企業概要と最近の業績
株式会社海帆
2025年3月期の連結業績は、売上高が12億9900万円となり、前の期と比べて64.3%の大幅な減少となりました。
営業損益は3億900万円の損失、経常損益は2億1200万円の損失を計上しました。
一方で、親会社株主に帰属する当期純利益は、子会社株式の売却益などが寄与し、33億4800万円の黒字（前期は7億3700万円の赤字）となりました。
この業績は、同社が従来の居酒屋を中心とした飲食事業から、事業の軸足を大きく転換していることを反映したものです。
売上高の大幅な減少は、不採算であった飲食事業の大半を売却したことによるものです。
現在は、将来の成長分野として新たに核融合事業やホテル運営再生事業などを開始しており、事業構造の変革を進めています。
最終的な黒字は、事業売却に伴う一時的な利益によるもので、本格的な収益改善はこれからの新規事業の成果にかかっています。
【参考文献】https://kaihan.co.jp/
ビジネスモデルの9つの要素
価値提案
同社が顧客に提供している最大の特徴は、昭和の懐かしさを活かしたレトロ居酒屋という独自の飲食体験です。
利用者はノスタルジックな雰囲気に浸りながら、地域に根ざした料理やサービスを楽しむことができます。
さらに、太陽光発電を通じて環境に配慮したクリーンな電力を供給できる点も、企業としての新たな価値を生み出しているといえます。
【理由】
飲食業界の競争が激化する中で独自性の確立が急務となり、レトロブームと結びつける形で集客力を高める必要があったからです。
加えて、社会全体でサステナビリティ意識が高まる中、再生可能エネルギー事業へ参入して社会貢献と企業価値向上を両立させる戦略が求められました。
このように、飲食体験と環境配慮の二面から幅広いニーズに応えるのが海帆の価値提案です。
主要活動
海帆の主要活動は、飲食店舗の企画・運営と太陽光発電所の開発・運営の大きく二つに分かれます。
居酒屋分野では昭和食堂などのブランドを展開し、店舗ごとに地域性や客層に合わせたメニュー開発やキャンペーンを実施しています。
太陽光発電事業では、設置場所の選定から建設、売電までを一貫して行い、環境に優しいエネルギーの安定供給に取り組んでいます。
【理由】
飲食一本では市場リスクが大きいため、再生可能エネルギーという持続可能な分野に進出することで、収益源の多角化と安定化を図る必要があったからです。
この二つの活動を相乗的に発展させることで、企業成長と社会的責任を両立させる道を選択しています。
リソース
主力業態である昭和食堂などのレトロ居酒屋を中心とした店舗網、そしてそれを支えるスタッフのマネジメント力や商品開発力が飲食事業の大きなリソースとなっています。
また、再生可能エネルギー事業では発電所の設備と運営ノウハウが重要なリソースといえます。
【理由】
飲食店運営で培った地域との結びつきや顧客との接点が、新規業態の開発や他エリアへの展開にも応用できるためです。
さらに、エネルギー事業で安定的な売電収入を得ることによって投資リスクを分散し、飲食の既存店舗や新店舗への投資に回す原資を確保できる仕組みを作っているのです。
パートナー
海帆のパートナーとしては、飲食事業であれば食材供給業者や物流企業、店舗開発を支援するデザイン会社などが挙げられます。
また、地域イベントとのコラボレーションによる集客効果も大きいため、地元の行政機関や商工会との連携も重視されています。
一方、太陽光発電では大規模設備の建設やメンテナンスを行う工事会社、金融機関などと連携しながらプロジェクトを進めているのが特徴です。
【理由】
飲食事業は高品質な食材や安定した物流の確保が欠かせず、エネルギー事業では専門性が高い設備投資と資金調達が必須となるからです。
こうした協力関係を築くことで、新店舗のスムーズな立ち上げと発電事業の安定運営を同時に実現しています。
チャンネル
海帆の顧客との接点となるチャンネルは、大きく分けると直営店舗とオンラインの情報発信です。
各地域に展開するレトロ居酒屋を中心に、現地での接客や地域限定のメニュー構成が顧客体験の要となっています。
またSNSやウェブサイトを通じて、季節の新メニューやキャンペーン情報を発信し、リピーターの獲得や新規顧客の呼び込みを図っています。
再生可能エネルギー事業では、主に電力会社への売電というかたちで収益を得ています。
【理由】
飲食業の集客にはリアルでの体験が欠かせない一方、現代ではオンラインでの露出や口コミが大きな影響力を持つようになったからです。
顧客との関係
飲食事業においては、地域密着のコンセプトとレトロな雰囲気を活かした店舗づくりを通じてリピーターを増やす方針を取っています。
季節メニューやイベント、店舗スタッフとのコミュニケーションなど、顧客が親しみを感じる仕掛けを多面的に行っているのが特徴です。
一方で、再生可能エネルギー事業では直接エンドユーザーとの接点は少ないものの、環境に優しい企業であることがブランドイメージの向上につながります。
【理由】
飲食店のように顧客と直接コミュニケーションを取る場面がないエネルギー事業でも、社会や地域に貢献する取り組みを強化することで、最終的には飲食事業への評価や信頼度を高める相乗効果が見込めるからです。
顧客セグメント
海帆の居酒屋業態は昭和レトロな雰囲気が強みで、30代から60代まで幅広い年齢層がターゲットとされています。
また、ファミリー層にも懐かしさと親しみやすさを感じさせるコンセプトを設けており、子連れでも楽しめる店舗づくりを行うケースがあります。
さらに、再生可能エネルギー事業では、環境意識の高い企業や公共団体などを意識した展開も可能です。
【理由】
飲食ではあらゆる年代が外食する機会を持つため、幅広い層を取り込むことが重要となり、エネルギー事業ではSDGsやESG投資など社会の持続可能性を重視する層へアピールする必要があるからです。
収益の流れ
収益の柱は居酒屋などの飲食店舗からの売上と、太陽光発電による売電収入の二つに大別されます。
昭和食堂を中心としたレトロ居酒屋では、飲食代やアルコール販売が主な売上源です。
そして再生可能エネルギー事業では、発電した電力を電力会社へ売却することで安定的な収益を得ています。
【理由】
コロナ禍による飲食需要の急減など、外部環境の変動が激しい時代には、一本の収益源だけに依存するリスクを避ける必要があったからです。
異なる市場特性を持つ事業を抱えることで、企業全体としての収益基盤を強固にしています。
コスト構造
飲食事業では人件費や食材調達費、店舗維持のための賃料や改装費などが大きな比率を占めます。
レトロな内装を再現するためにはテーマに沿った備品や演出物にもコストがかかります。
一方、太陽光発電事業では設備建設費やメンテナンス費用が主なコストとなります。
【理由】
飲食店舗を増やせば増やすほど固定費が嵩み、エネルギー事業では初期投資が大きいため資金繰りと運用管理のノウハウが不可欠になるからです。
こうした二つのコスト構造をバランスよく管理することで、中長期的な安定経営を目指しているのが海帆の特徴です。
自己強化ループ
海帆は、飲食事業と再生可能エネルギー事業の両方を拡大しつつ、それぞれの成果がもう片方の事業強化につながる自己強化ループを形成しています。
具体的には、レトロ居酒屋などの飲食店舗で新規顧客を獲得し、売上を伸ばすことで得られたキャッシュを太陽光発電設備の建設や運営に投資する流れを作っています。
再生可能エネルギー事業が拡大すれば、安定的な売電収入を得られるようになり、飲食事業における店舗改装や新業態開発のための投資にも使える資金が増えていきます。
この循環がさらに企業イメージを向上させ、環境意識の高い顧客や地域社会からの支持が高まれば、飲食店舗の利用促進につながるという好循環が生まれます。
こうして、片方が伸びればもう片方の成長を後押しできる構造こそ、海帆の大きな強みといえるでしょう。
採用情報
海帆の採用情報については、初任給や平均休日、採用倍率などの具体的な数値は現時点では公開されていません。
ただし、飲食店での接客・調理はもちろん、新業態開発や再生可能エネルギー事業にも携われる可能性があるなど、多様なキャリアパスが考えられます。
人材育成や店舗オペレーションの拡充が企業にとって重要な課題である以上、今後の公式サイトや求人情報の更新には注目したいところです。
株式情報
海帆は証券コード3133で上場しており、2024年3月期は無配となっています。
1株当たりの株価は2025年1月30日時点で1,109円です。
飲食事業の回復と再生可能エネルギー事業の拡大がどのように株価に影響を与えるかが投資家の関心事となっており、成長戦略の進捗状況を定期的に確認することが求められます。
未来展望と注目ポイント
今後、海帆がさらに成長を加速させるためには、レトロ居酒屋を中心とした飲食事業の強みをどのように拡大・進化させるかが鍵となります。
新業態の開発や地域密着サービスの強化を継続しながら、顧客に新鮮な体験を提供し続けることが重要ですす。
また、再生可能エネルギー事業においては、太陽光以外のクリーンエネルギー分野への参入や投資が今後のIR資料で示される可能性もあります。
環境への意識が高まる社会的潮流の中で、エネルギー事業を強化すれば企業イメージの向上だけでなく、さらなる安定収益にもつながるでしょう。
飲食業界では労働力不足や原材料費の高騰が課題となる一方、エネルギー事業への取り組みが企業のリスク分散を後押しする構造が確立できれば、長期的な企業価値向上が期待されます。
こうした多角的な取り組みによる成長戦略の成果が、今後どのように具体化していくのか大いに注目が集まっています。
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