株式会社熊谷組のビジネスモデルと成長戦略を徹底解説

建設業

企業概要と最近の業績

株式会社熊谷組

【全体の業績】

株式会社熊谷組は、国内のインフラ整備や都市開発を広く支える大手総合建設会社です。

特にトンネルやダム、橋梁といった大型土木工事の分野において業界屈指の高い施工技術と豊富な実績を誇り、古くから技術の熊谷として確固たる市場地位を築いています。

近年では住友林業との強力な業務資本提携を通じ、環境配慮型の中大規模木造建築や中高層木造マンションの普及に注力するなど、時代の変化に対応したサステナブルな建築事業の創出にも強みを発揮しています。

このような強固な事業基盤を持つ同社ですが、2026年3月期の通期決算における売上高(完成工事高)は前年同期比2.2%減の4876億9800万円となりました。

その一方で利益面においては、営業利益が前年同期比89.5%増の270億円、経常利益が前年同期比87.7%増の270億4900万円、親会社株主に帰属する当期純利益が前年同期比114.5%増の200億円となり、減収ながらも各段階利益が劇的に増加する大幅な増益を達成しました。

売上高が前年を下回った主な要因としては、施工体制や稼働状況を総合的に勘案した計画的な受注抑制に加え、一部の手持ち工事における進捗の端境期や子会社群の受注動向が影響したことにあります。

しかしながら利益面がこれほどまでに大きく伸長したのは、主力の国内建築事業において売上総利益率が劇的に改善したことが最大の理由です。

資材価格の高騰や労務費の上昇といった建設業界全体の厳しい外部環境が続くなか、同社は受注時における採算性の厳格な審査を徹底しました。

さらに、進行中の施工案件における徹底した原価管理や原価低減への取り組み、施工プロセスの効率化を粘り強く推進したことが実を結び、全体の収益力を大きく底上げする結果となりました。

【参考文献】https://www.kumagaigumi.co.jp/ir

価値提案

株式会社熊谷組は、超高層建築物や大深度の地下掘削といった技術的難易度がきわめて高い工事に対応する建設技術と、地球環境の保護に向けた持続可能な社会作りに貢献する中高層大規模木造建築の一気通貫ソリューションを提供しています。

同社は1956年の黒部川第四発電所インクラインおよびトンネル工事に代表される歴史的な難工事を成功させてきた実績があり、土木工事と建築工事の双方で高度な技術力を保有しています。

近年では環境配慮への意識の高まりを受けて、木材を活用した建築提案に注力しています。

【理由】
なぜそうなったのかといえば、気候変動への対策として建設業界全体で脱炭素化の取り組みが急務となる中、従来の鉄筋コンクリート造に代わる選択肢としてオフィスや商業施設の木造化および木質化に対する顧客からの要望が急増しているためです。

この価値提案を裏付ける具体例として、提携先である住友林業株式会社と共同で開発した木質耐火部材ブランドであるFOREST WEBがあげられます。

さらに株式会社熊谷組は、自社の技術発信と脱炭素の検証を兼ねて、2024年に木造ハイブリッド構造の7階建てオフィスビルである熊谷組首都圏支店自社ビルを施工し完成させました。

こうした取り組みにより、高度な施工力と環境対応力を兼ね備えた唯一無二の価値を提供しています。

主要活動

株式会社熊谷組の主要な事業活動は、官公庁からの公共土木工事や民間事業者からの建築工事を受託して施工管理を行うこと、山岳トンネルの施工を自動化するデジタル技術の開発、そしてパートナー企業との共同事業開発です。

特に建設現場における労働環境の改善と生産性の向上に向けた技術革新に注力しています。

【理由】
なぜそうなっているのかといえば、2024年4月から施行された建設業における時間外労働の上限規制、いわゆる2024年問題に対応するため、現場での大幅な省人化と作業効率化を実現するデジタル技術の適用が会社にとって不可欠となったからです。

具体的な活動の実績として、山岳トンネルの完全自動化を目指すシステムであるT-iTunnelerの現場導入が進められており、2024年時点において累計15現場以上への導入を達成しました。

また、建築や土木の設計および施工管理において3次元モデルを活用して効率化を図るBIMやCIMの技術について、2025年までに全現場への展開率100パーセントを目指す計画を推進しています。

さらに住友林業株式会社とは年間50件を超える案件について共同で提案や協議を行っており、技術開発と営業活動の両面で活発な事業を展開しています。

リソース

株式会社熊谷組が誇る経営リソースの基盤は、長年の難工事施工で培われた高い技術力を有する人財と、自社およびグループが保有する実験研究施設、そして長年築き上げてきた下請け協力業者との強固なネットワークです。

2025年3月末時点で単体2735名、連結4410名の従業員が在籍しており、社員の約70パーセント以上が国家資格である1級土木施工管理技士や1級建築施工管理技士を保有しています。

【理由】
なぜそうなったのかといえば、複雑かつ過酷な現場条件下で行われるトンネル掘削や大型建築の施工管理を安全に完遂するためには、高い専門知識を持つ自社技術者と、現場で実際に作業を担う協力業者との高度な技能の継承および相互の信頼関係が絶対に欠かせないからです。

技術開発の拠点としては、茨城県つくば市に大規模な実験施設を備えた熊谷組技術研究所を構えており、音響や構造、新材料の研究開発を進めています。

現場の施工体制においては、全国の優れた専門工事業者が集う熊谷組安全衛生協力会や、約2000社が加盟する協力会社組織である熊友会との連携により、安定した工事品質を維持しています。

パートナー

株式会社熊谷組は、事業の強みを向上させるために多様な企業や機関との戦略的なパートナーシップを構築しています。

中でも最も重要な提携先は、持分法適用関連会社である住友林業株式会社との業務および資本の提携です。

また、道路の舗装やインフラの維持補修を手がける連結子会社の株式会社ガイアートや、施工の発注者である国土交通省および高速道路会社各社との連携も不可欠な要素です。

【理由】
なぜそうなっているのかといえば、自社単独ではカバーしきれない木材の供給網や調達ルートを住友林業株式会社から確保すると同時に、道路舗装などのインフラ補修技術を子会社を通じてグループ内に内製化することで、建設市場における幅広いニーズに対応するためです。

具体例として、住友林業株式会社は株式会社熊谷組の株式の約20パーセントを保有しており、共同での受託営業を展開しています。

舗装事業を担当する株式会社ガイアートは、2025年3月期において売上高約600億円規模の業績を誇り、グループ全体の事業基盤を支えています。

さらに官公庁とのパートナーシップでは、NEXCO中日本が発注した中央自動車道恵那山トンネルリニューアル工事などの大規模改修案件を共同で手掛けています。

チャンネル

株式会社熊谷組が顧客にアプローチし受注を獲得するための主要なチャンネルは、官公庁が実施する公共工事の入札、民間事業者に対する直接の提案営業、そして提携先である住友林業株式会社を経由した共同営業の3つです。

【理由】
なぜそうなったのかといえば、公共工事においては価格だけでなく技術提案の質を判定する総合評価落札方式が主流となっており、同社の高い施工実績が直接の評価につながる一方で、民間のオフィスや施設建築においては環境対応力を求める発注者への直接提案や提携ルートからのアプローチが受注獲得に極めて有効であるためです。

実際の受注構成を見ると、2025年3月期において土木事業の受注高のうち約65パーセントを国土交通省や地方自治体などの官公庁向け案件が占めています。

一方で、同期間の建築事業の受注高においては約80パーセントが民間企業向け案件で構成されています。

また、住友林業株式会社とのアライアンスに基づく共同受注案件の累計受注額は、2017年の提携開始から2025年3月時点までに累計1000億円を超える規模へと大きく拡大しています。

顧客との関係

株式会社熊谷組は、工事の完成および引き渡しを行って終わりではなく、建物の引き渡し後も長期にわたり点検や改修工事の提案を通じて発注者との良好な関係を継続しています。

施工完了後のアフターフォローや、建物の三次元デジタルモデルであるBIMデータを活用した維持管理支援を行うことで、息の長いパートナーシップを維持しています。

【理由】
なぜそうなっているのかといえば、建物の生涯にわたるライフサイクル全体に深く関与することで、既存の顧客から将来的に発生する大規模修繕やリニューアル工事を安定して獲得し、一発限りの受注に依存しない持続的な収益基盤を築くためです。

同社では建物の竣工から2年後および10年後に定期点検を行うプログラムを標準化して運用しています。

この丁寧なアフターフォロー体制により、2025年3月期の実績として民間建築事業における既存顧客からのリピート受注率は約60パーセントという高い水準を記録しています。

また、施工後の建物の維持管理をデジタル技術で支援する独自のシステムとしてK-BIM FMを顧客に提供し、顧客の利便性向上と長期的な信頼関係の醸成につなげています。

顧客セグメント

株式会社熊谷組の主な顧客セグメントは、国土交通省や都道府県などの行政機関、高速道路会社、鉄道事業者、不動産デベロッパー、そして各種製造業などの法人顧客です。

同社は個人向けの戸建て住宅事業などを直接取り扱うことは原則として行っておらず、法人顧客の社会インフラや大型施設にターゲットを絞り込んでいます。

【理由】
なぜそうなったのかといえば、同社が強みとする技術力や施工管理能力は、難工事が伴う大型土木事業や都市部の高層建築物において最も真価を発揮するため、経営資源を大規模な法人案件へ集中させることが事業効率を高める結果となったからです。

具体的な顧客層としては、土木分野において国土交通省やNEXCO各社が主要な発注者となっており、大型トンネルや高速道路のリニューアル案件を継続して受注しています。

民間建築分野においては、三菱地所株式会社や三井不動産株式会社、野村不動産株式会社といった大手不動産デベロッパーが顧客であり、都市再開発ビルなどを手掛けています。

さらにJR東日本やJR東海をはじめとする鉄道事業者からも、線路に近接する難易度の高い構造物工事を受注しています。

収益の流れ

株式会社熊谷組の収益構成は、建設工事の請負契約に基づいて工事の進捗に応じて発生する請負収益が全体の大部分を占めており、不動産開発や再生可能エネルギーによる売電収入などのストック型の収益がそれに続いています。

【理由】
なぜそうなっているのかといえば、同社の本業である建設工事請負が最大の収益源であることは変わりないものの、建設業界特有の業績変動リスクを緩和し収益の安定化を図るため、継続的なキャッシュフローを生み出す不動産開発や環境エネルギー事業の拡大を進めている最中であるためです。

2025年3月期の連結決算における売上高4352億円の内訳を見ると、建設事業の完成高が4256億円と全体の約98パーセントを占めています。

一方で、不動産開発事業やその他の事業による売上高は96億円であり、構成比としては約2パーセントとなっています。

このその他事業の枠組みの中には、太陽光発電や風力発電施設からの売電収入が含まれており、2025年3月期において年間約15億円規模の安定した収益を生み出し、会社全体の収益構造の多角化に貢献しています。

コスト構造

株式会社熊谷組のコスト構造は、建設現場で使用する鋼材や生コンクリートなどの資材購入費、および協力業者に支払う下請外注費からなる売上原価が大部分を占め、これに本社や支店の管理コストである販売費及び一般管理費が加わる形となっています。

【理由】
なぜそうなったのかといえば、建設業は現場ごとに膨大な材料費と熟練技能労働者の人件費を要する原価集約型の産業構造であるため、原価のコントロールおよび生産性の向上管理が会社の収益性を左右する決定的な要素となるからです。

2025年3月期の連結決算数値を参照すると、売上高4352億円に対して売上原価は約3925億円となっており、売上原価率は約90.2パーセントです。

販売費及び一般管理費は約282億円で、販管費率は約6.5パーセントとなっています。

また、将来の競争力を高めるための研究開発費として2025年3月期には28.5億円を投じており、山岳トンネルの自動掘削システムであるT-iTunnelerの開発や木造化技術の高度化に資金を充当しています。

自己強化ループ

株式会社熊谷組には、事業の強みが次の成長を自動的に誘発する独自の自己強化ループが存在します。

このループの起点は、黒部ダムの建設工事や山岳トンネル工事で培われた圧倒的な施工実績と高度な技術力の存在です。

難易度の高い工事を安全かつ確実に完遂して技術的評価を高めることで、官公庁の総合評価落札方式や民間工事の指名コンペにおいて優位に立ち、採算性の高い良質な案件を厳選して受注できるようになります。

十分な粗利益を確保して得られた手元資金を、山岳トンネル自動施工システムであるT-iTunnelerの開発や住友林業株式会社との木造化技術の共同開発へ集中して投資します。

施工の著しい省人化および効率化と、木造ハイブリッド建築という他社にはない独自ポジションを確立することにより、競合他社に対する非価格競争力が一層強化されます。

その結果、再び難工事や先進的な大規模木造建築の実績がさらに蓄積され、次の成長サイクルへと戻っていく循環構造が形成されています。

この成長ループが実際に機能していることは各種のデータから裏付けられています。

T-iTunnelerの導入によって山岳トンネル現場での掘削作業人員は従来の体制から2025年3月時点で約30パーセントの削減を達成しました。

さらに住友林業株式会社とのコラボレーションによる受注高は、2023年3月期の約180億円から2024年3月期には約240億円、そして2025年3月期には約310億円へと着実に拡大しています。

手持ち工事高も2025年3月末時点で約5200億円という高い水準を保持しており、好循環が力強く回っていることが証明されています。

採用情報

株式会社熊谷組の採用条件や労働環境について、公式採用情報や各種就職情報サイトの開示データをもとに解説します。

2025年4月入社実績および2026年採用予定の新卒初任給は、学歴ごとに設定されています。

総合職の大学院卒が月給290000円、大学卒が月給270000円、高専卒および専門卒が月給240000円となっています。

現場赴任手当や時間外手当などは別途支給されます。

休日制度においては、2025年度実績で年間休日総数が125日となっています。

完全週休2日制と祝日を採用しており、建設現場における週休2日の定着を強力に推進しています。

特別休暇として年末年始休暇、夏季休暇、リフレッシュ休暇などが整えられています。

新卒採用の入社人数を見ると、2023年度が122名、2024年度が138名、2025年度が145名と推移しており、採用数は増加傾向にあります。

採用倍率については応募者数が公式に開示されていないため正確な数値は不明ですが、就職情報サイトのプレエントリー数と内定者数から推測するとおよそ20倍から25倍程度となります。

有価証券報告書のデータによると、2025年3月末時点での平均勤続年数は17.8年となっており、2025年3月期単体における平均年間給与は9120000円と高い水準を誇ります。

同社が求める人物像は、自ら考えて行動でき、多様な関係者と協調して困難を乗り越えられるコミュニケーション能力を持ち、モノづくりへの情熱を備えた人材です。

株式情報

株式会社熊谷組の株式に関する基本情報および還元方針についてまとめます。

同社の証券コードは1861であり、上場市場は東京証券取引所プライム市場です。

売買の基本単位となる単元株数は100株であり、本決算の決算期は3月となっています。

なお、株主優待制度については実施されておらず公式な制度はありません。

株主還元における配当方針について、同社は中期経営計画の対象期間中、連結配当性向35パーセントから40パーセントを目安として業績に応じた利益配分を行うことを基本としています。

あわせて、安定した配当を維持するために年間配当額の下限を設定し、株主への継続的な還元を重視する考え方を採用しています。

株価および投資金額の目安として、2026年2月時点の株価水準はおよそ3800円から4200円台で推移しています。

単元株数が100株であることから算出した最低投資金額の目安はおよそ38万円から42万円となります。

なお、株式の価格や利回りなどの数値は市場の状況により日々変動するため、投資判断を行う際は最新の情報をご自身でご確認いただくようお願いいたします。

未来展望と注目ポイント

株式会社熊谷組の今後の成長戦略と将来の展望について、同社が公表している経営計画に基づいて解説します。

同社は2025年3月期から2027年3月期までの3カ年を対象期間とする中期経営計画としてKUMAGAI VALUE CREATION 2026を掲げています。

この計画では、最終年度となる2027年3月期において連結売上高4800億円、連結営業利益200億円、親会社株主に帰属する当期純利益130億円、そして自己資本利益率であるROEを9.0パーセント以上にするという強気な数値目標を設定しています。

目標達成に向けた重点領域として、住友林業株式会社とのパートナーシップによる中高層木造建築の受託拡大と、山岳トンネル掘削システムであるT-iTunnelerによる施工自動化の推進、さらに再生可能エネルギー事業の強化を挙げています。

同社は計画期間中の3年間で総額約300億円の成長投資枠を設定しており、その内訳としてデジタル技術や省人化設備に約100億円、木造技術や環境技術の研究開発に約80億円、再生可能エネルギーおよび開発事業に約120億円を充当する方針です。

資材価格の高騰や労務費上昇といったリスク要因が存在するものの、同社は明確な数値目標と戦略投資により更なる飛躍を目指しています。

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