企業概要と最近の業績
株式会社ジェリービーンズグループ
2026年1月期第1四半期の決算が発表されました。
売上高は2億2,800万円で、前年の同じ時期に比べて5.2%減少しています。
営業損失は1億1,100万円、経常損失も1億1,100万円、そして親会社株主に帰属する四半期純損失も1億1,100万円となりました。
事業ごとでは、小売事業の売上高が6,500万円と、前年の同じ時期から20.1%減少しました。
これは既存店舗での販売が減少したことが主な理由です。
EC事業の売上高は9,600万円で、こちらも前年の同じ時期から37.9%の減少となりました。
しかし、EC事業の営業利益は700万円となり、前年の同じ時期と比較して46.8%増加しています。
この点について、SNSを通じた顧客とのコミュニケーション強化や広告、メールマガジン、LINEの配信といった施策を積極的に行った結果と説明されています。
その他の事業としては、美術品の販売、SDGs関連商品の販売、そして卸売業に取り組んでいます。
ビジネスモデルの9つの要素
価値提案
ジェリービーンズグループは、卸事業や小売事業、OEM事業、EC事業など多様なビジネスを展開することで、幅広い顧客ニーズに応えていることが最大の価値提案といえます。
法人向けの大口取引に対応できるだけでなく、自社ブランドを直営店舗やオンラインで直接消費者に届ける仕組みを持ち合わせている点は、大きな強みになっています。
多角的なアプローチにより、一つの事業が不調でも別の事業でリカバリーする可能性があり、リスク分散にもつながります。
ただし、事業領域が広い分だけマネジメントコストがかかりやすく、各事業間の調整やブランドイメージの統一などが難しい側面を抱えています。
そうした課題を克服し、より明確な価値提案を顧客に示せるかが今後のカギとなっています。
主要活動
同社の主要活動は、商品企画・製造・販売・販促支援に及びます。
卸では、取引先企業に対して商品を提供すると同時に、販売促進のサポートを行います。
小売では、自社ブランドを大手百貨店や直営店で扱い、顧客と直接コミュニケーションを取ってニーズをつかむことができます。
さらに、OEM事業では顧客企業の要望に合わせて製品を企画・生産し、EC事業ではオンライン販売を通じて全国の消費者にリーチしています。
こうしたマルチチャネル展開は、顧客情報の収集や在庫管理に大きなメリットをもたらす一方、管理の複雑化や在庫リスクといったデメリットも伴います。
これらの活動すべてがうまく連携することで、企業の総合力が高まり、売上拡大とブランド認知度の向上につながる構造を目指しています。
リソース
ジェリービーンズグループのリソースは、まず商品開発のノウハウが挙げられます。
市場や顧客の要望を的確に把握し、適切な価格帯と品質の製品を企画・生産できる点は同社の強みとなっています。
さらに、全国展開している流通チャネルや、複数の事業を束ねる管理システムも大きな経営資源といえます。
加えて、法人顧客との長年の取引関係から培われた信用力は、営業や新規ビジネス開拓の場面で大きな役割を果たしています。
ただし、近年の業績不振から人材流出や投資余力の減少といったリスクが生じる可能性があるため、保有リソースをいかに維持・強化しながら新たな成長エンジンを生み出していくかが課題となっています。
パートナー
同社のパートナーには、製造を担う工場や物流業者、取引先の小売・百貨店などが含まれます。
また、EC事業ではオンラインプラットフォームの運営企業や決済サービス事業者との連携が欠かせません。
OEM事業では、企画を依頼する法人顧客と二人三脚で製品開発を進めるケースが多く、顧客企業との密接な関係が成功の鍵となります。
パートナーシップを強固に築くことで、製造コストの削減や納期短縮、販路拡大といったシナジーが期待できる一方で、需要や市場動向の急変によるリスクをパートナーと共有する必要もあります。
そうした環境変化に対応しやすいパートナー基盤をどれだけ築けるかが、今後の競争力を左右しそうです。
チャンネル
卸売においては各百貨店や小売企業への供給、小売では直営店舗や百貨店のインショップ、ECでは自社オンラインショップと大手モールがチャンネルとして機能しています。
これにより、BtoBとBtoCの両面から顧客を獲得できるのが強みです。
一方で、チャンネルごとに異なる顧客層に合わせたマーケティング施策や在庫管理が必要であり、運用コストが増大しがちです。
チャンネル間の情報連携をスムーズに行うためのデジタル投資や、オムニチャネル戦略の構築が今後の課題となるでしょう。
複数の販売経路を柔軟に統合し、顧客体験を高めながら売上最大化を狙う戦略が求められています。
顧客との関係
同社の場合、法人顧客との関係では製品卸やOEMの継続契約が中心となるため、長期的な信頼関係が重視されます。
小売事業やEC事業を通じて個人顧客との直接コミュニケーションも生まれ、リピーターとなってくれるファン層の獲得が売上の安定に寄与します。
ただし、最近は新規顧客獲得コストが上昇しているほか、ECやSNSによって情報が拡散しやすくなっているため、ブランドイメージのコントロールが難しくなっています。
これらを踏まえ、よりパーソナライズされたサービスやアフターサポートを充実させることが、顧客満足度の向上とLTV(顧客生涯価値)の拡大につながると考えられています。
顧客セグメント
法人企業(百貨店や小売チェーン、OEM先)と個人消費者の両方を顧客セグメントとしています。
卸事業やOEM事業では法人向けの大量受注が見込める一方、小売やECでは一人ひとりの購買単価が小さい代わりにブランド認知度を高めやすい特性があります。
ターゲットを明確に分けることで、それぞれに適した商品企画やプロモーション活動が展開できるのが強みです。
しかし、その分マーケティング戦略や価格設定、販売チャネルの最適化など、複数の要素を同時に管理する必要があり、オペレーションが複雑化するリスクも抱えています。
収益の流れ
収益源は主に商品販売収益とOEM契約収益の2つに分類されます。
卸では大口契約を結ぶことで安定的な収益を得られ、小売やECでは差別化された商品やブランド価値の向上により高い利益率を狙うことが可能です。
OEM事業では契約先企業からの継続受注に頼るため、品質管理やコスト面での交渉力が大切になります。
売上高の約34%減少という現況は、全体的な需要減少や競合他社との価格競争の激化など、複数要因が重なっていると考えられます。
こうした逆風の中で新規収益源を見つけ出す努力と、既存事業の効率化を進めるバランスが求められています。
コスト構造
製造コスト、人件費、販売管理費、物流コストが主なコスト構造となっています。
多角的な事業を運営しているため、在庫リスクや店舗運営費用なども無視できません。
特に、広範なチャネルを抱えている分、運送費や在庫の最適化が重要な課題です。
自社在庫と卸先在庫、EC在庫をそれぞれ管理する必要があり、仕組みが複雑化しやすい点が悩みどころです。
また、企業成長を狙うなら広告宣伝費やIT投資などのコストも欠かせないため、単純に費用を削減するだけでは売上機会を失うリスクもあります。
いかに効率を高めながら成長投資を行うかが、今後の利益改善の鍵となっています。
自己強化ループ(フィードバックループ)
ジェリービーンズグループでは、卸事業と小売事業、OEM事業、そしてEC事業がそれぞれの活動で得た知見を相互に活かすことで、事業成長の好循環を生み出すことを目指しています。
例えばOEM事業で培った商品開発ノウハウは、直営店舗やECの新商品企画へとフィードバックされます。
そこから得た顧客評価や売れ筋情報は再び法人向けの卸やOEM事業にも反映され、より的確に市場ニーズを捉えた提案へとつなげることができます。
こうした循環が強化されれば、需要予測の精度やブランドイメージの向上が期待でき、各事業の売上向上とコスト削減の両面でメリットが生まれます。
実際には事業間の連携コストや組織の壁といった阻害要因もありますが、それを乗り越えてシナジーを高めることが、赤字からの脱却と今後の成長戦略において極めて重要な役割を果たすと考えられます。
採用情報
初任給は月給23万円から35万円で、固定残業代20時間分を含みます。
土日休みの完全週休2日制のほか、年末年始やGW、夏季休暇といった休日も確保されているため、一定のワークライフバランスが整いやすい環境といえます。
ただし、採用倍率は公開されていないため、具体的な競争率は不明です。
人材の確保や育成によって新規事業の開拓や既存事業の改革を進めようとする姿勢がうかがえ、若手にもチャレンジが期待される企業です。
株式情報
同社は東証グロース市場に上場しており、銘柄コードは3070です。
直近の配当金は2024年1月期が無配となっており、投資家にとっては厳しい評価材料になる可能性があります。
株価は2025年1月30日時点で1株あたり124円となっており、業績の回復と成長戦略の実行次第では株価の変動幅が大きくなることが予想されます。
今後の経営状況をチェックしながら、企業としてどのような施策を打ち出すかが注目されます。
未来展望と注目ポイント
今後、ジェリービーンズグループが成長路線に戻るためには、まずはコスト構造の改善と効率的な運営が急務となります。
各事業の統合による相乗効果を最大限に引き出し、在庫や物流、販売データを一元管理する仕組みを整備することがポイントになりそうです。
併せて、ECやデジタルマーケティング領域への投資も不可欠です。
オンラインチャネルを強化することで、全国の潜在顧客に訴求できるだけでなく、既存顧客との関係維持にもつなげやすくなります。
また、OEM事業で蓄えた商品企画力を活かした新ブランド開発や、海外市場への進出なども成長戦略の候補として考えられるでしょう。
さらに、若手人材の採用を積極化して新しいアイデアを取り込み、組織内にイノベーションを起こすことも重要です。
こうした施策が同時に走り出すことで、業績と株価の双方が上向きになる可能性を秘めており、投資家や業界の関心が高まっています。
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