企業概要と最近の業績
株式会社ダイサンは、全国に29拠点のサービスセンターを構え、足場の製造から施工まで一貫して行う企業です。住宅の新築やリフォームなど、多くの建設現場で必要とされる足場を支えています。2024年4月期の売上高は104億700万円となり、前年同期比で約1パーセント減少しました。営業利益は5600万円、経常利益は3700万円、当期純利益は6000万円を計上しています。大手住宅メーカーとの取引実績が豊富なため、一定の安定性が感じられる一方で、足場の需要は住宅着工件数に左右されやすく、業績が大きく伸び悩む場面もあります。それでも自社製品の品質が高いことや、大手顧客との継続的なパートナーシップによって、安定した受注が見込める環境を整えている点は強みといえます。こうした背景を踏まえながら、同社がどのようなビジネスモデルを持ち、どのような成長戦略を描いているのかを見ていきます。
ビジネスモデルの9つの要素
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価値提案
安全で高品質な足場を提供することが、株式会社ダイサンの最大の価値提案です。建設現場では足場の安定性と安全性が重要視されますが、自社製造を行うことで品質を管理しやすく、作業員が安心して使える足場を提供できます。なぜそうなったのかというと、住宅メーカーや工事現場から「安全性を担保するために高品質な足場が必要だ」という要望が強く、そこで自社内に生産体制を築くことでクオリティを保ち、他社との差別化を図ろうとした経緯があります。安全へのこだわりは顧客満足度を高めるだけでなく、今後のリピート受注にもつながっています。 -
主要活動
主要活動は足場の設計、製造、施工、そして製品の販売です。設計段階では、多様な建築現場に合わせた足場設計を行います。製造段階では自社工場で足場パーツを作り、全国にあるサービスセンターで保管・管理を行います。施工では経験豊富なスタッフが現場に入り、足場を設置します。なぜそうなったのかというと、足場は現場ごとに条件が違うため、企画から現場対応まで一括して管理できる体制が望まれたからです。さらに、足場資材の販売も行うことで収益源を複数持ち、大手住宅メーカーからも「あらゆる場面で頼りにできる」と認識されるようになっています。 -
リソース
リソースとしては、自社の製造工場と全国29拠点のサービスセンター、そしてノウハウを持った技術スタッフが挙げられます。拠点が全国に分散していることで、工事現場への対応をスピーディーに行いやすいのが強みです。また、製造から施工まで自社で完結できるため、品質のチェック体制も整っており、安定したクオリティを提供できます。なぜそうなったのかというと、住宅業界は地域差が大きく、建設現場ごとに異なる条件に合わせたサポートが求められるためです。全国規模で展開することで、どの地域でも同じ品質のサービスを提供できるようになっています。 -
パートナー
最大のパートナーは、大手住宅メーカーやリフォーム業者です。これらのパートナーと長期的な取引関係を築くことで、定期的な受注の安定化と共に、一緒に開発や改良を進めることも可能になります。なぜそうなったのかというと、足場の需要は住宅着工やリフォーム件数と直結しており、そこで数多くの物件を抱える大手企業との取引を強化することで、リスクを分散しながら利益を確保できるからです。お互いにメリットをもたらす関係を構築することが、ビジネスを拡大するうえで重要なポイントとなっています。 -
チャンネル
チャンネルとしては、直接営業や公式ウェブサイトを活用しています。とくに大手住宅メーカーとの取引が多いため、営業担当が現場レベルでコミュニケーションを取りながら案件を獲得するケースが主流です。公式ウェブサイトでは施工事例などを公開しており、足場の安全性と品質を訴求しています。なぜそうなったのかというと、足場は安価なだけでなく、どのように安全を担保しているかが重要視されるためです。実際の現場写真や具体的な実績を示すことによって、購買や契約へのハードルを下げられるという理由から、このようなチャンネルが確立されました。 -
顧客との関係
同社では長期的な取引関係を重視しています。足場は一度契約すると、リフォームや追加工事など、繰り返し同じ企業に依頼されることも多い分野です。なぜそうなったのかというと、足場の設置には安全面での信頼関係が非常に大切であり、現場での小さな不具合が大きな事故につながるリスクもあるためです。そのため、顧客との信頼関係をコツコツと築くことで、追加発注や新規物件の案件を安定的に確保しやすくなります。顧客からの要望を丁寧にヒアリングし、品質改善に活かす姿勢が長期関係を生み出しています。 -
顧客セグメント
主に住宅建設業者やリフォーム業者が顧客セグメントです。戸建住宅だけでなく、集合住宅やビルなど幅広いニーズに対応しています。なぜそうなったのかというと、全国展開しているため、小規模な工務店から大規模な建築会社まで対応可能な体制を整える必要があったからです。住宅業界は景気動向に敏感なため、リフォーム事業などにも対応できるようにすることで、需要の変動を分散しています。こうした幅広いセグメントを取り込むことが、安定した売上につながる鍵です。 -
収益の流れ
収益の流れは足場の施工サービスによる収入と、自社製造製品の販売収入の二本柱です。足場の施工サービスでは、設置から撤去までの一連の作業費用を得ます。自社開発の足場製品は品質が高いため、価格競争に巻き込まれにくい特徴があります。なぜそうなったのかというと、足場メーカーとして認知度が上がるにつれ「製造元による施工のほうが安心できる」という需要が大きくなり、サービス全体で利益をあげられるようになったからです。この複数の収益源を確立しておくことで、市場の変動に対しても一定の耐性を持てるようになりました。 -
コスト構造
製造コスト、人件費、物流費などが主なコスト構造になっています。足場材の製造には原材料費や工場の維持費、人件費がかかり、施工サービスではスタッフの人件費が大きな割合を占めます。なぜそうなったのかというと、安全性を重視するためにはしっかりした材料と熟練のスタッフが必要となり、それだけコストもかかるためです。その代わり、高品質と安全性を売りにできる分、他社よりも一定の価格帯を維持できるメリットが生まれます。このようにコスト面と品質面のバランスをとることで、長期的に顧客との信頼関係を築いていると考えられます。
自己強化ループ
株式会社ダイサンには、大手住宅メーカーとの強固なパートナーシップを活かした自己強化ループが存在しています。まず、大手企業から安定して受注を獲得することで売上が伸びると、自社製造や施工サービスに投資を行いやすくなります。その結果、足場の品質が向上し、現場作業の効率も高まります。すると、顧客は「これなら安全に工事ができる」と信頼を深めるので、リピート受注が増えたり、新たな顧客からの評判を得たりしやすくなるのです。こうした好循環が回ることにより、会社の成長がさらに加速し、競合他社との差別化につながります。このループを維持するために同社は、安全性の確保と品質の向上に常に力を入れていると考えられます。
採用情報と株式情報
採用情報については初任給や平均休日、採用倍率などの詳細は公開されていません。ただし、全国拠点を有する企業のため、現場スタッフや営業担当などさまざまな職種があると推測されます。株式情報としては、銘柄はダイサンで証券コードは4750です。2024年4月期の配当金は1株あたり22円となっており、2024年12月23日時点での株価は527円でした。配当利回りは比較的高めな印象ですが、足場需要に左右される特性もあるため、今後の動向には注意が必要です。
未来展望と注目ポイント
今後は住宅の新築需要が伸び悩む一方で、リフォーム関連の需要が高まる可能性があります。株式会社ダイサンにとっては、リフォーム市場での安定的な足場需要を取り込むことで、新たな収益機会を得られると期待できます。さらに、省エネ住宅や耐震工事への関心が高まる中、足場の安全性と品質はより一層求められるでしょう。同社が全国拠点と自社製造の強みを活かし、どの地域の工事にも迅速に対応できる体制を整備できれば、市場シェアを拡大していくチャンスがあると考えられます。また、足場のデジタル管理やAI技術の活用による安全管理の効率化など、業界全体が新たな方向へ進む兆しがあります。同社がこれらの変化に素早く対応できれば、さらなる成長戦略を実現し、次なるビジネス展開を築く可能性があるでしょう。今後の動向を引き続き注目していきたいところです。
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