企業概要と最近の業績
株式会社松尾電機
株式会社松尾電機は、電子部品の開発・製造・販売を手掛ける専門メーカーです。
主力製品は「タンタルコンデンサ」で、その高い性能と信頼性から、産業機器、車載、通信機器といった幅広い分野で採用されています。
タンタルコンデンサのパイオニアとして長年の歴史と技術的な強みを持ちます。
このほか、フィルムコンデンサや、過電流から電子回路を保護するサーキットプロテクタなども製造しています。
2026年3月期の第1四半期(2025年4月1日~2025年6月30日)の決算が公表されています。
当期の売上高は22億2,600万円で、前年の同じ時期と比較して21.9%の減収となりました。
営業損益は1億2,800万円の損失を計上し、前年同期の1億4,300万円の利益から赤字に転換しました。
経常損益も1億3,100万円の損失となり、前年同期の1億7,100万円の利益から赤字に転じています。
親会社株主に帰属する四半期純損益は1億3,800万円の損失で、前年同期の1億3,000万円の利益から赤字となりました。
会社は、産業機器市場や民生機器市場の一部で需要の回復に遅れが見られたことなどが、業績に影響したと説明しています。
価値提案
顧客の製品をより安全にし、高い信頼性を提供できる電子部品を供給。
宇宙開発や自動車など、厳しい品質基準が求められる分野に合う長寿命のコンデンサや回路保護素子が強み。
電子機器の安定稼働や省エネルギー化にも寄与し、顧客の製品開発をトータルでサポート。
なぜそうなったのかというと、同社が設立当初から「長く使えて故障リスクの少ない部品づくり」を目指してきたからです。
厳しい要求を満たす高付加価値な部品を追求することで、高度な技術分野への提供を可能にし、顧客から信頼を得られる独自の価値を確立しました。
主要活動
製品設計と試作開発を行い、新しい機能や素材を取り入れて改良を重ねる。
安定生産に向けた製造ラインの管理や品質検査を徹底し、不良率を下げる取り組み。
営業チームによる顧客へのヒアリングや要望の吸い上げを行い、製品やサポートを改善。
こうした活動が重視される背景には、部品の信頼性が最終製品全体の評価を左右するという電子部品業界特有の事情があります。
優れた品質管理や開発力を強化してきた結果、高い水準の製品を安定的に提供できる態勢を整えられたのです。
リソース
高度な製造装置や試験設備を備えた自社工場。
製品開発や品質管理をリードできる熟練のエンジニアや研究者。
継続的な研究開発を支える財務体質と組織力。
これらのリソースは、競合他社に負けない品質を確保するために欠かせないものです。
特に人材面では、長年培ったノウハウを持つ社員が多く、トラブルが起きた際の迅速な対処や新技術導入の際の柔軟な対応につながっています。
その結果、顧客からの要望を形にしやすい体制が生まれています。
パートナー
厳選した原材料メーカーや素材供給業者。
製品を流通させる販売代理店や商社。
大学や研究機関との共同研究プロジェクト。
これらのパートナーシップによって、品質の高い素材や最新情報を素早く仕入れることが可能になり、製品開発のスピードを加速させています。
また、大学などの研究機関との連携により、実験データの共有や新技術の検証を早期に行い、市場ニーズに適応しやすくなっています。
チャネル
直接取引による大手メーカーとの深い関係構築。
代理店ネットワークを通じた国内外への販路拡大。
オンラインプラットフォームによる中小企業や研究所へのアプローチ。
同社の強みであるコンデンサや回路保護素子は、高付加価値市場へ直販することで利益を確保しています。
一方で、海外や新規顧客を開拓する際には代理店を活用し、幅広い市場へアプローチ。
オンライン経由の問合せ窓口も充実させるなど、多面的なチャンネルで需要を取り込む工夫を行っています。
顧客との関係
専門スタッフによる技術サポートで問題解決を迅速化。
定期的な製品レビューや品質チェックを通じた信頼向上。
カスタマーサービス窓口の整備や不具合時の即時対応体制。
高信頼性が求められる業界では、長期的な付き合いが前提になることが多く、故障や不具合への対応が企業イメージを大きく左右します。
そこで、顧客とのコミュニケーションを密に保つシステムを整え、協力関係を深めることによって「次回も松尾電機に頼みたい」というリピート受注につなげています。
顧客セグメント
宇宙開発メーカーや防衛関連機器の製造企業。
自動車や産業機器の大手メーカー。
医療機器や通信機器などの精密機器メーカー。
こうしたセグメントは、どれも高い信頼性が必要とされる分野ばかりです。
同社は高品質な製品提供が強みであり、この顧客層との相性が非常に良いのが特徴です。
市場の一部に依存しがちなリスクはあるものの、長期契約や高価格帯での取引が可能なため、安定した利益源を確保しやすくなっています。
収益の流れ
メイン収益としての電子部品販売。
顧客の要望によるカスタマイズ品や追加技術サポート。
一部アフターサポートや保守関連による収益。
こうした多面的な収益源により、同社は売上を安定化させています。
コストアップ要素が発生しても、高品質を維持したうえで付加価値を高めることにより、一定の価格帯を保てるメリットを活かしています。
結果的に利益率が上昇しやすく、成長余地を確保できるのです。
コスト構造
製造ライン維持や最新設備への投資。
材料費や研究開発費といった固定費。
人件費と販売・マーケティング費用の最適配分。
高品質を実現するためには最新設備への投資が欠かせませんが、その分コストが膨らむ可能性もあります。
しかし同社は効率化や稼働率アップの施策を進め、設備投資と生産性向上のバランスを取っています。
その結果、売上増にともなうスケールメリットが働き、利益率を高める構造を築いています。
自己強化ループ
株式会社松尾電機では、新技術の開発と顧客への供給を繰り返すことで、より高品質な製品ラインナップを拡充し続けています。
例えば、新しい素材の研究に投資し、それを部品に活かすことで新たな顧客からの注文が増えます。
注文が増えることで売上高と利益が大きくなり、その資金をさらに研究開発へ振り向けることが可能になります。
このように技術力と製品力の強化が次の顧客獲得へつながる好循環が生まれ、競合他社との差別化を一層強められるのです。
また顧客からのフィードバックを積極的に収集し、不具合報告や要望を即座に製品開発へ生かす仕組みも整えているため、同社が持つノウハウは絶えず蓄積されます。
この自己強化ループこそが、同社の成長戦略の中核を支えています。
採用情報
初任給は260,000円から488,000円となっており、年齢や経験を考慮したうえで決定されるケースが多いです。
完全週休二日制で年間休日は118日と、メリハリのある働き方が可能になっています。
採用倍率は年によって変動しますが、高い技術力や製造のノウハウを学びたいと考える人から人気があるため、比較的高めになる傾向があります。
株式情報
銘柄は証券コード6969で、2025年2月13日時点の株価は504円です。
時価総額16.2億円という比較的小規模な企業ですが、PERは4.9倍と割安感があるとも見られています。
配当金は2025年3月期予想が0円となっており、今は配当に回すよりも設備投資や研究開発費に重点を置いている状況です。
未来展望と注目ポイント
今後は自動車の電動化や宇宙関連ビジネスの拡大など、質の高い電子部品の需要はますます増えることが予想されます。
そのため、同社にとっては新技術を取り入れた製品の開発と、安定供給を実現する生産ラインの拡張が大きなチャンスとなるでしょう。
一方で、特定の産業に依存しすぎるリスクもあるため、多様な分野への販売チャネルの確保が課題になると考えられます。
投資家目線では、株価や利益指標が割安に映る一方で、配当がない点と成長投資を優先する経営方針をどう評価するかがカギを握ります。
今後発表される業績やIR資料をもとに、研究開発がどのくらい実を結び、海外や新規市場でどのようなシェアを得られるかにも注目が集まっています。
研究開発力を活かしつつ、顧客の要望を取り入れた製品づくりを継続できるかどうかが、同社の未来を左右する大きなポイントとなるでしょう。
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