新鮮な握りで魅了する銚子丸のビジネスモデルとIR資料から読み解く成長戦略で注目したいポイント

小売業

企業概要と最近の業績

株式会社銚子丸

2025年5月期の連結業績は、売上高が25,741百万円となり、前の期に比べて12.3%の増収となりました。

本業の儲けを示す営業利益は1,073百万円となり、前の期の42百万円の損失から黒字に転換しました。

経常利益は1,105百万円で前期比364.1%の大幅な増益、親会社株主に帰属する当期純利益も611百万円で前期比326.8%の増益を達成しています。

既存店の売上高が好調に推移したことに加え、全社的な価格改定の効果が現れました。

旬の食材を活かした高付加価値商品の販売強化や、お得なセットメニューの提供といった販売促進策も功を奏しました。

原材料費やエネルギーコストの上昇という厳しい環境下でも、徹底したコスト管理を進めたことが大幅な利益改善につながりました。

当期中には新たに「すし銚子丸 千葉ニュータウン店」をオープンし、事業の拡大を図っています。

【参考文献】https://www.choushimaru.co.jp/ir/

ビジネスモデルの9要素

価値提案

銚子丸の価値提案は、店舗で直接魚を捌き、握りたての寿司を提供する鮮度の高さと、劇場型の接客によるエンターテインメント性にあります。

多くの外食チェーンではセントラルキッチンを活用しますが、銚子丸は各店舗ごとに新鮮な魚を仕入れ、板前が目の前で握るスタイルを徹底しているため、顧客は“ここでしか味わえない”体験を得やすくなっています。

食事の時間を単なる食欲の充足ではなく、“見る・楽しむ”演出にまで高めている点が強みです。

一方、店舗での調理にこだわることで食材管理やスタッフ育成に手間がかかり、コストも増大します。

しかし、このスタイルが独自のブランド力を支え、リピーターの獲得や口コミによる新規顧客の誘引につながるため、長期的に見れば強固な競争優位を築く要素となっています。

【理由】
飽和気味の寿司チェーン市場において差別化が不可欠と判断し、“鮮度の追求”と“劇場型の演出”を掛け合わせる経営方針が明確にされているからです。

主要活動

銚子丸の主要活動は、まず市場や専門業者などから鮮魚を仕入れる調達面、そして各店舗で魚を捌いて寿司を握る調理面、それを支える店舗運営全般と接客サービスが挙げられます。

調理スタッフとホールスタッフが連携し、目の前で注文を受けた後に即時で寿司を握る動線を構築することで、鮮度とライブ感をアピールできます。

また劇場型の演出を重視しているため、スタッフの教育やマニュアル作成も主要活動の一部として重要度が高いといえます。

【理由】
セントラルキッチン方式では提供できない“ライブ感”や“職人技”を強みにした結果、各店舗ごとのオペレーション構築とスタッフ教育が不可欠になっているためです。

リソース

リソースとしては、まず顧客を惹きつける板前や接客スタッフといった人材が挙げられます。

彼らが持つ技術やサービススキルが、銚子丸の差別化ポイントを支える軸となっています。

また、店舗ごとの調理設備やカウンターなどの空間演出、魚の種類・仕入れルートを確保するためのネットワークとノウハウも貴重なリソースです。

【理由】
なぜこれらがリソースとなったのかというと、“鮮度”と“劇場体験”の両面を実現するには、高度な技術を持つ人材と、それを活かす現場環境が必須だからです。

さらに、店舗運営にまつわるノウハウや教育システムも重要で、継続的に高品質なサービスを維持するための仕組み作りが大きな強みとなっています。

パートナー

銚子丸の場合、安定した高品質の鮮魚を供給してくれる漁港や市場、卸業者とのパートナーシップが欠かせません。

季節や天候によって仕入れ状況が変化しやすい生鮮食品を安定的に確保するには、長年の取引実績や信頼関係が重要です。

また、店舗設備やシステムを提供するサプライヤーとの協力関係も大切です。

【理由】
なぜパートナーシップが必要になるかというと、直接調理にこだわる分、鮮魚の品質が店舗の評判を左右するからです。

安定仕入れとコスト管理のバランスを実現するためには、単発の取引ではなく継続的な協力関係が求められています。

チャンネル

銚子丸は主に直営店の店舗販売を中心としています。

公式ウェブサイトやSNSなどを通じて情報発信も行なっていますが、基本的には来店顧客への対面サービスがメインです。

【理由】
なぜこのチャンネルを選んでいるかというと、劇場型をコンセプトとしたライブ感や接客サービスを重視し、直接店舗に訪れてもらうことで体験そのものを提供するビジネスモデルだからです。

近年はテイクアウトやデリバリー需要も高まっていますが、やはり店舗体験こそが差別化の核という認識があるため、リアルの接点を最大限に活用しています。

顧客との関係

顧客との関係づくりでは、店舗での接客を通じて直接コミュニケーションを図る一方、会員制度やポイントカードなどでリピーターを増やしています。

スタッフが“劇団員”として顧客とのやり取りを演出し、店内でのエンターテインメント性を高めることで店舗ファンを育てる仕組みを重視しているのが特徴です。

【理由】
なぜこの形を取るのかは、回転寿司市場が価格競争だけではなく“楽しさ”や“特別感”を求める顧客が増えているという背景があります。

来店してもらうことでこそ得られる体験価値を高め、他社との差異を明確に打ち出そうとしているのです。

顧客セグメント

銚子丸の顧客セグメントは、鮮度の高い寿司を楽しみたいファミリー層やグループ客、さらにはちょっと贅沢感を求める大人層まで幅広くカバーしています。

劇場型の演出は小さな子ども連れにも楽しい体験をもたらしますし、“すし銚子丸 雅”のような高級感のある業態は大人向けのニーズにも対応可能です。

【理由】
なぜこのセグメントを狙うかというと、回転寿司市場が低価格路線で飽和する中、幅広い世代に受け入れられるエンタメ要素と鮮度へのこだわりでブランド価値を高めることで、単価アップやリピート率向上を狙っているためです。

収益の流れ

収益の中心は、当然ながら店舗での寿司販売から得られる売上となります。

追加でサイドメニューやアルコール飲料などを提供し、客単価を高める工夫も行っています。

一部テイクアウトもあるものの、やはり店舗での接客を通じたフルサービスが最大の収益源です。

【理由】
なぜこの流れになっているかというと、外食産業の中でも“来店体験”そのものが大きな付加価値となっており、価格だけに依存しない収益構造を目指しているからです。

コスト構造

一方でコスト構造は、鮮度重視の仕入れコストと店舗運営における人件費が大きなウエイトを占めます。

セントラルキッチンを持たない分、人材の育成や管理コスト、さらには食品ロス対策にも気を配る必要があります。

【理由】
なぜこうした構造になるかといえば、“劇場型”のサービスを実現するには現場での調理スタッフと接客スタッフを多く配置しなければならないためです。

加えて、魚の仕入れ価格や品質をキープするには仕入れルートの確保と交渉が欠かせず、市況や季節要因の影響も受けやすいという特徴があります。

自己強化ループ

銚子丸の自己強化ループは、新鮮な魚をその場で捌き、劇場のような接客を楽しめる特別な体験が顧客満足度を高め、それが口コミやSNS、さらにリピーター増加へとつながる流れにあります。

鮮度とエンターテインメント性で他店との差別化を図ることで、家族連れや大人のグループ客などさまざまな層の来店頻度が上がります。

そして売上増加による安定した資金が、人材育成や店舗改装、新業態開発に再投資されることで、より質の高いサービスを提供できるようになるのです。

実際に既存ブランドの認知度やリピート利用が増えれば、広告宣伝コストの効率化も進み、さらなる利益改善が期待できます。

この好循環を維持するために、コスト管理や採用力の強化が求められるのが銚子丸の特徴といえます。

採用情報

初任給は月給262,713円から266,833円までの水準となっており、外食業界としては比較的高めの給与設定が行われています。

平均休日や採用倍率などは公表されておりませんが、店舗数の拡大やサービス品質を高めるためにも人材確保が重要なテーマであることは明らかです。

各店舗での調理や接客に力を入れる同社にとって、スタッフが“劇団員”として活躍できる働きやすい環境づくりが、今後の課題であり強化ポイントでもあると考えられます。

株式情報

銘柄コードは3075で、東証スタンダード市場に上場しています。

予想配当利回りは1.05%とされ、2025年1月29日時点の株価は1,530円です。

増収減益の状況ではあるものの、配当を重視する投資家や外食産業の回復を見越す投資家にとっては、今後の経営方針と施策が株価動向を左右するポイントになりそうです。

未来展望と注目ポイント

銚子丸の未来展望としては、コスト高騰への対策と新たな成長戦略の両面でどのような施策を打ち出すかがカギを握ります。

具体的には、人材育成をさらに強化し、現場でのスキルを高める一方で、オペレーションの効率化やロス削減策を進めることで利益率の向上を図ることが考えられます。

また、テイクアウトやデリバリーなどのサービス拡充によって、新しい顧客層を掘り起こすチャンスも期待できます。

さらに、高級路線を強調する「すし銚子丸 雅」のような業態を増やし、客単価アップとブランド力強化を両立させる戦略も注目されるところです。

外食産業全体が価格競争から付加価値の提供へシフトしつつある中、銚子丸の“劇場型”という強みをどのように深掘りし、収益につなげるかが今後の評価を左右するポイントとなるでしょう。

店舗でのライブ感は大きな武器ですが、同時に原材料や人件費などのコストに直面するリスクもあるため、それを逆手に取りながら永続的にブランドを伸ばしていけるかが注目されます。

コメント

タイトルとURLをコピーしました