松井建設のビジネスモデルと成長戦略が光る企業の秘密

企業概要と最近の業績
松井建設は、建設業界の中でもICT技術を積極的に取り入れている点が大きな特徴です。長年の施工実績と最新のテクノロジーを掛け合わせることで、数々のプロジェクトを効率よく進めています。2025年3月期第3四半期（2024年4月から12月）においては、売上高が前年同期比で4％増加し、連続で過去最高を更新しました。さらに、経常利益は前年同期比125％増の21.8億円を達成し、最終利益も96％増という好調な数字が並んでいます。ICT技術の導入による業務効率化に加えて、BIM（Building Information Modeling）を活用した高精度な設計と施工管理が高く評価されていることが、この成長を後押ししていると考えられます。公共案件から民間案件まで幅広く手がけており、安定した受注を確保しながら収益性を高める戦略が奏功している点も見逃せません。今後もICT活用を武器に、さらなる成長を目指す姿勢が注目されています。

ビジネスモデルを支える9つの要素

価値提案
松井建設の価値提案は、高品質な建設サービスとICT技術を組み合わせ、効率的かつ安全な施工を提供することにあります。3次元モデルを使ったBIMによって工事の見通しを明確にし、関係者全員が同じ情報を共有できる仕組みを整えています。このようになった背景には、建設業界が抱える人手不足や長時間労働などの課題を解決する必要があったことが大きいです。従来の紙ベースの情報管理では手戻りやコミュニケーションロスが起こりやすく、生産性向上や顧客満足度の維持が難しくなる問題がありました。そこでICTやBIMなどの技術を積極的に導入し、作業効率を高めると同時に施工品質を維持する取り組みを行うことで、他社との差別化を図ろうとしてきたのです。その結果、公共機関や民間企業からの信頼が高まり、松井建設の価値提案に対する評価が上昇しています。
主要活動
主な活動は、建設プロジェクトの企画から設計、施工、管理まで一貫して行うことです。現場での作業効率を高めるために、ICT機器を用いた進捗管理やリスク評価をリアルタイムで実施しています。このような活動方針になったのは、施工プロセスを一括管理することにより、工期や品質、そしてコストを最適化できるからです。特にBIMを使うことで、設計段階から建物の構造や設備を3次元でシミュレーションし、建設現場との情報共有を円滑にするメリットがあります。これにより、全体の工期短縮だけでなく作業ミスや材料の無駄を減らす効果が期待できます。松井建設では、プロジェクトの大小にかかわらず同じプロセスを踏むことで、安定した品質と確実な納期を実現し、お客様の信頼を得ています。
リソース
松井建設が強みとしているリソースは、熟練した技術者と長年の施工実績、そしてICTに精通した専門スタッフです。これらのリソースを組み合わせることで、従来のノウハウと最新技術の融合を可能にしています。なぜこうしたリソースを重視しているかというと、建設現場ではベテランの現場感覚と最新技術を扱える人材が協力することで、より高い精度と迅速な判断が求められるためです。経験豊富な技術者が持つ課題発見力や独自のノウハウに、ICT専門スタッフの知見を加えることで、デジタル化が苦手な作業をスムーズにクリアし、逆に技術者がICTから得た情報を有効に活用することができます。これが現場のトラブルやロスを最小限に抑える重要なリソースとなっています。
パートナー
パートナーとしては、資材や設備を提供してくれるサプライヤーや、ICTソリューションを提供する技術企業などが挙げられます。建設業界では外部との連携が不可欠であり、高品質を維持するために信頼できるパートナーと長期的な関係を築く必要があります。こうした体制になった背景には、建設現場が多種多様な資材や技術を必要とし、それを安定して供給できる仕組みがなければスケジュールや品質に悪影響が出てしまうという現実があります。松井建設は、パートナー企業とのコミュニケーションを密にすることで、予定外の不足や納期遅延などを最小限に抑える努力を続けています。さらにICT関連の企業と協力することで、最新の技術をいち早く導入し、施工効率や品質をさらに高める取り組みを可能にしています。
チャンネル
松井建設が顧客と接点を持つチャンネルとしては、直接営業のほか、企業サイトや展示会などのイベントが挙げられます。こうしたチャンネル戦略を取る理由は、幅広い顧客層との接点を増やすと同時に、BIMやICTなどの先進技術を具体的にアピールできる場を確保するためです。たとえば業界展示会では、実際に施工事例の3DモデルやICTツールのデモを見せることで、潜在顧客に「こんな施工ができるのか」と具体的なイメージを与えることができます。またウェブサイトでは、過去の実績や取り組みを分かりやすく公開し、地域に根ざした企業姿勢をアピールすることで信頼感を高めています。複数のチャンネルを活用することで、公共機関や民間、個人などあらゆる顧客層とスムーズにつながりやすくなっています。
顧客との関係
顧客との関係では、プロジェクトごとに細やかなコミュニケーションを取ることに注力しています。なぜこのようなスタイルになったかというと、建設プロジェクトは長期間にわたるうえ大規模な投資が伴うことが多く、常に進捗や変更点を共有する必要があるからです。そこで松井建設では、ICTを使った情報共有システムやBIMモデルをもとに、顧客にリアルタイムで建設過程を伝え、安心感を与える工夫をしています。さらに施工後のアフターサポートにも力を入れており、建物のメンテナンスや設備の更新などを継続して支援することでリピート受注にもつなげています。こうした密なサポート体制が、長期的な顧客満足と企業への信頼獲得に貢献しているのです。
顧客セグメント
松井建設が対応する顧客セグメントは、公共機関から民間企業、さらには個人顧客まで多岐にわたります。こうなった理由は、公共インフラを支える公共事業やオフィスビルなどの大規模建築、個人の住宅建設など、建設分野のニーズが多種多様であるからです。一方で、幅広い顧客層に応えるには施工技術や体制も柔軟でなければなりません。松井建設は長年にわたる実績で培ったノウハウを活かし、案件ごとに担当チームを編成するなどの工夫を重ねています。さらにICT技術を取り入れることで、小規模な案件でも高い品質と効率を実現し、公共から個人まで安心して任せられる建設会社として地位を築いているのです。
収益の流れ
収益は主に建設プロジェクトの契約収入と、完成後のメンテナンスサービスから得ています。なぜこの収益構造が重要かというと、一度施工が終わった後もメンテナンス契約を通じて収益を安定的に確保できるからです。建設事業は一時的な大型収入が多いものの、景気や公共予算の影響を受けやすいというリスクがあります。そこでアフターサポートや保守、リニューアル案件を取り込むことで収益の平準化を図ることができるのです。またICTを用いた施工管理やBIMによる精緻な図面データは、保守や改修の際にも役立つため、顧客にとってもメリットが大きく、追加受注につながるケースが増えています。
コスト構造
松井建設のコストは主に人件費や資材費、それにICT関連の投資で構成されています。こうしたコスト構造になった背景には、建設業界での人材不足や資材価格の変動、そして新技術導入の必要性があります。人件費は技術者や技能者の確保が重要であり、質の高い施工を実現するために欠かせません。また、ICTにかかわる設備投資やシステム導入にもコストがかかりますが、これらは将来的な効率化によるコスト削減や受注拡大につながるため、戦略的な投資として捉えられています。資材費は市場価格に左右されますが、パートナーやサプライヤーとの信頼関係を構築することで、比較的安定した供給と価格管理に取り組んでいます。

自己強化ループのポイント
松井建設が取り組むICT化やBIM活用には、自己強化ループと呼ばれる仕組みが存在します。具体的には、最新技術を活かして施工管理や設計の品質を高めることで、効率が上がり、コスト削減やスピードアップにつながります。こうした成果が高く評価されると新たな受注が増え、その収益をさらなる技術投資に回せるため、次のプロジェクトでより高度なICTを導入する余地が生まれます。これを繰り返すことで、企業としての技術力と収益力が同時に高まり、他社との競争力を維持・強化できるのです。さらに、施工事例が増えるにつれBIMデータベースも拡充されるため、蓄積された知識を次の現場に応用しやすくなります。結果として、顧客満足度の向上と企業ブランド力のアップが相乗効果を生み、長期的に安定した成長を実現する好循環が生まれています。

採用情報
松井建設の初任給は公表されていませんが、建設技術職やICT関連スタッフなど幅広い職種で新卒・中途を積極的に採用しているとされています。平均休日や採用倍率なども公開されていませんが、ICT導入を推進していることから働きやすい環境づくりにも意欲的だといわれています。最新技術を学びながら、長年の施工実績に基づくノウハウを身につける機会が多いことは、魅力的な職場環境といえます。

株式情報
松井建設の銘柄コードは1810で、2025年2月27日12時40分時点での株価は1株あたり919円となっています。予想配当利回りは3.26％ほどで、建設企業としてはまずまずの水準です。安定した受注や継続的な成長戦略が評価されれば、株主還元の拡充も期待できる可能性があります。

未来展望と注目ポイント
今後の松井建設は、ICT技術のさらなる導入と人材育成が大きなカギを握ると考えられます。建設現場では人手不足が深刻化する一方で、デジタル技術によって作業効率を高められる余地がまだまだあります。松井建設はBIMやドローン、さらにはAIを活用した品質管理などにも取り組むことが予想され、これらを活かして迅速かつ正確な施工を実現していけば、業界内での競争力を一層高められるでしょう。また、公共案件に加えて民間のリニューアル需要や防災・減災案件なども狙えるため、事業領域の拡大にも期待がかかります。こうした取り組みが進むほど、会社としての知見やデータが蓄積し、自己強化ループがより強固になる可能性があります。最終的には、建設業界のデジタル化をリードする企業として評価され、国内外の案件獲得にもつながるでしょう。安定した配当と成長戦略を両立させられる点が魅力的で、今後も投資家や就職希望者から注目を集め続けるとみられています。