企業概要と最近の業績
株式会社スターツ出版
女性向けのメディア・コンテンツ事業を展開する出版社です。
主な事業は、東京近郊のおでかけ情報などを提供する雑誌「OZmagazine（オズマガジン）」の発行や、レストラン・ホテルの予約もできるWebサイト「OZmall（オズモール）」の運営です。
また、小説投稿サイト「野いちご」から生まれた恋愛小説などの書籍化も手掛け、数多くのヒット作を生み出しています。
2025年8月13日に発表された2025年12月期第2四半期の連結決算によりますと、売上高は30億5,000万円で、前年の同じ時期に比べて7.8%増加しました。
営業利益は4億円で、前年の同じ時期から11.5%の増加となりました。
経常利益は4億1,200万円、親会社株主に帰属する四半期純利益は2.8億円となり、増収増益を達成しています。
主力のメディア事業において、人流の回復を背景にWebサイト「OZmall」経由でのレストランやホテルの予約が好調に推移したことが業績を牽引しました。
【参考文献】https://starts-pub.jp/
価値提案
小説投稿サイトを通じた多様なジャンルの作品提供
新人作家や読者がともに成長できるコミュニティの構築
電子と紙の両面で作品を届ける流通の仕組み
【理由】
株式会社スターツ出版は、単に本を出版するだけでなく、作家と読者が近い距離で交流できる環境をつくりたいという狙いがあります。
読み手が求めるテーマは時代によって変化していきますが、自社運営の投稿サイトを持つことで、その変化をリアルタイムでキャッチしやすくなります。
加えて、投稿サイトで人気の高い作品を紙や電子書籍に展開する流れを整えることで、読者の要望や好みを反映した商品開発が可能となりました。
これは出版不況と呼ばれる業界の流れに対して、新たな価値を提供するための重要な戦略でもあります。
実際にネット上で話題となった作品をスピーディーに書籍化すれば、読者はデジタルで読んだ気に入った物語を手元に置きたいと感じるケースが増え、さらなる購買意欲につながります。
また作家側も、オンラインで作品を投稿するだけでなく、商業出版という形で多くの人に読まれるチャンスを得られるため、投稿意欲が高まるという好循環が生まれます。
こうした仕組みこそが同社の価値提案であり、投稿サイトと商業出版が組み合わさることで、新たなコンテンツの創出と読者の期待に応える商品づくりを同時に行える点が大きな強みになっています。
主要活動
コンテンツ企画と編集
小説投稿サイトの開発・運営
新人作家や人気作家の育成
【理由】
出版業界では、魅力的な作品を生み出し読者に届けるためには、コンテンツ企画と編集作業が欠かせません。
株式会社スターツ出版では、企画段階から読者の声を拾う仕組みを整えており、投稿サイトでどのジャンルが今注目を集めているのか、どの作家が読者に支持されているのかを分析し、その情報を新しい企画に落とし込みます。
このように、投稿サイトやSNSでの反応を把握しつつ、編集者が作品のブラッシュアップを行うことで、高い完成度の書籍を生み出しやすくなっています。
さらに、開発チームや運営スタッフが投稿サイトを快適に利用できるよう改善を続けることで、ユーザーが投稿しやすく、読者が読みやすい環境を保ち続けることを重要視しています。
新人作家の育成も主要活動の一つであり、デビュー前から編集者が作品の方向性やキャラクター設定などを話し合いながら成長を手助けする仕組みがあります。
こうした活動を積み重ねることで、紙の本だけでなく、コミック・文庫・電子書籍など多方面への展開を可能にし、それぞれの読者ニーズに応えられるようになるのです。
このような強みを築いてきた結果、投稿サイトからの新しい才能の発掘と既存読者層の拡大が両立し、さらに売り上げの安定にもつながっています。
リソース
経験豊富な編集者と企画担当
投稿サイトやマーケティングを支えるエンジニア
スターツグループのネットワーク
【理由】
出版事業は作品そのもののクオリティが大切ですが、それを生み出す編集部門の存在も非常に重要です。
株式会社スターツ出版では、多くの書籍を扱う中で培われた編集ノウハウや、新人作家をうまく育てる指導スキルをもつスタッフが豊富です。
また、デジタル化が進む中で投稿サイトを運営するためのエンジニアリング能力も欠かせません。
単にサイトを作るだけでなく、ユーザー体験を向上させるための機能追加や、解析ツールの導入、セキュリティ対策など、継続的にエンジニアが支援することで、サイトそのものが大きな資産になっています。
スターツグループに属しているため、不動産や旅行業などで培われた知見や資本力を活用できるのも大きなリソースです。
グループ内で連携することで、出版以外の事業とも共同キャンペーンが可能になったり、販売チャネルの拡大に貢献してもらえたりします。
こうしたリソースは単独の出版社では得られにくい部分で、グループシナジーによるマーケティングやブランディングが、同社の事業を強力に後押ししているのです。
結果的に、編集者やエンジニアが作家や読者と密接にやり取りすることで、より魅力的な作品を生み出し、それを効果的に広める仕組みが整い、会社の成長にも直結しています。
パートナー
印刷や流通を担う企業との協力
書店やオンライン書店との連携
スターツグループ内の他社との共同プロジェクト
【理由】
出版物を全国の読者に届けるには、印刷・製本を担う会社や物流企業との連携が必要です。
株式会社スターツ出版では、信頼できる協力企業と長期的なパートナーシップを築くことで、高品質な書籍を安定して生産し、読者の手元まで届けられる流通体制を確立しています。
さらに、オンライン書店とも連携を深めることで、幅広い顧客に効率的にアプローチすることが可能です。
書店やネットショップでの新刊フェアや電子書籍のセールなども、パートナーとの連携があるからこそ展開しやすくなります。
また、スターツグループ傘下という強みを活かし、不動産や旅行など他業種とのコラボレーションが検討できる点も大きな特徴です。
たとえば、観光ガイドや地域情報とエンタメコンテンツを組み合わせるなど、新しい商品展開を実施しやすい環境が整っています。
こうしたパートナーと協力することで、出版業界の変化に素早く対応できる柔軟性も手にしています。
これにより、書店販促イベントのサポートから、メディアミックス展開まで多彩な試みに挑戦でき、市場の動向や読者の嗜好に合わせた戦略を立てることが容易になっています。
チャンネル
書店やネット書店の店頭・オンライン販売
自社投稿サイトと電子書籍プラットフォーム
SNSやイベントによる販促・情報発信
【理由】
出版物を読者に手に取ってもらうためには、多様な販売チャンネルを整備する必要があります。
株式会社スターツ出版は、従来の書店販売に加えて、ネット書店での予約販売やランキング掲載に力を注ぐことで、多様な購買スタイルに対応しています。
特に電子書籍市場が年々成長している中で、Kindleやその他電子書籍ストアとの連携は不可欠です。
自社の投稿サイトがあることで、作品のプロモーションをサイト内で行うだけでなく、投稿者や読者がSNSで宣伝してくれる効果も期待できます。
これは口コミを生みやすく、新しい読者の獲得にもつながります。
また、書店でのフェアやイベントを積極的に開催し、作家と読者が直接コミュニケーションをとれる機会を設けることも大切にしています。
こうした複数のチャンネルを上手に使い分けることで、一度ヒットした作品を長く売り続けられるだけでなく、まだ無名の作家にもスポットライトを当てやすくなるというメリットがあります。
この戦略は紙とデジタルを行き来する読者の習慣にマッチしており、出版社として成長を続ける基盤にもなっています。
顧客との関係
投稿サイトでのユーザーコミュニティ運営
SNSやサイン会などを活用したファンとの交流
アンケートやレビューを通じたフィードバックの活用
【理由】
同社が運営する小説投稿サイトでは、多数のユーザーが作品を投稿し合い、感想や意見を交わす場所が形成されています。
これは単なるコンテンツの提供だけでなく、ユーザー同士がつながりを感じられるコミュニティとして機能しているのです。
読者は作品を読むだけでなく、コメントやレビューを通じて作家を応援したり、改善点を提案したりと、双方向のやりとりが日常的に行われます。
作家側も、直接ファンの声を聞くことで執筆のモチベーションを高められ、より魅力的なストーリーを生み出しやすくなります。
また、SNSやサイン会といったリアルイベントを通じて直接的な交流を深める機会を作ることで、ファンの熱量を維持・増幅させる取り組みが可能です。
出版社としても、アンケートや投稿サイトのデータから得られる読者の反応を作品企画に反映し、新しい人気ジャンルやテーマを素早く把握できます。
こうした読者との緊密な関係づくりが、ロイヤルティの向上や継続的な売り上げにつながり、結果的に会社全体の成長を後押ししているのです。
顧客セグメント
幅広い年齢層だが、特に若年層に強い支持
ファンタジーや恋愛小説などライトな読み物を好む層
執筆経験の浅い作家志望者や読者参加型のサービスを好む層
【理由】
出版社として幅広いジャンルを扱ってはいても、特に若い世代の読者が多いのは、スマートフォンやタブレットなどで気軽に作品を楽しめる環境を提供しているためです。
投稿サイトの利用者は若年層が多く、無料でいろいろな作品に触れられる仕組みが人気の要因になっています。
さらに、コミックやライトノベル、恋愛小説など、比較的とっつきやすいジャンルを多く用意していることで、初心者でも読みやすいラインナップになっています。
作家志望のユーザーにとっては、自身の作品を多くの人に読んでもらえることや、人気が出れば書籍化される可能性がある点が魅力です。
こうした層をターゲットにすることで、新しい才能がどんどん投稿サイトに集まり、人気作が生まれやすい循環ができています。
一方で、社会人や主婦層などもライトに読める作品を求めており、通勤・通学のすき間時間や家事の合間にスマホで読書を楽しむケースが増えています。
そうした幅広い層の読者を取り込むことで、市場ニーズに合わせたラインナップを展開し、多くのユーザーに支持されているといえます。
収益の流れ
紙書籍や電子書籍の販売収益
投稿サイトやWebメディアでの広告収入
メディアミックス展開によるライセンス収入
【理由】
出版社にとって主な収入源は、やはり書籍の販売から得られるものです。
株式会社スターツ出版は紙と電子の両方を扱うことで、多様な読者のニーズに応える体制を整えています。
紙書籍を好む層からの安定した売り上げと、電子書籍市場の成長を同時に取り込むことが、経営の安定化につながっています。
また、投稿サイトやWebメディアでのページビューが増えるほど広告収入が期待できる点も大きなポイントです。
さらに、人気作品がアニメ化やドラマ化されれば、ライセンス収入や関連グッズの売り上げといった新たなビジネスチャンスが広がります。
投稿サイトで生まれた作品を他メディアへ展開する際、スターツグループの各社や外部パートナーとの協業がしやすいことも後押し要因です。
映像化やグッズ展開により、ファン層がさらに拡大し、結果的に紙や電子書籍の売り上げも伸びることが期待できます。
こうして、書籍の直販だけでなく、広告やライセンスなど複数の柱を育てることで、出版市場の変化に柔軟に対応しながら収益源を増やし、事業基盤を強化しているのです。
コスト構造
コンテンツ制作費と編集人件費
システム運営費やエンジニアの人件費
マーケティングやプロモーションにかかる費用
【理由】
出版社における最大のコストの一つは、良質なコンテンツを生み出すための制作費です。
作家やイラストレーターへの原稿料やデザイン費、編集スタッフの人件費などが発生します。
紙の書籍を制作する場合は、印刷・製本費用もかかるため、在庫リスクを含めたマネジメントが必要となります。
株式会社スターツ出版では、投稿サイトを運営するためのシステム開発と保守運用の費用も重要です。
エンジニアを配置し、サイトの安定稼働や新機能の追加を行うための投資を継続しています。
さらに、作家や作品を世の中に認知してもらうためには広告やキャンペーン費用が欠かせません。
SNS広告や書店でのフェア開催、イベント企画など、多角的なアプローチが必要となるため、それらのプロモーションコストも無視できない部分です。
ただ、投稿サイトで人気が高まった作品を出版するという流れを整えていることで、マーケティングコストを効率的に使えるメリットもあります。
最終的には投資とリターンのバランスをとりながら、継続的に良質な作品を提供し、読者の期待に応え続ける体制を維持しているのが同社の特徴といえます。
自己強化ループのポイント
株式会社スターツ出版が強みとしているのは、投稿サイトと出版事業を組み合わせた自己強化ループです。
まず、投稿サイトには多くのユーザーがアクセスし、新作を投稿し合います。
この中で人気が出た作品にスポットを当てて書籍化することで、新人作家にとっては出版の夢が叶いやすくなり、さらなる投稿意欲をかき立てます。
読者にとっては、オンライン上で話題になっている作品が紙や電子で手軽に購入できるため、気に入った物語を長く楽しむことができます。
そうした作品がヒットすれば、口コミやSNSで一気に拡散され、サイトへの新規ユーザー流入や追加投稿作品の増加が期待できます。
出版社側は、投稿サイトの動向を把握しながら的確に書籍化やグッズ展開を行うことで、リスクを抑えつつ収益を伸ばすことができます。
結果的に、作家、読者、出版社すべてにとってメリットのある循環が生まれます。
この好循環が回り続ける限り、同社のプラットフォームは活性化し、出版市場の変化や競合の参入にも強い耐性を持てるようになるのです。
さらに、グループのリソースを活用することで、他業種とのコラボやメディアミックスの展開など、新たな可能性を探りやすくなるのも大きな利点といえます。
結果として、この自己強化ループが同社の成長をしっかりと支えているのです。
採用情報
同社では、企画営業職やコミック編集者、Webディレクターなどを募集していますが、初任給や平均休日、採用倍率などの詳細は公表されていません。
従業員数は225名で、平均年齢は34.5歳、男女比は男性3に対して女性7という数字が示されています。
活気ある若手が多く、編集やエンジニアなど専門的スキルを生かしながら、投稿サイトと出版を組み合わせた新しい事業モデルに挑戦できる職場といえそうです。
株式情報
同社は証券コード7849として上場していますが、配当金や1株当たり株価などの具体的な情報は公開されていません。
スターツグループの傘下企業としての強みもあり、今後の業績や成長戦略次第では投資家からの注目度が高まる可能性があります。
出版不況を打ち破る独自のビジネスモデルを確立しつつある点に魅力を感じる方も多いでしょう。
未来展望と注目ポイント
今後は電子書籍市場の成長にともない、オンラインプラットフォームを活用したさらなる顧客獲得が期待できます。
また、投稿サイトで人気が高まった作品を、映像化やドラマ化など別のメディアに展開していくことで、新たなファン層を取り込むチャンスも増えていくでしょう。
スターツグループ全体のシナジーを生かして、地域活性や観光事業とのコラボレーションなど、出版以外のフィールドへも拡大する可能性があります。
さらに、ユーザー参加型のコミュニティが大きく盛り上がれば、読者と作家の間に厚い信頼関係が生まれ、ファンがクリエイターを育てるという図式が強まることで、長期的に安定した作品供給と売り上げが見込めます。
デジタル技術が進化していくにつれ、AIの活用による推薦システムや、VR・AR技術を用いた新しい読書体験など、これまでになかったサービスの可能性も広がるかもしれません。
紙の本と電子の両方を扱うからこそ、幅広い消費者ニーズに対応できる柔軟性があり、投稿サイトを活用した新人発掘ルートも手厚いのが同社の特色です。
こうした強みを生かしながら、時代の変化に対応した経営を進めていけば、さらなる事業拡大が見込まれるでしょう。
デジタル化による出版業界の変化を、同社のビジネスモデルがどのようにリードしていくのか、今後の動向に注目が集まります。
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