近年では、非建設分野として不動産事業や再生可能エネルギー関連ビジネスを推進しているほか、環境負荷を低減するグリーンビルディングの施工実績を重ねるなど、サステナビリティと都市の価値向上を掛け合わせた独自の事業展開に強みを有しています。
都市開発とインフラ保全の双方で強固な基盤を持つ同社の2026年3月期の通期連結業績は、売上高が3411億8100万円で前年同期比16.4%増、営業利益が163億600万円で前年同期比84.5%増となりました。
また、経常利益が175億5200万円で前年同期比80.9%増、親会社株主に帰属する当期純利益は133億9000万円で前年同期比101.9%増となり、すべての段階利益が前年同期から大幅に伸長する見事な増収増益の決算となりました。
この極めて好調な業績結果をもたらした要因としては、国内における官公庁発注の大型土木工事や、民間における活発な再開発建築案件が堅調に推移し、手持ちの工事案件が順調に進捗した良好な外部環境が挙げられます。
企業側が講じた具体的な経営施策としては、建築・土木の各事業セグメントにおいて、徹底した原価管理とプロセス効率化を実行したほか、一部の国内工事において追加工事や設計変更工事の獲得に成功したことで、全体の工事採算性が大きく向上しました。
さらに不動産事業等においても、賃貸事業や販売用不動産の売却が計画通りに進展したことが収益の積み上げに寄与し、建設資材価格の高騰や人手不足といった厳しい外部環境によるコスト増加圧力を巧みに跳ね返して大幅な利益拡大を達成しました。
価値提案
東急建設株式会社が提供する価値提案の核心は、渋谷駅周辺をはじめとする東急沿線での高度な鉄道近接施工技術と、環境負荷を最小化する脱炭素型建築の融合による持続可能な都市空間の提供にあります。
【理由】
なぜそうなっているのかというと、東急グループが展開する安心・安全でサステナブルな街づくりの核を担うとともに、2050年の二酸化炭素排出実質ゼロ達成に向け、施工段階や建物運用段階での環境性能向上を求める顧客ニーズに先んじて応えるためです。
同社は、渋谷スクランブルスクエア第1期東棟の建設において、鉄道の運行を止めずに超高層難工事を遂行した確かな実績を持っています。
さらに、建築物のライフサイクルアセスメントを可視化する独自の環境評価システムを導入し、自社開発の竹構造材を活用するBAMBOO活用技術や、実証オフィスビルなどでのネット・ゼロ・エネルギー・ビルの施工実績も積み重ねています。
これらの強固な技術基盤により、都市の発展と地球環境の保全を両立させる独自のポジションを確立しているのです。
主要活動
東急建設の主要活動は、超高層ビルや鉄道近接構造物の設計から施工、構造解析に至るまでの一連の高度なエンジニアリングと、都市インフラに関わる土木工事、そしてBIMなどのデジタル技術を活用した施工管理です。
【理由】
なぜそうなっているのかというと、東急線の営業運行を安全に維持しながら線路直上や駅隣接地に超高層ビルを建設するには、ミリ単位の歪み制御と夜間の短時間施工という極めて精密なプロセス管理が不可欠であるためです。
具体的な活動として、渋谷駅街区における東急東横線の地中化工事や、旧線路跡地を活用した渋谷ストリームなどの施工を成功させてきました。
また、相模原R&Dセンターにおいて、構造実験や風洞実験、環境実験を通じた実証データの収集を日々行っています。
これに加えて、設計から施工、維持管理まで一貫してデータを連携させる全社BIM運用を推進し、建設プロセスの飛躍的な効率化と品質向上を実現する活動を全社規模で展開しています。
リソース
東急建設の競争優位性を支える中核的なリソースは、鉄道近接工事に関する高度な技能を有する専門技術者と、長年の活動から蓄積された東急沿線での膨大な施工や地質のデータ、そして技術開発の拠点である相模原R&Dセンターです。
【理由】
なぜそうなっているのかを説明すると、鉄道会社との綿密な安全協議や、複雑な特殊線路構造に精通した人材の育成には長年の現場経験が必須であり、これが他社には容易に模倣できない高い参入障壁として機能しているためです。
2025年3月末時点で、同社には一級建築士の保有者が702名、一級土木施工管理技士の保有者が814名在籍しており、豊富な専門人材が難易度の高いプロジェクトを力強く牽引しています。
さらに、相模原R&Dセンターに備えられた大型構造試験装置や先端的な環境実験施設が、次世代の建築手法や防振技術の開発を後押しする重要な物理的リソースとして機能しており、技術革新の源泉となっています。
パートナー
東急建設の事業展開において、親会社である東急株式会社や東京地下鉄をはじめとする鉄道事業者、機械や資材を提供するメーカー、そして約600社が加盟する専属の協力会社組織である東急建設災害防止協議会との連携が極めて重要なパートナーシップとなっています。
【理由】
なぜそうなったのかというと、発注者であるデベロッパーや鉄道事業者と緊密に連携して大規模開発を進めると同時に、慢性的な人手不足が課題となる建設業界において、協力会社との強固な信頼関係を築き安定した施工能力を確保する必要があるからです。
筆頭株主として所有割合約14パーセントを占める東急株式会社との関係は、安定的な受注基盤の根幹を成しています。
また、地下鉄直上や近接施工においては、東京地下鉄株式会社との共同協議体を通じて安全かつ円滑な工事を進めており、日立造船などの資材メーカーと連携することで、特殊な工法に必要な部材の安定供給を実現しています。
チャンネル
東急建設が工事を受注するための主要なチャンネルは、東急グループからの特命受注や指名見積もり、民間デベロッパーに向けた提案型営業、そして官公庁や自治体が主催する総合評価落札方式による入札です。
【理由】
なぜそうなっているのかの背景には、東急グループの案件による特命受注が安定した売上と適正な利益を確保できる事業の強固な基盤となっており、それ以外の一般民間工事や官公庁工事においては、自社の高い技術提案力を強力な武器として入札競争を勝ち抜く戦略を採用しているためです。
2025年3月期の受注経路構成比を見ると、東急グループ向けが約28パーセントを占めて安定基盤を形成し、一般民間向けが約55パーセント、官公庁向けが約17パーセントというバランスのとれた構成になっています。
官公庁のチャンネルでは、国土交通省の関東地方整備局からの大型土木工事の入札落札実績を持ち、民間チャンネルでは複合ビル開発での緻密な提案型営業を通じて、多様な顧客との接点を拡大しています。
顧客との関係
東急建設は、東急沿線の街づくりを通じて、顧客と数十年単位に及ぶ長期継続的なパートナーシップを構築し、建物の引き渡し後もライフサイクルコストの管理を担うことで深い関係性を維持しています。
【理由】
なぜそうなっているのかというと、建物の竣工や引き渡しで終わるのではなく、その後も修繕や改修、リニューアル事業を通じて顧客の資産価値を維持し続ける循環型モデルを確立しているためです。
グループ会社である東急Re・デザインなどと密接に連携することで、建物の一生涯にわたるサポートを実現しています。
この長期的な関係性の成果として、渋谷駅周辺では約20年間に及ぶ連続的な再開発プロジェクトの受注を獲得してきました。
社内には定期点検やアフターメンテナンスを担う専門の部署が設置されており、東急百貨店や東急モールズといった東急グループの大型商業施設における長期大規模修繕工事を継続的に受託することで、揺るぎない信頼関係を保っています。
顧客セグメント
東急建設の主な顧客セグメントは、東急株式会社や三菱地所といった民間デベロッパー、東急電鉄やJR東日本、東京メトロなどの鉄道事業者、国土交通省や東京都、横浜市をはじめとする官公庁、そしてタイやベトナムの現地企業および日系企業を中心とした海外法人です。
【理由】
なぜそうなっているのかをご説明すると、同社の主軸事業が高度な技術を要する都市の再開発と大規模な交通インフラ整備であるため、これらのプロジェクトを主導する首都圏の大型デベロッパーと公的なインフラ機関が必然的に主要な顧客層を形成する構造となっているからです。
顧客属性の比率としては、民間建築や民間土木が全体の約75パーセントを占め、官公庁の公共土木が約20パーセント、海外案件が約5パーセントとなっています。
また地域別の売上比率では、日本国内の首都圏エリアが約85パーセントと圧倒的なウエイトを占めており、次いでその他の国内地域が10パーセント、海外が5パーセントという構成で事業を展開しています。
収益の流れ
東急建設の収益の流れは、工事の請負契約に基づき進捗度に応じて売上を計上する新築のフロー収益を主軸としつつ、不動産開発や賃貸収入、建物の改修事業といったストック収益で全体を補完する手堅い構造になっています。
【理由】
なぜそうなったのかの背景には、建設請負事業は資材費の高騰や工期の遅れによる収益変動のリスクを常に抱えているため、より安定的な収益基盤として不動産事業や改修といったストックおよび準ストックの比率を高める戦略を意図的にとっているからです。
2025年3月期のセグメント別売上高を見ると、建築事業が2015億円、土木事業が1088億円、不動産およびその他の事業が147億円となっており、収益構成比としてはフロー事業が約92パーセント、ストック事業が約8パーセントを占めています。
将来の収益の源泉となる手持ち工事高、いわゆる受注残高は2025年3月末時点で3812億円に達しており、強固な収益基盤の維持が見込まれます。
コスト構造
東急建設のコスト構造は、主に外注費や建築資材費、労務費から成る売上原価と、販売用不動産の取得費、人件費や研究開発費を含む販売費及び一般管理費、そして設備投資によって構成されています。
【理由】
なぜそうなっているのかというと、ゼネコンのビジネスモデルにおいては、協力業者への支払いや資材メーカーからの調達費用が売上原価の大半を占めるため、デジタル技術を活用した省力化や購買力の強化がコストを削減し利益率を向上させる最大の鍵となるためです。
2025年3月期の実績では、売上原価率が90.5パーセントとなっており、売上総利益率は9.5パーセントを確保しています。
同期間の販管費率は6.1パーセントにコントロールされ、未来に向けた研究開発費として18.2億円を計上しています。
また、BIMや情報通信技術に関する投資を含む設備投資額は35億円となっており、コスト競争力の強化と先端技術の導入に向けた積極的な資金投下が行われています。
自己強化ループ
東急建設のビジネスモデルは、独自の技術力と信頼関係を基盤とした強力な自己強化ループによって継続的な成長を実現しています。
この循環の起点となるのは、渋谷や東急沿線における高難度な鉄道近接工事の完工実績を積み重ねることです。
その圧倒的な施工実績が、親会社である東急グループや大型デベロッパーからの強い信頼を生み、結果として一般の入札よりも粗利益率が高い特命受注や高単価案件の優先的な獲得に繋がります。
高単価案件の受注は高い施工粗利益の実現と安定した手持ち工事高をもたらし、そこで得られた潤沢なキャッシュが、相模原R&Dセンターにおける脱炭素技術や全社的なBIMなどのデジタルトランスフォーメーションへの先行投資、さらには優秀な人材の獲得と育成へと振り向けられます。
そして高度化された技術と人材が、再び競合他社に先んじて高難度で高付加価値な都市再開発案件を施工するという好循環の起点へと戻る仕組みです。
このループが強力に機能している証拠として、渋谷駅周辺再開発の主要ビルである渋谷ヒカリエや渋谷ストリーム、渋谷スクランブルスクエアなどの施工関与率は100パーセントに達しています。
また、建築事業における特命受注比率は約32パーセントを維持しており、2025年3月末時点の手持ち工事高は3812億円へと着実に拡大を続けています。
採用情報
東急建設の採用活動について、2025年4月入社実績および2026年予定の初任給から見ていきます。
総合職の大学院卒の月給は28万0000円、大学卒は26万0000円、高専や短大および専門学校卒は24万0000円と設定されています。
2025年度実績の年間休日総数は125日となっており、土曜日と日曜日が休みの完全週休2日制に加え、祝日や年末年始休暇、夏季休暇が設けられています。
さらに、勤続の節目に付与されるリフレッシュ休暇や創立記念日、現場異動休暇など多様な特別休暇が整備されており、年次有給休暇の年間平均取得日数は12.4日となっています。
新卒の採用人数は拡大傾向にあり、2023年度入社の112名から、2024年度は125名、2025年度は135名へと増加しています。
プレエントリー数と最終採用人数から算出される採用倍率は約18倍となっており、多くの学生から関心を集めています。
2025年3月期の有価証券報告書によると、従業員の平均勤続年数は17.8年、平均年間給与は875万0000円に達しており、長く安定して働ける環境が整っています。
同社が求める人物像としては、自ら考え行動して変化を恐れず挑戦できる人、多様な関係者と協調してチームを牽引できるコミュニケーション力を持つ人、そして環境やデジタル技術による建設改革に意欲的な人が挙げられています。
株式情報
東急建設株式会社の証券コードは1720であり、東京証券取引所のプライム市場に上場しています。
株式の売買単位である単元株数は100株に設定されており、決算期は毎年3月31日を末日とする3月本決算を採用しています。
株主優待制度は導入されておらず、株主への利益還元は配当を中心に行う方針を明確にしています。
配当の考え方として、中期経営計画において業績に連動した還元とともに安定配当を基本とする姿勢を示しています。
具体的には、株主資本配当率を意味するDOEについて4.0パーセント以上、あるいは配当性向40パーセント以上を還元方針の目安として掲げています。
株価水準については、2026年8月時点でおよそ800円台から900円台で推移しており、最低投資金額の目安はおよそ8万5000円前後となります。
なお、株価や配当金といった数値は市場環境や企業活動によって常に変動するため、実際の投資判断に際しては証券会社などが提供する最新の情報を必ずご自身でご確認ください。
未来展望と注目ポイント
東急建設の今後の成長戦略において注目すべきは、2021年度から2030年度を対象とする長期経営計画「To Build 2030」に基づく積極的な事業展開です。
2025年度および2026年度の目標値として、売上高3300億円、営業利益120億円、自己資本利益率であるROE10.0パーセント以上という意欲的な数値を掲げています。
成長ドライバーとなる注力領域は、竹材を活用するBAMBOO技術やネット・ゼロ・エネルギー・ビルなどの脱炭素と環境対応に関わる技術、そして渋谷駅東口や桜丘、神宮前エリアのさらなる高層化を進める渋谷再開発第2ステージです。
これらの実現に向けて、5年間で約150億円を投じてBIM環境の整備や施工ロボットの導入といったデジタル投資を推進し、同時に年間18億円から20億円規模の研究開発費を継続して維持する計画です。
建設業界が直面する資材価格の高騰や労務管理コストの増加といった課題に対し、脱炭素とデジタル技術を二大エンジンとして建設プロセスを変革しようとする同社の挑戦は、多くのビジネスパーソンにとって非常に興味深い注目ポイントと言えます。
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