企業概要と最近の業績
株式会社スパイダープラス
2025年12月期第2四半期の決算が発表されました。
売上高は21億700万円で、前年の同じ時期に比べて31.9%の大幅な増収となりました。
ARR(年間経常収益)は39億4000万円に達し、前年同期比で36.1%増加しています。
一方で、営業損失は3億6100万円となり、前年同期の2億7800万円の損失から赤字幅が拡大しました。
経常損失は3億8400万円、親会社株主に帰属する四半期純損失は3億8600万円となっています。
主力の建設DXサービス「SPIDERPLUS」のID契約数が堅調に推移し増収を牽引しましたが、事業拡大のための人件費や広告宣伝費、研究開発費への先行投資が増加したことが、損失拡大の主な要因です。
価値提案
現場施工管理の効率化を中心に、図面管理から写真管理、検査記録、帳票作成などをワンストップで提供
操作性の高いアプリ設計により、現場スタッフが直感的に使いやすい環境を実現
クラウドベースのデータ連携により、作業時間やコストの削減をサポート
【理由】
建設業界は紙の図面や手書きによる記録が多く、デジタル化の遅れが指摘されていました。
そこで一つのアプリで業務を完結させる仕組みを提供することで、ITリテラシーの高くない現場スタッフでもスムーズに使いこなせる環境を整えています。
また、クラウド基盤を採用することで、社内外問わず情報を共有しやすくなり、時間的ロスの軽減とリアルタイムの意思決定を可能にしています。
このように現場目線のサービスを目指した結果、導入企業が拡大し、強みとしての「総合的DX支援」が定着しました。
主要活動
SPIDERPLUSの新機能開発とアプリの継続的なアップデート
顧客企業への導入支援や操作トレーニングなどのサポート業務
マーケティング活動やセミナー開催を通じた建設業界内での認知度向上
【理由】
同社の収益はサブスクリプションモデルを中心に構成されるため、顧客が継続して利用し続けるためのアップデートやサポート体制が不可欠です。
また、IT化が遅れている建設業界では、導入前や導入期のサポートが特に重視される傾向があります。
そのため主要活動としてはシステム開発だけでなく、現場に密着したカスタマーサポートや導入支援に力を入れる必要が生まれました。
さらに業界内で確固たる地位を築くために、展示会やウェビナーなどのマーケティング活動も欠かせません。
リソース
建設業界の業務フローに精通した人材と開発チーム
クラウド技術やモバイルアプリ開発のノウハウ
業界大手とのネットワークや豊富な導入実績
【理由】
建設業界は特殊な慣習や長年の業務フローが存在しており、それらを深く理解している人材がサービス開発の鍵を握ります。
そのため、エンジニアリングと建設現場の知識を両立する人材を確保することが重要なリソースとなりました。
また、モバイル端末を活用した現場対応とクラウドベースの情報共有を実現するには、高い技術力と安定したサーバー環境が必要です。
これらのリソースを組み合わせることで、迅速な機能追加やサーバーの安定稼働が可能になり、サービスの価値を高めています。
パートナー
大手ゼネコンやサブコンなど建設現場への導入実績がある企業群
販売代理店や技術提携先との協力関係
建設現場の業務効率化を目指す他のIT企業との連携
【理由】
建設プロジェクトは多くの企業や職種が関わる複雑なサプライチェーン構造を持っています。
大手企業が導入を進めることで、関連企業にも波及効果が広がるため、まずは業界をリードするパートナーと協力することが普及拡大の近道と考えられました。
また、開発面でも自社だけでまかなえない技術やノウハウを補うために、クラウドベンダーやAI解析技術を持つ企業との連携が不可欠です。
こうしたパートナーシップにより、サービスの品質向上と市場拡大の両面で大きな効果を上げています。
チャンネル
自社営業チームによる直販モデル
公式サイトやオンライン広告を活用したリード獲得
販売代理店経由での顧客拡大
【理由】
建設業界におけるIT導入は、比較的大規模なプロジェクトごとに導入が検討されるケースが多いため、専門知識を持った営業チームが直接コミュニケーションを取る必要があります。
一方で、オンラインでの資料請求や問い合わせも増えつつあり、新規顧客開拓のためにデジタルマーケティング施策が強化されています。
また、建設会社と強い関係を持つ販売代理店を活用することで、地域や業種に応じたきめ細かい営業が実現し、導入企業の裾野を広げることが可能になっています。
顧客との関係
導入時のトレーニングや活用サポート
定期的なアップデート情報や機能改善に伴うフィードバック収集
カスタマーサクセスチームによる長期的な課題解決提案
【理由】
サブスクリプション型のビジネスモデルでは、顧客が長期的に利用してくれることが売上の安定につながります。
そのため、導入後もしっかりとしたフォローやサポートを提供し、現場での定着を促すことが不可欠です。
また、業界特性上、新機能の要望や改善提案が常に寄せられるため、継続的なコミュニケーションとアップデートが求められます。
こうした関係構築を重視することで、離脱率を低く抑え、顧客満足度を高める取り組みが実現されています。
顧客セグメント
大手ゼネコンから中堅のサブコン、協力会社まで幅広い建設会社
公共事業を請け負う企業や公共団体にも拡大
リフォームや内装などの中小事業者も潜在顧客
【理由】
建設業界全体で見れば、大手企業だけでなく、地域密着型の中小企業も多数存在します。
また、公共工事の発注量や都市再開発などの分野でもデジタル化が進んでおり、同社が提供する施工管理アプリはさまざまな規模のプロジェクトに対応できる構造になっています。
特に人手不足や働き方改革への対応という課題は、中小企業ほど深刻であるため、導入コストやサポートの手厚さをアピールすることで裾野を広げています。
収益の流れ
SPIDERPLUS利用料としてのサブスクリプション収入
追加機能やオプションサービスの提供によるアップセル
大規模契約先へのカスタマイズやエンタープライズプラン
【理由】
同社のビジネスモデルは、継続課金による安定収益を目指すSaaS型です。
建設会社にとっては、毎月もしくは年単位で支払うことで常に最新の機能を利用できるメリットがあり、一方で会社側はアップデートやサポートを続けることで解約率を低減できます。
また、導入が進むにつれて、さらに効率化を進めたいというニーズが高まり、追加機能の契約や上位プランへの移行が発生するため、アップセルによる単価向上も収益の柱となっています。
コスト構造
システム開発やクラウドサーバー運用などの技術関連コスト
営業・マーケティング費用とカスタマーサポート人件費
研究開発投資に伴う先行コスト
【理由】
高品質のSaaSを安定運用するには、クラウドサーバーの維持費やセキュリティ対策が欠かせません。
また、導入企業を拡大するためには営業やプロモーションに一定の予算を割く必要があります。
さらに、競合が増える中で差別化を図るには、新機能の研究開発にも積極的に投資を行うことが重要です。
その結果、営業損失が一時的に発生する可能性があるものの、将来のシェア拡大と安定収益を見込む戦略的なコスト配分が行われています。
自己強化ループ
自己強化ループとして特に注目されるのは、導入企業が増加するほど現場間や企業間の情報共有がスムーズになり、SPIDERPLUSの利用価値がさらに高まるという点です。
建設業界では大手ゼネコンが導入を決めると、協力会社や下請け企業にも同じシステムが波及しやすく、社内での評価や口コミを通じて連鎖的に導入が加速していきます。
さらに、実際に使った企業からのフィードバックが豊富になることで、運営側も短いサイクルで機能改善やアップデートを行い、サービスそのものの品質が高まり続けます。
その結果、顧客満足度が上昇し、さらに新規契約を獲得しやすい好循環が生まれます。
こうしたフィードバックループはSaaSモデルの特徴であり、建設業界の独特な連携構造によって強い相乗効果を生み出すことが期待されています。
採用情報
同社の初任給や平均休日、採用倍率などの具体的な情報は公開されていません。
ただし、SaaS企業としてエンジニアや営業、カスタマーサクセスなど多様な職種での採用が想定されます。
建設業界の改革を進める企業であることから、事業の社会的意義に共感できる人材を募集している傾向が考えられます。
今後もさらなる成長を見込むため、多様なスキルセットとチャレンジ精神を持つ人材を積極的に採用する可能性が高いでしょう。
株式情報
スパイダープラスは証券コード4192で上場しており、建設関連のSaaS企業として投資家の注目を集めています。
現時点で配当金に関する情報は公開されていません。
1株当たりの株価は市場の需給や業績見通しによって変動するため、最新の株価は証券取引所や金融情報サイトでの確認が推奨されます。
先行投資による赤字が続く一方で、成長余地が大きい企業として評価される可能性があるため、投資判断には中長期視点での検討が必要になるでしょう。
未来展望と注目ポイント
今後は国内の建設現場だけでなく、海外展開や他の建設関連業務への領域拡大も期待されています。
特に2024年4月から残業時間の上限規制が建設業界へ適用されることで、施工管理の効率化はますます重要性を増すでしょう。
加えて、コロナ禍を経た非対面・リモート管理のニーズも高まり、SaaS型の施工管理サービスがさらに普及する可能性があります。
また、公共事業への取り組みやインフラ老朽化対策など、社会的課題への貢献が企業評価に反映される時代になりつつあります。
スパイダープラスは積極的な研究開発と導入支援を通じて、建設現場のDX推進におけるリーダー的存在として認知を拡大することを目指しています。
こうした成長ポテンシャルを活かすうえで、どのように差別化を図り、競合他社としのぎを削っていくのかが今後のポイントです。
サブスクリプション収入を安定させながらマーケットシェアを広げる戦略が実行できれば、中長期的にさらに大きな飛躍が見込まれます。
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