複数ブランド展開が生む成長戦略株式会社クリエイト・レストランツ・ホールディングスのビジネスモデルをIR資料から読み解く

企業概要と最近の業績
株式会社クリエイト・レストランツ・ホールディングスは、多様なジャンルの飲食ブランドを数多く展開している外食産業の大手企業です。

和食や洋食はもちろん、ビュッフェやカフェなど幅広い業態を取りそろえており、ファミリーからビジネス利用まで多彩な顧客層のニーズに応えています。

近年は新規出店に積極的で、立地や顧客ターゲットに合わせたブランド開発力が強みとなっています。

2024年2月期の売上収益は1,457億59百万円に達し、前年同期比で約23.3%増という大きな伸びを示しました。

税引前利益は66億32百万円、親会社の所有者に帰属する当期利益も50億41百万円となり、コロナ禍からの回復と出店攻勢が好調な業績につながっています。

さらなるブランド拡充や店舗網の拡大を図ることで、今後も外食市場での存在感を強化していく可能性が高いと考えられます。

ビジネスモデルの9つの要素

価値提案
同社が提供する価値は、幅広い飲食体験をまとめて網羅できる多彩なブランドポートフォリオです。

和食や洋食、中華だけでなく、デザートビュッフェやダイニングバーなど、あらゆるジャンルに対応することで、多様化する消費者ニーズを取り込みやすくしています。

単なる食事の提供にとどまらず、ショッピングモールや駅ビルなどの商業施設に最適なコンセプトを提案し、施設側や来店客にとって魅力的な“食の総合ソリューション”を届けることが特徴です。

【理由】
外食産業はトレンドの移り変わりが激しく、特定の業態だけではリスク分散が難しいことが挙げられます。

多様な業態を展開することで、市場の変化や顧客層の多様化に対応しつつ、収益源を複線化できるためです。
主要活動
新規店舗の開発や既存店の運営はもちろん、業態転換やリニューアルといったブランド再構築にも積極的です。

集客力のある商業施設への出店機会を逃さず、顧客ニーズに合わせてメニューや内装を刷新し、常に最適な体験を提供し続ける努力を行っています。

さらに、複数のブランドを束ねるホールディングス体制によって、横断的にノウハウを共有し、新業態や新メニューの開発を効率よく進められる点も大きな強みです。

【理由】
こうした活動が重視されている背景には、外食産業における店舗のライフサイクルの短さがあります。

顧客ニーズの変化や競合の台頭を見極めながら常にブランドをアップデートし、古いイメージを払拭し続けることが、継続的な収益確保に結びつくからです。
リソース
同社にとって欠かせない経営資源は、まず多彩なブランドそのものです。

専門性の高い料理人や店舗運営スタッフを含めた人的資源も重要で、ジャンルやコンセプトごとに異なるノウハウやスキルを内部に蓄積しています。

さらに、全国各地に展開する広範な店舗ネットワークも大きな資産となります。

【理由】
このようなリソースの蓄積が進んだ背景には、積極的なM&Aや業態開発が影響しています。

自社ブランドのみならず、魅力的な外部ブランドを取り込み、短期的に規模拡大やノウハウ取得を図ることで、より多面的なリソースを手に入れてきたという流れがあります。
パートナー
同社が重要視するパートナーは、食材供給業者や不動産デベロッパーが挙げられます。

新鮮で高品質な食材の安定調達はもちろん、人気の高い商業施設やフードコート運営会社との連携により、集客力の高い店舗を展開できます。

地域の特産品を生かした限定メニューの開発など、地元企業とのコラボレーションも積極的に行われることがあります。

【理由】
こうしたパートナーシップを強化している背景には、外食産業における「場所の良さ」や「食材の良し悪し」がダイレクトに集客と収益を左右するという事情があります。

安定的で良質な仕入れ先や好立地を確保するためには、パートナーとの信頼関係が不可欠なのです。
チャンネル
同社のチャンネルは、商業施設内の直営店舗が中心です。

駅ビルや大型ショッピングモール、アウトレットなど、多くの人が集まる立地を選び、多店舗化によって知名度とブランド価値を向上させています。

また、インターネットやSNSを活用した情報発信にも力を入れており、オンライン予約やクーポン配布などで利用者の利便性を高めています。

【理由】
このように複数のチャンネルを活用する理由は、来店客が買い物や娯楽を楽しむ“ついで需要”をうまく取り込み、幅広い客層にアプローチできるからです。

さらに、SNSやウェブサイトでの発信を組み合わせることで、店舗へ足を運んでもらう機会を拡大し、リピート率向上を狙っています。
顧客との関係
顧客との関係構築では、店舗での接客力向上や店舗限定メニューの開発など、リピーターを確保する施策が重視されています。

多様なブランドを展開する中で、接客やサービス品質の標準化を図りつつ、業態ごとの特性を活かした付加価値も提供し、顧客満足度を高めています。

【理由】
こうした取り組みが求められる背景としては、外食市場での競争が激化しており、単に「味」だけでは差別化が難しいという現状があります。

そこで、スタッフのホスピタリティや店舗の雰囲気、SNSを活用した顧客フォローなどを強化し、長期的なファンを増やすことを目指しているのです。
顧客セグメント
同社の顧客層は非常に幅広く、ファミリーからカップル、ビジネスパーソンまでカバーしています。

例えば、気軽に立ち寄れるカフェ業態を多く展開すれば若年層や女性客を取り込みやすくなりますし、高級志向の和食店を強化すればシニア層やビジネス利用の需要も狙えます。

【理由】
こうした多彩な顧客セグメント戦略に至った理由は、外食市場は景気やトレンドによって客層が変動しやすく、特定の層だけでは収益が不安定になりやすいためです。

幅広い年代やライフスタイルに合わせた業態展開をすることで、景気変動のリスクを分散させています。
収益の流れ
同社の主な収益源は、各ブランドの飲食サービス提供による売上です。直営店舗が多いため、店舗運営で得られる利益はホールディングス全体の収益を大きく左右します。
一部のブランドではフランチャイズ展開も行っていますが、直営によるコントロール力の高さが全体の底上げに寄与しています。

【理由】
この直営中心の収益構造が形成されたのは、ブランドの世界観やサービス品質を一貫して保ち、顧客満足度を維持する狙いがあるからです。

外食産業では店舗の魅力が売上を左右しやすいため、自前で運営することで細かな戦略転換を迅速に実行できるメリットがあります。
コスト構造
人件費や食材費、賃借料などが主要なコスト要素です。とくに、人手不足が深刻化する中で、サービス品質を維持するためには人件費の増加は避けられません。

また、メニュー開発や設備投資による固定費もかさみやすい業態といえます。

【理由】
こうしたコスト構造になった背景として、外食産業では食材価格の変動や人件費の上昇を無視できないことが大きいです。

品質を保ちながら収益を確保するために、食材仕入れを大口でまとめるコスト削減策や、業態転換による収益性向上が日々模索されています。