企業概要と最近の業績
株式会社ユニオンツール
プリント配線基板(PCB)用の超硬ドリルで世界トップクラスのシェアを誇る、精密工具メーカーです。
プリント配線基板は、スマートフォンやパソコンなどあらゆる電子機器に内蔵されている緑色の板で、同社はその基板に電子部品を取り付けるための微細な穴を開けるドリルを製造しています。
髪の毛よりも細い、ミクロン単位の精度が求められるドリルを安定して量産できる高い技術力が強みです。
その他、金型や工業製品の部品を削り出すための「エンドミル」という切削工具も事業の柱となっています。
2025年8月5日に発表された最新の決算によりますと、第2四半期累計(2025年1月〜6月)の売上高は132億3,400万円となり、前年の同じ時期と比較して3.0%減少しました。
主力のプリント配線基板用ドリルは、スマートフォン市場の一部に回復の動きが見られたものの、サーバーやパソコン向けの需要が低迷した影響で、売上が伸び悩みました。
もう一方の柱である超硬エンドミル事業も、自動車業界や部品加工業界の設備投資が慎重な動きとなったことから、売上が減少しました。
これらの影響を受け、営業利益は19億2,900万円で、前年の同じ時期と比べて16.2%の減少となっています。
価値提案
ユニオンツールの価値提案は、高精度と高耐久性を兼ね備えた切削工具や測定器を安定して供給する点にあります。
精密加工にはミクロン単位の精度が必要なため、製品のわずかな性能差が仕上がりに大きな影響を与えます。
同社は高い技術力と製造設備を生かし、長寿命で誤差の少ない工具を提供し続けることで顧客のコスト削減や品質向上に貢献しています。
【理由】
プリント基板や金属加工といった分野での信頼性が重視される需要が年々高まり、単なる低価格よりも「確かな加工品質」が競争力の源泉となったからです。
この流れに合わせて高付加価値製品を展開することで、継続的に利益を生み出す構造を確立しました。
主要活動
同社の主要活動は、切削工具や測定器の開発、製造、販売に加え、アフターサービスにも力を入れている点が特徴です。
高精度製品は使用過程でのメンテナンスや再研磨などのサポートが不可欠であり、顧客の要望を踏まえたカスタマイズや迅速な対応が信頼獲得につながっています。
【理由】
精密機器分野では製品販売後のフォローが非常に重要であり、加工時のトラブルシューティングや技術相談などの付加価値が企業の評価を左右するからです。
そのため、同社は製造から販売、サポートまで一貫して行うことで、高い顧客満足度を獲得しやすい仕組みを整えています。
リソース
ユニオンツールのリソースとして最も重要なのは、高度な研究開発力と最新の製造設備、そしてそれらを使いこなす熟練の人材です。
切削工具の寿命を左右する素材の選定やコーティング技術、測定器の精度を保証するための製造ラインなどは、長年の開発の積み重ねがなければ実現できません。
【理由】
同社が創業以来培ってきたノウハウや技術者のスキルが、既存顧客からの信頼を集めるとともに、新規顧客開拓の決め手になっているからです。
このような専門性を活かし、他社が模倣しにくい領域で強みを発揮することに成功しています。
パートナー
同社の主なパートナーは、原材料や部品の供給業者、販売代理店、そして大学や研究機関です。
材料供給を安定化させるために複数のサプライヤーと協力し、海外市場の販路拡大には現地代理店を活用してきました。
【理由】
高精度部品の安定確保やグローバルな販売網の構築が必須となる精密加工業界では、単独での完結が難しいからです。
また、研究機関との共同開発によって新素材や新技術をいち早く取り入れ、市場の変化に柔軟に対応できる点も大きな強みとなっています。
チャンネル
ユニオンツールでは、直接販売とオンラインショップ、展示会など多彩なチャンネルを通じて製品を提供しています。
BtoBが主体とはいえ、オンラインでの問い合わせやカタログ公開などを積極的に活用し、中小企業や海外企業にも製品情報を届けています。
【理由】
従来の対面営業だけでは拾いきれないニーズを取り込むために、デジタルを活用して商機を広げる必要があったからです。
展示会に出展して実際に製品を見てもらう一方で、オンラインで詳細なスペックを公開することで、顧客が検討しやすい仕組みを整えています。
顧客との関係
同社は専門スタッフによる技術サポートとアフターサービスを充実させ、長期的な関係づくりを重視しています。
切削工具や測定器の導入後、実際の加工現場で生じる課題に対して迅速に対応することで、顧客の稼働率や生産性を高める役割を担っています。
【理由】
単なる製品販売だけでなく、導入後にしっかり伴走する姿勢が顧客満足度を上げ、リピート注文や口コミによる新規開拓につながりやすいからです。
こうした姿勢が結果として同社のブランド価値を高め、市場での信頼性を確立する原動力となっています。
顧客セグメント
主な顧客は電子機器メーカーや金属加工業者ですが、近年は医療機器メーカーにも展開し始めています。
PCBドリルやルーターなどはスマートフォンや自動車の電子部品製造に欠かせないため、国内外の大手企業が需要を支えています。
【理由】
製造業界全体が自動化やデジタル化を進める中で、より高精度な工具を必要とするケースが増え、業界全体の裾野が広がってきたからです。
さらに生体センサ関連製品により医療分野への参入が進み、新しい顧客層の獲得も期待できます。
収益の流れ
収益の柱は切削工具や測定器などの製品販売ですが、メンテナンスや保守サービス、コーティングの再施工などのサポートビジネスでも一定の収益を得ています。
【理由】
高性能な工具ほど導入後のメンテナンスが不可欠であり、継続的に顧客と関わる仕組みがビジネスモデルの安定化につながるからです。
工具の再研磨やコーティングの更新は性能維持だけでなく顧客コストの削減にも役立つため、ユーザーとの長い関係構築に有効です。
コスト構造
コスト構造では、製品の研究開発費や製造ラインの設備投資が大きなウェイトを占めます。
精密加工に対応するための特殊な工作機械やクリーンルーム設備など、導入や維持には相当なコストがかかります。
【理由】
高い精度と耐久性を両立するには、独自の技術開発とそれを実現する先進的な設備が欠かせないからです。
また、技術者の育成コストや海外展開のためのマーケティング費用も増加傾向にあり、こうした投資を安定して行うことで長期的な競争力を維持しています。
自己強化ループ
ユニオンツールが安定成長している背景には、自己強化ループと呼ばれる循環構造があります。
まず、高品質な切削工具や測定器を提供することで顧客の生産性が向上し、リピート注文や紹介が増えます。
これにより売上が拡大すると、同社は研究開発や設備投資により多くの資金を割り当てることができ、さらに高性能な製品や新しい技術を生み出すことにつながります。
こうして生まれた製品は市場での評判を高め、より多くの顧客を引きつけるため、同社のブランド力が強化されます。
その結果、顧客からのフィードバックを再び開発に活かす好循環が生まれ、競合他社との差別化につながっています。
特に電子機器や医療機器など、品質と精度が優先される分野では、このループが長期的な優位性を支える原動力になっています。
採用情報
ユニオンツールは高度な技術力を支える人材を求めており、新卒初任給は院卒で258000円、学部卒で240000円、高専卒で204000円となっています。
年間休日はおよそ124日で、土日祝日に加えて長期休暇もしっかり取れる環境です。
採用倍率の具体的な数字は非公表ですが、精密加工に興味を持つ理系学生だけでなく、営業や企画などの職種でも専門性を活かせるチャンスがあり、幅広い人材を募集しています。
株式情報
同社の証券コードは6278で、機械セクターの一角を担っています。
投資家向けには安定した配当方針を示しており、直近期の配当金は1株あたり70円前後が見込まれています。
株価は一時的な景気変動や電子部品の需要動向に影響を受けることもありますが、高精度工具の世界的な需要が底堅いため、長期的には堅調に推移する可能性があると見られています。
株式投資を検討する場合はIR資料や決算短信などで最新の財務状況を把握しながら、需要トレンドや研究開発の方向性も注目すると良いでしょう。
未来展望と注目ポイント
今後の成長戦略としては、電子部品や金属加工市場だけでなく、医療分野やヘルスケア分野への展開がより大きな柱になる可能性があります。
超高齢化社会を迎える中で生体センサの需要は拡大が見込まれ、ユニオンツールが持つ精密加工技術は医療機器の小型化や高機能化にも応用しやすいと考えられます。
また、EVや自動運転などの自動車分野でもプリント基板の高精度加工が不可欠になるため、関連するドリルやルーターの需要は引き続き堅調に推移しそうです。
研究開発や設備投資への継続的な取り組みを通じて、他社にはない差別化を進めることが鍵となりそうです。
さらに海外展開を強化することで、グローバル市場でのシェア拡大が期待されます。
こうした広い視野をもった戦略を実行していければ、同社は精密切削工具と測定技術のリーディングカンパニーとして、今後も着実な進化を続けることでしょう。
コメント