態の拡大にも対応し、企業と個人それぞれの多様なニーズを満たす点が魅力です
マッチングと同時に、スキル評価や実績管理などのサポート機能も充実させ、契約から報酬支払いまでを一括管理できる点もユーザビリティ向上に寄与しています
【理由】
大企業から個人事業主までの幅広いユーザー基盤を確立するためには、単に案件情報を掲載するだけでなく、取引の安全性や利便性を高める仕組みが不可欠です。
そこでランサーズは決済代行やコミュニケーション機能の整備など、多面的な支援を価値提案に含めています。
さらに働き方改革やリモートワークの普及といった社会的背景を踏まえ、企業が人材を柔軟に活用できる環境と、個人がスキルを発揮しやすい仕組みを構築することが、競合優位性の源泉になっています。
主要活動
クラウドソーシングサービス「Lancers」の運営やシステム開発
専門人材を対象とした「Lancers Agent」やコンサルタント向けの「POD(Professionals On Demand)」の提供
フリーランスと企業双方へのマーケティングやサポート業務
【理由】
プラットフォームビジネスでは、サービスの質を保ちつつ利用者数を拡大するために、開発・運営とユーザーサポートの両立が重要になります。
ランサーズの場合、各種専門人材を扱うエージェント事業やコンサルタント事業を強化することで、より高単価な案件を取り込み、収益性を高める戦略を選択しました。
さらにはユーザーフレンドリーなサイト設計や報酬管理の充実なども主要活動に組み込み、長期的な顧客満足度とプラットフォームの安定稼働を実現しようとしているのです。
リソース
豊富な登録フリーランスと企業クライアントのデータベース
プラットフォーム開発・運営を担うITエンジニアやカスタマーサポート担当の専門人材
信頼性の高いマッチングアルゴリズムや決済機能などのシステム基盤
【理由】
フリーランスと企業が安心して取引できるためには、質の高いIT基盤と大規模なユーザーベースが不可欠です。
ランサーズは創業期からクラウドソーシングに特化し、利用者の登録情報や実績を蓄積してきました。
また、事業拡大に伴い、エージェント機能やコンサルタントマッチングを支える高度なシステムを自社開発しており、それらの蓄積が競合との差別化につながっています。
こうした資産があるからこそ、多様なニーズに応じたサービスを展開しやすくなっているのです。
パートナー
企業クライアントやフリーランスのコミュニティ
専門スキル育成に強みを持つ教育機関やスクール
場合によっては他のIT企業やスタートアップとのアライアンス
【理由】
一社だけで全ての人材ニーズを網羅するのは難しく、教育機関との連携によりフリーランスのスキルアップを支援する必要があります。
また、企業の高度な要望に応えるためには、外部のツールやサービスと連携するケースも増えています。
そのためランサーズは、協業やパートナーシップを通じてプラットフォームの魅力と利便性を拡張し、利用者同士の相乗効果を高める戦略をとっています。
チャンネル
オンラインプラットフォームやモバイルアプリを通じた直接アクセス
エージェントが企業とフリーランスを仲介するオフラインのコンサルティング
セミナーやイベントなど対面の場でのPR
【理由】
多様な働き方に対応するためには、オンラインだけでなくエージェントによるオフラインのマッチングも重要です。
特に専門性の高い案件や高額報酬のプロジェクトでは、より密接なコミュニケーションが必要になります。
ランサーズはオンラインで効率的に集客しつつ、エージェントサービスやイベントを活用することでユーザーとの接点を増やし、それぞれのニーズに合わせた提案ができるチャンネルを整えています。
顧客との関係
オンライン上でのメッセージ機能やプロジェクト管理ツールによるサポート
カスタマーサクセスチームによるクライアント企業のリピート率向上対策
フリーランス向けのスキルアップ講座やコミュニティ運営
【理由】
プラットフォーム利用者が継続して使い続けるためには、満足度の高いやり取りや成果が重要です。
そこでランサーズは顧客との信頼関係を深めるために、オンラインサポート体制だけでなく、ユーザーコミュニティやスキル支援サービスを充実させています。
さらに、クライアント企業が再度案件を掲載しやすくなるよう、提案数や成約率のデータ分析を行い、最適なマッチングをサポートする仕組みづくりを進めています。
顧客セグメント
人材不足や専門性の高い業務を委託したい企業(大企業からスタートアップまで)
副業やフリーランスとして仕事を獲得したい個人
より高報酬なプロジェクトを狙うエンジニアやデザイナー、コンサルタントなど専門家
【理由】
昨今は企業規模にかかわらず、プロジェクト単位で人材を確保する動きが活発化しています。
大企業はコスト削減やスピード重視で外部人材を活用し、中小企業やスタートアップは専門スキルを必要とする場面が増えています。
一方、個人も複数の案件を掛け持ちする働き方が一般化しつつあり、こうした市場ニーズを反映することで、ランサーズは幅広い顧客層を取り込むことに成功しています。
収益の流れ
案件成約時の手数料やエージェント手数料
プレミアム会員サービスや有料オプションの販売
法人向けアカウントなどカスタマイズされたプランの提供
【理由】
プラットフォーム型ビジネスにおいては、通常のマッチング手数料が主要な収益源になりますが、安定的な利益を確保するためには収益源の多角化が必須です。
ランサーズは専門人材を提供するエージェント事業で高付加価値を生み出し、プレミアムプランや法人向けサービスといったサブスク型収益モデルを組み合わせています。
結果として、基本的なマッチング手数料に加えて、より高い単価や継続課金型の売上を確保しやすくなっています。
コスト構造
プラットフォーム開発やシステム保守にかかるITインフラ関連費用
マーケティングや広告宣伝にかかる費用
カスタマーサポートやエージェントチームの人件費
【理由】
オンラインプラットフォームを運営する上で、最も大きなコストはシステム開発とサーバー運用です。
また、新規ユーザーや企業を獲得するための広告費も一定規模が必要になります。
ランサーズは収益性の高い事業に重点的に投資を行う一方、効率的な運用と集客施策でコストの最適化を図ってきました。
こうした取り組みが利益率の改善につながり、2024年3月期における大幅な利益増にも結びついています。
自己強化ループ
ランサーズの自己強化ループは、利用者増加によるネットワーク効果が基盤になっています。
フリーランスの数が増えるほど多様なスキルや経験が集まり、企業にとっては「ここに来れば必要な人材が見つかる」という信頼感が高まります。
すると企業側の案件掲載数も増え、結果的にフリーランス側への魅力がいっそう高まる循環が生まれます。
さらに、高付加価値サービスとしてエージェントやコンサルタントマッチングを強化することで、案件の質や単価も上昇します。
そうなると報酬の高さを求める優秀なフリーランスが集まり、さらに企業の満足度を高める好循環へとつながっていきます。
この積み重ねがサービスのブランド力と収益基盤を強固にし、ランサーズ全体の成長を加速させる原動力になっています。
採用情報
現在、初任給や平均休日、採用倍率などの具体的な情報は一般公開されていないようです。
ただ、自由な働き方やベンチャー企業らしいチャレンジングな環境を重視する風土があると推測されます。
リモートワークの導入やフレックスタイム制など、IT企業らしい多様な就労環境を提供している可能性があります。
採用について詳細を知りたい場合は、公式サイトや求人情報を確認してみるとよいでしょう。
株式情報
ランサーズは東証グロースに上場しており、銘柄コードは4484です。
配当は2025年1月31日時点で予想配当利回りが0.00%となっており、現時点では成長投資を優先する方針とみられます。
株価は同日時点で1株あたり230円となっています。
ベンチャー企業であるため、配当に回す資金よりも事業拡大や新サービス開発への投資に注力していることがうかがえます。
未来展望と注目ポイント
今後の展望としては、企業側のDX需要が高まる中で、IT人材やコンサルタントを求める案件が増加し続けると期待されます。
ランサーズはエージェント事業やコンサルタントマッチング事業を強化することで、単価の高い案件を拡充し、安定した収益源を確保できる可能性があります。
また、リモートワークやフリーランス人口の増加に伴って、クラウドソーシングサービス全般の需要も拡大が見込まれるでしょう。
さらにユーザーがより長期的かつ高度なスキルを必要とする案件に携われるよう、スキルアップ支援やコミュニティづくりを進めることでプラットフォームの価値を高めることができます。
こうした取り組みが成功すれば、IR資料などで公表される業績はさらに底上げされ、中長期的には日本を代表するフリーランスマッチング企業としての地位を固めていくと考えられます。
競合が増える市場だからこそ、継続的なサービス品質向上と成長戦略の明確化が今後の鍵となりそうです。
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