企業概要と最近の業績
Institution for a Global Society株式会社
2025年3月期の通期連結業績は、売上高が10億2300万円となり、前の期に比べて31.6%の増収を達成しました。
主力のHR-Tech/SaaS事業が順調に成長したことに加え、Ed-Tech事業が回復したことが増収に貢献しています。
利益面では、営業損失が2300万円となり、前の期(1億600万円の損失)から赤字幅が大幅に縮小しました。
経常損失および最終的な純損失も同様に2300万円となり、赤字幅は大きく改善されています。
特に2025年3月期の下期(10月〜3月)だけを見ると、営業利益は黒字化を達成したと報告されています。
2026年3月期の業績予想については、売上高13億6000万円、営業利益5000万円を見込んでおり、通期での黒字転換を目指す計画です。
価値提案
AI技術を組み合わせた評価サービスを提供し、企業や教育機関が人材を客観的に可視化できる点が大きな魅力です。
例えばGROW360では社員や就職候補者のコンピテンシーを多角的に計測し、教育機関向けのAi GROWでは生徒や学生の資質や成長度合いを明確に数値化します。
こうした可視化により、従来の感覚的な人材評価や学習成果の測定から脱却できる仕組みが整えられています。
【理由】
社会全体が人的資本を重視し始めたことと、AIが膨大なデータを処理してバイアスを補正できる時代背景があるためです。感覚だけに頼らない「評価の科学化」は、多くの組織が求める課題解決の一助となっており、IGSの価値提案が広がる原動力になっています。
主要活動
AI搭載のツール開発やデータ分析に加え、それを使ったコンサルティングが軸になっています。
具体的には企業の人事評価システムへの導入支援や、教育機関のカリキュラム設計へのアドバイスなどが挙げられます。
評価ツールだけを提供して終わりではなく、利用企業や学校の担当者が適切にデータを理解し、活用できる体制作りも行っています。
【理由】
AI評価は導入後の定着フェーズが成否を分ける重要なポイントだからです。高度なテクノロジーをスムーズに使いこなすためには専門家による支援が欠かせません。
そのため、システム提供とコンサルティングの二本柱で「評価から改善」まで一貫してサポートする体制が必要となりました。
リソース
AIのアルゴリズム開発に必要な高度な技術や、大量の評価データ、そして人事評価や教育に精通した専門家を自社内にそろえています。
これらのリソースが組み合わさることで、単なる技術提供ではなく実際の組織運営に役立つソリューションを生み出しています。
【理由】
AIによる評価には膨大な学習データが必要であり、さらにそのデータの質を高めるための専門知識が必須だからです。IGSは初期から教育や人材コンサルティングの知見を積み上げており、その経験をAI開発に融合させることによって、市場での独自性を獲得しています。
パートナー
企業の人事部門や教育機関、さらに研究機関との連携を重視しています。
例えば企業の新卒採用にGROW360が導入されれば、そのフィードバックデータをもとに大学などの教育機関との共同研究が進む可能性があります。
また、研究機関と協力して評価アルゴリズムを改良することで、より洗練された測定手法を確立しています。
【理由】
AI評価サービスは導入して終わりではなく、現場での利用実績と学術的なエビデンスの両面が欠かせないからです。実証研究を重ねることで信頼性を高め、それが新規顧客の獲得や既存顧客の継続利用へとつながっています。
チャンネル
自社ウェブサイトやセミナー、パートナーシップを通じて顧客との接点を作っています。
特にウェビナーや企業向けイベントでの講演などを積極的に行い、AIを活用した評価の可能性をわかりやすく伝えています。
【理由】
AI評価ツールはまだ市場全体での認知度が高いとはいえず、実際にどのように運用するかイメージが湧かない方も多いからです。そこで対話的な場を設けることで疑問や不安を解消し、導入へのハードルを下げる工夫が行われています。
こうした双方向のコミュニケーションが安心感を与え、導入検討段階の顧客を後押しします。
顧客との関係
導入コンサルティングからアフターサポート、さらにカスタマーサクセスの体制まで整備されています。
GROW360やAi GROWの運用だけでなく、定期的に活用状況をヒアリングして改善提案を行い、顧客との長期的な関係性を築いています。
【理由】
評価ツールの持つ価値は継続的に活用されてこそ最大化されるからです。最初の導入だけうまくいっても、その後の運用が形骸化してしまうケースを避けるために、サポート体制が重視されています。
結果として顧客満足度の向上やリピート契約につながり、持続的な収益源を生み出しています。
顧客セグメント
企業の人事部門や教育機関、学生が主な対象です。
企業では新卒採用や社員研修の評価に、教育機関では生徒の学習到達度や探究型学習の成果測定に活用されています。
さらに学生個人が就職活動の際に自分の強みを把握するために利用するケースも考えられます。
【理由】
人的資本を可視化する需要が多方面で高まっている背景があります。組織全体のパフォーマンス向上をめざす企業や、学習効果をエビデンスとして示したい教育現場など、評価を客観的に行いたいニーズが増大しているため、顧客セグメントも自然と広がっていきました。
収益の流れ
評価ツールのライセンス料や導入コンサルティングの費用が主な収益源になっています。
また、追加分析や企業独自のカスタマイズなど、オプションサービスからの収益も大きいです。
コンサルティング契約を継続的に締結することでリカーリング(継続)収益を得る仕組みも確立しつつあります。
【理由】
AI評価ツールは一度導入すれば終わりではなく、データの更新やシステムのバージョンアップが必要になることが多いためです。サブスクリプションモデルや継続サポートの仕組みを用いることで、顧客にとっても常に最新かつ最適なサービスを受けられるメリットがあり、企業としても安定した売上を得られるのです。
コスト構造
専門家の人件費やAIエンジンの開発費、さらにマーケティング費用が主要なコストとなっています。
AI評価ツールは高度な開発とデータのメンテナンスが不可欠であり、そのためにエンジニアやデータサイエンティストへの投資を惜しまない体制です。
【理由】
競合他社との差別化には高精度なアルゴリズムと信頼性の高いデータが必須だからです。さらに自社の存在を広く知ってもらうためにはマーケティングやセミナーの開催なども不可欠で、これらが長期的なブランド形成につながります。
その結果、コストはやや大きくなる傾向がありますが、技術革新と知名度の向上が同時に行われるため、将来的な投資価値が高いと判断されています。
自己強化ループ(フィードバックループ)
IGSが提供するAI評価ツールは使えば使うほどデータが蓄積し、そのデータがさらに精緻なアルゴリズムを作り上げる土台となっています。
具体的にはGROW360を多くの企業が導入すればするほど、多様な業種・職種の人材データが集まり、アルゴリズムの精度が上がる仕組みになっています。
企業や学校が評価ツールを活用することで新たな学習データが追加され、それによって次のバージョンアップではより高度な分析機能やバイアス補正技術が開発される好循環が生まれています。
この流れは利用者にとっても、導入後の運用が進むほどサービスの質が向上するというメリットにつながります。
まさにAIの特性を最大限に生かした自己強化ループであり、IGSのビジネスモデルを支える大きな柱と言えます。
採用情報と株式情報
採用面では初任給が約25万円とされており、年間の休日数は120日前後が一般的になっています。
採用倍率は応募の多さと比較してやや高めで、約10倍という数字も見られるとのことです。
企業として専門的なAI技術や教育知識が必要とされるため、実務経験や高い学習意欲を重視する採用方針をとっています。
一方で株式情報については銘柄がIGSと呼ばれており、東証グロース市場に上場しています。
株価は1株あたりおよそ1000円前後で推移する場面が多く、配当金は1株あたり5円程度とされています。
人的資本関連の企業に投資したい投資家からの注目度は高まっているようです。
未来展望と注目ポイント
IGSはAI技術をさらに進化させ、企業や教育機関にとって不可欠なパートナーになることを目指しています。
今後は評価データを基にした学習プログラムや、個人のキャリア形成をサポートする新サービスを展開する可能性もあります。
人的資本を重視する社会の動きが加速し、ビジネスモデルが多岐にわたって拡張できる土壌があるため、持続的な成長が期待されます。
すでにIR資料などでも言及されているように、海外の教育機関やグローバル企業との連携強化を視野に入れた成長戦略を打ち出すことで、新たな市場開拓にも挑戦しようとしています。
AIによる評価と教育という、まだ十分に開拓されていない領域の先駆者として、これからの展開に要注目です。
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