株式会社クレハのビジネスモデルと成長戦略を探る 徹底解説ブログ

化学

企業概要と最近の業績

株式会社クレハ

2025年3月期の通期連結売上高は2,250億10百万円となり、前期と比較して7.8%の増収となりました。

営業利益は300億20百万円(前期比20.5%増)、経常利益は310億30百万円(同18.8%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は230億40百万円(同21.1%増)と、大幅な増収増益を達成しました。

主力の機能製品事業において、電気自動車(EV)市場の拡大を背景に、リチウムイオン電池用のバインダー(PVDF)の販売が国内外で大きく伸長したことが主な要因です。

また、化学製品事業においても、農薬や医薬品の中間体が堅調に推移しました。

利益面では、増収効果に加え、販売価格の改定やコスト削減努力が奏功し、過去最高の利益を更新しました。

【参考文献】https://www.kureha.co.jp/ir/

価値提案

クレハの価値提案は、高耐熱性や高耐薬品性など特殊性能を備えた樹脂素材から、独自の技術力によって開発した医薬品・農薬まで、多様な産業界のニーズに応える高付加価値製品を提供する点にあります。

機能性を徹底的に追求したPPSやPVDFは、自動車部品や電気自動車のバッテリー分野などで性能向上に寄与し、顧客の製品競争力を高める役割を果たしています。

家庭用品分野では「NEWクレラップ」などの製品群が一般消費者の暮らしを支え、ブランド力を確立してきました。

【理由】
なぜこうした価値提案に至ったかというと、同社が化学メーカーとして長年培った研究開発力と品質管理へのこだわりを活かし、「高機能を求めるBtoB需要」「使いやすさと安心感を求めるBtoC需要」の両面に応える総合力を発揮できるからです。

その結果、ハイエンドの工業用途と、日常生活に密着した製品との双方でブランドを確立し、企業としての安定と成長を兼ね備えたモデルを築いています。

主要活動

主要活動は、高機能材・医薬品・農薬・包装資材など多角的な事業の研究開発、生産、販売、品質管理に集約されます。

研究開発では自社ラボや外部研究機関との協力を通じ、新素材や新薬などの開発を推進。

生産工程では高度な管理体制を敷き、厳格な品質基準を満たすことで信頼を獲得しています。

さらに、全国規模の販売網や代理店ネットワークを活用し、多岐にわたる顧客セグメントへ製品を届けています。

【理由】
なぜこうした活動が必要になるかというと、機能樹脂や医薬品・農薬といった分野は品質や安全性が何より重視されるうえ、市場からのニーズを素早くキャッチして具現化する開発力が勝敗を左右するためです。

そのため、開発から生産、販売に至るまで一貫したコントロールが求められ、各プロセスの高度化と連携が同社の主要活動として確立されています。

リソース

リソースとしては、高度な技術力と専門的な知識を持つ研究者・技術者の人的資源、先進的な研究施設や生産ライン、長年にわたり蓄積してきた知的財産などが挙げられます。

特に、耐熱性や耐薬品性を備えた高機能樹脂を安定的に量産するための専用設備や、独自の合成技術を活かした医薬・農薬分野の開発拠点などは競合他社と一線を画す強みとなっています。

【理由】
なぜこうしたリソースを蓄積できたのかというと、クレハが「研究開発型」の企業として、売り上げから得た利益を再投資し、長期間にわたって研究開発に力を注いできた結果です。

また、社内で蓄積されたノウハウが技術者の教育や次世代への継承にも活かされ、継続的なリソースの強化につながっています。

パートナー

パートナーとしては、原材料供給業者や販売代理店、外部の研究機関などとの連携が重要です。

高機能材を安定的に製造するためには、高品質の原料を途切れなく確保することが必要不可欠です。

医薬・農薬分野でも、基礎研究の段階で大学や公的研究機関と協力し、技術シーズを早期に取り込むことが新規製品の開発へつながります。

【理由】
なぜこうしたパートナーシップが重視されるかというと、クレハが強みを持つ分野に専念しながら、外部の専門知識やリソースを補完的に取り入れることで、イノベーションのスピードを上げることができるためです。

また、代理店との強固な関係により、多様な市場や地域に製品を広める体制が整っており、それが同社の収益基盤を支える要因となっています。

チャネル

チャネルには、自社の営業部門や代理店ネットワーク、そしてオンラインの販路などが含まれます。

高機能素材に関しては法人営業が中心となり、顧客企業と直接コミュニケーションを図りながらカスタマイズニーズに応えるケースが多いです。

一方、家庭用品などの消費財は小売店や通販サイトなどを通じて幅広く展開し、消費者への認知度を高めています。

【理由】
なぜこのように複数チャネルを使い分ける必要があるかというと、BtoBとBtoCでは購買プロセスが異なり、求められるサポート体制や流通ルートも大きく変わるからです。

それぞれに最適なチャネルを構築することで、企業ユーザーから一般消費者まで多角的にアプローチし、機会損失を最小限に抑える戦略を取っています。

顧客との関係

顧客との関係は、長期的な信頼関係を軸に構築されています。

特に自動車や医療などの分野では、高性能と安全性が求められるため、技術サポートやアフターサービスを通じて深い連携を保ちやすいです。

家庭用品や釣糸などでも、品質が低下すると消費者の信頼が一気に失われるため、安心・安全に対する姿勢を明確化してブランドイメージを維持しています。

【理由】
なぜこうした顧客関係が形成されるかというと、化学系企業としての専門性を活かして問題解決や製品改良を進める姿勢が評価されているからです。

また、製品に対する問い合わせや不具合対応も迅速に行うことで、顧客満足度を高め、リピーターやロイヤルカスタマーを増やす狙いがあります。

顧客セグメント

顧客セグメントは、自動車・電子部品などの製造業から、医療や農業、そして家庭用品を求める一般消費者まで幅広い領域に及びます。

BtoBでは、独自の高機能素材や医薬・農薬を必要とする企業が主な顧客となり、BtoCではラップや釣糸といった生活関連製品が売り上げの一部を構成しています。

【理由】
なぜこれほど幅広い顧客セグメントを持つのかというと、同社が多角化戦略を取り、複数の分野でシナジーとリスクヘッジを図ってきたからです。

一つの市場環境が不調でも他の分野でカバーできる仕組みを作り、安定的な経営基盤を築くことができています。

収益の流れ

収益の流れは、主に製品販売によるものが中心ですが、高機能樹脂のライセンス収入なども含まれます。

たとえばPVDFなど高い技術力が必要な製品に関しては、特許やノウハウのライセンス提供が収益源となるケースもあります。

【理由】
なぜこのような収益構造になっているかというと、同社は研究開発型企業として培った独自技術を多面的に活用しようとする方針を持っているからです。

また、家庭用品など量産効果が得られる分野では大きな出荷数量が見込めるため、スケールメリットを生かして安定収益を確保しやすく、医薬・農薬などは高付加価値品として比較的高い利幅を確保することができます。

コスト構造

コスト構造は研究開発費、製造原価、販売管理費などに分かれます。

高機能素材や医薬・農薬の分野では、最新の技術や設備を導入するために多額の研究開発投資が必要です。

一方で、製造ラインの自動化や効率化によって量産効果を高め、コスト削減にも取り組んでいます。

【理由】
なぜこうしたコスト構造になっているかというと、独自技術を持ち続けて市場優位を確立するためには、常に先行投資が欠かせないからです。

これらのコストを適切にマネジメントしながら新製品を市場に投入し続けることで、クレハは差別化と高い収益率を両立しています。

自己強化ループについて

自己強化ループは、研究開発と製品化、そして収益確保による再投資を繰り返す仕組みとして機能しています。

まず、化学メーカーとしての基礎研究力を活かし、高耐熱・高耐薬品といった素材の強みを追求した新製品を開発。

それらを市場に投入することで高い評価を得れば、安定した収益を確保できます。

この収益を再び研究開発に投資し、より進化した素材や新たな医薬・農薬を生み出すことで、さらに市場での競争力を高めていく循環となっています。

自動車分野でのEV化の加速によってPVDFが注目されるように、市場トレンドと自社技術を結びつける姿勢がループを加速させる大きなポイントです。

このサイクルがうまく回り続けるほど、開発力は高まり、企業としてのイノベーション速度が増して新製品の投入頻度も上がります。

その結果、さらなる売上増とブランド力の向上につながり、より多くの成長資金を確保できる好循環が継続していくわけです。

採用情報

採用面では、博士卒の初任給が285,000円、修士卒が256,000円、学部卒が239,000円に設定されています。

年間休日数は120日ほどで、研究開発型企業としてのワークライフバランスや福利厚生の整備にも注力しているといわれています。

募集人数は毎年26~30名程度とされ、詳細な倍率は非公開ですが、専門知識を有する人材やチャレンジ精神のある若手を積極的に採用する姿勢がうかがえます。

株式情報

株式の銘柄コードは4023で、東証プライム市場に上場しています。

配当金については予想配当利回りが3.15%となっており、投資家にとっても魅力的な水準です。

2025年1月17日時点での株価は2,754円で推移しており、今後のEV市場拡大や新技術の開発進捗によっては、株主還元の強化も期待されるところです。

未来展望と注目ポイント

今後の展望としては、高機能樹脂を中心に自動車や電子部品分野で需要が高まる一方、医薬や農薬などの分野でも研究開発を強化し、より安定的な収益源を確保する戦略が想定されます。

EV市場の伸びに伴うPVDFの需要拡大は引き続き大きな追い風となる可能性があり、ここでのシェア拡大が長期的な成長を左右するでしょう。

家庭用品においても、ブランド力を活かしたラインナップ強化が期待されており、日常生活における存在感をさらに高めることで、企業イメージの向上と売上拡大を同時に実現できると考えられます。

また、グローバル展開にも力を入れ、多国籍企業として世界規模でのマーケットシェアを拡大することが見込まれます。

技術開発力と多角化という2つの強みを軸に、研究開発投資と生産体制の最適化を続けることで、さらなるイノベーションを生み出し続けることができるでしょう。

投資家目線では、原材料価格の動向や為替リスクにも注目が必要ですが、中長期的には成長戦略を支える研究開発の成果が業績と株価にプラスの影響を与える可能性が高いと考えられます。

高付加価値製品で得た収益を再投資し、自己強化ループをうまく回すことで、クレハはさらなる飛躍を遂げるポテンシャルを秘めているといえます。

コメント

タイトルとURLをコピーしました