企業概要と最近の業績
オイレス工業株式会社
オイルレスベアリング（無給油軸受）のトップメーカーです。
ベアリングは、機械の回転部分を滑らかにするための部品ですが、同社は油を注さなくても滑らかな動きを実現する特殊なベアリングを開発・製造しています。
この技術は、自動車の部品やOA機器、ダムの水門など、給油が難しい様々な機械や設備で利用されています。
また、この滑らせる技術を応用し、地震の揺れを吸収して建物を守る「免震・制震装置」などの建築・構造用の装置も開発・販売しており、事業の大きな柱となっています。
2025年7月30日に発表された最新の決算によりますと、第1四半期（2025年4月〜6月）の売上高は169億2,900万円となり、前年の同じ時期と比較して3.9%減少しました。
事業別に見ると、主力のベアリング事業は、国内の自動車向け販売が回復したものの、海外での建設機械向けや一般産業機械向けの販売が減少し、全体として減収となりました。
一方、建築・構造用の装置事業は、国内の大型物流施設や再開発案件向けに免震・制震装置の販売が好調で、増収となっています。
利益面では、売上構成の変化や原材料価格の影響を受け、営業利益は10億5,600万円で、前年の同じ時期と比べて30.2%の減少となりました。
【参考文献】https://www.oiles.co.jp/
価値提案
オイレス工業は無給油でも滑らかに動く軸受機器や、建物や橋梁を地震などの揺れから守る免震・制震装置を提供しています。
これらの製品によってユーザーは給油作業を大幅に削減し、メンテナンスコストや作業時間を抑えられるメリットを得られます。
また、建築やインフラ分野では安全性や防災意識が高まっており、免震・制震技術の存在がビルや道路橋の信頼性向上に大きく貢献します。
【理由】
社会全体が環境負荷の低減や長寿命化などを重視する流れにあり、オイレス工業の製品はそれらの課題を同時に解決しやすい特長を持っているからです。
さらに、日本初の免震装置を開発したパイオニア企業としての技術力や実績が信頼となり、多くの顧客から選ばれる価値を確立しています。
主要活動
オイレス工業の主要活動は高度な研究開発と製品設計、そして製造・販売に加えて顧客への技術サポートです。
半導体や自動車、建設など各種産業のニーズを的確につかむため、専門の研究チームが新素材の開発や振動制御技術の改良に注力しています。
【理由】
軸受や免震・制震装置といった製品は安全性と耐久性が最重要視されるため、継続的なテストとデータの蓄積が不可欠だからです。
また、大型建造物の設計段階からエンジニアが提案を行うことで、最適な免震システムや摩耗対策を実現し、後々のメンテナンスや修繕コストを抑えられるようサポートしています。
これら一連の活動が顧客の満足度向上とリピート受注につながっている点も特徴です。
リソース
オイレス工業が保有する最大のリソースは、高度なトライボロジー技術と振動制御技術です。
トライボロジーとは摩擦や摩耗のメカニズムを科学的に解析する分野で、長年の研究と実験を重ねた独自データは競合他社には真似しにくい強みになっています。
さらに国内外に生産拠点を有し、グローバル市場の需要変動に柔軟に対応できる供給体制も重要なリソースです。
【理由】
オイルレスベアリングは自動車や産業機械など世界中で使われる製品であることから、生産を海外にも配置することでコスト面と納期面の両面を最適化する必要があったからです。
このような研究拠点や生産体制を組み合わせることで、多様な分野の顧客に向けて高品質な製品とサービスを提供できる体制が整えられています。
パートナー
オイレス工業のパートナーには自動車メーカーや建設会社、設計事務所などが挙げられます。
これらの企業との協力関係を通じて、新しい部材や免震技術の共同開発を行い、互いにシナジーを得る体制を築いています。
【理由】
オイルレスベアリングや免震装置は個別に完成しているだけでなく、顧客企業の製品設計や建築計画に深く組み込まれて機能する性質があるからです。
そのため、早期段階からパートナーと協力し、最適な素材選定やカスタマイズを実施しながら製品を開発する必要があります。
こうした協力体制があることで、大型のインフラ案件や高性能を求められる自動車向け部品など、幅広い分野でのビジネスチャンスを得やすくなっています。
チャンネル
オイレス工業が採用しているチャンネルは、直販による営業活動のほか、代理店を通じた販売網とオンラインプラットフォームです。
代理店を活用することで地域のニーズをきめ細かく把握しながら、迅速に製品を提供できます。
さらに一部の補修用部品などについてはオンラインによる取引を行うケースも増えてきました。
【理由】
産業機械のメーカーや建設会社などの顧客は緊急メンテナンスや補修部品の調達を迅速に行いたい需要があり、オンライン経由での手配が時間短縮に効果的だからです。
このように複数のチャネルを柔軟に組み合わせることで、顧客の利便性を高めながら売上機会を逃さない体制を築いています。
顧客との関係
オイレス工業は製品の販売だけでなく、技術サポートやメンテナンス提案などを通じて顧客との長期的なパートナーシップを築いています。
特に免震・制震装置は一度導入すれば終わりではなく、定期的な点検やアップグレードが求められるため、継続的な関係が非常に重要です。
【理由】
地震対策や摩耗対策などの分野は日々の技術進歩と法規制の改正があり、その変化に合わせて最新のソリューションを提供できる体制が必要だからです。
こうしてサポート面を強化することで顧客満足度を高め、リピート受注や追加の関連製品導入につなげるビジネスモデルが機能しています。
顧客セグメント
オイレス工業の顧客セグメントは大きく分けると自動車産業、建設業界、公共インフラ関連にまたがります。
自動車向けではエンジン周辺やサスペンションなど摩擦が多い箇所に軸受が使われ、建設・インフラ分野では大きな振動負荷がかかる場所に免震や制震システムが導入されます。
【理由】
オイルレスベアリングが必要とされる領域は広く、かつ地震対策ニーズの高い日本国内だけでなく海外でも需要が増えているためです。
さらに高層ビルや道路橋などの老朽化が深刻化するなかで、メンテナンスと耐震性能の強化が社会的に注目され、結果的にオイレス工業の製品群が幅広いセグメントで活躍するようになりました。
収益の流れ
収益の大部分は軸受や免震・制震装置などの製品販売から生まれていますが、メンテナンスや補修部品の提供によるサービス収入も重要な位置を占めています。
【理由】
自動車向け軸受は大量生産の量販モデルとして一定の売上を確保でき、建築物向け免震装置は大型案件受注のタイミングで収益が大きく増える構造だからです。
また、導入後の定期点検や補修工事においても継続的な売上が見込めるため、単発の受注だけでなく長期的なサービス提供で安定収益を得られる仕組みになっています。
この複合的な収益源がオイレス工業の事業基盤を下支えしています。
コスト構造
オイレス工業のコスト構造は、研究開発費や製造コスト、販売管理費が大きなウエイトを占めています。
特に研究開発費は新素材や新技術を追求するための試験設備や専門人材の確保が必要で、トライボロジーや振動解析など独自技術を深化させるための投資が欠かせません。
【理由】
顧客企業は長寿命で高耐久の製品を求めており、しかも安全性や環境性能への要求が年々厳しくなっているからです。
そのため、最新の法規制や市場ニーズを満たすために常に研究開発へのコストを惜しまない体制が取られています。
一方で効率的な生産体制やグローバル調達の活用により、製造コストの最適化も進めていることが利益拡大につながっています。
自己強化ループとは
オイレス工業の自己強化ループは技術開発と市場のニーズが相互に高め合う仕組みになっています。
具体的には、自社の研究開発部門が新しい素材や振動制御方法を模索し、それを試験的に製品化して市場に投入します。
そして、実際に導入した顧客企業や建設現場から得られたフィードバックをもとに、さらなる改良や新技術の研究につなげる流れができあがっています。
このようなフィードバックループによって製品の信頼性と性能が高まり、それがまた新たな顧客を呼び込む結果を生み出しています。
顧客との関係が深まれば深まるほど実運用に即したデータが蓄積され、摩擦や振動など複雑な要素の検証精度も上がります。
こうして技術力が向上するほど、より大きな案件や長期の受注に結びつきやすくなり、収益性や企業価値がさらに高まっていくのです。
採用情報について
オイレス工業の採用情報では、具体的な初任給の数字は公表されていませんが、一般的な技術系のメーカーと同水準と考えられます。
年間休日は約120日あり、研究開発や製造部門でもメリハリをつけて働ける環境づくりに取り組んでいます。
採用倍率については公開されていないものの、技術開発力を重視する企業として専攻分野や研究内容を見ながら総合的に評価しているようです。
将来的にはグローバル展開の拡大に伴い、海外プロジェクトの経験を積みたい方にもチャンスが広がる可能性があります。
株式情報について
オイレス工業は東証プライム市場に上場しており、銘柄としては市場でも安定した業績を評価されています。
配当金や1株当たり株価に関しては最新のIR資料を随時確認する必要がありますが、近年の利益成長から継続的な配当に期待がかけられる面もあるでしょう。
また、免震装置や無給油軸受という特色ある製品ラインナップから、将来的な防災関連や自動車市場の回復を織り込む投資家も少なくありません。
こうした魅力から中長期的に注目されている企業の一つです。
未来展望と注目ポイント
オイレス工業は耐震や防災を取り巻く需要の高まり、自動車のEV化などに伴う新たな摩耗対策のニーズなど、幅広い市場環境での成長が見込めます。
さらにインフラ更新やスマートシティ推進といった社会の変化によって、今後は高機能な免震・制震技術だけでなく、ビルの空調効率や快適性にも寄与する新製品の開発が期待されます。
研究開発を積極的に行う姿勢によって、常に最新の材料技術や振動制御技術を取り入れられるのも強みの一つです。
こうした技術面と市場ニーズの結びつきによって、新規参入が難しい独自のポジションを確立しやすくなるでしょう。
今後も大型の建築プロジェクトや自動車産業の再編などで注目を集める機会が増えそうです。
投資家にとっても安定配当に加え、防災や環境分野への高い対応力を持つ企業として、中長期的な成長余地が期待されています。
中学生でも分かるシンプルな視点で言えば「安全と便利を技術で支える」企業として、今後ますます存在感を発揮していくのではないでしょうか。
コメント