企業概要と最近の業績
東京都競馬株式会社は大井競馬場や伊勢崎オートレース場などの公営競技施設を中心に、遊園地事業や倉庫賃貸事業などを手がける多角的な企業です。競馬の場外施設やネット投票システムを活用して安定した売上を実現してきました。2024年12月期の売上高は404億4,300万円で、前年と比べて大きく伸びています。営業利益も139億2,600万円と堅調で、特に当期純利益は97億600万円となり前年同期比で14.8%のプラスを達成しました。公営競技事業の好調な売上拡大に加えて、新規の施設が稼働を始めたことが成長に寄与したとみられます。ネット投票システムであるSPAT4の利用者が増えたことで、より多くの収益が得られるようになった点も強みになっています。競馬以外にも遊園地の東京サマーランドや物流向け倉庫の賃貸など複数の柱を持つことで、外部環境の変動リスクを分散しながら成長を続けています。
ビジネスモデルの9つの要素
-
価値提案
東京都競馬株式会社の価値提案は、公営競技をはじめとした多彩なレジャー施設とサービスを通じて、楽しみと利便性を利用者に届けるところにあります。大井競馬場や東京サマーランドなどの娯楽空間を提供するだけでなく、インターネット投票システムを活用した手軽な馬券購入の仕組みも整えています。なぜそうなったのかというと、従来の競馬場や遊園地は現地に行かなければサービスを受けられませんでしたが、より幅広いユーザーに楽しんでもらうためにはオンライン投票や多角的な事業展開が不可欠でした。そこでネット投票システムを積極的に導入し、利用者がどこにいても競馬を楽しめるよう工夫することで、新たな顧客層の開拓や収益機会の拡大に成功したのです。競馬が好きな人だけでなく、家族連れやレジャー目的の方も取り込むことで、より豊かな価値を提供しています。 -
主要活動
同社の主要活動は、競馬場やオートレース場の運営管理、遊園地の運営、さらにはインターネット投票システムの開発と運営にまで及びます。大井競馬場や伊勢崎オートレース場などの施設賃貸を安定的な収入源としながら、東京サマーランドの季節イベントなどで集客を図っています。なぜそうなったのかというと、競馬やオートレースに限らない多角化で季節や景気の変動リスクを抑えつつ、新規顧客を増やす狙いがあるためです。一つの事業だけでは需要が減少した際の打撃が大きくなりますが、いくつもの柱を持つことで企業全体の安定感を高めています。さらにインターネット投票システムは高い利便性を提供しており、地方競馬の売上向上にもつながっています。このようにリアル施設の運営とオンラインサービスの運営を両立させる活動が、同社の強みを支える原動力になっています。 -
リソース
同社が保有するリソースには、大井競馬場や伊勢崎オートレース場などの公営競技施設をはじめ、東京サマーランドのような大規模レジャー施設、そして物流向け倉庫などの不動産資産があります。さらにインターネット投票システムのSPAT4を運営するためのITインフラやシステムエンジニアの知見も重要なリソースといえます。なぜそうなったのかというと、競馬・オートレースなどの公営競技施設を活かして安定した収益を確保すると同時に、IT分野への投資で新たなサービスを展開していく必要があったからです。特にSPAT4は全国どこからでもアクセスできるため、場所の制約を超えて利用者を増やすことに寄与しました。また、遊園地や倉庫事業などの不動産を活用した多角化戦略によって、他の事業と相乗効果を生みやすくなっています。 -
パートナー
同社のパートナーには地方自治体や競馬関連企業、スポンサー企業などが挙げられます。公営競技を運営するには行政との協力が欠かせず、またシステム運営やイベント開催にあたっては技術パートナーや広告代理店など、幅広い業種との連携が必要です。なぜそうなったのかというと、公営競技事業は法制度や自治体の協力体制が重要であり、単独での運営には限界があるからです。また、東京サマーランドのような遊園地でも外部企業とコラボイベントを行うことで集客力を高めています。さらに物流倉庫については、テナント企業と良好な関係を築きながら運営することで安定収益を確保するという考え方があります。このように、各事業で鍵を握るパートナーシップを築くことで、企業の成長を加速させています。 -
チャンネル
同社が顧客とつながるためのチャンネルには、競馬場や遊園地といった現地施設に加えて、ウェブサイトやオンライン投票システムなどのインターネットを介したものがあります。なぜそうなったのかというと、以前は現地に足を運ぶ顧客が中心でしたが、時代の変化に伴いオンライン利用が増加したためです。競馬場やオートレース場に来られない顧客層にもアプローチする必要があり、SPAT4のようなインターネット投票システムが大きな武器になりました。さらに東京サマーランドの最新情報やキャンペーンをSNSや公式サイトで発信することで、若年層や家族連れに向けた告知や集客を可能にしています。多様なチャンネルを活用することで、幅広い年齢層にリーチしやすくなり、収益源の拡大につながっています。 -
顧客との関係
顧客との関係は、会員制度やイベントを通じて深められています。競馬ファンには特典付きの会員プログラムやポイントサービスを提供し、遊園地ユーザーには季節ごとのイベントに参加してもらうことでリピーターを増やしています。なぜそうなったのかというと、競馬や遊園地の利用頻度を高めるには、特典やイベントの魅力を継続的に発信し、顧客が「また行きたい」と思える接点を作ることが重要だからです。さらにオンライン投票では、ユーザー登録を行うことで各種レース情報やキャンペーン情報を個別に発信できるため、顧客とのつながりを深めやすくなっています。こうした顧客との継続的な関係構築が企業全体の売上や評判の向上に大きく貢献しています。 -
顧客セグメント
同社の顧客セグメントは大きく分けて、競馬やオートレースなど公営競技を楽しむファン層、東京サマーランドに代表される遊園地を利用する家族連れや若年層、そして倉庫賃貸を利用する物流関連企業などが挙げられます。なぜそうなったのかというと、競馬ファンだけに依存していては市場が限られがちなので、レジャーや不動産分野への多角化を進めることで、まったく異なるニーズを持つ顧客層を取り込もうとしたからです。競馬は好きではなくても、遊園地には行きたいという家族連れがいるように、異なるセグメントを幅広くカバーする戦略が安定成長に寄与しています。また、物流企業にとって首都圏の倉庫は魅力的な拠点となるため、安定した賃貸収益を得やすいというメリットもあります。 -
収益の流れ
同社の収益の流れは、公営競技施設の賃貸料やネット投票手数料、遊園地の入場料やオプション利用料、倉庫やオフィスビルなどの賃貸収入など多方面にわたります。なぜそうなったのかというと、単一のビジネスモデルに依存すると売上の変動リスクが大きくなるため、複数の柱を持つことで収益基盤を安定させる必要があったからです。競馬や遊園地などは季節や社会情勢に左右される部分があり、一時的に売上が伸び悩むケースも想定されます。しかし、倉庫賃貸は企業の物流ニーズが続く限り一定の収益をもたらすため、全体のバランスをとる上で重要な役割を果たしています。このように多角的な収益構造が、安定した業績を支える原動力になっています。 -
コスト構造
同社のコスト構造には、施設の維持や設備投資にかかる費用、人件費、広告宣伝費、そしてSPAT4などのシステム運営費が含まれます。なぜそうなったのかというと、公営競技や遊園地といった大規模施設の運営には定期的なメンテナンスや改善投資が欠かせず、安全面や快適性を維持するためのコストが必須だからです。また、オンライン投票システムは安定稼働のためにサーバーやネットワークの強化が必要であり、それに伴う人材の育成や開発費が継続的に発生します。ただし、多角化によって複数の事業で共通のリソースを共有できる部分もあり、スケールメリットを得やすい点がコスト面の利点ともなっています。
自己強化ループ
同社がもつ自己強化ループの代表例は、SPAT4による地方競馬のオンライン投票が拡大すると、競馬場の売上が増えるだけでなく同社のシステム収益も向上する好循環にあります。公営競技の売上が伸びることで、さらに新規施設への投資やイベントの企画に予算を振り分けることができ、利用者にとって魅力的なサービスを充実させられます。そうすると、新しい顧客が増えたり既存顧客の利用頻度が上がったりして、より多くの投票手数料や施設利用料が集まり、再投資の原資が蓄積されます。こうしたサイクルが繰り返されることで企業のブランド力や設備が強化され、さらに競争力を高めることにつながります。競馬や遊園地といった現地型サービスと、ネット投票などのオンライン型サービスをうまく組み合わせることで、利用者の利便性を高めながら売上が伸びる構造が完成し、それがまた新たな投資を可能にするという好循環を生んでいるのです。
採用情報
同社の2025年度の初任給は大学や大学院を卒業した方で月給241,000円となっています。年間休日は123日で完全週休2日制の体制を取り入れているため、働きやすい環境を整えているといえます。採用倍率は事務系総合職が6~10名、技術系総合職が1~5名を予定しているので、企業規模を考えると比較的狭き門かもしれません。公営競技やレジャー事業に興味を持つ方にとっては、やりがいのある職場として注目されています。
株式情報
同社の銘柄は9672で、2024年12月期の年間配当は合計113円となっています。中間配当が40円で、期末配当が73円です。2025年2月21日の時点では1株あたり4,535円の株価で推移しており、事業の安定感や成長期待が株価にも反映されていると考えられます。公営競技とレジャーという双方の強みを活かすビジネスモデルに魅力を感じる投資家も多いようです。
未来展望と注目ポイント
今後はオンライン投票システムをさらに活用して、地方競馬だけでなく新たなレジャー事業にもデジタル技術を取り入れていく可能性があります。また、東京サマーランドでは季節に合わせた新しいアトラクションやイベントを充実させ、家族連れから若年層まで幅広い層を継続的に呼び込む戦略を続けるでしょう。倉庫事業においては首都圏での物流需要が高まり続ける見通しがあり、安定した賃貸収入の確保と倉庫の拡充によるさらなる成長が期待されます。公営競技人気の波や社会情勢の変化がある中で、同社は多角化とIT活用によるリスク分散を図ることで持続的な成長を目指しています。今後は成長戦略の一環として、IR資料などを通じた情報発信を強化し、投資家や顧客からの評価を高めていくと考えられます。こうした取り組みは、長期的に企業価値を高めるだけでなく、地域社会への貢献や娯楽の多様化にも大きく寄与していくことでしょう。
コメント