企業概要と最近の業績
株式会社日水コン
2025年5月15日に、2025年12月期の第1四半期の決算が発表されましたね。
それによると、売上高は71億2,600万円、営業利益は13億5,200万円だったそうです。
経常利益は13億6,300万円、親会社株主に帰属する四半期純利益は9億3,800万円という結果でした。
2024年10月に上場したばかりということもあり、前年の同じ時期との比較データは記載されていませんでした。
事業は「建設コンサルティング事業」の単一セグメントで、防災・減災対策や社会インフラの維持管理といった需要に支えられ、事業環境は堅調に推移しているとのことです。
通期の業績予想に変更はないみたいですよ。
ビジネスモデルの9つの要素
価値提案
日水コンが提供する価値提案は、上下水道や河川・環境などの分野における高度な技術コンサルティングです。
安全かつ持続可能な水環境の構築は社会的要請が非常に強く、公共インフラとして不可欠な存在といえます。
専門技術者が多岐にわたる調査・設計・工事監理を担うことで、自治体や官公庁、さらには海外の政府機関や民間企業が抱える課題を総合的に解決します。
【理由】
水インフラは日常生活を支える基盤であり、法律や国際規格などの準拠が必須となるうえに、安全性や耐久性などの高い品質要求があります。
このような高度かつ複雑な要件に応えられる専門家集団であることが、日水コンの価値提案として確立されてきた背景です。
また、自然災害の頻発化や都市化の進行に伴い、水資源管理のあり方が世界的にも重要視されるようになり、これが同社の価値提案をさらに際立たせています。
主要活動
同社の主要活動としては、上下水道や河川・環境に関する調査、計画、設計、工事監理、そして維持管理の提案が挙げられます。
これらの工程を一貫して担うことで、プロジェクトの統合的な品質や効率を高めることが可能です。
【理由】
水インフラ事業は要件定義から施工、その後のメンテナンスまで長期にわたる工程が不可欠であり、局所的なサービス提供では顧客のニーズを満たしにくい現実があります。
そこで同社は、高度な専門知識を持つエンジニアを多数擁し、計画段階から事業完了後の運用支援まで包括的にサポートする体制を整えました。
こうした統合的な活動が求められるのは、水質基準や環境規制への適合はもちろん、限られた予算の中で最適な設計や施工管理を行う必要があるからです。
この一気通貫の活動が、同社の競争優位につながっています。
リソース
日水コンのリソースは、第一に専門技術者の豊富さが挙げられます。
上下水道や河川整備に特化した知識・資格を持つエンジニアが集まっており、現場経験に裏打ちされたノウハウが強みです。
加えて長年のプロジェクト実績によって蓄積されたデータやノウハウも大きなリソースとなります。
【理由】
水インフラの世界では技術の習熟と現場経験が極めて重要で、新たな技術者が育つまでには時間と投資が欠かせません。
日水コンは創業以来、官公庁や自治体、海外機関とともに多種多様なプロジェクトに携わるなかで、ノウハウを組織的に蓄積し続けてきました。
この継続的な学習や研修システムが企業文化として根付いていることで、質の高いプロジェクト遂行が可能となり、結果的に大きな差別化要素として機能しているのです。
パートナー
パートナーとしては、国内の官公庁や地方自治体に加えて、建設会社や設備メーカー、さらに海外の政府機関や援助機関などが含まれます。
【理由】
水インフラ事業は単独で完結することは少なく、実際の施工や設備調達、あるいは海外現地でのライセンスや規制対応など、多方面の協力が欠かせません。
日水コンは長年の実績を通じて、信頼できるパートナー企業や海外の行政組織とのコネクションを築いてきました。
このパートナーネットワークがあるからこそ、国内外を問わず柔軟に案件を受注し、包括的なソリューションを提供できるのです。
また近年は官民連携プロジェクトやコンセッション方式など、民間企業との協業機会も増えており、そうした案件においても同社のパートナーシップが活かされています。
チャンネル
日水コンのチャンネルは、国内であれば官公庁や自治体が発注する入札案件への参加、あるいは直接提案による新規案件獲得が主流となっています。
海外では国際援助機関や政府機関を通じた案件が中心ですが、現地パートナーとの共同受注も増えています。
【理由】
水インフラを整備する主体が公的機関であることが圧倒的に多いからです。
しかし近年は企業や学校など民間セクターが独自に水処理設備を導入するケースもあり、そうした需要を捉えるべく営業ルートを広げています。
チャンネルを多角化することで、市場リスクの分散と収益機会の拡大が図られ、さらには海外でも多国籍企業との連携や、国際コンペへの参加など新たな受注可能性を確保しています。
顧客との関係
同社の顧客との関係は、プロジェクトベースで始まるものの、長期的な信頼関係へと発展するケースが多いです。
【理由】
水インフラというのは一度整備すれば、その後の維持管理や定期的な改修・更新のニーズが発生します。
初回のプロジェクトで高い技術力やコミュニケーション力を示せば、その後の追加発注や関連事業も受注しやすくなります。
公共事業の場合は特に長いスパンでの検討が必要となり、数年から十数年単位で同じ自治体とのやり取りが続くことも珍しくありません。
このように長期にわたる関係を維持できる要因として、担当者レベルでの密なコミュニケーションや、持続的なフォローアップ体制が挙げられます。
顧客セグメント
顧客セグメントは大きく分けて、日本国内の官公庁・地方自治体、民間企業、そして海外の政府機関や国際機関に区分できます。
【理由】
水インフラの整備主体が国内外問わず公的機関であることが依然として多いからです。
しかし一方で、産業用水や環境関連コンサルティングを必要とする民間企業も増えており、そこが新たなビジネスチャンスとなっています。
さらに、海外の新興国や発展途上国でも上下水道整備のニーズが高まっており、国際機関や各国政府などを通じた受注機会が拡大しています。
こうしたセグメントを幅広くカバーすることで、景気や政策に左右されにくい事業体質を築いている点が特徴です。
収益の流れ
収益の流れは、主にコンサルティングフィーと設計・管理業務に対する報酬が中心となります。
【理由】
建設コンサルタントという業態の特性上、実際の施工工事そのものはゼネコンなどが担うことが多く、同社は技術的指導や設計、工程管理によって付加価値を提供します。
そのため、プロジェクトごとに見積もりを作成し、受注金額が決まる構造になっています。
さらに、運用・維持管理フェーズでのコンサルティングや調査業務など、長期的に収益を得られる仕組みにも注力しています。
海外案件の場合、国際機関の融資や支援金によって支払われるケースもあり、安定収益を確保しやすい部分も魅力です。
コスト構造
コスト構造としては、人件費が最も大きな割合を占めます。
【理由】
コンサルティング業務は人が中心となって行う知識集約型のビジネスであり、高度な資格や専門能力を持つ技術者の育成・確保が欠かせません。
また、研究開発費や海外事業展開に伴う現地調査費なども無視できないコスト要素となっています。
建設や設備工事は外部パートナーに委託することが多いため、工事原価そのものよりも専門家の人件費や研修費、入札活動に伴う営業費用などが大きく関与しているのが特徴です。
こうしたコストを継続的に最適化しながらも、高度な専門性を維持するための投資を怠らないことが、企業としての競争力を高める鍵となっています。
自己強化ループ
日水コンでは、専門性の高い技術者の育成と実績の蓄積が新たな受注を呼び込む自己強化ループが機能しています。
優秀なエンジニアは難易度の高いプロジェクトを成功させることで企業の信頼度を高め、さらなる高付加価値案件を受注しやすくなります。
これにより得られた利益は再投資され、新たな技術研修や人材育成に充てられるため、さらに高度な提案力を身につけることが可能です。
このような好循環が継続する背景には、会社として長期的な視点で人材を育てる企業文化があるからです。
建設コンサル業界では、プロジェクトが終われば契約も終了するケースが多い一方、同社は定期的なメンテナンスや追加調査の提案を行うなど、顧客との長期的な関係構築にも注力しています。
こうした継続的なコミュニケーションが、過去の実績をさらに肥大化させ、新たな受注につながる構図を生み出しています。
さらに、海外案件の増加によりグローバルな知見も高まり、結果として国内外のプロジェクトでより高度なコンサルティングが可能になります。
このフィードバックループが盤石な企業体質を作り上げ、持続的な成長の原動力となっているといえるでしょう。
採用情報
同社の採用情報では、大学院修士課程修了者の初任給が272,000円、四年制大学卒が251,086円、高等専門学校卒が233,600円となっています。
年間休日は122日で、ワークライフバランスにも配慮した体制を整えています。
採用人数としては技術系が25~30名程度、営業・管理系が若干名という計画で、専門性の高い人材を積極的に受け入れたい姿勢がうかがえます。
昨今の建設コンサルタント業界は人材不足が懸念されており、優秀な人材を確保するための給与水準や研修制度の充実化が進められています。
応募人数も年々増減があるものの、高度な専門性を要するため選考は厳選される傾向にあります。
最先端の技術力を培える環境を求める学生にとっては魅力的ですが、同時に求められるスキルも高いため、倍率は依然として高めです。
株式情報
日水コンの銘柄コードは261Aで、2024年12月期の1株あたり配当金が58円の見通しとされています。
2025年1月27日時点の株価は1,442円となっており、配当利回りを計算するとおおむね4%台の水準です。
建設コンサルタント業界としては比較的高めの利回りといわれており、安定したインカムゲインを狙う投資家から注目を集めやすい面があります。
公共事業や海外プロジェクトによる安定収益が見込まれる一方、新技術や人材投資への先行投資がどれだけ利益を押し上げるかが株価に反映されるポイントです。
近年は業績好調に伴い増配を検討する企業が多く、同社も成長戦略と株主還元のバランスをどのように取っていくかが注目されています。
未来展望と注目ポイント
今後、同社がさらなる成長を遂げるうえで注目されるのは、新たなクラウドサービスやAI技術の導入によるサービス強化です。
すでにAWSと深い連携を行っている強みを活かし、サーバーレスアーキテクチャをはじめとする新たな技術を取り入れることで、ホスティングの高性能化や運用コストの最適化を実現する可能性があります。
また、地方企業のデジタル化ニーズが高まるなかで、FinanScopeのような地方企業向け支援サービスを拡充することで、新たな需要を取り込むことも期待されます。
さらに、WordPressを中心に多様なプラグインや周辺ツールが開発されることで、顧客が望む機能をより柔軟に実装できる環境が整いつつあります。
こうした拡張性や専門性を同社がいかに活かしていくのかが、今後のビジネス拡大の要となるでしょう。
まとめ
日水コンは、水インフラに関する高度な技術コンサルティングを主軸とする企業として、国内外で安定した需要を掴んできました。
2023年12月期の売上高218.8億円に対して、2024年12月期予想が231.5億円と着実な伸びを見せ、営業利益や純利益といった主要な指標も安定的に成長しています。
これは同社のビジネスモデルが、公共事業の安定需要と海外の成長市場を両立できる点に強みを持つためです。
専門技術者の育成と実績の蓄積により、より高度な案件を受注できる自己強化ループを回していることも大きな特徴といえます。
一方で、人口減少に伴う国内市場の縮小や海外進出によるリスクなど、留意すべき課題も存在します。
しかしながら、世界的にも水インフラ整備の必要性は高まっており、そこに高度な提案力や新技術を融合したソリューションを提供できる企業は限られています。
企業としてはDXの推進や新しい建設手法の導入など、変化を先取りする姿勢がより求められるでしょう。
今後も同社がどのような成長戦略を描き、株主還元と企業価値向上を両立させていくかは、水インフラをめぐる社会的課題の解決にも直結するため、大いに注目したいところです。
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