株式会社近鉄百貨店のビジネスモデルが示す成長戦略の魅力

小売業

企業概要と最近の業績

株式会社近鉄百貨店

あべのハルカス本店を旗艦店とし、近鉄沿線を中心に店舗を展開する大手百貨店です。

衣料品、服飾雑貨、食料品、リビング用品など、幅広い商品を取り扱っています。

お客様の暮らしを豊かにする「暮らしの“新しい”をプロデュースする」ことを目指しています。

百貨店事業のほかにも、商業施設の運営やフランチャイズ事業なども手がけています。

地域社会の発展に貢献する「地域共創」の取り組みにも力を入れています。

2026年2月期の第1四半期の連結業績は、営業収益が前年の同じ時期に比べて6.0%増の218億6,100万円となりました。

営業利益は25.5%増の10億4,800万円、経常利益は33.9%増の14億7,400万円、親会社株主に帰属する四半期純利益は14億1,400万円(前年同期は2億3,100万円)となり、大幅な増収増益を達成しました。

主力の百貨店事業において、国内顧客による婦人服や化粧品、宝飾品などの売上が堅調に推移しました。

これに加えて、インバウンド(訪日外国人)の売上が大幅に増加し、特にあべのハルカス本店と上本町店の業績を力強く牽引しました。

【参考文献】https://www.d-kintetsu.co.jp/

価値提案

多様な商品やサービスを地域密着型で提供しています。

高級品から日常雑貨まで幅広い品ぞろえをそろえることで、一度に複数のニーズを満たすことができるのが大きな特徴です。

【理由】
なぜそうなったのかというと、近畿・中部地方という広いエリアで顧客を取り込むためには、地域のライフスタイルに合わせたバラエティをそろえる必要があるからです。

観光客から地元住民、富裕層まで、幅広い顧客層に応えることでリピーターを獲得し、競合他社との差別化にもつながっています。

さらに、あべのハルカス近鉄本店のような大型店舗では、高級ブランドショップやレストランフロアなどの魅力的な施設を設け、滞在型ショッピングの楽しさを提案しています。

これにより、消費者にとって「ここに来れば何でもそろう」「特別な体験ができる」という価値が生まれ、地域での存在感も高まっています。

主要活動

主力は百貨店の運営ですが、その他にも商業施設の開発やフランチャイズ事業など、事業領域を拡大しています。

【理由】
なぜそうなったのかというと、百貨店単体のビジネスだけでは消費行動の変化や人口減少などのリスクに対応しにくく、安定的な収益を生み出すためには多角的な事業展開が必要だからです。

商業施設開発では、自社の知名度や運営ノウハウを活かしてテナントを集め、新しい収益源を獲得しています。

またフランチャイズ事業によって、すでに確立したブランド力を活かしながら他地域や新分野への参入をスムーズに行える体制を整えています。

これらの活動は、地域との結びつきを深めるだけでなく、グループ全体でのシナジーを高めることにもつながっていると考えられます。

リソース

広範囲にわたる店舗ネットワークと、長年の営業で積み重ねてきた顧客基盤が大きな強みです。

【理由】
なぜそうなったのかというと、近畿日本鉄道グループの一員としての歴史があり、主要駅周辺の好立地に店舗を展開しやすかったからです。

こうした地の利を活かしながら長く営業を続けることで、地元の人々からの信頼感も築いてきました。

さらに、外商部門などを通じて富裕層との関係を深めることで、安定的かつ高額な購買が期待できる仕組みをつくっています。

このようなリソースの活用は、店舗だけでなくECやフランチャイズなど、さまざまなチャネル戦略を展開する際にも有利に働きます。

パートナー

地域生産者や近鉄グループ各社、外部企業との連携が、ビジネスモデルを支える重要な要素になっています。

【理由】
なぜそうなったのかというと、独自の魅力ある商品やサービスをそろえるためには、多くのパートナーの協力が必要だからです。

地域生産者と協力すれば、ご当地商品や限定企画を打ち出すことができ、地元のお客様だけでなく観光客にもアピールできます。

近鉄グループ他社との連携では、交通と商業を掛け合わせたイベントやプロモーションを行うことで、多面的な集客を狙っています。

さらに外部企業と提携することで、最新のデジタル技術やマーケティング手法を取り入れ、顧客体験の向上を図る取り組みも加速していると考えられます。

チャンネル

店舗やECサイト、外商、アプリ・SNSなど、多彩なチャンネルを通じて顧客にアプローチしています。

【理由】
なぜそうなったのかというと、百貨店業界がネット通販や大型専門店との競合にさらされる中、店舗だけに頼った従来のモデルでは集客力が低下するリスクがあるためです。

店舗では直接手に取って商品を見られる安心感や接客の質を強みとし、ECサイトやアプリではいつでもどこでも買い物ができる便利さを提供しています。

さらに外商は、特に高額品を求める富裕層向けの個別対応で高い満足度を生むことができます。

これら複数のチャンネルを連動させることで、顧客との接点を拡大し、売上やブランド力を底上げする効果を生み出しています。

顧客との関係

地域密着型のサービスと外商による個別対応が大きな特徴です。

【理由】
なぜそうなったのかというと、消費者のニーズが多様化し、ネット上でも手軽に買い物ができる時代だからこそ、対面ならではの細やかな対応が重要視されるようになったからです。

地域密着型のサービスでは、地元特産品のフェアや地域イベントの参加などを通じて信頼感を高め、近所の人々が「ちょっと立ち寄ってみよう」と思える雰囲気を作り上げています。

一方で外商は、一人ひとりの嗜好や求める商品を的確に提案し、富裕層のニーズを深くつかむことで高単価の商品販売に結びつけています。

この両面のアプローチによって、幅広い顧客層との関係を築いているのです。

顧客セグメント

地元住民、訪日観光客、富裕層など多様な層に向けた商品・サービスを展開しています。

【理由】
なぜそうなったのかというと、近畿・中部地方は観光地も多く、外国人旅行者や国内観光客を取り込むチャンスが大きいためです。

観光客には地域の魅力ある土産品や免税対応などを充実させており、地元住民には日常の買い物から少し特別な贈答品まで、幅広い用途で利用しやすい環境を整えています。

また、富裕層向けの高級ブランドや外商サービスを強化することで、一般的な百貨店の客層よりも単価の高い売上を獲得しやすくなっています。

このような多層的な顧客セグメントの取り込みが、売上の安定と成長を同時に支えています。

収益の流れ

商品販売収益、テナント賃料、フランチャイズ収入といった多元的な収益構造を確立しています。

【理由】
なぜそうなったのかというと、百貨店単体の売上だけに依存していると、消費トレンドや経済状況の変化に大きく左右されるリスクが高いためです。

テナント賃料による安定した収益を確保しながら、自社で扱うブランドや商品販売による利益を上乗せすることで、経営基盤を強化しています。

さらに、フランチャイズ事業を活用することで、新規ブランドの導入や店舗展開をスピーディーに行え、地域密着型サービスとの相乗効果も期待できます。

この複数の収益源により、一部の事業が不調でも他の部門が支えて、全体としての収益を下支えできる仕組みを持っています。

コスト構造

人件費、店舗運営費、商品仕入れなどが大きなコスト要素になっています。

【理由】
なぜそうなったのかというと、接客重視の百貨店業態は多くのスタッフを必要とし、さらに店舗を広く構えるための維持管理費用がかかるからです。

ブランド品や高級品を扱う場合、仕入れコストも大きくなる可能性があります。

しかし、それらのコストを上回る売上を確保できるような品ぞろえや高付加価値のサービスを提供することで、十分な利益を生み出せる体制を目指しています。

また、最近ではECやデジタル化を進めることで、在庫管理の効率化や外商との連携強化に取り組み、無駄なコストを削減しながら顧客満足度を向上させようとしています。

自己強化ループについて

株式会社近鉄百貨店では、地域密着戦略と多角的チャネルを組み合わせることで自己強化ループを生み出していると考えられます。

まず、地元の人々が店舗へ足を運ぶ習慣ができることで、売上が安定し、さらに外商やECなど他のチャネルにも興味を持ってもらうきっかけになります。

一方で、デジタル施策や外商サービスで得られた顧客情報や売上成果を店舗運営にも反映させれば、より的確に商品ラインナップを最適化したり、イベントを企画したりできるようになります。

このように各チャネルが連携しながら顧客満足度を高めることで、店舗への来店回数や購入点数が増え、新たな顧客も口コミやSNSを通じて取り込むという好循環が生まれます。

さらに、売上の拡大とブランド力の向上によって、外部企業や地域生産者からの協力や投資も得やすくなり、より魅力的な商品やイベントを企画できるようになります。

この積み重ねが大きなフィードバックループとなり、長期的な事業成長を支えているのです。

採用情報

初任給や具体的な年間休日、採用倍率などは公表されていませんが、百貨店業界の中でも多様な事業領域を持つ企業ですので、幅広いスキルが身につく環境が期待できます。

地域密着型の接客や外商での富裕層向け営業、さらにはECなどのデジタル分野も含めて仕事の範囲が広いため、さまざまなキャリアパスを考えるうえで魅力的な職場といえます。

採用活動では百貨店事業に興味がある方だけでなく、新しいサービスを提案できる柔軟性のある人材やコミュニケーション能力の高い人材も求められる傾向があります。

就職を目指す人にとっては、企業研究を深めつつ、自身がどんな領域で活躍したいのかを明確にすることが大切だと思われます。

株式情報

株式会社近鉄百貨店の証券コードは8244です。

2020年度の配当金は1株当たり20円でした。

最新の株価水準は公表されていませんが、近年の百貨店業界はコロナ禍の影響やECとの競争など、変化が激しい環境に置かれています。

そんな中で業績が回復基調にあることは投資家にとっても注目材料となるでしょう。

株式投資に関心がある方は、配当方針が今後どう変化するかや、今期以降の決算でどのような業績動向が示されるかに目を向けると、投資判断の参考になるかもしれません。

未来展望と注目ポイント

株式会社近鉄百貨店は、外商や高級品販売の強化で収益性を高めると同時に、地方や駅前立地を活かした地域密着型サービスの充実にも力を注いでいます。

今後はインバウンド需要の回復が予想される中、海外からの観光客をどう取り込むかも大きなカギになりそうです。

さらに、ECやアプリなどのデジタル分野を拡充し、お店に行かなくても近鉄百貨店の世界観を楽しめるような取り組みが広がれば、新規顧客の獲得だけでなく既存客の利便性も上がり、競争力がより高まると考えられます。

また、フランチャイズ事業や商業施設開発を通じて得られた知見を活かし、他の地域や業態に展開することで、新しい収益源の確保にも期待が持てます。

百貨店業界全体の市場規模が縮小傾向にある一方で、こうした多角的な戦略を積極的に打ち出せる企業は、地域のニーズを的確にとらえながら安定した売上を確保できる可能性があります。

人々の消費行動が変化し続ける時代だからこそ、店舗だけではなくオンラインや外商を組み合わせた柔軟な経営方針が成果をあげるでしょう。

今後の決算やIR資料で示される動向を追いながら、どのような形で成長戦略を具体化していくのか注視していきたいところです。

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