第四北越フィナンシャルグループのビジネスモデルと成長戦略を徹底解説

銀行業

企業概要と最近の業績
第四北越フィナンシャルグループは、2018年10月に新潟県を地盤とする第四銀行と北越銀行が統合して誕生した金融持株会社です。両行の歴史や人脈を活かし、地域に密着した金融サービスを提供している点が大きな強みです。新潟県内は少子高齢化が進んでいるといわれますが、観光資源や農業など活力ある産業も数多く存在しており、そうした企業や個人を支える姿勢が評価されています。

最近の業績では、2023年度の連結経常収益が約2,000億円となり、前年度比でおよそ5%の伸びを記録しました。統合シナジーの発現により、融資関連や手数料収入の増加が貢献し、連結純利益も約300億円と堅調な数字を示しています。地域経済が回復基調にあることに加え、IR資料などでも示される成長戦略として、オンラインサービスの強化や顧客ニーズに合わせた商品開発が功を奏した形です。新潟県外からの事業にも少しずつ挑戦しており、今後はさらなる収益拡大が期待されています。

ビジネスモデルの9つの要素

  • 価値提案
    地域に根ざした信頼性の高い金融サービスを提供することが中心的な価値となっています。住宅ローンや法人向け融資だけでなく、投資信託や保険商品など多様な選択肢を用意することで、お客様の人生設計や経営課題を幅広くサポートしています。さらに、地元の企業や個人事業主に対しては経営相談やビジネスマッチングといったコンサルティング業務を強化し、単なる金融機関にとどまらず「課題解決パートナー」としての地位を築いています。こうした価値提案は、地域の方々の安心と発展をサポートする意義が大きく、新潟県全体の産業振興にもつながる点が大きな魅力です。
    なぜそうなったのかというと、地方銀行が生き残るためには、金融サービスだけでなく総合的なコンサルティング力が欠かせなくなっている背景があります。人口減少により貸出需要が減少する可能性があるため、幅広い金融ソリューションを用意し、地域企業の力になれる提案力を高めることで他行との差別化を図っているのです。

  • 主要活動
    預金・融資はもちろんのこと、個人向けには資産運用や保険販売、法人向けには経営相談やM&Aアドバイザリーといった多面的なサービスを展開しています。さらに、地域活性化のために自治体や大学などと協力し、新技術や観光資源の開発を支援する活動にも注力しています。こうした幅広い活動によって、単なるお金の出し手ではなく、地域経済の発展をともに築く存在であることをアピールしています。
    なぜそうなったのかといえば、地元企業の成長が金融機関の収益基盤そのものを強化する好循環を生むからです。融資だけでなく、地域の企業が抱える経営課題や人材不足などにも総合的に寄り添うことで、新規ビジネスの創出や事業拡大に貢献し、それがまた貸出機会や手数料収入につながる構造が生まれています。

  • リソース
    新潟県内に張り巡らされた広範な支店ネットワークは大きな財産です。地域の人々との対面コミュニケーションを重視しており、そこから得られる信頼関係が融資や新規サービス展開時の基盤になっています。また、長年の取引を通じて得た地元企業の情報や経済状況に関する蓄積も無視できない強みです。デジタル化にも積極的で、オンラインバンキングやスマートフォンアプリなど、新しいサービス運用に対応できるITシステムを整えています。
    なぜそうなったのかというと、地方銀行は都市部のメガバンクと異なり、地域密着が生死を分けるほどに重要だからです。地元のお客様から信頼を得るためには、支店や人材を通じたきめ細かな対応が求められます。一方で、時代に合わせたシステム投資も後れを取ると競争力を失うため、ITリソースへの投資も強化しているのです。

  • パートナー
    地元自治体、企業、大学、他の金融機関など多様なステークホルダーと連携しています。例えば、地方創生を目指す自治体と協力して新規事業を立ち上げるケースや、大学の研究成果を地元企業に橋渡しする取り組みなどを積極的に推進しています。また、観光振興や農林水産業の新技術導入などでも他機関と手を組むことで、地域全体の魅力向上につなげています。
    なぜそうなったのかというと、単独の金融機関では解決できない課題が多いためです。人口減少や後継者不足といった地域の大きな問題は、一つの企業だけで取り組んでも効果が限られます。広範なパートナーシップを築くことで、幅広い知見やネットワークを活かし、より大きなインパクトを生み出そうとしているのです。

  • チャンネル
    店舗の窓口やATMネットワークをはじめ、オンラインバンキングやスマートフォンアプリといったデジタルチャネルも整備しています。特に若年層や働き盛りの世代にとっては、スマホ一つでさまざまな手続きが完結できる利便性が重要視されており、こうしたニーズに応えるためのシステム投資を積極的に行っています。
    なぜそうなったのかというと、社会のデジタル化が急速に進んでいるからです。地方の高齢者を中心に対面サービスのニーズは依然として根強いものの、今後の世代交代や他行との競争を考えると、オンラインでも満足度の高いサービスを提供する必要があります。そのため、従来の店舗網を大切にしつつ、新たなチャンネルを拡充する取り組みを加速させています。

  • 顧客との関係
    営業担当が定期的に訪問して悩みを聞く法人営業や、窓口でのきめ細かな応対を重視した個人営業を行っています。加えて、24時間いつでも利用できるオンラインサポート体制を整え、チャットやメールなどで気軽に質問できるようにしています。これにより、高齢者から若年層まで幅広い世代に安心感と利便性を提供しています。
    なぜそうなったのかというと、地方銀行においては「顔が見える関係」が非常に重要だからです。地域社会との結びつきが薄れると、預金や融資といった収益源も減少しかねません。一方で、働く人のライフスタイルが多様化している現代では、対面のみならずオンラインでのやり取りを望む人も増えています。こうした二面性に対応するために多様なコミュニケーション手段を確保しているのです。

  • 顧客セグメント
    新潟県内の個人や中小企業はもちろん、最近では県外にも営業エリアを拡大しています。特に生産拠点や店舗網を新潟に持つ企業へのサポート強化によって、県外からの資金需要も取り込み始めています。個人に対しては、住宅ローンや教育ローンなど生活に密着した金融商品がメインですが、投資信託や保険商品など資産運用ニーズにも対応し、幅広く顧客をカバーしています。
    なぜそうなったのかというと、地域の人口減少や高齢化が進むなかで、地元だけでは十分な成長を確保しづらくなっているからです。そこで、まずは新潟と関係の深い企業や個人を入口として県外に展開し、売上や融資先の多角化を図っています。地域の魅力を外に発信する意味合いもあり、多様な顧客を取り込む戦略を取っているのです。

  • 収益の流れ
    伝統的には融資に対する金利収入が中心ですが、手数料収入も着実に増加しています。例えば、投資信託や保険販売の仲介、各種決済サービスなどによって、安定した収益源を確保しています。また、自社資金の投資運用による収益も重視し、国債や地方債だけでなく企業債券や株式などの多様なポートフォリオを形成することで、収益拡大を狙っています。
    なぜそうなったのかというと、低金利時代が続くなかで金利収入だけに頼る経営が難しくなっているためです。地方銀行も都市銀行やネット銀行との競争が激しく、収益を補完する新たな収入源を開拓する必要があります。手数料ビジネスの強化や投資運用の高度化によって、経営を安定化させる狙いがあるのです。

  • コスト構造
    主に人件費や店舗網の維持費、ITシステムの投資コストなどが大きなウエイトを占めます。統合によって一部の重複店舗を統合・再配置し、業務効率を高めることでコスト削減を進めています。一方で、デジタル化にかかる開発費などの先行投資も必要となっており、どのタイミングで設備投資を回収できるかが経営の大きなテーマになっています。
    なぜそうなったのかというと、地方銀行は全国規模のメガバンクほど経済規模が大きくないため、採算ラインを意識した慎重な経営が求められるからです。合併による規模拡大はコスト削減に有利ですが、同時にITを含めたサービスの質を高めないと競合に負けてしまいます。結果として、両行のネットワークやリソースをうまく活用しながらも、必要な投資は怠らない経営方針を模索しているのです。

自己強化ループ
第四北越フィナンシャルグループでは、地域経済の発展が自社の成長につながり、その成長がまた地域に還元されるという好循環を重視しています。例えば、地元企業へ融資やコンサルティングを行い事業を拡大させることができれば、その企業は従業員を増やしたり新たな商品開発に投資したりします。すると雇用機会が増えるだけでなく、地域の購買力も向上し、銀行への預金や追加の融資ニーズが高まります。こうした相乗効果は新潟県全体の経済活性化につながり、さらには同グループの収益拡大をも後押ししていきます。このように、地域金融機関ならではの地元との密着度を活かすことで、企業も銀行もウィンウィンの関係を築いているわけです。地方銀行の新たな成長戦略を考えるうえでも、この自己強化ループは重要なキーワードとなっています。

採用情報
新卒採用や中途採用を通じて、総合職や一般職などさまざまな職種で募集を行っています。初任給は大卒総合職でおよそ20万円程度、年間の平均休日数は120日前後といわれています。採用倍率は年度によって変動があるものの、地域に根付いた金融機関としての安定性を求める学生から人気が高い傾向があります。研修制度も充実しており、若手のうちから金融知識を身につけやすい環境が整っています。

株式情報
銘柄は「第四北越フィナンシャルグループ(7327)」です。配当金については、直近の決算期で1株あたり年50円前後となっており、地域銀行としては比較的安定した配当水準を維持しています。1株当たり株価は日々変動しますが、最近は1,000円台前半で推移していることが多いです。IR資料にもあるように、中長期での経営方針に基づいた収益拡大策が評価されるかが、株価動向を占うポイントになっています。

未来展望と注目ポイント
今後はさらなるデジタル化や県外進出を通じて、収益源の多角化を図ることが期待されています。スマートフォンアプリの拡充やオンライン手続きの簡略化などに取り組むことで、若年層や働き盛り世代からの支持を広げる狙いです。また、新潟県の豊富な食や観光資源を活用した地元企業の成長を後押しすることで、自らの融資機会や手数料収入も増やす好循環を実現しようとしています。さらに、農業や漁業の6次産業化、環境関連事業などの領域で新たな需要を創出し、地域の経済活性化に貢献する余地は大きいとみられます。メガバンクやネット銀行との競合が激しくなる一方、地域を深く知るという強みを武器に、独自の成長戦略を加速させるかどうかが今後の焦点です。デジタル化とリアルの店舗網を上手に融合させながら、新潟ならではの地域課題解決を目指す動向には引き続き注目が集まりそうです。

コメント

タイトルとURLをコピーしました