企業概要と最近の業績
日本ガイシ株式会社
セラミックス技術を核とした、世界的な工業製品メーカーです。
事業の柱は、自動車の排ガスを浄化する触媒担体やフィルターといった「エンバイロメント事業」、半導体製造装置向けの精密部品などを手掛ける「デジタルソサエティ事業」、そして電力の安定供給に貢献する「がいし」や大容量蓄電池「NAS電池」などを扱う「エネルギー&インダストリー事業」の3つです。
独自のセラミック技術で、環境・デジタル・エネルギーの各分野で社会に貢献しています。
2025年7月31日に発表された2026年3月期第1四半期の連結決算(IFRS)によりますと、売上収益は1,502億円で、前年の同じ時期に比べて7.5%増加しました。
営業利益は153億円で、前年の同じ時期から14.8%の増加となりました。
親会社の所有者に帰属する四半期利益は102億円で、前年の同じ時期に比べて17.2%増加し、増収増益を達成しています。
世界的な自動車生産の回復を背景に、主力の排ガス浄化用セラミックスの販売が堅調に推移したことが業績を牽引しました。
【参考文献】https://www.ngk.co.jp/
価値提案
日本ガイシは、高度なセラミック技術を活用し、環境負荷を低減する製品を開発しています。
電力・自動車・エレクトロニクスなど多岐にわたる産業を支えることで社会に貢献し、長寿命で高信頼性の製品を提供することで、顧客のメンテナンス負担を低減しています。
これらの特長を打ち出す背景には、環境規制が厳しさを増していることが挙げられます。
自動車排ガスに対する規制強化や電力インフラ更新などの需要に対応するには、長い研究開発の蓄積が必要です。
日本ガイシはセラミックス技術をコアにしながら、電力関連の長寿命化や排ガス浄化性能の向上といった価値を明確に示すことで、多くの顧客から評価を得ています。
こうした取り組みが社会全体の環境負荷削減につながることが、同社の価値提案をさらに強固にしています。
主要活動
研究開発を重視し、技術革新を継続し、高品質の生産体制を整備し、長期的に安定供給し、販売後のアフターサービスを充実させ、信頼を獲得することが主要な活動です。
これらの活動は、製品ライフサイクルを通じて顧客との関係を深める大きな要素となっています。
セラミック部品は高温や衝撃に強い一方で、製造工程が複雑になることも多いです。
そのため研究開発と生産の双方で独自のノウハウを積み上げ、競合他社が真似しにくい付加価値を生み出しています。
さらに顧客の現場で発生する課題を解決するためのアフターサービスを提供し、長期的な信頼関係を形成している点も主要活動の一つです。
こうしたきめ細かな対応力こそが同社の高い競争優位性を支えています。
リソース
日本ガイシのリソースは、セラミックに関する高度な研究開発力、多彩な製品ラインナップを支える生産設備と熟練スタッフ、そして国内外に広がる販売ネットワークです。
独自の製造装置を開発・保有することで難易度の高い製品加工が可能になり、他社の参入障壁を高めています。
また国内だけでなく世界各地に展開する販売チャネルを整え、需要のある地域へタイムリーに製品を届けられる点も強みです。
熟練した技術者が品質向上と新製品開発に貢献し、そのノウハウが新たな製品分野への応用を可能にしています。
パートナー
同社のパートナーは、自動車メーカー、電力会社、大学や研究機関などです。
これらのパートナー関係が生まれたのは、セラミックス技術の専門性が高く、顧客企業も製品開発で日本ガイシの技術を活かしたいというニーズがあるためです。
自動車メーカーと協力することで排ガス浄化や電動化向けの新素材開発が進められ、電力会社との提携により安定供給を実現するインフラを構築してきました。
さらに大学や研究機関との連携で新素材の基礎研究を進め、新たな市場を切り開く可能性を拡大しています。
チャンネル
同社のチャンネル戦略は、直接営業による大口顧客との関係構築、代理店を介した幅広い市場カバー、オンラインプラットフォームを活用した情報発信の組み合わせです。
電力会社や自動車メーカーなど大手企業とは直接やり取りを行い、技術仕様やコスト・納期の調整を丁寧に進める必要があります。
一方で中小規模の顧客や海外市場へのアプローチでは代理店を活用し、販路を拡大しています。
近年はオンライン上で製品情報やIR資料を発信することで、投資家やビジネスパートナーとの接点も増やしており、多面的なチャンネルを活かして事業を拡大している状況です。
顧客との関係
このような顧客関係が築かれるのは、同社の製品がインフラや環境対応など、長期スパンで使用される領域に特化しているためです。
がいしや排ガス浄化装置は一度導入すると長期にわたり利用されるため、導入後のメンテナンスや性能アップデートが欠かせません。
そこで日本ガイシは単なる製品供給にとどまらず、顧客が抱える問題を一緒に解決する姿勢を貫き、強固な信頼を得ています。
こうした姿勢が他社との差別化につながり、リピート受注や共同研究の継続へとつながっています。
顧客セグメント
同社の顧客セグメントは、自動車業界向けの排ガス浄化装置やセンサー、電力業界向けの高電圧がいしや蓄電システム、エレクトロニクス分野で高精度部材を必要とするメーカーです。
これらの顧客セグメントは、いずれも高品質や高耐久性が重要視される点で共通しています。
特に自動車業界では排ガス規制の厳格化やEV化の進展によって、多様な素材や技術が求められるようになりました。
電力業界では老朽化した送電設備の更新や再生可能エネルギーの普及が課題となり、信頼できる絶縁部品や蓄電システムが必要です。
エレクトロニクス分野では小型化と高性能化が加速する中、セラミックス素材の応用範囲が拡大しています。
こうしたニーズに応えられる幅の広さが、日本ガイシの強さを支えています。
収益の流れ
同社の収益は、各種製品の販売による売上、メンテナンスやサービス契約による安定収益、そして保有特許や技術ライセンスなどからの収益で成り立っています。
これらの収益が生まれる背景として、同社の製品が長期的に使われるインフラや自動車部品であることが挙げられます。
製品導入後のメンテナンスや追加サービスにより、単発の取引に終わらないビジネスモデルを構築しているのが特徴です。
また研究開発で培った特許やノウハウを他社にライセンスする事例もあり、自社だけではカバーしきれない市場に対しても技術提供を行うことで収益を拡大しています。
こうした多面的な収益源が会社の安定成長を支えているのです。
コスト構造
コストが高めになりがちな要因として、セラミックス技術においては製造工程の特殊性と研究開発の継続的な必要性が挙げられます。
新たな材料や加工手法を追求するには多額の投資が欠かせず、品質面でも厳しい基準を満たすためには高度な検査体制が必要です。
また世界中の顧客に対応するため、各地域での販売やサービス体制を整えることもコスト要因となります。
しかしこうした投資によって生まれる高品質や技術力が日本ガイシの差別化につながり、長期的には高い利益率を確保できる基盤になっています。
自己強化ループ
日本ガイシでは技術革新と市場拡大が互いを高め合う自己強化ループが働いています。
高度なセラミック技術は新製品の開発を加速させる原動力となり、新たな製品が市場で受け入れられることで売上が増加し、さらに研究開発に資金を投入できるという好循環が生まれています。
とくに自動車排ガス浄化用セラミックスやNAS電池など、社会的なニーズが高い製品で実績を上げることでブランド力が高まり、顧客との信頼関係が強化される点も重要です。
環境規制の強化やインフラ需要の拡大は同社のビジネス領域に追い風となり、それがまた研究開発投資を後押しします。
こうして大きく育った技術力やノウハウが次のイノベーションを生み、さらに市場シェアを伸ばすというループが持続的な成長の原動力となっています。
採用情報
日本ガイシの初任給は大学卒で月給225900円、大学院卒で月給245900円です。
年間休日は125日あり、完全週休2日制のためプライベートとの両立もしやすい環境とされています。
平均勤続年数は約16年ほどで、腰を据えて長く働きたい方にも安心感があります。
採用倍率は公表されていませんが、セラミックス技術への興味や研究開発志向を持つ学生に人気が高く、競争率は決して低くありません。
技術者だけでなく、グローバルに事業を展開するための営業や企画部門でも幅広い人材を求めています。
株式情報
銘柄コードは5333で、投資家からも根強い注目を集めています。
年間配当金は60円が予定されており、安定配当を重視する投資家にも魅力的です。
2025年2月7日時点での株価は1899円となっており、業績の成長とともに今後の動向が期待されます。
環境対応製品を扱う企業としてESG投資の観点からも評価されており、長期保有を検討する投資家も少なくありません。
未来展望と注目ポイント
日本ガイシの今後の展望としては、まず電動車や再生可能エネルギーの普及による新たな需要拡大が予想されます。
電気自動車における高効率バッテリーや次世代エネルギーシステムでは、セラミック素材が不可欠な存在になる可能性があります。
さらに世界的な排ガス規制の強化やインフラ再構築の流れは、同社の強みを生かせるチャンスとして期待されています。
研究開発投資を続けることで新素材や新製品が生まれ、それが再び市場を拡大し会社の収益基盤を安定させるという好循環を生み出すでしょう。
グローバル展開や生産拠点の最適化、そして環境規制をにらんださらなる成長戦略を打ち出すことで、新たな市場ニーズに対応していく姿勢が見られます。
こうした取り組みが同社の長期的な競争力を維持するとともに、多くのステークホルダーにとって魅力的な企業像を描き続けるはずです。
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