魅力あふれるEC企業の成長戦略 株式会社白鳩のビジネスモデルを徹底解説

小売業

企業概要と最近の業績
株式会社白鳩は、インナーウェアやルームウェアを中心にEC販売を展開している企業です。国内外の顧客に向けて多彩なブランドやアイテムをオンラインで提供し、撮影から採寸、商品の情報作成までを一貫して自社で行う「ささげ業務」の強みを持っています。また、ECシステムの開発や顧客対応、物流に至るまで自社内で完結できる体制を構築している点が特徴的です。こうしたワンストップ体制は、商品情報の正確さやスピード感を重視するEC事業において大きなアドバンテージとなっています。

近年の業績では、2024年2月期の売上高が63.7億円と前期比0.3%増とわずかながらもプラス成長を維持しています。しかし、営業利益は-600万円と赤字に転落し、経常利益は-5,500万円、当期純利益は-1.2億円と、利益面において苦戦が続いている状況です。EC市場は引き続き拡大が見込まれていますが、競合の増加や物流コストの上昇などの影響もあり、収益性の向上が急務となっています。
とはいえ、企業のワンストップ体制や顧客ニーズに合わせた商品ラインアップは今後の成長余地を秘めており、株主や投資家にとっても、IR資料を注視しながら成長戦略を見極める価値があるといえるでしょう。

ビジネスモデルの9要素

  • 価値提案
    株式会社白鳩では、インナーウェアやルームウェアを中心に、幅広い顧客が求める品質とデザインをオンライン上で手軽に入手できることを大きな価値として提案しています。自社内に撮影や採寸の専用スタジオを持つため、商品写真やサイズ情報が正確かつ充実しており、購入者が安心して選びやすい仕組みを整えています。従来、下着や部屋着は実店舗での試着が重視されがちですが、ECにおいては「正確な情報」「細かいサイズ表記」「着用イメージ画像」が欠かせません。同社の詳細な商品データは、オンラインショッピングでの不安を軽減し、消費者の満足度向上につながっています。さらに国内外の有名ブランドからコストパフォーマンスの良い商品まで、豊富な選択肢を用意し、多様なニーズに応えることによってリピート率の向上を図っています。なぜこのような価値提案が生まれたかというと、インターネット上で商品を販売する際に最大の課題となる「実物とのギャップ」をいかに埋めるかを追求した結果です。特にインナーのようなフィット感が重要な商品においては、情報の信頼度が高いほど購入意欲が高まりやすいため、自社で撮影・採寸などを一括管理し、情報の精度を保つ方針を貫いています。

  • 主要活動
    主たる活動としては、大きく「商品管理」と「ECサイト運営」に分かれます。商品管理では、仕入先との交渉、在庫計画の立案、撮影・採寸・原稿作成などの「ささげ業務」が中心です。ECサイト運営では、自社公式サイトや外部モール(楽天市場、Amazon、ZOZOTOWNなど)の店舗管理、顧客とのコミュニケーション、受注・発送業務などに力を注いでいます。なぜこのような活動に力を入れるのかといえば、EC特化型企業としては、商品の魅力を最大限に伝えつつ、注文から発送、アフターサービスまでをスムーズに完結させることが顧客満足度を高める鍵となるからです。さらに、キャンペーンやセールの企画、SNSを活用したプロモーションなども主要活動に含まれ、ブランドの認知度向上と集客を担っています。こうした取り組みは、インナーウェアやルームウェアという日常消費商材において、リピーターを増やすためにも重要な戦略といえます。

  • リソース
    株式会社白鳩の基盤となるリソースには、自社撮影スタジオ、物流センター、そしてECサイト運営を支える専門スタッフが挙げられます。スタジオではプロのカメラマンやモデル、スタイリストが連携して商品写真を撮り、採寸情報を細かく記録することで、消費者に対して正確なイメージを提供しています。物流センターでは、受注から発送までのプロセスを自社で管理し、在庫のロスや発送ミスを減らす工夫がなされています。こうした自前の設備や人員を充実させるにはコストがかかる一方、品質管理やスピード面でのメリットが大きく、顧客満足度にも直結します。なぜこの形を選んでいるかといえば、外部委託に頼らず自社内でノウハウを蓄積し、他社との差別化を図る狙いがあるからです。特に下着などはサイズやデザインのバリエーションが豊富なため、適切な在庫管理が収益を左右します。自社リソースを活用することで、売れ筋商品の在庫切れや余剰在庫を最小限に抑えることを目指しています。

  • パートナー
    同社の主要パートナーには、商品の供給元となるメーカーやブランド企業、物流を担う運送会社、ECサイトのシステム開発やマーケティングを支援するITベンダーなどが含まれます。インナーウェアやルームウェアはトレンドの移り変わりが激しく、消費者の好みも多様化しているため、メーカーとの連携によって新商品の選定や独自企画が可能になります。また、物流会社の協力で全国へスピーディな配送を実現し、顧客の利便性を高めています。なぜパートナーシップが重視されるかといえば、EC販売においては「欲しいときに届く」体制が競合他社との差別化につながるからです。さらに、ITベンダーと協力してECサイトや在庫管理システムを最適化し、アクセス集中時の安定稼働やキャンペーン時の在庫連動を細かく調整しています。このように、多方面の専門家や企業と連携することで、社内リソースでは補いきれない領域をカバーし、柔軟に事業拡大へ対応できる体制を築いているのが特徴です。

  • チャンネル
    同社が提供するチャンネルには、大きく自社公式ECサイトと外部のオンラインモールがあります。自社公式サイトではブランドイメージを強く打ち出し、会員向けのキャンペーンやポイントサービスを実施することでリピーターを育成しています。一方、楽天市場やAmazon、ZOZOTOWNといったモール出店は、新規顧客の獲得やアクセス数の拡大に効果的です。なぜマルチチャネルを選択しているかといえば、オンラインショッピングに慣れた消費者は複数のECプラットフォームを比較して購入するケースが増えているためです。自社サイトのみではリーチできない潜在顧客へアプローチし、各プラットフォームごとのキャンペーンや販売企画を活用することで、売上増加を図っています。また、モバイルアプリやSNSの活用により、気軽に商品情報を受け取れる環境を整え、若年層や海外マーケットへの拡大を視野に入れている点も見逃せません。

  • 顧客との関係
    同社では、オンライン完結型だからこそ、丁寧なカスタマーサポートとわかりやすい商品ページの作成を重視しています。購入者からの問い合わせには専任スタッフが対応し、サイズや着心地に関する相談にも細かく答えることで信頼を築いています。さらに、商品レビュー機能を活用し、実際に購入した人の意見や感想を見やすくまとめることで、新規顧客の購入ハードルを下げる工夫をしています。なぜ顧客との関係を深める必要があるかというと、インナーウェアなどはリピート購入が期待できるアイテムである反面、サイズや品質に一度でも不満を感じると次回購入に至らない可能性が高いからです。満足度を高め、ブランドロイヤルティを築くためには、購入後のケアやコミュニケーションが重要と考えられています。クレームや返品に対しても迅速に対応し、データを分析して商品改善やサービス向上につなげるサイクルを確立している点が特徴です。

  • 顧客セグメント
    取り扱い商品の中心が下着やルームウェアであることから、主に女性顧客がメインターゲットとなっています。ただし、最近では男性向けのインナーも増加傾向にあり、世代的にも幅広い層を取り込もうとしています。また、価格帯もハイブランドからリーズナブルブランドまで幅広く揃えているため、自分好みの商品やブランドを探している層、機能性を重視する層など、多彩な顧客セグメントをカバーしています。なぜこうした多岐にわたる顧客層を狙っているのかといえば、ECという特性上、全国的に幅広い顧客にリーチできる強みを活かすためです。さらに、下着やルームウェアは生活必需品でもあるため、リピート購入の機会が多く、顧客満足度を高めることで継続的な売上確保が見込めるからです。こうした複数セグメントへの対応が、競合が激化するオンライン市場での生き残り戦略の一つとなっています。

  • 収益の流れ
    主な収益源はECサイトでの商品販売による売上です。アイテムごとの売価設定やモール手数料、仕入コストなどの差額が利益に直結します。外部モールでの販売では手数料が発生する一方、集客効果が見込めるため、総合的に収益を最大化する戦略を取っています。なぜ収益構造がこのようになっているかというと、ECビジネスにおいては、店舗賃料や大規模な設備投資を必要としない代わりに、オンライン集客や物流費用が収益性を左右するためです。複数モールへの出店やセール企画などを駆使して売上を上げつつ、自社公式サイトでの販売比率を高めることで、手数料負担を抑え、利益率向上を図る動きも見られます。また、物流体制の効率化や広告費の最適化などに取り組み、最終的な粗利をいかに拡大できるかが大きな課題となっています。

  • コスト構造
    同社の主なコストには、商品仕入れ、物流費、人件費、ECサイト運営費などが含まれます。インナーウェアやルームウェアの場合、サイズ・デザインバリエーションの豊富さゆえに在庫管理にかかるコストも無視できません。また、独自に撮影スタジオや撮影スタッフを抱えることで、その運営コストが発生する反面、外部委託よりもコントロールしやすいメリットがあります。なぜこのようにコストが構成されるのかというと、EC特化型のビジネスでは、実店舗の家賃や店舗スタッフの人件費こそ軽減できる一方、オンライン集客やシステム保守、在庫管理に関するコストが大きくなりやすいからです。特に近年は宅配便の料金や原材料費が上昇傾向にあり、商品の安定供給とコスト削減のバランスを取ることが経営上の大きなテーマとなっています。

自己強化ループ(フィードバックループ)
株式会社白鳩のECビジネスにおいて重要なのは、顧客からのフィードバックをいかに素早く収集し、商品開発やサービス改善につなげるかというプロセスです。顧客がレビューや問い合わせを通じて寄せる意見には、「サイズが合わない」「生地感が思ったより薄い」など、直接的な改善点が含まれている場合があります。これらを担当スタッフが分析してメーカーにフィードバックしたり、自社の撮影や採寸情報をよりわかりやすく編集したりすることで、次の販売サイクルでより満足度の高い商品ページを提供できます。このループが確立されていると、顧客は安心してリピート購入し、さらに詳細なレビューを提供する好循環が生まれます。また、キャンペーンの成果やアクセス数の増減など、定量的なデータも合わせて検証することで、広告費や在庫の配分を最適化することが可能です。こうした自己強化ループは、EC市場で競合が激化する中、いかに顧客を獲得・維持し続けられるかを左右する重要な要素となっています。特に消費者が情報収集に慣れている時代には、レビューをはじめとするユーザーボイスの信用度が高まるため、企業が顧客の声を有効活用するかどうかで、売上にも大きな差がつきます。

採用情報
現在、同社の公式サイトを見る限りでは全職種での募集は行われていない状況です。初任給や平均休日、採用倍率についての公表もされていませんが、EC事業の継続的な拡大を見込む中で、今後は需要に応じて専門スタッフの募集が行われる可能性があります。撮影やシステム開発、カスタマーサポートなど、幅広い業務領域があるため、採用が再開した際には専門スキルを持つ人材が求められそうです。応募を検討する際は、公式サイトや求人情報の最新情報を確認するとよいでしょう。

株式情報
白鳩は証券コード3192で上場しており、2024年2月期の配当は0円と発表されています。1株当たりの株価は2025年1月31日時点で270円となっており、今後の業績回復やEC事業の成長性がどの程度株価に反映されるかが注目されています。株式投資においては、EC市場の拡大見通しや企業の収益改善策をしっかりと見極めることが大切です。

未来展望と注目ポイント
今後、同社が注力すべきは、まずは赤字が続いている利益面の改善です。EC市場全体は拡大傾向にある一方で、広告費や物流費が上昇しており、粗利の確保が難しい状況に置かれています。ここで重要なのは、コスト構造を再点検し、在庫管理や配送の効率化を実現することです。また、自社公式サイトへの誘導やメルマガ、SNSによるリピーター育成など、販売チャネルの最適化も欠かせません。顧客との接点を増やすことで顧客単価や購入頻度を高め、収益の安定化を図る動きが期待されます。さらに、海外顧客へのアプローチも成長戦略の一つになり得るでしょう。インナーウェアやルームウェアは国や地域によって好まれるデザインやサイズが異なるため、ニーズ調査やパートナーの開拓を進めることで新市場を開拓できる可能性があります。ECプラットフォームや配送網の国際化が進む中、こうした海外展開の成功が実現すれば、同社の売上規模を一段と拡大させるきっかけになるかもしれません。株式市場から見ても、利益面の立て直しと新市場への進出が実行されれば、投資家の期待が高まり、株価の上昇要因となる可能性があります。いかに今の苦しい状況から抜け出し、成長エンジンを再始動させるかが、今後の白鳩の大きな注目ポイントといえるでしょう。

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