NCS&Aの企業概要と最近の業績
NCS&Aは1961年に大阪市で創業したシステムインテグレーターです。長年にわたり培ってきた技術力と豊富な導入実績を活かし、情報システムに関する多角的なサービスを提供しています。近年では自社製品によるソリューション分野の拡大を図り、他社との差別化を強化している点が大きな特徴です。2025年3月期の中間決算では売上高97億6,800万円を達成し、前年同期と比較すると売上が伸びていることが分かります。営業利益は8億9,100万円となり横ばいでしたが、経常利益は9億1,300万円、当期純利益は5億6,900万円と堅調に推移しました。これらの数字から、マイグレーション事業を含む受託開発やシステムインテグレーションに加えて、自社製品が着実に収益に貢献している様子がうかがえます。また自社製品は全体売上の約26パーセントを占めるまでに拡大し、高い収益性をもたらす原動力となっていることも見逃せません。これからの成長戦略を考えるうえで、同社が蓄積してきた技術と顧客基盤をもとにさらにシェアを伸ばしていく可能性があるといえます。
ビジネスモデルの9つの要素
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価値提案
NCS&Aが提供する価値は、自社製品とシステムインテグレーションを組み合わせた包括的なITソリューションです。具体的には、顧客のニーズを細かくヒアリングしたうえで、最適なシステムの開発から導入、運用保守までをワンストップで提供しています。中でも自社製品は高い収益性をもたらし、コストパフォーマンスに優れたソリューションとして評価されています。なぜそうなったのかというと、長年の開発実績を通じて蓄積されたノウハウが自社独自の製品群に凝縮されており、標準化・汎用化を進めることで顧客企業の多様な要望に応えやすい仕組みを作り上げたことが大きな要因です。さらに24時間365日の保守サポート体制も評価され、顧客との長期的な関係性を強化している点が同社の価値提案をいっそう明確にしています。 -
主要活動
主な活動としては、システム開発や導入、保守を中心に、マイグレーション事業の推進、自社製品の継続的な改良があります。顧客ごとに合わせてスクラッチ開発を行うケースも多く、特に大手企業からの受託開発では専門的な領域のノウハウが評価されています。なぜそうなったのかというと、創業以来の長い歴史の中で多岐にわたるシステム構築に携わり、技術者が蓄積した知見が他社との差別化につながっているからです。また、自社製品を活かしたソリューション提案や機器販売によるトータルサポートを一体的に提供することで、付加価値を高めながら安定した収益を生み出しているのも特徴です。 -
リソース
最大のリソースは技術職を中心とした優秀な人材であり、単体で900名以上、グループ全体では1,190名もの従業員が在籍しています。特にシステムインテグレーション領域では、要件定義から運用保守に至るまで多岐にわたるフェーズを経験したエンジニアが多く、これが総合力を高める源泉となっています。なぜそうなったのかというと、創業当初からの長い開発実績を通じて培われた教育体制や現場でのOJTが機能しており、若手からベテランまで幅広い層が知見を共有しやすい企業文化を築いたことが要因と考えられます。 -
パートナー
約200社にのぼるパートナー企業との協力体制もNCS&Aのビジネスモデルを支えています。ソフトウェアベンダーだけでなく、ハードウェアメーカーやクラウドサービス提供企業など、幅広い協業先を確保しているため、顧客企業の多様な課題に応じた最適なソリューションを選択できます。なぜそうなったのかというと、受託開発からスタートし、あらゆる業種・業態に対応してきた経験からパートナー企業との信頼関係を積み重ね、相互補完による効率的なサービス提供を目指してきた背景があります。 -
チャンネル
営業活動は直接営業とパートナー経由の両軸で展開しており、約1,800社にもおよぶ多様な顧客セグメントにアプローチしています。自社製品については、パートナー企業が導入サポートを行うケースも多く、エンドユーザーと密接にコミュニケーションを取りながら導入効果を高める仕組みを構築しています。なぜそうなったのかというと、SI主体で培った顧客との信頼関係をベースにしつつ、さらなる市場拡大のためにパートナー企業を積極的に活用し、より広い範囲で自社製品を展開する方針を打ち出した結果といえます。 -
顧客との関係
24時間365日の保守サポート体制が大きな強みであり、導入後も長期間にわたって顧客と緊密に連携しています。課題発生時の早期対応によりシステムダウンを最小限に抑えることで、顧客満足度を高めるだけでなく、追加の改修やサービス提案にもつなげています。なぜそうなったのかというと、長年の実績から、システムが止まることのリスクを深く理解しており、運用フェーズの品質を重視して信頼を得ることが受注拡大につながると考えているためです。 -
顧客セグメント
約1,800社もの顧客企業は製造業や流通業、公共機関など多岐にわたります。中小企業から大手企業まで幅広い規模の案件を扱い、それぞれに合わせた柔軟な開発体制を整えています。なぜそうなったのかというと、創業当初から得意としていた受託開発やシステムインテグレーションにおいて、業種を限定せず幅広いニーズに応えることで事業を拡大してきた結果、多様な顧客基盤が形成されてきたという経緯があります。 -
収益の流れ
収益は主にシステム開発や自社製品の導入支援、そして保守サービス料によって生み出されています。近年では自社製品の売上比率が約26パーセントに上昇しており、ハードウェア販売や受託開発と組み合わせることで複数の収益柱を形成することに成功しています。なぜそうなったのかというと、受託開発だけに依存せず、独自ソリューションを生み出すことが利益率向上につながると判断し、積極的な開発投資を行ってきた成果が反映されているからです。 -
コスト構造
主なコストは人件費や開発費、さらに保守運用にかかる費用です。自社製品を開発するための研究開発コストも継続的に発生していますが、その分、導入後の保守費用やライセンス収益につながりやすいメリットが得られています。なぜそうなったのかというと、システムインテグレーターとしての開発体制に自社製品の開発部門を組み込み、重複する工程を最適化して効率化を図ることで、全体コストを抑えながら付加価値の高いソリューションを提供する方針を打ち出しているためです。
自己強化ループを生むポイント
NCS&Aの自己強化ループは大きく二つに分けられます。一つは自社製品の売上比率を高めることで収益力が向上し、その利益をさらに新製品開発に投資する好循環です。自社製品が増えれば増えるほど顧客ごとのカスタマイズニーズが蓄積され、より市場に適応した製品を開発できるようになります。もう一つは従業員持株会などのインセンティブ制度により、従業員が企業価値を高める意識を強く持つようになる点です。モチベーションを持って働く従業員が増えれば、さらに生産性やサービス品質が向上し、その結果業績が伸びて株価が上昇し、再び従業員への還元が可能になります。このようなフィードバックループをいくつも重ねることで、企業全体の成長スピードを加速させているのがNCS&Aの特徴といえます。
採用情報と株式情報
採用情報では初任給の具体的な金額は公表していませんが、有給休暇は平均17.9日取得されており、ワークライフバランスを重視する姿勢がうかがえます。採用倍率は未公開のため詳細は不明ですが、技術職を中心に多彩な人材を募集していることもあって、多くの応募が集まると考えられます。
株式に関しては証券コード9709として上場しており、2024年3月期は3期連続の増配を実施したことでも話題になりました。さらに株価は2024年時点で1株あたり840円という水準で推移しており、投資家にとっても安定性と成長性のバランスに期待がかかります。
未来展望と注目ポイント
これからのNCS&Aは自社製品を軸としたサービスラインナップの拡充と、長年培ってきた受託開発のノウハウを掛け合わせることで、より幅広い産業分野へ展開していく可能性があります。特にマイグレーション事業はクラウド化やシステム統合など、企業のDX推進に欠かせない要素として注目されています。こうしたニーズの高まりを的確につかむことができれば、自社製品のさらなる売上拡大が見込まれ、投資余力も生まれて次の成長投資へとつながる流れになるでしょう。また、競合他社との差別化ポイントとして、24時間365日の保守サポートや独自の技術者教育プログラムなどが挙げられます。これらの強みを活かしながら、最先端技術への対応や新しいビジネスモデルの開発を進めることで、これからの市場でも存在感を高めていくことが期待されます。経営の安定性と成長性を両立する企業として、今後のIR資料も含めた情報開示に注目していきたいところです。
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