企業概要と最近の業績
株式会社HEROZ
2025年4月期の本決算によりますと、売上高は5,929百万円(前期比22.5%増)と大幅に増加しました。
しかし、新規プロダクトへの先行投資や事業拡大に伴う人件費の増加などが影響し、営業利益は306百万円(前期比32.1%減)、経常利益は228百万円(前期比38.1%減)と減益になっています。
親会社株主に帰属する当期純損失は177百万円となり、前期の1,134百万円の損失から赤字幅は縮小しました。
セグメント別に見ると、AI/DX事業の売上高は3,271百万円(前期比47.9%増)とM&Aの効果もあり大きく成長しました。
AI Security事業の売上高は2,657百万円(前期比2.7%増)となっています。
2026年4月期の連結業績予想については、売上高6,700百万円(前期比13.0%増)、営業利益800百万円(前期比161.1%増)と、増収および大幅な営業増益を見込んでいます。
【参考文献】https://heroz.co.jp/ir/
価値提案
HEROZが提供する価値は、将棋AI開発で培った高水準の技術力を、多彩な業界へ応用する点にあります。
ユーザーが楽しめるゲームアプリから、企業向けの業務効率化ソリューションまで、幅広いニーズに対応できるのが強みです。
実際に囲碁や将棋のような複雑な思考が求められる領域で成果を出した実績があるため、企業側からすれば「難しい課題でも解決してくれるのではないか」という期待感が生まれます。
【理由】
将棋AI開発の過程で培われた高速演算と膨大なデータ処理技術が、他の分野にも横展開しやすい構造になっているからです。また、ゲームでユーザーを惹きつけるコンテンツ開発のノウハウは、エンタメ分野のみならず、企業向けのユーザーインターフェイス設計にも活かせると考えられています。
こうした多面的な価値提供が、HEROZのビジネスモデルを支える大きな柱になっています。
主要活動
主要活動の中心はAIアルゴリズムの開発と運用にあります。
これにはゲームAIの強化学習や、各産業で必要とされる専用のAIモデル開発が含まれます。
また、クライアントの課題をヒアリングしてカスタマイズする受託開発や、すでに開発済みのAI技術をライセンス化して提供する活動も行われています。
【理由】
将棋AIで培った技術の優位性を保つためには、継続的な開発やバージョンアップが欠かせないからです。さらに、ユーザーや企業が求める機能は時代とともに変化するため、安定した運用と細やかな調整が重要になります。
こうした日々の改良と積み重ねがHEROZの強みを維持する原動力となり、新しい分野へ展開する際の基盤にもなっているのです。
リソース
リソースとして最も重要なのは、高度な技術力をもつエンジニアや研究者です。
特にAIアルゴリズムや機械学習の分野では実務経験と専門知識が不可欠であり、これらの人材が集まることによってHEROZは新しい技術を迅速に実装できます。
【理由】
ゲームAI領域で成果を出したチームがそのまま他の分野に応用できる強みがあったからです。また、研究開発を支えるクラウドインフラやGPUなどのハードウェア資産も重要で、リアルタイムな演算を求められる分野においては性能の高い開発環境が必要になります。
こうした人的資源と技術インフラの組み合わせが、HEROZの競争優位性を支えているのです。
パートナー
HEROZは多種多様な業界の企業や研究機関との連携を重視しています。
将棋AIを活用したゲーム開発では、プロ棋士や棋界関係者との協力が欠かせませんでした。
そこから得られる知見は、金融や不動産、建設などの領域でのAI活用にも生きています。
【理由】
高度なアルゴリズムだけでなく、実際の業務知識を融合しないと企業の課題解決につながらないからです。そのため、専門分野ごとのパートナーと連携することで、技術と現場の知見を掛け合わせたサービスを生み出しています。
これにより、新規事業の開発や既存事業の拡張を円滑に進めることが可能になります。
チャネル
チャネルには、自社サイトやアプリを通じた直接提供、パートナー企業との共同サービスなどが含まれます。
具体的には、将棋AIを使ったオンライン対戦アプリなどのBtoC向けプラットフォームや、企業向けにライセンス供与する形態もあります。
【理由】
ゲーム市場で実績を残した結果、ユーザーが自社アプリに自然と集まる流れを作れたことと、企業向けにAIを導入する際は、すでに完成度が高いプラットフォームをベースにカスタマイズするほうが導入コストを下げやすいからです。幅広いチャネルを通じてサービスを届けることで、収益拡大と認知度向上を同時に狙っています。
顧客との関係
BtoCではアプリユーザーに対して定期的なアップデートやイベントを提供し、長期的に楽しんでもらう工夫をしています。
BtoBではプロジェクトベースでの提案や受託開発が中心で、納品後も運用や保守などを通じて継続的にサポートしています。
【理由】
AIは導入して終わりではなく、実際の運用データをフィードバックしてアップグレードしていく必要があるからです。そのため、顧客との関係も一度きりではなく長期的なパートナーシップとしてとらえられており、これがHEROZのビジネスを安定化させる要因の一つにもなっています。
顧客セグメント
主な顧客は、将棋や囲碁などのゲームファンと、AI導入を考える企業に大別されます。
BtoCではゲームAIで強さを追求するユーザーや、手軽に高レベルの対戦を楽しみたい層が対象です。
一方、BtoBでは金融や不動産、建設など、複雑な判断が求められる場面でAIを活用したい企業が多くなっています。
【理由】
HEROZが得意とする高水準の思考系AIは、戦略や最適化が必要な分野でこそ真価を発揮できるからです。こうした顧客セグメントの広さが、売上増や事業拡大に寄与していると言えます。
収益の流れ
収益源としては、BtoBではコンサルティングや開発案件の受託費用、AI技術のライセンス料が挙げられます。
BtoCではゲームアプリ内の課金やプレミアムサービスの月額利用料などが主な柱です。
【理由】
ゲームAIのようなエンタメ分野から得られる収益と、企業向けAIソリューションからの安定収益を両立させることで、収益構造を分散化しリスクを軽減できるからです。特に将棋や囲碁といった趣味性の高いアプリは、ユーザーが熱中しやすく、安定的な課金につながりやすい面もあります。
その一方で、企業向けサービスは大型案件を獲得すれば大きな売上が期待できるため、この両輪がHEROZのビジネスモデルを下支えしています。
コスト構造
コストは主に人件費と研究開発費に集中しています。
エンジニアや研究者の報酬は高水準になりがちですし、AI開発のためのクラウド環境や高性能GPUもコストがかかります。
【理由】
AIの高度化やサービス品質の向上には最新の技術と優秀な人材が必要で、それらを確保するための費用は無視できないからです。また、BtoC向けアプリのサーバー運用コストもかさむ一方で、ユーザーが離れないための改修やイベント運用なども継続的な費用が発生します。
そのため、売上が伸びても研究開発と運用コストが増えれば、利益が思うように残らないケースもあるのです。
自己強化ループ
HEROZでは、AIを開発してサービスを提供し、その利用実績から得られるデータを再びAIの学習に活用することで、性能をさらに高める仕組みを狙っています。
たとえば、将棋アプリで多くのユーザーがプレイすれば、その棋譜データはAI強化に役立ちます。
そして、高度化したAIをもとに新しいサービスを提供すれば、さらに利用者が増えて収益も拡大し、そこから得られるデータがまたAIの性能を上げるという流れです。
こうした循環が「自己強化ループ」と呼ばれるもので、うまく回れば先行者優位を強固にできます。
ただし、このループを継続させるためには、十分な資金と優秀な開発陣が必要です。
また、ユーザーに使い続けてもらうための魅力的なサービス設計も重要になります。
もし、このループが途中で止まってしまうと、技術の劣化や利用者離れにつながる恐れもあるため、常に新しいアイデアを生み出しながらサービスの品質を保ち続けることが大切です。
HEROZがゲーム分野以外の産業にも展開を広げているのは、このループをより多角的に稼働させ、安定した収益とデータを得る狙いがあるのだと思われます。
採用情報
HEROZの初任給は公開されていないため具体的な数字は不明ですが、AIエンジニアを中心に高度なスキルを求める職種が多いことから、業界平均かやや高めである可能性があります。
平均休日についても公式には明示されていませんが、週休二日など一般的な企業と同様の体制を取っていると推測されます。
採用倍率は明らかにされていませんが、AIやプログラミングへの関心が高い人材からの応募が多いため、競争率は低くないと考えられます。
研究開発志向の強い企業なので、専門分野に深い知識と実績を持つ人にとっては魅力的な環境と言えるでしょう。
株式情報
HEROZの銘柄コードは4382で、2024年4月期は配当金が実施されておらず無配となっています。
また、2025年3月13日時点の株価は1株あたり1,005円でした。
AI関連銘柄は業績や市場動向に大きく影響されやすい特徴があるため、最新のIR資料を確認しながら株価の動きを見ることが大切です。
研究開発への投資を続けつつも、将棋AIをはじめとする既存の収益源をどれだけ伸ばせるかが、今後の投資判断において重要な視点となるでしょう。
未来展望と注目ポイント
HEROZの今後を考えるうえでは、まず現在のAI技術をどれだけ広範な分野に展開できるかが焦点になります。
ゲームAIで磨いたアルゴリズムは、複雑な判断や膨大なデータ分析を必要とする金融や建設、不動産などにも応用が期待できます。
そのため、各業界のニーズを的確にとらえた新たなソリューションを次々と打ち出せれば、大きな成長が見込めるでしょう。
一方、研究開発費と人材コストの増大が利益を圧迫する懸念もあり、事業を拡大しながら収益面の改善を図るバランスが問われています。
AI市場は競合他社も多く、優位性を維持するためには、HEROZが独自の技術やデータセットをさらに発展させ続ける必要があります。
ユーザーコミュニティや企業との共同開発で新たなデータを獲得し、自己強化ループを強固に回し続けることができれば、今後も業績拡大につながる可能性が高まるはずです。
将棋や囲碁などの既存分野のサービス向上と、新規市場へのチャレンジをどう両立させるかが今後の鍵になりそうです。
世の中のAIニーズが増え続ける限り、HEROZのビジネスチャンスは広がり続けるでしょう。
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