企業概要と最近の業績
株式会社勤次郎は、労務管理や健康経営をトータルにサポートする統合HRMソリューションの開発・販売を主力としています。就業や給与、人事、ヘルスケアなどの業務を一元的に管理できるパッケージソフトが大きな強みで、すでに5,000社以上の企業で導入されています。2023年12月期の売上高は39億2,334万円に達し、前年同期比で10.5%増という好調な伸びを見せています。さらに営業利益は5億7,200万円を計上しており、前年同期比28.8%増と利益面でも着実な成長を実現しています。これらの数字は、同社が掲げる働き方改革や健康経営支援というコンセプトが市場のニーズに合致し、販売チャネルを通じて着実に顧客層を広げていることの証といえます。また、自社開発の強みを生かし、顧客からの要望や社会情勢の変化を素早く取り込んだ製品改良を行い続けてきたことも、業績の伸長を支える要因となっています。このように、多くの企業が課題とする労務管理や健康管理を包括的にサポートできる点が、勤次郎の競争優位を築いている大きなポイントです。
ビジネスモデルの9つの要素
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価値提案
勤次郎の価値提案は、企業の働き方改革と健康経営を強力に支援する統合HRMソリューションの提供にあります。就業や給与の計算といった基本機能だけでなく、健康管理や人事評価といった領域までをワンストップでカバーすることによって、企業が必要とする労務管理業務を統合的に最適化することを目指しています。これにより、従来は複数のシステムをバラバラに導入していた企業でも、業務フローを一本化し、生産性の向上やコスト削減を実現できる点が大きな魅力です。なぜそうなったのかという背景としては、労働環境や社会保険制度の変化によって、企業には効率的かつ正確な労務管理が求められるようになり、さらに健康経営への注目度も高まったためです。勤次郎はこうしたニーズを早期にキャッチし、自社開発の柔軟性を生かして機能を拡充し続けることで、市場における存在感を高めてきたのです。 -
主要活動
同社の主要活動は、ソフトウェアの開発・販売、システム導入支援、運用コンサルティング、そしてアフターサポートといった一連の業務プロセスを包括的に提供することです。パッケージソフトを導入するだけではなく、企業ごとに異なる勤怠体系や独自規定に合わせた設定やカスタマイズを行うことが重要となるため、専任スタッフがヒアリングから導入、運用までトータルにサポートしています。なぜそうなったのかという理由としては、HRテック分野においては高度に専門化されたニーズへの対応力が競争力の源泉となり、パッケージソフト単体ではまかない切れない要求が多いことが挙げられます。導入後のアフターサポートや保守、法改正対応などを充実させることで、顧客が安心して長期的に利用できる体制を構築している点が、同社の主要活動としての大きな特長となっています。 -
リソース
勤次郎が持つリソースの核となるのは、自社開発のパッケージソフトと専門知識を持つ人材です。自ら開発を手がけることで製品のアップデートを迅速に行い、顧客の声や市場の変化を柔軟に取り込むことができます。また、全国に展開する支店網も大きなリソースであり、地域に根差した支援を行える体制を整えていることで、幅広い業種・業界に対応可能になっています。なぜこのリソースが重要かというと、労務管理や人事管理は企業ごとに細かな要件や業界特性が異なるため、現場に即したソリューションを提供するためには専門性を持った開発力と全国対応が欠かせないからです。自社開発と地域密着の両軸を並行して進めることで、よりきめ細かなサービスを展開できる仕組みが築かれています。 -
パートナー
同社は各種ハードウェアメーカーやクラウドサービスプロバイダー、さらに販売代理店などとパートナーシップを結んでいます。勤怠管理システムではICカードリーダーや生体認証デバイスなどのハードウェアとの連携が求められるケースも多いため、これらのメーカーとの協業が不可欠です。加えて、クラウドインフラを利用したセキュリティ強化や大規模データの扱いにも対応するために、クラウドサービス企業との連携も強化しています。なぜこうしたパートナーが重要かというと、統合型HRMソリューションを安定的かつ拡張性をもって提供するには、自社開発部分だけでなく周辺領域との密な連携が必要だからです。各領域のプロフェッショナルとの協業により、新技術の導入や大規模運用への対応力が高まり、顧客企業の多様な要望に応えやすくなります。 -
チャネル
自社の営業チームを中心に、公式ウェブサイトやパートナー企業を通じた販売網を構築しています。自社営業チームは企業ニーズを直接ヒアリングし、最適なプランや導入形態を提案する役割を担っています。また、ウェブサイト経由ではオンラインでの問い合わせやデモ申し込みなど、潜在顧客との接点を広く確保する仕組みを整えています。パートナー企業による販売では、地域や業界に強みを持つ代理店が製品を紹介することで、より広範な企業へアプローチ可能となっています。なぜこのようなチャネルを複合的に展開するのかというと、HRMソリューションは企業規模や業態によって求められるサービスが大きく異なるため、一つの販売ルートだけでは十分にカバーしきれないからです。複数チャネルを活用することで、見込み客との接点を最大化しているのです。 -
顧客との関係
同社は導入前のコンサルティングから導入後の保守・サポートまで、継続的かつ深い関係性を築くことを重視しています。製品導入時には専任スタッフがヒアリングや要件定義を行い、企業ごとにカスタマイズする仕組みが整っています。また、稼働後も法改正への対応やバージョンアップ情報の提供などを通じて、顧客企業が安心して利用し続けられる環境をサポートしています。なぜこのような継続支援が重視されるのかというと、勤怠管理や人事管理は企業の事業活動に直結する基盤的なシステムであるため、一度導入すると長期的な運用とメンテナンスが必須となるからです。こうしたコンサルティングやアフターサポートの手厚さが、顧客ロイヤルティの向上に大きく寄与しているといえます。 -
顧客セグメント
中堅・大手企業を中心に、労務管理や健康経営に強い関心を持つ法人層を主要顧客としています。さまざまな業種で利用されており、全国に拠点を持つ企業や変則勤務が多い業態など、複雑な就業管理を必要とする顧客ほど同社製品のメリットが大きくなります。なぜこのセグメントに注力しているかというと、企業規模が大きいほど勤怠や労務に関わる人数が多く、かつ健康経営に投資する余力があるためです。また、法規制の順守がより厳格に求められる傾向もあり、高機能なシステムの導入によって手続きや管理を効率化するニーズが高いことが背景にあります。 -
収益の流れ
ソフトウェアライセンスの販売収入をはじめ、導入支援やコンサルティングの費用、そして保守・サポートサービスからの継続課金が同社の収益の柱となっています。特に、導入後の定期的なサポート契約から得られる収入は安定的であり、顧客満足度が高いほど長期契約につながる傾向があります。なぜこのような収益構造なのかというと、クラウドやサブスクリプション型の導入形態が増加したことで、一度の販売利益だけでなく、継続課金モデルにより安定収益を確保できる形が主流となってきたためです。ソフトウェアを使い続けてもらうためには、定期的なアップデートと確実なサポート体制が求められるため、顧客との長期的なリレーションを重視する同社の方針が収益にも反映されています。 -
コスト構造
ソフトウェアの開発・保守コストや、人件費、営業やマーケティング費用が大きな割合を占めています。自社開発の強みを生かすため、優秀なエンジニアやサポートスタッフの確保には相応の投資を行っており、製品アップデートと新機能の開発が常に進められています。なぜこうしたコスト構造になるのかというと、HRテック業界では法改正や社会的ニーズの変化に合わせた迅速な対応が必須であるため、開発体制を常に強化しなければならないからです。また、営業とマーケティングにも力を注ぎ、幅広い企業への認知拡大と丁寧な顧客対応を続ける必要があるため、人件費と販促費がコスト構造の中でも比較的高い水準を占めています。
自己強化ループ
勤次郎では、導入企業が増えるほど多様な業種・業界からのフィードバックが蓄積され、製品の品質や機能がより洗練されていくという好循環が生まれています。例えば、就業管理の特殊な運用事例や健康経営上の新たなニーズなど、顧客ごとに異なるリクエストを集約することで、ソフトの汎用性とカバー範囲が広がります。そして改良版をリリースすれば、さらに多くの企業が「自社のニーズにも合うのではないか」と興味を持ち、導入を検討するようになります。この自己強化ループによって、顧客の導入ハードルが下がり、結果として導入企業数のさらなる増加をもたらすのです。こうしたフィードバックループをスムーズに回すために、導入後のサポート体制を充実させて継続的に顧客の声を吸い上げる仕組みを強化している点が、同社の成長の大きな要因となっています。
採用情報と株式情報
同社では、高専・専門・短大卒で月給22万3,000円、大卒で月給23万5,000円、院了で月給25万円という初任給設定を行っています。年間休日は123日と比較的多く、IT企業としての働きやすい環境を整えていることがうかがえます。採用倍率に関する具体的な公開情報はないものの、HRテック業界への注目度が高いことから、応募者からも一定の人気があると考えられます。
株式は東証グロースに上場しており、銘柄コードは4013です。2024年11月18日時点での株価は395円、予想配当利回りは2.15%と公表されており、投資家にとっても魅力ある銘柄の一つといえます。
未来展望と注目ポイント
同社が掲げる成長戦略の鍵となるのは、さらなる差別化要素の強化と顧客体験の向上にあると考えられます。特に、働き方改革や健康経営に対する社会的関心が今後も高まり続ける中、就業管理だけでなく、従業員の心身の健康状態や人事評価と連動したマネジメント機能など、より高度なサービスが求められる可能性が大です。こうした流れを受けて、同社は既存システムとの連携強化や新機能の追加によるアップセルを狙っていくことが想定されます。さらに、クラウド活用やビッグデータ解析技術を取り入れることで、運用コストの削減やデータドリブンな経営支援への発展など、新たな価値提案が期待されます。今後は、IR資料を通じて中長期の開発ロードマップや海外展開の可能性なども視野に入れながら、どこまで業績を伸ばせるかが注目されるポイントとなるでしょう。企業の労務管理や健康経営を支えるプラットフォーム企業として、勤次郎の存在感は今後ますます高まっていくと予想されます。
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