企業概要と最近の業績
ベース株式会社は、ERPソリューションを軸にIT領域で幅広く事業を展開しており、近年はシステム開発から保守・運用までを一貫して行うワンストップサービスが大きな強みとなっています。2023年12月期は売上高が187億円を記録し、前年同期比9.8%増という堅調な伸びを見せました。営業利益は47億円(前年同期比20.3%増)、経常利益は47億円(前年同期比19.4%増)と利益面でも高い成長を維持しており、当期純利益も34億円(前年同期比25.9%増)を達成しています。既存顧客との長期的な信頼関係を築きながら、IT人材の育成を重視する社風が功を奏し、コンサルティングから保守運用までの収益のバランスを保っている点が特徴です。特にERP分野においては、大手企業への導入実績が積み重なり、高い技術力やスピーディなプロジェクト対応力が評価されています。安定したフロー売上とストック型ビジネスの双方をバランスよく拡大していることが、同社の持続的な成長を支える柱となっています。
ビジネスモデルの9要素
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価値提案
ベース株式会社の価値提案は、高品質なERPソリューションとソフトウェア開発サービスの提供に集約されています。SAPを中心としたERPの導入コンサルティングやアドオン開発に強みを持ち、企業が抱える複雑な業務プロセスを効率化する最適解を提示するのが特徴です。技術力を高める仕組みとして若手社員も早い段階から企画・設計・開発に携わり、現場で得たノウハウを顧客企業の課題解決に即活かせる体制を整えています。こうした一貫したサービス品質が、信頼と実績という形で蓄積されており、顧客企業から追加案件や長期保守契約を獲得しやすい土壌を築いているのです。なぜそうなったのかといえば、IT業界の人材不足が叫ばれる中で、育成力に注力する同社の方針が、結果的に高品質な成果物を継続的に提供できる組織体制を作り上げていることが大きな要因になっています。 -
主要活動
同社の主要活動としては、ERP導入支援コンサルティング、ソフトウェア開発、保守・運用サービスが挙げられます。導入コンサルティングでは、顧客企業の業務分析と最適なシステム要件定義を行い、アドオン開発やカスタマイズで個々の企業ニーズに合わせたシステム設計を進める点が特長です。保守・運用フェーズでは、開発フェーズから培った業務知識を活かし、システムに生じる課題を迅速に解消するとともに、追加機能や改善提案を行うことで顧客との関係を深めています。なぜこうした活動が重要視されるようになったかというと、単発の開発案件だけでなく、長期的に安定収益をもたらす保守運用契約を獲得することで、経営基盤を堅固にする狙いがあるからです。これが同社のフローとストックを両立させるビジネスモデルの核心ともいえます。 -
リソース
同社のリソースは、何よりも人材の高い技術力と豊富なプロジェクト実績にあります。SAPをはじめとするERP関連システムの知識を蓄積した中堅・ベテラン社員に加え、若手を積極的に育成して早期に実践投入することで、技術力のすそ野を広げているのが特徴です。人的リソースだけでなく、長年培ってきた業務ノウハウや各種フレームワークの活用実績も貴重な資産となっています。なぜそうなったのかといえば、エンドユーザー企業が求める要望は高度化・多様化しており、汎用的なスキルだけではなく個別最適解を迅速に導く対応力が求められているためです。そのため同社は常に人材強化と専門性の確保に投資を続けることで、他社との差別化を図っています。 -
パートナー
ベース株式会社は、伊藤忠テクノソリューションズやNTTデータなどの大手SIerをはじめ、幅広い協業パートナーを持っています。エンドユーザーとの直接契約が多い一方で、大規模な開発案件や特殊な技術領域については、強力なパートナーシップを活かしてリソースを柔軟に補完できる体制を整えています。なぜこうしたパートナー戦略を採用しているかというと、ITプロジェクトの規模拡大や専門領域の細分化が進む中で、単独企業だけでは対応しきれない技術やノウハウを協業で補う必要があるからです。協業体制を構築することで、同社の強みであるERP分野にもより幅を持たせることができます。 -
チャンネル
同社のチャンネルは、主に直接契約による顧客アプローチと一次請けでの大規模プロジェクト参画が中心です。顧客企業からすれば、要件定義から開発、運用・保守までワンストップで依頼できる点が魅力となり、信頼関係の構築もスムーズに進みます。一次請けとしての役割を果たすことで、プロジェクト全体の管理や品質に関して主体的にコントロールでき、ユーザー企業が求める高度な要望に対しても柔軟に対応できるのがポイントです。なぜそうなったのかというと、間に多くの下請けが入るとコミュニケーションが複雑化し、品質や納期にも影響を及ぼしかねないため、一次請け・直接契約での運用が堅実な成果につながりやすいという側面があります。 -
顧客との関係
顧客との関係は、プロジェクトごとに編成されたチームが密接に連携しながら進められます。導入フェーズから保守運用まで担当メンバーがなるべく固定化されるため、顧客企業の業務を深く理解したうえで、継続的なサポートを行えるのが特長です。結果として顧客企業との信頼関係が強固になり、新たな課題の相談や追加開発などがリピート発注されやすくなる傾向があります。なぜそうなったのかというと、ERP導入には企業の核心となる業務プロセスが関わるため、システムと業務の整合性を細部まで理解しているベンダーが継続的に携わることが顧客満足度を高める最大の要因だからです。 -
顧客セグメント
同社がカバーする顧客セグメントは、金融機関、流通・小売、製造業、公共分野など多岐にわたります。SAPを中心としたERPニーズは大手企業だけでなく中堅企業にも広がっており、プロセス全体の可視化や業務効率化への関心が高まり続けている点が背景にあります。なぜ複数業種にまたがる展開が可能なのかというと、ERP自体が横断的な業務管理の仕組みとして普及しており、どの業界でも業務最適化が求められるからです。多種多様な顧客セグメントに対応することで、特定の業界景気に依存しにくくなり、同社の業績は安定しやすくなります。 -
収益の流れ
収益の流れは、ソフトウェア開発・ERP導入コンサルティングのフロー収益と、保守運用・追加開発によるストック収益の両輪で構成されています。新規プロジェクトにおける導入支援やアドオン開発から得られるまとまった売上と、導入後の保守運用契約から得られる継続的な売上のバランスが良いのが特徴です。なぜこうした形に落ち着いたかというと、ITプロジェクトは一度納品して終わりではなく、システムの運用保守や追加機能の要望が必ず発生するためです。顧客企業からすれば、長期的なパートナーとして継続的に依頼できるベンダーを求めるケースが多く、同社はここを確実に押さえているわけです。 -
コスト構造
同社のコスト構造は、人件費と開発関連費用が中心です。ERP導入やソフトウェア開発には高度なスキルを持ったエンジニアが必要なため、人材確保と育成に投資を惜しまず行うことで、品質と効率を維持しています。また、プロジェクトマネジメントを円滑に行うためのツールやシステム導入費、業務知識を深めるための教育研修費なども重要なコスト要素です。なぜそうなったかというと、高付加価値なITサービスを提供する上では、個々のエンジニアのスキルとプロジェクト管理力が競争力の源泉であるため、この部分への投資を優先的に行うことが長期的なリターンを生むからです。
自己強化ループ
ベース株式会社では、高品質なサービス提供が新規顧客の開拓だけでなく、既存顧客からのリピート受注をも促進する好循環が生まれています。具体的には、最初の開発プロジェクトで優れた成果とスムーズな運用立ち上げを実現すると、顧客からの評価が高まり、追加開発やさらなる改善要望が自然に生まれます。そこで同社は、若手を含むチーム全体で顧客の業務改善に積極的に取り組み、新しいノウハウや技術を吸収することで自社のスキルも磨かれていくのです。結果として、技術力と顧客満足度がともに向上し、評判を呼んだ顧客企業からの紹介や口コミ効果により、新規案件も獲得しやすくなっていきます。この“高品質→評価向上→追加受注→ノウハウ蓄積→さらなる高品質”の循環が、長期的な競争力を高める大きな原動力となっています。
採用情報
同社は若手の育成に力を入れており、新卒社員もプロジェクトの企画段階から実務に携わるチャンスが多いとされています。初任給や平均休日、採用倍率などの具体的な数値は公表されていませんが、ITエンジニアとしてのキャリアアップを目指す人材にとっては、実務を通じてERPや最先端の技術を学べる魅力ある環境といえるでしょう。特に研修制度やメンター制度を重視しているため、未経験でも着実にスキルを身につけたいと考えている方には注目度の高い企業です。
株式情報
同社の銘柄コードは4481で、配当金は2023年12月期で1株当たり92円が予定されています。株価は2025年1月31日時点で3,025円となっており、この水準をもとに考えると利回りはITセクターとしては比較的魅力的な水準といえるでしょう。業績の伸びに伴う配当の増加や株価の上昇余地も期待され、安定した収益基盤を背景とした成長戦略への評価が高まっています。
未来展望と注目ポイント
今後の同社の成長戦略としては、ERP導入ビジネスのさらなる拡充と共に、DX化が進む各業界のニーズに合わせた高度なソリューション提供が鍵を握ると考えられます。SAPの最新バージョンへの移行需要やクラウド化の加速に対応しながら、周辺システムとの連携強化によって企業全体のデジタル変革を支援する領域での需要増が予想されます。また、安定収益を生む保守運用ビジネスを拡大していくことで、売上のブレを抑制しながら継続的な投資原資を確保し、新たな技術やサービス開発にも取り組みやすくなるでしょう。人材面では若手の戦力化をさらに推進し、多様な業種・業態の顧客へ横展開することで幅広い顧客セグメントに対応できる体制が強化されていく見込みです。こうしたバランスの良い経営姿勢を維持しながら、新たなIT潮流を先取りしていくことが、今後の持続的成長の大きな注目ポイントとなりそうです。
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