企業概要と最近の業績
株式会社テイ・エス テック
当社は、自動車やバイクのシート(座席)を主力製品とする、総合自動車内装部品メーカーです。
世界トップクラスのシェアを誇る四輪車用シートをはじめ、ドアトリムやルーフライニングといった内装品、さらにはバイク用シートや樹脂部品などを開発・製造しています。
主な取引先は本田技研工業株式会社で、日本、米州、中国、アジア、欧州など、世界各地に生産・開発拠点を持ち、グローバルに事業を展開しています。
2026年3月期の第1四半期(2025年4月1日~6月30日)の連結業績は、売上収益が1,304億円(前年同期比4.5%増)、営業利益が111億円(同46.7%増)となりました。
税引前四半期利益は136億円(同23.3%増)、親会社の所有者に帰属する四半期利益は90億円(同21.2%増)となり、増収および大幅な増益を達成しています。
決算短信によりますと、主要な顧客である自動車メーカーの生産台数が回復したことに加え、為替レートが円安に推移したことが増収に貢献しました。
利益面では、増収効果に加え、生産性の改善や経費の抑制に努めた結果、大幅な増益に繋がったと報告されています。
価値提案
テイ・エス テックの価値提案は、高い安全性と快適性を両立した自動車用シートや内装部品を生み出すことにあります
車に乗る時間をより快適にするため、長時間のドライブでも疲れにくい構造や、衝突時にケガを最小限に抑える設計にこだわっています
これらの機能や品質を維持するためには高精度な製造技術が欠かせません
また、多様化する自動車市場では、電動化や自動運転に対応した新たなシート技術が求められています
同社はこうしたニーズに合わせて軽量素材や先進機能を取り入れることで、車の燃費改善や安全性能向上にも貢献しています
【理由】
なぜそうなったのかというと、競合他社との差別化を図りながら、車の使用者が快適さを求め続ける限り「座り心地と安全性を兼ね備えたシート」は常に必要とされるからです
シートは車内で最も人と接するパーツともいえるため、ここでの満足度が自動車メーカーの評価に直結します
そのため同社は技術開発を怠らず、常に新たな価値を提案し続ける必要があるのです
主要活動
主要活動としては、製品開発や設計、生産、品質管理、そして販売が挙げられます
まず企画段階で市場や顧客の声をヒアリングし、次世代シートや内装パーツを設計します
試作段階では衝突安全テストや耐久性テストなどを行い、基準をクリアした部品のみを量産へ回します
高品質な製品を安定的に提供するため、製造ラインには高度な自動化設備や検査システムを導入しており、人的ミスの削減や生産スピードの向上を同時に図っています
【理由】
なぜそうなったのかというと、自動車メーカーが求める安全基準や品質要求は年々厳しくなっている上、電動化や自動運転に対応するための新たな部品要件も追加されているからです
こうした環境変化に適応するためには、先行開発と量産体制の強化が欠かせず、各工程での質の高い取り組みが最終的に顧客満足につながります
そのため同社は長年積み上げてきたノウハウを生かしつつ、新しい製造技術や検査機器を積極的に導入し、主要活動を絶えず進化させています
リソース
同社のリソースには、最新鋭の生産設備や研究開発施設、そして熟練した人材が含まれます
自動車シートの開発は、素材選定から部品設計、試験まで多岐にわたるため、各分野の専門家が協力し合う体制を整えています
さらに、グローバルに拠点を持つことで、各国の多様なニーズや法規制に即応できる点も大きな強みといえます
【理由】
なぜそうなったのかというと、自動車部品は海外で製造して現地で供給することが多く、現地の文化や言語、労働環境を理解しないと品質やコスト競争力で不利になりやすいからです
そのため多国籍のエンジニアや生産管理スタッフを育成し、世界各地で同水準の品質を確保する体制を築きました
また、長年にわたるホンダとの取引実績により培われたノウハウや信頼関係も、同社の貴重なリソースといえます
パートナー
主なパートナーは、自動車メーカーや部品サプライヤー、研究機関などです
自動車メーカーとは、シートや内装部品を共同で開発したり、新車種に合わせたカスタム部品を提案したりといった協力関係を築いています
また、部品サプライヤーとも密接に連携し、品質基準を共有しながら効率的なサプライチェーンを構築しています
【理由】
なぜそうなったのかというと、自動車シートは多くの部品や素材を組み合わせて作られ、その一つひとつが安全性や快適性に直結するからです
ミスや納期遅れがあれば、自動車メーカー全体の生産計画に大きく影響を与えてしまうため、パートナーとの密な情報共有が不可欠となっています
また、大学や研究所などの研究機関との連携では、人間工学や新素材の研究を共同で進めることが増えており、これによって新しい技術やシート構造の開発が加速しています
チャンネル
チャンネルとしては、主に自動車メーカー向けのOEM供給や、完成車の製造ラインへの直接納入が中心です
開発段階からメーカーと協議し、最終的にはメーカーの工場にシートや内装部品を納入していきます
【理由】
なぜそうなったのかというと、大半の一般消費者は「誰がシートを作っているか」を気にすることは少なく、完成車メーカーにとっての信頼できるサプライヤーであることが重要だからです
自社ブランドで直接販売を行うケースは限られていますが、それでもレジャービークルや医療用チェアなどでは販社や代理店とのネットワークを活用し、製品を必要とする顧客に適切なタイミングで提供しています
このようなチャンネル設計により、安定した需要と収益を確保できるようになっています
顧客との関係
顧客との関係は、長期的なパートナーシップと技術協力が基本です
自動車メーカーは新型車を開発する際、数年先までのスケジュールで設計を進めるため、サプライヤー側にも長期間の開発協力が求められます
【理由】
なぜそうなったのかというと、安全や快適性に関わる部品は短期間での切り替えが難しく、一度採用されたら同じ部品を継続して発注することが多いからです
そこで同社は完成車メーカーの要求を的確に捉え、定期的な情報交換やアフターサービスを通じて信頼関係を深めています
納入後も不具合や改良点があれば素早く対応し、さらなる品質向上に努めることで、顧客満足度を高める仕組みが出来上がっています
顧客セグメント
顧客セグメントは主に四輪車メーカーが中心ですが、二輪車用のシートや医療機器メーカー向けの製品も手掛けています
四輪車用シートが全体売上の大部分を占めるため、ホンダをはじめとした大手自動車メーカーの動向に大きく影響を受ける構造となっています
【理由】
なぜそうなったのかというと、同社の長い歴史の中で培われた技術と安定供給体制が、まずは四輪車メーカーとの信頼関係に大きく活かされてきたからです
最近では二輪車市場や、レジャービークルや医療用チェア分野にも展開を広げ、リスク分散と新たな成長領域の確保を図っています
こうした多角化は、自動車業界全体の変動に対しても安定した収益を得るための重要な戦略となっています
収益の流れ
収益の流れは、基本的には製品販売によるものが中心です
完成車メーカーとの間で取り交わされる部品単価や供給数量によって売上が確定し、その納入を継続していくことで安定した収益が見込めます
【理由】
なぜそうなったのかというと、シートや内装部品は車1台あたりの必要量が一定であり、車種ごとの生産台数に連動して受注が発生しやすい構造だからです
また、アフターサービスや補修用部品の販売も一定の収益源となります
近年は電動化や自動運転技術が進むことで、より高付加価値なシートが求められ、その分販売価格も上乗せできる余地が広がっています
新しい技術や特許が評価されれば、ライセンス収入なども期待できるため、収益機会は拡大傾向にあります
コスト構造
コスト構造は、原材料費や人件費、研究開発費が大きなウエイトを占めています
特にシートの場合は金属フレームやウレタン素材などを使用し、それらの価格変動がコストに直接影響します
【理由】
なぜそうなったのかというと、グローバル規模で原材料価格や為替相場が変動する中、安定的な素材調達が難しくなるケースがあるからです
また、研究開発費も重要なコスト要因です
電動化や先進運転支援システムに対応したシートを開発するには、新素材の試作や安全試験など多額の投資が必要です
しかし、この研究開発投資が将来の競争力を左右するため、同社は継続的にR&Dに注力し、長期的な利益を狙う戦略を取っています
自己強化ループ フィードバックループ
テイ・エス テックが成長を続ける背景には、いくつもの自己強化ループが存在します
高品質なシートを提供することで、メーカーからの信頼が高まり、継続的な受注や新車種のシート設計にも参画しやすくなります
さらに、その実績によって同社の技術力やブランド力が高まるため、若いエンジニアや優秀な研究者が集まりやすくなり、その結果として製品のさらなる品質向上につながります
この好循環によって生産性が上がり、収益が伸びれば新たな研究開発への投資が可能となるため、より先進的なシート技術の開発が進むのです
こうして「優れた製品を作る→信頼が高まる→人材と資金が集まる→さらに良い製品が作れる」という流れが途切れることなく回り続けることで、同社は持続的な成長を実現しています
採用情報
同社の採用情報では、初任給や年間休日、採用倍率など具体的な数値は公表されていません
ただし、大手自動車メーカーとの取引が多いため、安定した事業基盤とグローバルに活躍できるフィールドが整っていることは大きな魅力といえます
特に技術系では、新素材の開発や量産技術の最適化など、先端的なプロジェクトに関わるチャンスが多いです
事務系では、海外拠点との調整やコスト管理など、経営に近い領域でスキルを磨くことが可能です
自動車産業が変革期にある中で、新しい視点や熱意を持った人材が求められていると考えられます
株式情報
銘柄はテイ・エス テックで、証券コードは7313です
配当金については、DOEという株主資本配当率を3.5%以上維持することを目標にしており、安定した配当を続ける方針を打ち出しています
2025年2月14日時点の株価は1,747.5円となっており、自動車業界の将来性や電動化の進展などを背景に、今後の動向が注目されます
株主還元にも積極的な姿勢を見せているため、中長期的に保有しても魅力があると考える投資家が多いようです
未来展望と注目ポイント
自動車業界が大きく変化する中、テイ・エス テックは安全性と快適性を軸に多様な製品開発を進めています
特に電動化の時代には、車両の重量や電池の配置の影響で、シートの軽量化や新しい設計思想が求められます
こうしたニーズに対応できる技術力を持っている点は、同社の大きな強みといえます
また、自動運転が普及すれば、車内の使い方そのものが変わるため、シートも「乗員を守る」だけでなく「快適な移動空間を作る」存在に進化していく可能性があります
そうしたとき、どんな新しい機能やデザインを提案するのかが注目されます
さらに、医療用やレジャービークル向けなど、四輪車以外の領域でも実績を伸ばしつつあるため、新しい市場の開拓も進むでしょう
テイ・エス テックの成長戦略は、こうした業界の変革にどう対応し、いかに先手を打って新技術や新分野への展開を行うかにかかっています
今後も研究開発投資を続け、グローバルな市場でシェア拡大を狙う姿勢に注目したいところです
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