企業概要と最近の業績
HOUSEIは新聞社や出版社などのメディア業界をはじめ、不動産や教育分野にもITソリューションを提供する企業として注目を集めています。
AIや顔認証など先端技術を活用することで、セキュリティや業務効率化といった課題を幅広い視点で解決しているのが大きな特徴です。
最近では海外にも事業を拡大し、中国や香港を中心としたITサービス展開によって、グローバルに収益源を分散させています。
2025年12月期の連結業績では、売上高が前期比20%増の120億円に到達し、営業利益は同25%増の12億円を記録しました。
特にAI関連のプロダクト事業が大きく伸び、顔認証システムの新規導入や企業向けの業務効率化ソリューションが好調に推移したことが、増収増益を後押ししたとされています。
これらの数値は、メディア業界で築いた実績と信頼をほかの分野に広げ、継続的に成果を上げている証といえます。
またIR資料によれば、業績拡大に向けた成長戦略としては「海外市場へのさらなる展開」「AI技術の研究開発投資」「新規事業分野の開拓」が挙げられています。
既存のメディア向けシステムだけでなく、教育や不動産など別の業界でもITによる課題解決を積極的に進めることで、収益基盤を多角化しているのが強みです。
一方で、AIや先端技術を活かしたプロダクト開発は研究開発コストが高く、優秀なエンジニア確保が経営上の重要課題になっています。
こうした投資は大きいものの、長期的には企業価値向上を目指せる分野という認識が高まり、投資家からの期待も集まっているのです。
ビジネスモデルの9つの要素
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価値提案
HOUSEIが提供する価値は、多様な業界の「困った」をIT技術で解決し、効率化や安全性を高める点にあります。メディア企業に対しては、新聞や雑誌の発行スケジュールを柔軟に管理できるシステムを提供し、社会に正確な情報をスピーディに届けることを支援しています。
不動産業界には物件管理や契約手続きのデジタル化を推進し、教育機関にはオンライン学習のプラットフォームや学習管理システムを設計するなど、多角的にソリューションを展開しているのです。
これらの価値提案が生まれた背景には、紙中心の業務プロセスや人力による管理方法では限界があるという課題認識がありました。
そこでHOUSEIは、ITやAIの活用により業務を一元管理し、属人的な作業を減らすソリューションを作り上げてきたのです。
また、AIを用いた顔認証セキュリティは、単なる効率化にとどまらず、大切な情報や資産を守る新たな価値を提供しています。
【理由】
情報化社会が進むにつれ、信頼性や安全性があらゆる分野で必須となったからです。従来の鍵やパスワードに代わる手軽で強固なセキュリティが求められ、そこにAI技術を持つHOUSEIが新たな付加価値を生み出したのです。
結果として、さまざまな業界で「安全と効率」という両軸のニーズに対応できる企業として定評を得ることにつながっています。
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主要活動
HOUSEIの主要活動には、システム開発のほか、エンジニア派遣やソリューション提案、プロダクト開発など多岐にわたる取り組みが含まれています。これらは一見バラバラに見えますが、共通しているのは「企業が直面する課題をITで解決する」というゴールです。
新聞社には記事編集や配信をスムーズにするシステム、不動産企業には顧客との契約プロセスを簡素化するプラットフォーム、教育分野にはオンライン授業をスムーズに行うための学習管理システムなど、課題に応じた開発プロジェクトが進められています。
【理由】
ITを活用した効率化やセキュリティ強化は一つの業界だけで完結しないからです。新聞や出版社にとどまらず、情報を扱うあらゆる業種でニーズが高まっており、HOUSEIはエンジニア派遣を通じて直接的に課題を把握し、独自のプロダクト開発へフィードバックを得る仕組みを構築しています。
これによって、各業界に合わせたシステムを柔軟に提供できる強みが生まれています。
また、企業の成長戦略をIR資料などで公開し、顧客や投資家に向けて今後のプロジェクトや技術の方向性を示すことで、大きな信頼を獲得しています。
このような主要活動はすべて、顧客企業が抱えるさまざまな課題に対し、的確かつ迅速に応えていくための仕組みとも言えます。
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リソース
HOUSEIの主なリソースは、まず高度な知識と経験を持つエンジニアの存在です。システム開発からAI研究まで幅広く対応できる人材は、同社のビジネスモデルを支える中核といえます。
さらに、顔認証技術やAIによる解析技術など、先端の知的財産権やノウハウも大きなリソースです。
【理由】
IT業界は変化が激しく、高度なセキュリティや新しいサービスを作り出すには専門性が不可欠だからです。とくに顔認証などの領域では、アルゴリズムの精度やセキュリティ面の知見、法令遵守のための国際的なルールへの理解が必要になります。
加えて、海外IT事業を展開するうえでは、中国や香港での現地パートナーシップや顧客基盤も欠かせないリソースとなっています。
各国の規制や商習慣を踏まえてサービスをローカライズするには、現地スタッフとの連携が非常に重要だからです。
こうした多面的なリソースがあることで、単なるシステム開発会社ではなく、トータルソリューションを提供できる存在として認知されているのです。
結果的に、これらの強力なリソースがHOUSEIの成長戦略を下支えし、ビジネスモデルを安定的に進化させる鍵となっています。
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パートナー
HOUSEIは新聞社や出版社、不動産企業、教育機関など、多様な業界とのパートナーシップを築いています。【理由】
それぞれの業界が抱える課題がITによって解決できる可能性が高いと考えられているからです。メディア業界では情報発信の迅速化、不動産業界では物件管理や契約の効率化、教育機関ではオンライン学習の導入など、HOUSEIの技術やノウハウを活かせる領域は非常に広いのです。
また海外事業においても、現地企業や公的機関との連携がスムーズに行えるかどうかは、事業成功の大きな要因となります。
パートナーを通じて顧客ニーズを的確につかみ、自社の製品開発やサービス提供に反映させることで、顧客満足度を高めるだけでなく、追加の事業機会も生まれます。
こうした連携によって形成されるネットワークは、HOUSEIのビジネスモデルにおいて欠かせない存在です。
【理由】
ITやAI技術は優れていても、それを実際に利用する現場の声を取り入れなければ、本当に必要とされるシステムにはなりにくいからです。パートナーシップによって需要の芽を早期にキャッチし、共同でサービスを開発・提供することで、業界を超えた幅広い成功事例を積み重ねてきています。
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チャンネル
HOUSEIが顧客に製品やサービスを届けるチャンネルとしては、自社の営業担当による直接提案、パートナー企業との協業、そしてオンラインプラットフォームを介した紹介などが挙げられます。直接提案は、メディア事業やプロフェッショナルサービス事業で培った関係を活かして深く踏み込んだ提案が可能になる利点があります。
一方、パートナー企業を通じた案件獲得は、HOUSEI単独ではなかなかリーチできない顧客層にもアプローチできるというメリットを生みます。
【理由】
ITソリューションの導入は企業規模や業界特性によってスタイルが大きく異なるからです。大手メディア企業は大規模プロジェクトを要する一方、中小規模の不動産会社や教育機関はシンプルで低コストなサービスを望むケースが多くあります。
そのニーズをうまく捉えるために、多様なチャンネルを用意しているのです。
さらに、オンラインプラットフォーム上で製品のデモや概要を公開することで、潜在顧客がまず「どんなサービスなのか」を手軽に知る機会を増やしています。
このように、複数のチャンネルを組み合わせて顧客との接点を広げ、最適なソリューションを適切なタイミングで提案する仕組みがHOUSEIの強みです。
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顧客との関係
HOUSEIはカスタマイズ対応や導入後の継続サポートを非常に重視しています。単にシステムを売り切って終わるのではなく、導入後の運用状況を分析し、必要に応じて改修や機能追加を行うことで、顧客満足度を高めるビジネスモデルを築いてきました。
【理由】
ITシステムは導入時点での課題は解決できても、市場や法律、利用するユーザーのニーズなど、取り巻く環境が変わればすぐに古くなってしまうからです。そこでHOUSEIでは、システムを常に最新の状態に保つためのメンテナンス契約や、エンジニア派遣による人材支援などを組み合わせることで、顧客が安心して長期運用できるようにしています。
特にメディア業界の場合、ニュースの速報性や編集作業の効率化がビジネス上の大きな鍵となるため、システムダウンなどがあれば大きな損害につながります。
そのため、HOUSEIの継続サポート体制は欠かせない存在となっています。
また、顧客との長期的な関係を築くことで、追加の開発案件や関連プロダクトの提案などもスムーズに行えるという効果があり、リピート案件や紹介による新規顧客獲得にもつながっています。
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顧客セグメント
もともとは新聞社や出版社といったメディア業界に強みを持ってきたHOUSEIですが、現在は不動産、教育、出版・印刷など多様な業界へと顧客セグメントを広げています。メディア業界で得た実績と信頼をベースに、似たような課題を抱える企業に対してもITソリューションを提案できるようになったのです。
【理由】
情報管理やセキュリティ、業務効率化といったニーズはどの業界にも共通して存在するからです。例えば、不動産業界では物件情報の登録や更新、契約書の作成・管理など、紙ベースの手間を大幅に削減するIT化が求められています。
また、教育分野ではオンライン授業や学習データの管理が急増する中で、システムの安定性とセキュリティが課題となっています。
こうした分野に対して、メディア事業で培った高信頼なシステム構築や運用ノウハウを応用できる点がHOUSEIの大きな強みです。
広範囲な顧客セグメントに対応することでリスクが分散され、不況時にも一部の業種が伸びれば業績を補えるというメリットもあります。
この多様性がHOUSEIのビジネスモデルに柔軟性をもたらし、安定した成長を続ける原動力となっています。
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収益の流れ
システム開発の受注やエンジニア派遣による人件費補填、そしてプロダクト(ソフトウェア・AIツールなど)の販売収益がHOUSEIの主要な収益源です。顧客企業がシステムを導入するときの初期導入費はもちろん、保守・運用や追加機能の開発といった継続サービスからも安定した収益が発生します。
【理由】
一度システムを導入した企業は継続的なアップデートやサポートを必要とするため、長期的に関係が続きやすいからです。とくにAIや顔認証などの最先端分野は技術の進化が速く、定期的なバージョンアップや新機能の追加が必須となります。
さらに、エンジニア派遣に関しては人材不足が深刻化するIT業界において、専門スキルをもつエンジニアを求める企業が多く、このニーズが安定した収益源にもなっています。
製品販売においては、クラウド経由で利用するサブスクリプションモデルを導入するケースもあり、顧客企業が定期的に利用料を支払う仕組みを取り入れています。
このように導入時だけでなく運用やアップグレードでも収益が発生することにより、単発的な売り切りビジネスに比べて収益基盤が安定しやすい構造となっています。
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コスト構造
HOUSEIのコスト構造は、大きく分けて人件費、研究開発費、営業・マーケティング費用が中心となります。エンジニアを多数抱えることでプロジェクトを回しているため、人件費はどうしても高くなる傾向があります。
【理由】
先端技術を扱う企業にとっては優秀な人材が欠かせず、給与や教育コストが他の業種より高くなるからです。また、AIや顔認証の技術研究は継続的な投資を必要とするため、研究開発費も大きな割合を占めます。
これらの投資は短期的には利益を圧迫しますが、長期的には新商品開発やサービスの高付加価値化につながり、同社の成長戦略を支える重要な要素です。
さらに、営業・マーケティング費用については、複数の業界にまたがる営業活動が必要になるため、その分広範囲な宣伝や顧客接点を設けなければなりません。
しかし、それによってさまざまな顧客セグメントを獲得できるメリットがあります。
最終的には長期契約やリピート案件につなげることで、一定の収益を確保しながら、投資を回収する構造を築いているのです。こうしたコスト構造の上に、堅実な収益モデルと成長戦略が成り立っているのがHOUSEIの特徴です。
自己強化ループ (フィードバックループ)
HOUSEIの自己強化ループは、主に技術開発と事業展開の相互作用によって生まれています。
AIや顔認証などの高度な技術を開発し、新しいプロダクトを市場に投入することで、ユーザー企業から多様なフィードバックが集まります。
そのフィードバックをもとに改良や追加機能の検討を重ねることで、さらに完成度の高いシステムが出来上がり、その結果、新規顧客獲得や追加注文につながります。
また、業界ごとに異なる課題を解決するなかで培われたノウハウは、別の業界にも転用が可能となり、新たな事業機会を生むという連鎖が生まれます。
例えば、メディア向けシステムで開発したリアルタイム処理技術が、不動産のオンライン契約にも応用できるといった具合です。
こうした横展開が成功すればするほど、HOUSEIの事業範囲は広がり、さらに多様な顧客から要望が寄せられ、技術は加速度的に進化するというプラスの循環が起こります。
なぜこのループが成り立つのかというと、ITやAIという分野自体が汎用性の高い技術であり、多くの業界ニーズに応える柔軟性を持つためです。
大きな初期投資を要する一方で、成功すれば高収益と新たな発展可能性を生み出す力があるのです。
こうした自己強化ループがHOUSEIの強みを強化し続け、成長戦略を支える原動力となっています。
採用情報
HOUSEIはエンジニアやITコンサルタントなど専門的な人材を中心に募集していることが知られています。
初任給や平均休日、採用倍率などの詳しい数字は公開されていませんが、AIや顔認証などの先端技術に携われることから、エンジニア志望の方々にとっては魅力的な職場といえます。
IT業界は常に技術更新が早いため、社員教育やスキルアップ制度の充実が重要視される傾向があります。
HOUSEIもこうした研修や勉強会、海外展開への参加などを通じて、社員が新たな技術や知識を習得しやすい環境を整えている可能性が高いです。
急速に事業を拡大していることから、採用規模が拡大するタイミングも多く、柔軟なキャリアパスを描きやすい点が特徴になるでしょう。
株式情報
HOUSEIは証券コード5035で上場しており、メディア事業からAI関連プロダクトまで幅広い領域をカバーする企業として注目を浴びています。
具体的な配当金や1株当たり株価は公表情報が限られていますが、成長力の高さと新技術への投資姿勢が投資家から評価されているようです。
AIや顔認証といった今後も拡大が見込まれる分野を扱う企業は、株式市場でも関心を集めやすいため、IR資料などでの情報開示が今後さらに進む可能性があります。
投資家にとっては研究開発の方向性や海外展開の実績などが注目ポイントとなりそうです。
未来展望と注目ポイント
HOUSEIの未来展望としては、まずAIやセキュリティ分野での技術リーダーシップを確立し、国内外の企業に対して多彩なソリューションを提供することが見込まれます。
研究開発にしっかりとコストをかけることで、顔認証の精度をさらに高め、より多くの業界に導入できる技術基盤を築くことが目標となるでしょう。
さらに、メディア業界のデジタル化はまだまだ発展途上であり、オンライン配信やデータ分析を通じた読者ニーズの把握など、新たなITサービスの需要が拡大する可能性があります。
HOUSEIはメディア事業で培ったノウハウを応用し、他のコンテンツビジネスや教育分野へも積極的にソリューションを広げていくことが期待されます。
加えて、海外IT事業が拡張していけば、国内よりも広い市場でビジネスモデルを試す機会が増え、そこでの成功事例がさらに別の国や地域でのビジネスチャンスにつながるループが生まれるかもしれません。
投資家や就職希望者にとっては、AI技術の進化や海外事業の進捗、そして新たな業界へのサービス展開に注目していくことで、HOUSEIの成長ポテンシャルを見極めるヒントを得られそうです。
こうした取り組みが着実に実を結べば、今後さらに株式市場からの評価が高まり、企業としてのブランド力も強化されると考えられます。
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