株式会社鉱研工業のビジネスモデルと成長戦略がすごい 掘削技術で未来を掘り当てる

機械

企業概要と最近の業績

株式会社鉱研工業

当社は、温泉や地下水の開発、地質調査、地すべり対策工事などに使われるボーリングマシンのトップメーカーです。

自社で機械を製造・販売するだけでなく、その機械を使った専門的な工事の施工や管理までを一貫して手掛けているのが大きな特徴です。

ボーリング業界で唯一の上場企業として、社会のインフラ整備や防災、資源開発の分野で重要な役割を担っています。

2025年3月期の通期決算が発表されていますので、前年度の業績と比較して見てみましょう。

売上高は1兆611億円となり、前の期に比べて11.4%増加しました。

営業利益は6億5300万円で、こちらは16.8%の増加です。

経常利益は5億8100万円で21.8%の増加、そして親会社株主に帰属する当期純利益は4億5600万円となり、52.3%もの大幅な増益を達成しました。

事業別に見ると、主力であるボーリング機器関連事業が堅調に推移したことに加え、工事施工関連事業の売上が23.6%増と大きく伸びたことが、全体の増収増益に貢献したようです。

【参考文献】https://www.koken-boring.co.jp/

価値提案

株式会社鉱研工業の価値提案は、高精度で信頼性のある掘削機器や関連技術を通じて、インフラ整備や地質調査の現場を効率化し、安全性と品質を向上させる点にあります。

過酷な環境でも機械がしっかり動き続ける耐久性や、利用者が安心して操作できるサポート体制を重視していることも大きな特徴ですです。

たとえば、掘削中のトラブルを最小限に抑える設計や、地形ごとの調査に合わせた計測システムなど、専門性の高いノウハウを積み重ねています。

これにより、公共事業や防災関連のプロジェクトで得られた実績がさらなる信用を呼び、次の受注や開発投資につながっています。

【理由】
建設現場や調査現場では機器の安定稼働と高い安全性が強く求められており、その要望に応えるために、長年の経験と研究開発の蓄積を活かしてきたからです。

さらに、導入後のアフターサービスに注力することで、顧客が安心して長期間利用できる環境を整えたことも評価されている理由といえます。

主要活動

主要活動としては、新しい掘削技術の研究開発、機器の製造、販売、そして導入後のメンテナンスやアフターサービスが挙げられます。

研究開発では、より軽量で操作しやすく、かつ高精度な掘削を行えるように技術革新を続けています。

製造面では、自社工場で厳格な品質管理を行い、現場での故障リスクを下げています。

販売時には、専門スタッフが顧客の現場環境や課題をヒアリングし、最適な機種やカスタマイズを提案します。

その後のメンテナンスや部品交換を迅速に行うことで、顧客との長い付き合いを実現しているのです。

【理由】
掘削機器は高額な投資であるうえに、故障すれば工事の進捗に大きく影響します。

そこで、研究から販売後のサポートまで一貫して行うことで、顧客の負担を減らし、信頼性の高いサービスを提供する体制が整えられてきました。

これが同社の強みとして定着し、リピーターの増加や紹介案件の獲得につながっています。

リソース

リソースとしては、まず長年にわたり培われてきた高度な技術力があります。

社員の中には地質や土木に精通したエンジニアや技能者がおり、現場で起こりやすいトラブルやニーズを吸い上げ、製品開発へ素早く反映できる仕組みを整えています。

さらに、生産設備や実験設備も充実しており、試作機のテストや品質チェックを繰り返すことで信頼性を高めてきました。

加えて、長く働く従業員が多いことも、ノウハウが社内に蓄積される重要な要素となっています。

【理由】
日本のインフラ工事や地質調査は地盤や気候条件などが多様であり、現場で発生する問題を解決する経験値が重要視されるからです。

ベテランの知見と若手の新しい技術アイデアを組み合わせることで、より強固な製品開発力を生み出しており、その総合力が同社の強力なリソースとして機能しています。

パートナー

パートナーとしては、国内外の建設会社や地質調査会社、さらには部品供給業者などが挙げられます。

大規模な工事案件では、建設会社や行政機関と連携しながら、現場に合った製品を共同で開発またはカスタマイズすることもあります。

部品供給業者との強い関係により、品質の安定と迅速な修理対応が可能になっています。

こうしたパートナーシップは、新技術の導入や市場の拡大にも大きな貢献を果たしています。

【理由】
掘削機器は単体で成立するものではなく、多種多様な工法や機材との組み合わせが必要だからです。

信頼できるパートナーを確保することで、現場ごとにカスタマイズされたソリューションを提供しやすくなり、公共工事をはじめとする各種プロジェクトへの参入がスムーズになります。

チャンネル

同社は、自社による直接販売と代理店を通じた販売の両方を活用しています。

直接販売では、専門スタッフが顧客と密にコミュニケーションを取り、詳細な要望を理解しながら提案を行うことができます。

代理店経由の場合は、より広いエリアへの展開がしやすく、地元のニーズにも合わせやすいメリットがあります。

最近ではオンラインで製品情報を発信し、問い合わせや見積もり依頼を受け付けるなど、デジタル面の活用も進めています。

【理由】
建設や調査の現場は地域によって求められる仕様が違い、また人脈や情報網が重要だからです。

直接接触が必要な顧客には自社チャンネルを、広域の顧客には代理店ネットワークを使うといった柔軟な販売方法を取ることで、需要を効率よく取り込んできたのです。

顧客との関係

顧客との関係は長期的な信頼構築を重視しています。

製品導入後もメンテナンスや運用相談をしっかり行うことで、買い替えや増設時にも同社にリピートしてもらえるような仕組みづくりをしています。

担当営業や技術者が現場に赴いて問題をヒアリングし、改善策や追加のカスタマイズを提案するケースも多いです。

これにより、顧客は最新技術を継続的に取り入れられ、工事の生産性向上やコスト削減につなげることができます。

【理由】
掘削機器は一度導入すると数年から十数年にわたり使われるため、導入後のサポートが事実上不可欠になります。

そこで、ただ販売するだけでなく、その後のアフターサービスでさらに顧客の満足度を高める体制を整えた結果、長期的な関係を築くことができるようになりました。

顧客セグメント

主な顧客セグメントは、建設業界や地質調査業界、そして公共機関です。

橋や道路、トンネルなどの公共インフラ工事で使うほか、地盤調査や環境調査でも利用されています。

近年では、防災や減災を目的とした調査が増えたこともあり、自治体や国の関連機関からの引き合いが強まっています。

こうした公共セクターに加え、海外の鉱山開発や資源探査企業などからの需要拡大も期待されています。

【理由】
インフラや防災の分野は社会的にも重要度が高いため、精度の高い調査と安全性を担保する掘削技術が求められるからです。

これらの要望に応えられる高い技術力を持つ企業は限られており、実績ある同社への依頼が増える状況になっています。

収益の流れ

収益の中心は、掘削機器の販売による収益と、メンテナンスや交換部品などのアフターサービス収益です。

機器は高価格帯の商品も多く、顧客にとっては導入コストが大きい一方で、長期間にわたって利用できるため、メンテナンスや部品交換の需要も持続的に発生します。

また、独自技術の提供やコンサルティング的なサポートを含めたサービス収入も増やすことで、売り切り型のビジネスから安定収益を確保するモデルへとシフトしています。

【理由】
機器そのものの価格競争が厳しくなるなか、付加価値を提供して継続的に顧客との関係を維持する必要があったからです。

単に製品を納入するだけでなく、導入後のサポートと技術支援を充実させることで、顧客は安心して投資しやすくなり、結果として同社の経営の安定化にもつながっています。

コスト構造

同社のコスト構造は、研究開発や新製品試作のための費用、生産設備の維持管理費、人件費などが大きな割合を占めています。

新しい技術や改良を進めるためにR&D投資を積極的に行い、そこから生まれたノウハウや特許によって他社との差別化を図るスタイルです。

また、製造コストを抑えながら品質を維持するため、精密部品の内製化や協力工場との連携にも力を入れています。

【理由】
長期的に高い品質を保ちつつ市場シェアを確保するには、安定した研究開発と生産体制が必要だからです。

外注できる部分は外注し、自社でしかできない核心技術はしっかりと内製化することで、コストバランスと品質管理の両立を図る方針をとっています。

自己強化ループ

株式会社鉱研工業は、製品を導入した顧客からのフィードバックを積極的に収集し、次の製品開発につなげています。

たとえば、現場でどういった課題が生じやすいかや、どの部位が故障しやすいかなどを集約し、改良版の設計や追加パーツの開発に反映しています。

これによって製品の精度や使い勝手が高まり、新たに導入を検討する企業や機器更新を考える既存顧客からの受注が増えるという好循環が生まれます。

さらに、受注が増えれば研究開発に回せる資金も増え、先進的な技術への投資ができるので、また性能アップや新サービスの提供が可能になります。

このように、顧客フィードバックを大切にして製品改良とシェア拡大を重ねることで、同社の事業は自己強化ループの流れに乗っています。

技術的な優位性と顧客満足度の向上が連鎖し、継続的な成長が期待できるのです。

採用情報

採用においては、初任給がおよそ22万円とされていて、平均の年間休日は120日ほどあります。

応募倍率は約10倍とされ、ものづくりや土木・地質の専門分野に興味を持つ人材から注目されています。

現場での経験と社内での技術研修を組み合わせ、若手のうちから多彩な業務を学ぶチャンスがあるのも魅力です。

また、社内にはベテランスタッフも多く、実地で培ったノウハウを直接学べる環境が整っていると言われています。

株式情報

株式会社鉱研工業は証券コード6297で上場しており、1株あたりの配当金は年間で20円です。

株価は2025年2月18日の時点で約1500円となっています。

公共工事や防災分野において安定した需要が見込まれるため、業績と連動して株主還元の拡充も期待できる可能性があります。

長期で安定した経営を続けている印象がある一方、海外のインフラ案件や資源開発における為替リスクや価格競争などにも注視が必要です。

未来展望と注目ポイント

今後は、国内外のインフラ整備需要が引き続き増える見込みであり、地盤調査や防災対策関連の工事で鉱研工業の掘削技術がさらに求められる可能性があります。

これに合わせて、操作の自動化や遠隔監視など、建設DXの流れに対応した技術開発が進められることが大きな成長戦略となりそうです。

人手不足が懸念される建設現場では、少人数でも効率よく作業できる機器やシステムが重宝されるため、そうした需要をいち早く取り込むことができれば、大きなビジネスチャンスが広がるでしょう。

また、新しい技術を支えるエンジニアや技能者の採用・育成も同社にとって重要です。

若い世代から技術ノウハウを学んでもらい、先端のIT技術やAIなどと融合できる体制を整えれば、これまでにない製品やサービスを次々と生み出す可能性があります。

今後の社会インフラや防災の需要を背景に、どのような製品開発がなされるのかが注目ポイントになっています。

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