最新IR資料から読み解く東海ソフトのビジネスモデルと成長戦略

情報・通信業

企業概要と最近の業績

東海ソフト株式会社

2025年5月期の通期業績についてご報告します。

当期の売上高は109億8,300万円となり、前の期と比較して9.3%の増加となりました。

営業利益は12億1,900万円で、前の期から8.0%の増加です。

経常利益は12億4,800万円と、前の期に比べて7.8%増えています。

当期純利益は8億7,400万円で、前の期から8.4%の増加となり、増収増益を達成しました。

この好調な業績は、主力の組込関連ソフトウェア開発事業において、自動車の車載システムやFA(ファクトリーオートメーション)関連の受注が堅調に推移したことによるものです。

また、業務関連ソフトウェア開発事業でも、製造業や金融・公共向けのシステム構築が安定的に拡大しました。

各分野で企業のIT投資意欲が底堅く、継続的な受注が全体の業績を押し上げました。

【参考文献】https://www.tokai-soft.co.jp/

価値提案

東海ソフトは、各業界の多彩なニーズに合わせた高品質なソフトウェア開発サービスを提供することで、顧客が抱える課題を最適に解決する価値を打ち出しています。

自動車分野では車載制御システムや通信関連のソフトウェア、製造業界では生産管理や物流管理のシステムなど、高度な専門性が求められる分野をカバーしています。

公共領域においては社会インフラを支えるシステム開発を手がけ、社会に貢献する企業姿勢を鮮明に示しています。

これらの領域はいずれも安定性が高く、かつ成長性も見込まれるため、東海ソフトが培ってきた開発実績とノウハウが大きく生きる領域といえます。

顧客企業の要望を丁寧にくみ取り、運用面のサポートまで継続して行うことで、信頼性と技術力を評価され、リピート受注や新規顧客獲得につなげています。

【理由】

顧客企業のIT部門だけでは解決できない専門的な技術ニーズが増大し、外部の高い技術力を持つパートナーへの期待が高まっているためです。

東海ソフトはこのニーズを的確に捉え、質の高いソリューションを提供し続けることで独自の価値を確立してきました。

主要活動

東海ソフトの主要活動は、ソフトウェアの要件定義から設計・開発・テスト・導入までの一連プロセスを包括的にカバーすることです。

自動車分野では安全要件やリアルタイム制御など高度な開発が求められる車載システムを得意とし、製造・物流領域では工場の自動化や効率化につながる生産管理システム、IoTとの連携を行うソフトウェアなどを提供しています。

公共領域においては社会インフラを支える基幹システムの開発に取り組み、行政サービスのデジタル化やセキュリティ強化といった幅広いニーズに応えています。

こうしたプロジェクトを通じて、長年にわたり幅広い業界に知見を蓄積し、新技術導入や複雑な要件にも柔軟に対応できる体制を築いていることが同社の強みです。

【理由】

多様な業界からの要望に迅速かつ的確に応えることで、売上や利益を安定的に伸ばす手法が確立されました。

特定分野に偏らず多角的に事業を展開することで、経営リスクを分散させる狙いもあり、結果として幅広い開発能力が養われています。

リソース

東海ソフトのリソースとして最も重要なのは、高度な技術力と豊富な経験を持つエンジニア層です。

車載制御やIoT、AI、クラウドなど先端領域に関する知見を社内で共有し、品質と納期の両面で顧客の期待に応える仕組みを確立しています。

さらに長年のプロジェクト経験から得られたノウハウをマニュアル化や研修制度に落とし込むことで、組織全体のスキル向上を図っている点も大きな特徴です。

その他にも、大手メーカーや公共機関との長期的な取引実績が豊富であるため、顧客ニーズを先取りしながら安定的な開発案件を確保できる点も強力なリソースといえます。

【理由】

新しい技術への投資と人材育成を積極的に行うことで、競合他社との差別化を図りつつ、あらゆるニーズに応えられる体制を保っています。

先端技術に対応するエンジニアを育て続けることが、結果的に東海ソフトの強固な開発基盤を生み出しています。

パートナー

東海ソフトは大手自動車メーカーや製造業、公共機関を含むさまざまなパートナー企業と緊密に協業することで、技術開発力と市場競争力を向上させてきました。

例えば自動車業界のプロジェクトでは、最新の安全基準やコネクティッド技術に対応する開発を共同で行い、製造業のパートナー企業とは生産管理システムやIoT領域で新しいソリューションを生み出しています。

公共機関との関係では社会インフラを担う重要な案件を数多く手がけ、幅広い市民生活を支えるプロジェクトに貢献しています。

こうした多方面のパートナーシップを通じて、東海ソフト自身も大規模な開発案件の経験を積み重ね、より高度な技術力と信頼を獲得しています。

【理由】

先端領域のプロジェクトに参画するためには、既に大きな実績を持つ企業との連携が必要不可欠です。

互いの強みを組み合わせることで付加価値の高いサービスを提供し、市場シェアを拡大していく戦略をとってきました。

チャンネル

東海ソフトは直接営業とパートナー企業を活用した受注チャネルの両面を持っています。

直接営業では顧客とのコミュニケーションを密にすることで、システム開発における細かな要望や課題を的確に把握し、最適な提案につなげることが可能です。

一方、パートナー企業経由では、大手メーカーや公共機関の元請け案件に参画するケースが多く、短期間で大規模なプロジェクトに関わるチャンスを得られます。

展示会や技術セミナーへの参加などを通して新規顧客とも接点をつくり、受注拡大のための網を広く張っている点も特徴です。

こうした複数のチャネルを多角的に活用することで、企業規模の大小や業界を問わず安定的な受注を確保しています。

【理由】

特定のチャネルに依存しすぎると、景気や業界動向の変化で受注が不安定になるリスクが高まります。

チャネルを複線化・多様化することで受注源を安定させ、持続的な成長を目指す方針が取られました。

顧客との関係

東海ソフトは単発の開発案件にとどまらず、顧客企業と長期的なパートナーシップを築くことを重視しています。

開発フェーズだけでなく、運用や保守フェーズも一貫してサポートする姿勢が評価され、継続的な改修や追加機能の提案につながるケースも少なくありません。

さらに顧客満足度を高めるために、定期的な打ち合わせやフィードバックを通じて改良ポイントを洗い出し、常に最適なシステム運用を実現しています。

このように顧客との緊密なコミュニケーションを続けることで、新規開発案件や顧客紹介を得やすくなる好循環を作り出しています。

【理由】

ソフトウェア開発は導入後の運用が重要であり、継続的な保守・アップデートが必要になるためです。

長期的なサポート体制を整えた企業を選ぶ顧客が増え、それに応え続けることで東海ソフトの顧客基盤が安定していきました。

顧客セグメント

自動車、製造、物流、公共といった幅広いセグメントを対象に事業を展開しているのが東海ソフトの特徴です。

自動車関連ではコネクテッドカーやEV、自動運転などの先進技術を扱うケースが増えており、製造や物流では生産管理や在庫管理、サプライチェーン全体の効率化が求められています。

公共分野では行政サービスや社会インフラを扱うことが多く、安全性や継続的な運用が特に重要視されています。

複数の産業にまたがってソフトウェア開発を行うことで、それぞれの業界で得た技術やノウハウを横断的に生かし、新規案件の提案や課題解決につなげる体制を整えていることが強みです。

【理由】

特定業界だけに注力すると景気や業界動向の影響を大きく受けてしまいますが、複数セグメントに対応することでリスク分散が可能となります。

また、多様な領域での実績が新たな顧客獲得の信頼材料となり、ポジティブな循環を生み出します。

収益の流れ

東海ソフトの収益は、システム開発の受託収益が主力を占めています。

案件の規模や期間、技術要件に応じて契約が組まれ、要件定義から導入までのプロジェクトごとに費用が発生するモデルが一般的です。

開発後の保守契約や機能追加などのフォローアップを行うことで、ストック型の収益も得られる仕組みを構築しています。

公共分野の案件は長期契約となる場合が多く、安定収益源として大きな役割を果たしています。

近年ではクラウドやサブスクリプション型サービスの需要が高まり、東海ソフトも自社サービスやソリューションを提供することで、ライセンス収入や月額課金による新たな収益源を育て始めています。

【理由】

IT市場の変化に伴い、受託開発だけでなくサブスクリプションモデルが広まりつつあります。

東海ソフトは自社技術を生かした独自サービスの開発・展開を視野に入れ、収益源を多様化する戦略を取ることで、さらなる成長余地を確保しています。

コスト構造

東海ソフトのコスト構造は、人件費が大きな割合を占めることが大きな特徴です。

優秀なエンジニアやプロジェクトマネージャーを確保・育成するための給与や研修費用が企業経営の鍵を握り、適切な人材配置とリソース管理が要求されます。

また、ソフトウェアライセンスやハードウェアなど開発に必要な設備投資もプロジェクト規模に応じて増減し、先端技術への取り組みや研究開発を進める場合にはリスクを伴う先行投資が必要となります。

こうしたコストを効果的にコントロールするためには、プロジェクトの管理能力や原価計算の精密さが重要になり、東海ソフトは長年の開発経験を通じてこの能力を培ってきました。

【理由】

ソフトウェア開発は人材の専門性に依存する面が大きいため、人件費を中心としたコスト構造が形成されました。

最新技術への投資を続けることで高付加価値の案件獲得を目指し、その分のコスト回収をプロジェクトを通じて行う仕組みが確立されています。

自己強化ループ

東海ソフトが長期的に成長を続ける上では、事業を通じて得られるノウハウと社員スキルの向上が常に好循環を生む自己強化ループを形成しています。

複数の業界での開発経験を積むことで、エンジニアの技術力が向上し、新たな分野の案件やより高度な要件への対応力が高まります。

高度な案件をこなした実績が評価されると、次のプロジェクト獲得につながり、また社内での情報共有や研修を通じて学んだ知識が組織全体に波及するため、開発体制や提案力も強化されていきます。

この好循環によって外部からも「幅広い課題に対応できる開発パートナー」として認識されやすくなり、さらなる案件を呼び込むことが可能です。

結果として売上高や利益が拡大し、再投資が進むことで次の成長の種が育つというループが確立されるのです。

採用情報

東海ソフトは年間120日以上の休日を確保する完全週休二日制を導入し、ワークライフバランスを重視する姿勢を打ち出しています。

初任給や採用倍率などの詳細は公表されていませんが、多様な技術分野を扱っていることから、高い専門性を身につけたいエンジニアにとっては魅力的な選択肢となるでしょう。

研修制度や資格取得支援など、社員がスキルアップしやすい環境づくりにも力を入れており、技術者としてのキャリアを長期的に築きたい方々にとっては大きなチャンスが広がっています。

株式情報

東海ソフトの銘柄コードは4430です。

2024年5月期の配当金は1株あたり47円で、安定した業績を背景に一定の株主還元を行っています。

2025年1月15日時点での株価は1,457円となっており、ソフトウェア開発企業としての成長性や安定性が投資家から評価されています。

今後の事業拡大や新技術への積極的な取り組みにより、企業価値がどのように変化していくのかにも注目が集まるでしょう。

未来展望と注目ポイント

東海ソフトは、自動車産業でのコネクテッドカーや自動運転、製造業での工場自動化やAI活用、公共領域でのデジタル化推進など、成長性が高い分野での受注機会を多数抱えています。

受託開発の安定収益基盤を維持しながら、自社製品やクラウド型サービスを含む新規ビジネスモデルへの挑戦が今後の成長戦略のカギとなるでしょう。

サブスクリプションモデルやAI技術の導入による付加価値の創出も、さらなる収益拡大につながる可能性があります。

人材育成を強化し、国内外の市場拡大を視野に入れつつ、既存顧客と新規顧客の両面で案件を拡大していくことで、さらなる飛躍が期待されます。

こうした展開を後押しするためにもIR資料などを継続的に確認しながら、東海ソフトが描く次のステージに注目していきたいところです。

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