企業概要と最近の業績
ネットイヤーグループ株式会社は、デジタルマーケティングを中心としたコンサルティング事業を展開している企業です。ユーザー体験を重視するUXデザインと高度なデジタル技術の融合を強みとして、企業のデジタルトランスフォーメーションを支援しています。2024年3月期の売上高は約36.3億円で、営業利益は約1.4億円を計上しました。前年同期比では売上高が約7.4%減少しており、市場の競合が激化する中で苦戦が続いているとみられます。ただしデジタル関連の需要は引き続き高いため、今後の巻き返しが期待されている状況です。
一方で、企業としては受注プロジェクトの安定化と新規クライアント開拓が大きな課題となっています。デジタルマーケティング市場においては、AIやビッグデータ解析など技術の進歩が急速であり、顧客の要望や時代のトレンドも絶えず変化しています。そのため、継続的なサービス強化や技術投資を行いながら、既存顧客との関係を深めることが重要です。IR資料でも強調されているように、UXデザインを基盤とする総合的なコンサルティング手法をさらに高めることが、ネットイヤーグループ株式会社の成長戦略において大きな柱といえます。売上減に見舞われつつも、1.4億円の営業利益を確保できている点は、コスト管理や効率化がある程度機能していることの裏付けでもあります。新たな技術を積極的に取り込みながら、自社の強みを最大限に生かすことで、次の飛躍が見込める可能性があります。
ビジネスモデルの9つの要素
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価値提案
ネットイヤーグループ株式会社の価値提案は、UXデザインを軸としたデジタルマーケティング支援にあります。単にウェブサイトやアプリを制作するだけでなく、ユーザー中心の思考を取り入れることで顧客企業が提供するサービスや製品の魅力を最大化し、利用者が使いやすく満足度の高いデジタル体験を得られるように設計している点が特徴です。なぜそうなったのかというと、デジタル化が進んだ現代においては、ユーザーが不便を感じた瞬間に別のサービスへ流れてしまうことが多くなっています。そのためUXデザインの質が企業の成長に直結するようになり、プロの視点でユーザー体験全体を再設計するソリューションが高く評価されるようになったのです。さらに、デジタルマーケティングにおいては広告運用だけでなく、各接点を意識した顧客体験の向上が重要視されるため、同社の「UXデザイン×デジタル技術」という組み合わせが大きな価値を生み出しています。こうした流れの背景には、顧客企業が競合他社との差別化を求めている現状があり、より独自性が高くユーザーに支持されるサービスづくりを実現するために、同社のコンサルティングが必要とされているのです。UXデザインの専門家がプロジェクトに深く入り込んでユーザー視点を反映させることで、新規顧客の開拓やリピート利用を促す持続的なマーケティング施策が成立しやすくなるという点も、価値提案の強みといえます。 -
主要活動
同社の主要活動は、大きくコンサルティング、デジタルコンテンツ制作、そしてシステム開発に分かれます。これらを総合的に提供することで、クライアント企業のデジタル戦略を一貫してサポートできる体制を整えているのが特徴です。なぜそうなったのかというと、デジタルマーケティングを成功させるためには、アイデアや戦略立案だけでなく、具体的なコンテンツやシステムを実際に制作・運用するスキルと知識が不可欠だからです。コンサルティングだけ、あるいは制作だけを行う企業も多いですが、ネットイヤーグループ株式会社は両方の領域を包括できる点で強みを発揮しています。また、クライアント企業はDX推進に際して複雑な課題を抱えることが多く、その解決のためには専門分野を横断する能力が必要とされます。戦略立案から制作、開発までをワンストップで行うことで、プロジェクト間の連携ミスやリソースの分断を減らし、よりクイックなPDCAサイクルを回すことが可能になります。さらに、UXデザインを本質とする企業文化が根付いているため、制作・開発の各フェーズにおいても、常にユーザー目線でクオリティを磨き上げる体制を維持していることが、同社の主要活動における大きな特色です。顧客企業に対しては、コンサルティングで得られた戦略的な示唆を具体的なコンテンツやシステムに落とし込み、それを運用しながら検証・改善を繰り返すことで、継続的な成果創出につなげようとしています。 -
リソース
専門的な人材、デジタル技術、そしてUXデザインのノウハウが同社の重要なリソースです。特に、UXデザイナーやエンジニア、データサイエンティスト、コンサルタントといった高度な専門性を持つ人材が多数在籍している点が強みとされています。なぜそうなったのかを考えると、昨今のデジタルマーケティング環境はテクノロジーの進化が著しく、ビッグデータの活用やAIを駆使した分析などが求められるからです。さらに、顧客企業がDXに取り組む際には、スピード感をもって変革を実行する必要があるため、幅広い知識と経験を持つ人材がそろっているほうがアドバンテージになります。UXデザインの分野でも、ただサイトを綺麗に作るだけでなく、ユーザーの行動心理やインタラクションを深く理解する能力が求められるようになりました。同社では、こうした人材を自社のコアリソースと位置づけ、継続的な教育やスキルアップ支援に注力することで、デジタル技術の進化に対応し続けています。結果として、変化の激しい市場の中でも、専門性の高い人材がイノベーションを生み出す土台が形成され、顧客企業からの信頼獲得にもつながっていると考えられます。 -
パートナー
クライアント企業と技術パートナーが、ネットイヤーグループ株式会社の主要なパートナーといえます。特に大手企業や成長企業からのプロジェクト受注を通じて実績を積み重ねることが、同社の大きな収益源になっています。なぜそうなったのかというと、デジタルマーケティングの世界では単にエンドユーザーを意識したデザインのみならず、企業が利用する各種システムやプラットフォームとの連携が不可欠であり、専門技術を持つ外部企業と連携する必要があるからです。加えて、AIやAR/VRなどの先端技術を導入する際には、一社単独ですべてを内製するよりも、技術パートナーと協力するほうが効率的に最新のテクノロジーを取り入れられます。クライアント企業との関係においては、ただの下請けではなく「パートナーシップ」を重視し、長期的な顧客満足やブランド価値の向上を目指すコンサル型の提案を行うことで、プロジェクト終了後も継続的に関係を保つ戦略が取られています。このような広範なパートナー連携の背景には、デジタルマーケティングの領域が非常にスピード感をもって進化している現状があり、総合的な解決策を早急に提供するために、社外との協業を強化する必要があるという判断があるのです。 -
チャンネル
チャンネルとしては、直接営業とオンラインプラットフォームが挙げられます。大手顧客を中心に成果の高いプロジェクトを展開してきた同社は、これまでの顧客ネットワークを活用した直接アプローチを得意としています。なぜそうなったのかというと、デジタルマーケティングのサービスは高額になりやすいことや、顧客側が求めるソリューションが複雑化しているため、ヒアリングや提案など対面での丁寧なコミュニケーションが不可欠だからです。一方でオンラインプラットフォームを活用することで、中小企業や新規顧客の開拓を行う取り組みも進んでいます。セミナーやウェビナーを通じてUXデザインやデジタル技術の魅力を発信し、自社の知名度を高めるとともに、新たな顧客層にリーチする試みが行われています。また、SNSやオウンドメディアを使って事例紹介やノウハウを公開することも、潜在顧客との接点づくりに役立っています。こうしたチャンネル拡充の背景には、時代の変化に合わせて顧客の情報収集がオンライン化している現実があり、そこに対応する形で認知度を高めていく必要があると考えられているためです。 -
顧客との関係
プロジェクトベースの協力関係が中心となっていますが、より戦略的なコンサルティングを継続して行い、長期的なパートナーシップを構築するケースも増えています。なぜそうなったのかというと、デジタルトランスフォーメーションは一度の施策で完結するものではなく、継続的なアップデートや検証が欠かせないからです。特にUXデザインを重視したサービスの場合、ユーザーの動向やテクノロジーの進化に合わせて改善を重ねる必要があります。そのため、プロジェクト単位で契約を結びつつも、その後の運用サポートやアップグレードを任されることが多く、一度の取引が継続案件につながる傾向が強いといえます。クライアント企業としても、初回の成功体験を経て「もっと改良したい」「新たな機能を取り入れたい」と考えることが多く、そのたびに同社に依頼が集まる仕組みができ上がっています。このようにプロジェクトが増えるほどネットイヤーグループ株式会社の価値が再認識されるため、顧客との関係が深まっていくのは必然ともいえます。ただし、競合企業も類似サービスを提供しているため、顧客との長期的な信頼関係をどう築くかが重要なポイントになっています。 -
顧客セグメント
顧客セグメントとしては、主にデジタルトランスフォーメーションを目指す企業がターゲットになっています。特に大手企業や新興のIT企業などが主力顧客で、より高度なUXデザインやマーケティング戦略を必要としている点が共通しています。なぜそうなったのかというと、デジタル化が遅れている企業やこれから本格的にDXを推進しようとする企業が、外部の専門家へ支援を依頼するケースが急速に増えているからです。また、BtoCのサービスを展開する企業ほどUXの重要性を強く認識しており、顧客体験の質が収益に直結するため、ネットイヤーグループ株式会社の提案が高く評価される傾向にあります。さらに、企業規模が大きいほど導入費用を確保しやすく、また導入効果も大きく出るため、同社にとってはビジネスチャンスとなっています。とはいえ、今後は中堅・中小企業へもサービスを広げることで、市場の裾野を広げる動きが進む可能性があります。その背景には、デジタルツールの低価格化や利便性の向上によって、より多くの企業がデジタルマーケティング支援を必要としている現状があるからです。 -
収益の流れ
収益構造はプロジェクト契約とコンサルティングフィーが中心で、案件の規模や期間によって売上が変動するという特徴があります。なぜそうなったのかというと、UXデザインやシステム開発は顧客の要望に合わせたオーダーメイドの作業が多く、都度見積もりを出すプロジェクト型の仕事が基本だからです。コンサルティングフィーは戦略立案や要件定義における支援などを含むため、プロジェクトの最初の段階から契約が生じやすい構造といえます。また、運用フェーズでは継続的に費用が発生するメンテナンスや改善提案の費用もあり、リピーター顧客をつなぎとめることで収益の安定化を図っています。ただし、サブスクリプションモデルのように毎月固定で入ってくる収益源は限られていると想定され、受注が途切れると売上が一時的に落ち込みやすいリスクも存在します。今後、定期的なコンサルや保守サービスの拡充によってリカーリングビジネスを増やしていく可能性がありますが、現在のメインはあくまでプロジェクトベースになっています。 -
コスト構造
主なコスト要素は、人件費、技術開発費、そして営業費用です。なぜそうなったのかというと、UXデザインからシステム開発、コンサルティングに至るまで、多くの専門スタッフが関わるため、人件費のウェイトが高くなるのは当然といえます。さらに、先進的な技術を導入するための研究開発費やツールの利用コスト、最新のマーケティングノウハウを学ぶための研修費などもかかります。また、クライアント企業への提案活動や広報・広告費用も、競合他社とのシェア争いが激しくなる中では重要な投資領域です。これらのコストをどう効率化していくかが、営業利益を安定させるうえでのポイントになります。同社の場合、2024年3月期の営業利益が約1.4億円であったことから、一定のコストコントロールを実現していると推測されますが、売上減が続けば固定費が重荷になるリスクも否めません。今後、プロジェクトごとの利益率管理や人材活用の最適化など、コスト面の精査がよりいっそう重要になりそうです。
自己強化ループ
ネットイヤーグループ株式会社における自己強化ループ、つまりフィードバックループは、UXデザインによって顧客企業のデジタルトランスフォーメーションを成功へ導き、その成功事例がさらに新規案件を呼び込む構造となっています。まず、同社はプロジェクト開始時に徹底した顧客企業の課題分析とユーザーインサイトの探索を行い、最適なデジタル戦略を提案します。その結果、顧客企業が市場で差別化に成功すると、その成功事例が同社のポートフォリオとして蓄積され、今度は他の企業に対して強い説得力を持つセールスポイントになります。特に、数字や具体的な成果が提示できる成功事例は、まだデジタルシフトに踏み切れていない企業にとって魅力的な導入事例となり、同社への相談につながりやすいのです。
このように一度の成功体験が次の案件を生み出すポジティブサイクルは、UXデザインとデジタルマーケティングが密接に連携しているからこそ成り立ちます。ユーザー体験を向上させるデザイン思考が評価されることで、結果として顧客企業のブランド価値や収益が高まり、その成果を業界内にアピールすることでさらなる引き合いが増えるというわけです。顧客企業も、成功した実績を自社PRに活用できるため、継続的にアップデートや新規プロジェクトを依頼する傾向が強まります。こうしたサイクルが継続するほど、同社が蓄積するノウハウも質量ともに向上し、次のクライアントへと還元されていく好循環が形成されるのです。競争の激しいデジタルマーケティング市場で生き残るには、このような自己強化ループをいかに回し続けられるかが重要なポイントとなります。
採用情報
同社の採用情報では、初任給が公開されていませんが、年間休日は120日以上を確保しています。人材育成にも積極的で、UXデザインや最新テクノロジー関連の研修体制を整えているとみられます。ただし、具体的な採用倍率は公開されていません。デジタルマーケティングやUXデザインの領域は、企業によっては未整備な部分が多く、そこを専門的に支援できる人材の需要は高い傾向にあります。そのため、ネットイヤーグループ株式会社としては、いかに優秀なエンジニアやコンサルタントを確保していくかが今後の成長に直結すると考えられます。人材の定着率を高めるには、ワークライフバランスやキャリアパスの明確化も大切ですので、休日数だけでなく報酬や業務内容の魅力を含めた総合的な環境づくりがカギになるでしょう。
株式情報
ネットイヤーグループ株式会社は証券コードが3622で、2025年1月23日時点の株価は1株当たり570円となっています。配当金については公開情報がなく、現時点ではキャピタルゲインを狙う投資家が中心とみられます。デジタルマーケティング市場が成長産業として注目される中、同社の売上が減少している点は投資家から見ても評価が分かれる要因となりそうです。今後、再成長の戦略や新技術の導入などが功を奏して売上回復が見えた際には、株価の動きが活発化する可能性があります。IR資料でも成長戦略を積極的にアピールすることが大切であり、それが投資家の信頼感を高める要因につながるでしょう。
未来展望と注目ポイント
今後のネットイヤーグループ株式会社においては、継続収益モデルの確立が大きな課題となります。現在はプロジェクト単位で売上が上下する収益構造のため、顧客から長期的に定期収益を得られるサービスを作り上げられれば、売上の安定化が期待できるでしょう。例えば、月額課金型のUX改善コンサルや運用サポート、AIを活用したマーケティングオートメーションの導入支援など、顧客企業が持続的に利用したいと考えるサービスを強化することで、新たな柱を育てる可能性が考えられます。
また、人材確保と育成についても大きな注目ポイントです。UXデザインやデジタル技術に精通するプロフェッショナルは市場価値が高く、他社との採用競争も激化しているため、いかに魅力的なキャリアパスや働きやすい環境を提供できるかが企業力を左右します。さらに、デジタルトランスフォーメーションの需要が増す中で、海外市場や新興技術分野への拡大余地がどれほどあるかも気になるところです。海外の優良企業とのパートナーシップやM&Aによって専門技術を取り込み、新たなソリューションを開発できれば、さらなる飛躍が期待できます。
今のところ売上減という厳しい局面を迎えていますが、UXを軸とするデジタルマーケティング支援はニーズが高まる市場です。そこにAIやクラウド技術、データ分析などを積極的に組み合わせることで、顧客企業の期待を超えるサービスを生み出すチャンスは十分にあります。競合他社に対しても強い差別化要素を発揮できれば、次の成長ステージへ向けた足がかりを得られるでしょう。企業の成長戦略として、継続収益型ビジネスと新技術との連携をどう進めるかが、投資家や市場関係者からも注目されるポイントとなりそうです。
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