企業概要と最近の業績
株式会社セレス
2025年5月13日に発表された、2025年12月期第1四半期の決算についてお伝えしますね。
売上高は66億3,100万円で、前年の同じ時期と比べて2.2%の減少となりました。
利益面はさらに厳しく、営業利益は2億3,300万円と、前年の同じ時期から66.8%もの大幅な減少となっています。
主力のポイントサイト「モッピー」などを含むモバイルサービス事業は増収増益と好調でした。
しかし、暗号資産やNFTなどを扱うフィナンシャルサービス事業が、市況の低迷を受けて振るわなかったことが、全体の利益を大きく押し下げる主な要因となったようです。
【参考文献】https://ceres-inc.jp/
ビジネスモデルの9つの要素
価値提案
セレスの価値提案は、ユーザーに多様なポイント獲得方法と魅力的な交換先を提供するモバイルサービス事業、そして暗号資産を通じた資産運用機会を提供するフィナンシャルサービス事業の両輪で成り立っています。
特にポイントサイト「モッピー」では会員がネットショッピングやサービスの利用を通じて手軽にポイントを貯められ、そのポイントを現金や電子マネーに交換できる仕組みを整えています。
さらに暗号資産販売所「CoinTrade」を活用することで、貯めたポイントを将来的に暗号資産に交換したり、そのまま暗号資産の購入資金として活用するなど、多彩な選択肢をユーザーに与えています。
こうした幅広い選択肢はユーザーの利便性を高めるだけでなく、セレスにとっても複数の収益源を確保する仕組みに繋がっています。
このようにポイント獲得から暗号資産運用までをワンストップでサポートすることが、セレス独自の価値提案として大きな差別化要因になっています。
【理由】
ポイントや暗号資産など「個人の資産価値を最大化するツール」をまとめて提供することで、ユーザー体験を向上させつつ、広告収入や取引手数料など多面的な収益チャンスを狙うビジネスモデルが時代のニーズと合致したためです。
主要活動
セレスの主要活動は大きく分けて二つです。
まずモバイルサービス事業では、ポイントサイト「モッピー」の運営と、それに付随する広告主との交渉やキャンペーン企画を行っています。
ユーザーが広告やサービスを利用しやすいようにサイトやアプリを改善し、ポイント付与をスムーズに行う管理システムの運用も重要な業務となっています。
またフィナンシャルサービス事業では暗号資産販売所「CoinTrade」を運営し、システムの安定稼働やセキュリティ対策を行いながらユーザーが快適に取引できる環境を整備しています。
両事業を通じて得られるデータ分析にも力を入れており、ユーザーの利用傾向や市場の変化を迅速に把握することで新たなサービス開発や投資判断に繋げています。
【理由】
広告収益や手数料収入を最大化するにはユーザーが安心して長く利用できるプラットフォームを構築する必要があり、そのための運営管理とデータ分析が企業価値の源泉になっているからです。
リソース
セレスのリソースには、国内最大級の会員数を抱える「モッピー」のユーザーベース、安定した稼働を支える技術インフラ、そして暗号資産分野での事業運営ノウハウが挙げられます。
ユーザーベースが大きいほど広告主にとっての媒体価値が高まり、ポイント還元を活用して新規顧客を呼び込もうとする企業が増えていきます。
一方で、暗号資産販売所の運営に必要なシステムインフラやセキュリティ技術にも注力しており、ブロックチェーンや暗号化技術など専門的な知識を有するスタッフを確保し、信頼性の高い運用を実現しています。
【理由】
ポイントプラットフォームと暗号資産販売所の両輪を安定して継続していくには、規模の経済と高度な技術力が欠かせず、長年培ってきたサービス運営の経験と金融サービス領域への進出で得たノウハウが大きな強みになっているためです。
パートナー
同社にとってのパートナーは大きく広告主と金融機関などが挙げられます。
ポイントサイトの運営では、ECサイトや保険会社、クレジットカード発行会社など多岐にわたる広告主との連携が欠かせません。
魅力的なキャンペーンや高還元率のポイントオファーを設定してもらうためには、広告主との良好な関係構築が重要です。
また暗号資産販売所の運営においては、信頼できる金融機関や決済事業者との連携が取引の安全性を高める要素となっています。
【理由】
ポイントビジネスにおいては広告案件そのものが収益源であり、その案件を提供してくれるパートナーの存在が事業存続の鍵を握るからです。
さらに暗号資産市場では法規制やセキュリティ要件が厳しく、外部専門家や銀行などの協力なしには事業拡大が難しいという背景があります。
チャンネル
セレスのチャンネルは、ウェブサイトやモバイルアプリなどのオンラインプラットフォームが中心です。
「モッピー」はウェブ版に加えスマートフォン向けアプリを提供しており、ユーザーがいつでもポイントを獲得できる環境を整えています。
また「CoinTrade」においても、直感的に操作しやすいウェブインターフェースとアプリが提供されており、ユーザーの投資活動をサポートしています。
SNSやメールマガジンなどの情報発信チャネルも活用し、新サービスやキャンペーン情報を素早く広範囲に届けています。
【理由】
ポイントサイト利用者や暗号資産投資家はスマートフォンで手軽にアクセスするケースが多く、マルチデバイス対応がユーザー獲得と定着において不可欠だからです。
オンラインの利点を最大限に活かし、広範なユーザーにリーチすることが事業成長の大きな要因になっています。
顧客との関係
同社はユーザーサポートの充実やロイヤリティプログラムの導入によって、顧客との長期的な関係性を強化しています。
ポイントサイトの問い合わせ対応を迅速に行うだけでなく、定期的に高還元キャンペーンやゲーム要素を取り入れることで、ユーザーが飽きずに利用を続けられる仕組みを整備しています。
暗号資産販売所のほうでも、口座開設手順や取引画面の操作に関する問い合わせに対して丁寧なサポートを行い、安心して利用できる環境を提供しています。
【理由】
ポイントサイトは一度離脱したユーザーを再獲得するコストが高く、暗号資産取引所も利用者が他サービスに移行しやすい分野だからです。
そのため、顧客との関係を維持するためには常に新しいキャンペーンやサポート体制の強化が欠かせません。
顧客セグメント
セレスの顧客層は、ポイント収集に興味を持つ幅広い個人ユーザーと、暗号資産投資を検討する投資家やトレーダーの二つが大きな柱となっています。
ポイントサイト「モッピー」は節約志向の学生から主婦層、さらにはサラリーマンまで、誰でも気軽に利用できるため裾野が広いのが特徴です。
一方で暗号資産販売所「CoinTrade」は、投資感覚で暗号資産に触れたい個人投資家や将来的な価格上昇を見込むホルダーなどが対象となっています。
【理由】
インターネット広告を活用してポイントを獲得したいというニーズと、暗号資産ブームを背景に新たな投資先を探すというニーズは異なるようでいて重なり合う部分もあり、顧客セグメントを細分化しながらも総合的に取り込む方が事業規模を拡大しやすいからです。
収益の流れ
セレスの主な収益源は、ポイントサイト経由で得られる広告収入と、暗号資産販売所が得る取引手数料の二本立てです。
ポイントサイト運営では、ユーザーが登録や商品購入など一定の成果を上げた場合に広告主から支払われるアフィリエイト報酬が大きな部分を占めています。
暗号資産販売所では、ユーザーが通貨を売買するたびに発生する手数料やスプレッドが収益源となります。
【理由】
ポイントビジネスは成果報酬型のアフィリエイトモデルが最も収益化しやすく、暗号資産事業は売買手数料モデルが確立されているため、両方の事業形態を活用することで安定収益と高成長余地を同時に追求できる仕組みを築いているからです。
コスト構造
コスト面では、システム運用費や人件費が大きな割合を占めています。
特にポイント付与の管理や不正利用の監視などを行うために、堅牢なサーバーインフラと専門知識を持つ開発チームが必要となるため、運用コストは高止まりしやすい傾向にあります。
暗号資産販売所も法定通貨との交換機能やウォレット管理などのセキュリティ対策に大きな費用がかかり、さらに金融庁などの規制要件に対応するためのコンサルティング費用も発生しやすいです。
【理由】
ポイントや暗号資産は直接的に金銭価値を扱う性質があるためシステム障害や不正利用のリスクが高く、セキュリティや法令順守に力を入れざるを得ないからです。
その結果、一定の固定費を負担しながらも事業拡大を図る構造になっています。
自己強化ループ
セレスの事業には、ポイントサイトと暗号資産販売所の両面で自己強化ループが働きやすい特徴があります。
まずポイントサイト「モッピー」では、会員数の増加に伴い広告主の出稿意欲が高まり、より多くの広告案件を獲得しやすくなります。
その結果、魅力的なポイント還元率のキャンペーンを打ち出すことが可能となり、再び新規会員が増えるという正のフィードバックが形成されます。
一方で暗号資産販売所「CoinTrade」では、取引高が増えるほど収益も上昇し、その収益をセキュリティ強化や新たな通貨の取り扱い拡充などに再投資することで、さらに利用者数が増加しやすくなるという好循環が生まれます。
両方の事業を掛け合わせれば、ポイントによる還元施策から暗号資産投資への誘導が可能になり、それぞれのユーザー層が相互に行き来することで全体のプラットフォーム価値が高まるという構造です。
このようにして得られた収益やデータを継続的にサービス改善に回すことで、さらなる成長が期待できる自己強化ループが強固に機能しています。
採用情報
セレスの初任給は大学卒で220000円、大学院卒で231900円となっています。
完全週休2日制のもと、年間休日は約124日と働きやすさにも配慮しています。
採用倍率については公表されていませんが、モバイルサービスや暗号資産関連など成長領域を担う企業として、意欲やスキルの高い人材が集まる傾向にあると考えられます。
ポイントサービスとフィンテックを兼ね備えたビジネスモデルを学びたい方や、暗号資産領域で新たなキャリアを目指す方にとっては魅力的な職場環境といえます。
株式情報
セレスは東証プライム上場(銘柄コード3696)で、2024年12月期の配当金は60円が予想されています。
さらに2025年1月31日時点の株価は1株当たり2902円となっており、成長余地と株主還元の両面で注目を集めています。
配当金を含めたトータルリターンを重視する投資家や、暗号資産関連の成長性を取り込む銘柄を探している投資家にとっては興味深い存在です。
未来展望と注目ポイント
今後セレスがさらなる成長を遂げるためには、まずポイントサイト「モッピー」での会員増強と粗利率の向上が重要なテーマになります。
広告主との連携強化やユーザー満足度を高める施策に投資しつつ、オペレーション効率を上げることで利益率を改善する取り組みが進められるでしょう。
暗号資産事業においては、規制環境の変化や相場のボラティリティに左右されやすいものの、長期的にはデジタル資産市場の拡大によるメリットが見込まれます。
ここで安定的な運営体制とセキュリティを確立しつつ、新たなサービスを開発することでユーザー獲得を継続できるかが鍵を握るでしょう。
さらに暗号資産取引所とポイントサービスを連動させる仕組みを拡充することで、ユーザーの利便性を高めつつ、広告収益と手数料収入の両面で相乗効果を狙うことも期待されます。
こうした取り組みを通じて、安定的なキャッシュフローを生むモバイルサービス事業と大きな成長ポテンシャルを秘めたフィナンシャルサービス事業の二軸をバランスよく伸ばしながら、企業価値をさらに高めていくことが注目されるポイントです。
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