大成温調の成長戦略がスゴイ ビジネスモデルとIR資料を徹底解説

建設業

企業概要と最新業績

大成温調株式会社

【全体の業績】

大成温調株式会社は、空気調和設備、給排水衛生設備、電気設備などの設計・施工および保守管理を総合的に手がける建築設備の大手工事会社です。

オフィスビルや商業施設、工場、病院、教育施設といった多種多様な建物の環境整備において高度な技術力を誇り、国内のみならず海外においても空調・衛生工事を展開しています。建築物のライフサイクル全体に寄り添う設備ソリューションと確かな提案力を強みとし、安全で快適な空間創出と省エネルギー社会の実現に大きく貢献しています。

同社の最新の通期決算では、売上高が625億1,200万円(前年同期比10.5%増)、営業利益が31億1,500万円(前年同期比78.4%増)、経常利益は35億1,400万円(前年同期比56.2%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は35億5,100万円(前年同期比123.1%増)となり、二桁の増収とともに大幅な増益を達成しました。

これは、主力の建築設備工事事業において前期からの豊富な手持ち工事が着実に消化されたことに加え、大型物件の施工が順調に進捗したことで完成工事高が大きく拡大したことによるものです。

資材価格の高騰や労務費の上昇といった厳しい施工環境下においても、現場での徹底した施工管理と原価低減活動を推し進めるとともに、適切な施工価格での受注徹底が奏功し、大幅な利益率の改善と業績の拡大につながりました。

【参考文献】https://www.taisei-oncho.co.jp/ir

価値提案

大成温調株式会社は、建築物の「空気」と「水」に関する総合エンジニアリングを通じて、設計や施工から維持管理、そして省エネ改修までを一貫して提供する体制を構築しています。

【理由】
なぜそうなっているのか、それは建物の長寿命化と脱炭素社会の到来により、施主が単なる施工だけでなく、運用にともなうライフサイクルコストの低減や環境性能の向上を強く求めるようになったからです。

こうしたニーズに応えるため、大成温調株式会社では建物維持管理コストを最大で20パーセント削減できるLCC最適化ソリューションを展開しています。

さらに、既存のビルの二酸化炭素排出量を削減するZEB化支援改修の実績も豊富に積み重ねています。

2025年3月期の実績として、工場向けのクリーンルームにおける高精度な温湿度制御や清浄度制御技術を活かし、年間で100件以上の施工を手掛けており、顧客から高い評価を獲得しています。

主要活動

大成温調株式会社の事業活動の核となるのは、3次元CADモデルであるBIMを最大限に活用したデジタル設計とプレハブ施工の推進です。

【理由】
なぜそうなっているのか、それは建設業界全体で深刻化している2024年問題の時間外労働上限規制に対応し、現場における労務の徹底的な省力化と工期の短縮、そして施工品質の均一化を推進する必要があるからです。

大成温調株式会社はこうした課題に対して積極的にデジタル化を進めており、2025年3月期の実績において全主要案件におけるBIM活用率は90パーセントを超えています。

さらに、配管などを事前に工場で加工しておくプリファブリケーションを導入したことで、現場での作業時間を2025年3月期の事例でおよそ25パーセント削減することに成功しました。

また、現場の施工管理者が利用するモバイル端末の導入など現場向けのデジタル化も進めており、2024年時点で全施工現場へのタブレット配備を完了させています。

リソース

大成温調株式会社の事業を支える最も重要な経営資源は、全国に広がる有資格の技術者ネットワークと自社で保有するデータ基盤です。

【理由】
なぜそうなっているのか、それは設備工事における高い品質と利益率の維持が、現場全体を統括する施工管理技士の能力や、確実な施工を実施する協力会社の優れた施工能力に直接的に依存しているからです。

大成温調株式会社には高度な専門知識を持つ技術者が多数在籍しており、2025年3月時点での1級管工事施工管理技士の保有者数は420名以上にのぼります。

さらに、施工品質を高く維持し続けるために、独自の技術研修施設であるTOCテクニカルセンターを運用して人材育成に注力しています。

また、デジタル設計の核となるBIMデータを蓄積して活用するため、専門部署としてBIM推進室を組織化しており、2025年時点で30名以上の専任スタッフを配置して技術力の向上を図っています。

パートナー

大成温調株式会社は、大手ゼネコンや資材メーカー、そして専属の協力会社組織と強固なパートナーシップを構築しています。

【理由】
なぜそうなっているのか、それは元請案件や二次請け案件を継続的かつ安定的に獲得するとともに、実際の施工現場における十分な施工能力と職人の手配を確実なものにする必要があるからです。

大成温調株式会社の主な受注先となるゼネコンには、大成建設株式会社、株式会社竹中工務店、清水建設株式会社などの業界を代表する企業が名を連ねています。

また、設備工事に欠かせない機器の主要な調達先として、ダイキン工業株式会社や三菱電機株式会社、そしてパナソニック株式会社などの大手メーカーと密接に連携しています。

現場の施工を直接担う職人の確保についても、大成温調株式会社が独自に組織化した協力会社ネットワークである大温会が存在し、2025年時点でおよそ300社の加盟企業が現場の施工体制を支えています。

チャンネル

大成温調株式会社は、大手ゼネコンからの特命や指名入札によるルートに加え、自社の営業部門が施主に直接アプローチする経路を確保しています。
 
【理由】
なぜそうなっているのか、それは利益率の高い直受注の案件やリニューアル工事と、大口で安定した売上が見込めるゼネコン経由の受注を組み合わせることで、事業全体の収益バランスを最適化するためです。

大成温調株式会社の2025年3月期における元請案件や施主直取引などの比率はおよそ35パーセントとなっており、着実に直受注の実績を積み上げています。

一方で、大手ゼネコンを経由するような下請案件の比率はおよそ65パーセントを占めており、安定した事業基盤の中核を担っています。

これらの幅広い顧客接点を維持するために、大成温調株式会社は国内の全国15か所に支店や営業所のネットワークを展開し、それぞれの地域に密着した営業活動を行っています。

顧客との関係

大成温調株式会社は、施工が完了した後の保守メンテナンス契約を通じて、顧客との間に長期的な関係性を築き上げています。

【理由】
なぜそうなっているのか、それは建物の設備がおよそ10年から15年の周期で必ず改修や更新の時期を迎えるため、アフターフォローを通じて次回のリニューアル案件を確実に取り込むことが経営上重要だからです。

大成温調株式会社は定期的な省エネ診断や改修提案を強みとしており、2025年3月時点において保守点検やリニューアルに関する長期の保全契約件数は1200件以上におよびます。

また、顧客からの信頼の厚さは数字にも表れており、2025年3月期の社内データによればリニューアル案件のリピート受注率は80パーセントを超える高い水準を維持しています。

万が一のトラブルにも迅速に対応するため、24時間365日体制の緊急メンテナンス対応窓口であるTOCカスタマーサポートを開設して顧客の安心を支えています。

顧客セグメント

大成温調株式会社は、オフィスビルをはじめ、半導体や製薬などの製造工場、さらにはデータセンターや医療機関といった幅広い法人顧客を対象としています。

【理由】
なぜそうなっているのか、それは高度な空気制御の技術が求められる産業施設や、常時稼働が不可欠なIT関連施設などは工事の単価が高く、同社の高い技術力を活かした差別化が図りやすいからです。

大成温調株式会社の2025年3月期における顧客別の売上構成を見ると、工場やクリーンルームなどの産業空調向けの比率がおよそ45パーセントを占めて最大のセグメントとなっています。

また、オフィスや商業施設を中心とする一般空調向けの売上比率はおよそ40パーセントとなっており、産業向けに次ぐ規模を誇ります。

国内にとどまらず、海外に進出している日系企業などの海外法人向けの売上比率も2025年3月期でおよそ15パーセントを占めており、多様な顧客基盤を構築しています。

収益の流れ

大成温調株式会社の収益は、新築の設備工事によるフロー収益と、既存設備の保守点検やリニューアル工事によるストック型の収益で構成されています。

【理由】
なぜそうなっているのか、それは新築の工事は規模が大きく売上を牽引する反面で景気の変動による影響を受けやすいため、利益率の高いリニューアルや保守の案件を増やすことで収益基盤を安定化させる必要があるからです。

大成温調株式会社の2025年3月期の実績において、新築工事の売上比率はおよそ60パーセントを占めています。

一方で、既存設備の改修を中心とするリニューアル工事の売上比率はおよそ40パーセントとなっており、事業の安定を支える柱として機能しています。

また、2025年3月期の実績ではリニューアル工事の完成工事総利益率が新築工事と比較しておよそ3ポイントから5ポイント高い水準を維持しており、収益性の向上に大きく貢献しています。

コスト構造

大成温調株式会社の事業にかかるコストは、協力会社への外注費や建築資材費などの完成工事原価が大部分を占める構造となっています。

【理由】
なぜそうなっているのか、それは大成温調株式会社が施工管理を専門とするエンジニアリング会社であり、自社工場を持たずに外部からの部材調達と職人の手配にともなう外注労務費が事業の最大の原価要素となるからです。

大成温調株式会社の2025年3月期の連結実績において、売上原価率は83.5パーセントとなっており、コストの大半を工事関連の費用が占めていることがわかります。

残りの費用として販売用および一般管理費が存在しており、同期間の販管費率は10.7パーセントとなっています。

さらに、大成温調株式会社は将来の競争力を高めるための技術投資も継続しており、2025年3月期の実績として研究開発費やデジタルトランスフォーメーション関連の投資額に年間でおよそ3億円を投じています。

自己強化ループ

大成温調株式会社の成長の仕組みは、デジタル化への積極的な投資を起点とする好循環によって支えられています。

まず、3次元モデルであるBIMの活用や現場向けのタブレット導入などを進めることで、高品質でありながら工期を短縮した効率的な施工が実現されます。

この確実な施工実績が、施主や大手ゼネコンからの高い顧客満足度と信用を獲得することに直結します。

厚い信頼関係が構築されることで、利益率の高い高難度な案件や、顧客から直接受注するリニューアル工事の依頼がさらに増加し、企業の収益が大きく拡大していきます。

そして、生み出された潤沢な資本を人材の育成や協力会社への還元、さらなるデジタル投資へと再投資することで、技術力と施工体制がより一層強化され、最初のステップである高品質な施工へと戻るループが形成されています。

この好循環が実際に回っていることは、2023年3月期に65パーセントだったBIM適用案件の割合が2025年3月期に90パーセントを超えたことや、2025年3月期のリピート顧客からの受注金額割合が80パーセント以上を維持していることからも明確に読み取ることができます。

さらに、効率化と高付加価値化が進んだ結果として、完成工事総利益率が2023年3月期の13.8パーセントから2025年3月期には16.5パーセントへと上昇を続けており、企業の成長を後押ししています。

採用情報

大成温調株式会社は、自ら考えて行動できる主体性や、多様な関係者と円滑に対話できるコミュニケーション能力を持つ人材を求めています。

新卒採用に力を入れており、2025年入社の実績としては31名の新入社員を迎え入れました。

大成温調株式会社の初任給は2026年4月の予定額として、大学院卒が月給270000円、大学卒が月給255000円、高専や短大などの卒業生が月給235000円に設定されています。

休日の制度も充実しており、完全週休2日制を採用しているほか、2025年度の実績において年間休日総数は125日となっています。

従業員が長く働ける環境も整っており、2025年3月末時点での平均勤続年数は13.8年です。

また、大成温調株式会社の給与水準は高く、2025年3月期の有価証券報告書によれば従業員の平均年間給与は8120000円となっています。

なお、新卒の採用倍率に関する公式な数値は公表されていません。

株式情報

大成温調株式会社の株式は、東京証券取引所のスタンダード市場に上場しており、証券コードは1904が割り当てられています。

株式の売買単位である単元株数は100株となっており、毎年3月を本決算の時期と定めています。

株主に対する還元姿勢としては、株主資本配当率であるDOEで3.0パーセント以上を目標としながら、連結配当性向30パーセント以上を基本方針として安定した配当を継続する考えを掲げています。

2026年2月時点での大成温調株式会社の株価はおよそ3800円台で推移しており、これに基づくと単元株数を購入するための最低投資金額の目安はおよそ380000円となります。

株主優待の制度も導入されており、毎年3月末時点の株主を対象として、保有する株式数や期間に応じてクオカードや優待ポイントが贈呈される仕組みになっています。

なお、株価や配当金といった数値は日々の市場環境によって変動するため、投資判断を行う際には最新の情報を企業からの発表でご自身で確認していただくようお願いいたします。

未来展望と注目ポイント

大成温調株式会社は、中期経営計画2026において、さらなる事業拡大と収益性の向上を目指す戦略を描いています。

この計画は2024年3月期から2026年3月期までを対象期間としており、最終年度である2026年3月期には売上高700億円、営業利益42億円の達成を主要な目標数値として掲げています。

今後の成長を牽引する注力領域として、半導体工場やデータセンターなどの需要を取り込む産業空調の強化を明確に打ち出しています。

また、二酸化炭素排出量の削減を目指す既存ビル向けの省エネ改修事業なども、今後の成長ドライバーとして重要な位置づけとなっています。

こうした成長を実現するための基盤づくりとして、大成温調株式会社は3年間で合計しておよそ30億円の投資枠を設定し、デジタル環境の整備や人材育成、そして技術開発への投資を積極的に進めていく方針です。

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