企業概要と最近の業績
株式会社淺沼組
【全体の業績】
株式会社淺沼組は、官公庁施設や教育施設、医療・福祉施設、マンション、オフィスビルなどの建築工事および道路や鉄道などの土木工事を主力とする総合建設会社(ゼネコン)です。1892年の創業以来、長年にわたり培ってきた信頼と高い技術力を強みとし、近年では既存建築物の長寿命化や環境配慮型建築(ZEB化など)の推進、リニューアル事業にも注力することで、高品質で持続可能な社会インフラ・空間の提供に努めています。
同社の2026年3月期通期連結業績は、売上高が前期比11.2%増の1,586億4,000万円、営業利益が同28.5%増の62億1,000万円、経常利益が同26.8%増の61億8,000万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同21.4%増の41億5,000万円となりました。手持ち工事の順調な消化を背景に売上高が拡大したことに加え、各利益項目においても前期を大幅に上回る2桁の増収増益を達成しています。
この業績拡大の主な要因は、豊富な繰越手持ち工事が順調に進捗したことに加え、建築・土木ともに資材価格の高騰や労務コストの上昇といった厳しい環境下においても、徹底した現場管理と工程の効率化による原価低減を推し進めたことにあります。さらに、受注時における適切な採算性の確保や、施工途中における設計変更・見積管理を厳格に行うといった経営施策が着実に成果を結び、採算性の向上に寄与しました。
【参考文献】https://www.asanuma.co.jp/ir/
価値提案
株式会社淺沼組は、環境負荷の軽減と人間中心の快適性を両立する空間提案「GOOD BUILDING」を最大の価値として顧客へ提供しています。
木材を活用した木造や木質化建築技術ブランドである「Re-WOOD」の導入や、既存のオフィスビルをZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル、省エネと創エネによりエネルギー消費量を実質ゼロにする建物)へ改修するパッケージソリューションがその中核です。
【理由】
それは、新築需要の伸び悩みと既存建物の環境改修ニーズの急増という市場環境の変化に対応するためです。
それは、新築需要の伸び悩みと既存建物の環境改修ニーズの急増という市場環境の変化に対応するためです。
単なる請負施工者から脱却し、環境価値を創出するゼネコンへと事業の立ち位置を根本的に転換することが求められました。
実際に名古屋支店の自社ビルを「GOOD BUILDING」の第1号としてZEB化および木質化の改修を行い、第30回地球環境大賞を受賞するなど、確かな実績と高い評価を獲得しています。
主要活動
株式会社淺沼組の主要な活動は、民間オフィスや官公庁の施設を対象とした建築および土木工事の請負と、企画から設計、施工管理、そして環境建築技術の研究開発までを一貫して行うことです。
とりわけBIM(コンピューター上に作成した3次元の建物のデジタルモデル)を活用したフロントローディング設計を全社で展開し、業務の大幅な効率化を図っています。
【理由】
それは、発注者が求める高度な脱炭素ニーズに応えるためには、設計の初期段階から施工、さらには完成後の維持管理までを自社で一貫して支援する体制が必要不可欠だからです。
それは、発注者が求める高度な脱炭素ニーズに応えるためには、設計の初期段階から施工、さらには完成後の維持管理までを自社で一貫して支援する体制が必要不可欠だからです。
千葉県印西市に構える自社の技術研究所では、環境配慮型コンクリートや新たな木質部材の開発を日々進めています。
全国で年間数百件規模に上る建築および土木の施工管理を確実に行うことが、同社の高受注率を支える強固な基盤となっています。
リソース
株式会社淺沼組の最大の経営資源は、1892年の創業から130年を超える歴史のなかで蓄積された施工実績のノウハウと、高度な専門知識を持つ有資格者の技術者集団です。
2025年3月時点において、一級建築士の保有者数は約320名、一級土木施工管理技士の保有者数は約350名に上ります。
【理由】
それは、重大な施工品質事故を防ぎつつ、意匠性や施工難易度が極めて高い環境改修工事や木質化改修工事を完工させるためには、専門資格を持つ人材のノウハウが絶対に必要なためです。
それは、重大な施工品質事故を防ぎつつ、意匠性や施工難易度が極めて高い環境改修工事や木質化改修工事を完工させるためには、専門資格を持つ人材のノウハウが絶対に必要なためです。
さらに、千葉県印西市の技術研究所だけでなく、実際にリノベーションを施した名古屋支店や大阪本社そのものが、顧客に技術を示すための強力な実証拠点という重要なリソースとして機能しています。
これらにより、他社にはない説得力のある提案が可能となっています。
パートナー
株式会社淺沼組のビジネスを支える重要なパートナーは、専門工事業者で構成される独自の協力会社組織「淺友会」と、地方の林業および木材加工事業者たちです。
「淺友会」には約1000社に及ぶ優良な下請企業が所属しており、日々の現場における実際の施工業務を強力にサポートしています。
【理由】
それは、自社で大量の作業員や大規模な製造工場を直接抱えないゼネコン特有の事業構造において、高品質かつ安全な施工力を外部と連携して確保する必要があるからです。
それは、自社で大量の作業員や大規模な製造工場を直接抱えないゼネコン特有の事業構造において、高品質かつ安全な施工力を外部と連携して確保する必要があるからです。
くわえて、自社の木質化建築ブランドである「Re-WOOD」を展開するうえで不可欠となる国産材を安定的に調達するため、地域林業や製材事業者との強固な協働ネットワークの構築が急務でした。
先端的な施工技術の領域では、他のゼネコンや建設機械メーカーとの共同技術開発も積極的に推進しています。
チャンネル
株式会社淺沼組は、大阪、東京、名古屋をはじめ、近畿、九州、東北などに展開する全国8つの支店および営業所網を主要な顧客接点として活用しています。
2025年3月期における建築受注高のうち、60パーセント以上が既存顧客および紹介顧客からの受託案件で占められており、強固なリピート経路が確立されています。
【理由】
それは、数十億円規模となる大型建築案件の受注においては、長年にわたって築き上げた人間関係と地域密着型の対面営業が不可欠な要素となるからです。
それは、数十億円規模となる大型建築案件の受注においては、長年にわたって築き上げた人間関係と地域密着型の対面営業が不可欠な要素となるからです。
同時に、自社ビルを環境改修した名古屋支店などで「GOOD BUILDING」の体験型見学会を定期的に開催し、顧客に実際の空間を体感してもらう独自のアプローチをとっています。
この実体験型のオフィス見学が、ウェブサイトなどのデジタルチャネルを大きく補完する最大の営業ツールとして機能しています。
顧客との関係
株式会社淺沼組は、建物の引き渡しが完了した後も、定期点検や維持管理のフォローを通じた長期的な継続関係を非常に重視しています。
具体的には、竣工後1年、2年、10年といった節目に定期的なアフター点検を実施し、建物の品質維持に努めています。
【理由】
それは、建物の耐用年数が数十年以上に及ぶという特性上、日々の手厚いアフターケアを通じて顧客からの信頼を獲得し、次回の建て替えや大規模改修工事を独占的に受注する機会を狙うためです。
それは、建物の耐用年数が数十年以上に及ぶという特性上、日々の手厚いアフターケアを通じて顧客からの信頼を獲得し、次回の建て替えや大規模改修工事を独占的に受注する機会を狙うためです。
既存顧客の所有するオフィスビルに対しては、省エネ診断やZEB改修の提案を定期的に行うことで、関係性の陳腐化を防いでいます。
また、大阪市などの地方自治体とは各種の災害協定を締結しており、地域社会全体との信頼関係も深く構築しています。
顧客セグメント
株式会社淺沼組の主な顧客層は、不動産会社や学校法人などの民間事業者と、国土交通省や地方自治体といった官公庁の二極で構成されています。
2025年3月期の受注高構成を見ると、民間建築がおよそ65パーセントを占め、土木と建築を合わせた官公庁向けがおよそ30パーセント、その他が5パーセントとなっています。
【理由】
それは、景気変動の影響を受けやすい民間企業の設備投資の波と、比較的安定して予算が組まれる官公庁の公共投資の波をうまく組み合わせることで、会社全体の業績リスクを平準化させるためです。
それは、景気変動の影響を受けやすい民間企業の設備投資の波と、比較的安定して予算が組まれる官公庁の公共投資の波をうまく組み合わせることで、会社全体の業績リスクを平準化させるためです。
具体的な主要顧客の実績としては、学校法人近畿大学やマルイトグループなどが挙げられます。
地域別の売上構成比率では、本社を構える近畿圏がおよそ45パーセント、首都圏がおよそ35パーセントとなっており、都市部の需要を確実に取り込んでいます。
収益の流れ
株式会社淺沼組の収益基盤は、建築および土木工事の完成に伴って得られる請負収益というフロー型の収入が中心です。
2025年3月期の連結売上高を見ると、建築事業が1253億円、土木事業が260億円、開発事業やその他が7億円という構成になっています。
【理由】
それは、一件あたりの金額が巨大な工事請負の波による業績のブレを抑えつつ、高利益率な案件を選別して安定的な収益基盤を作る必要があるからです。
それは、一件あたりの金額が巨大な工事請負の波による業績のブレを抑えつつ、高利益率な案件を選別して安定的な収益基盤を作る必要があるからです。
この課題を克服するため、建築売上高に占めるリニューアル工事の割合をおよそ30パーセントから35パーセントにまで高め、採算性の向上を図っています。
さらに、マルイト難波ビル内にある自社保有部分などからの不動産賃貸収入というストック型の収益源も併せ持つことで、会社の財務の安定性をより強固なものにしています。
コスト構造
株式会社淺沼組のコストの大半は、完成工事原価と呼ばれる外注費、資材費、労務費、そして現場経費で占められています。
2025年3月期における売上原価率は89.8パーセントとなっており、販売費及び一般管理費の比率は6.8パーセント、金額にして約103億円となっています。
【理由】
それは、実際の現場作業の大部分を淺友会に所属するような外部の下請企業へ委託するゼネコン特有の事業構造において、外注費や建築資材費の徹底した管理が会社の粗利益率へ直接的に影響を与えるからです。
それは、実際の現場作業の大部分を淺友会に所属するような外部の下請企業へ委託するゼネコン特有の事業構造において、外注費や建築資材費の徹底した管理が会社の粗利益率へ直接的に影響を与えるからです。
資材価格や人件費が高騰する環境下においても、早期の購買確定や設計変更交渉を徹底することでしっかりと利益を確保しています。
同時に将来の競争力を高めるため、2025年3月期には研究開発費として6.2億円、設備投資額として18億円を計上し、成長に必要な先行投資を惜しまず行っています。
自己強化ループ
株式会社淺沼組は、環境技術を起点とした独自の自己強化ループによって事業の成長を自動的に加速させています。
まず第一段階として、自社ビル改修などの先進的なプロジェクトを通じて、環境配慮や木質化の技術力を実際の建物という形で広く社会へ示します。
第二段階として、その高い技術力が市場で評価され、ESGに対する意識が高い施主や官公庁から、価格競争に巻き込まれない形で高採算のリニューアル案件や新築案件を優位に獲得します。
第三段階で、この高付加価値化によって工事の粗利益率が大きく向上し、さらなる成長に向けた新たな資金余力が生み出されます。
そして第四段階として、創出された資金を木質化技術の研究開発費や施工管理のICTツール導入、人的資本へと再投資することで施工品質が底上げされ、再び第一段階の強力な技術実証へと繋がっていくという循環です。
この好循環が実際に回っている証拠として、2025年3月期における建築受注のうち、改修やリニューアル工事の比率がおよそ35パーセントという高水準で堅調に推移しています。
さらに売上高営業利益率を見ても、2023年3月期の2.8パーセントから、2024年3月期は3.1パーセント、そして2025年3月期には3.4パーセントへと着実に上昇しており、高収益体質への転換がはっきりとした数値として表れています。
将来の売上を担保する受注残高についても、2023年3月期末の1450億円から2025年3月期末の1690億円へと継続的な積み上がりを見せています。
採用情報
株式会社淺沼組の採用に関する情報について解説します。
2025年4月実績における新卒の初任給は、総合職の大学院卒が月給290,000円、大学卒が月給270,000円、高専や短大および専門卒が月給250,000円となっています。
2025年度時点の年間休日総数は125日確保されており、土日休みの完全週休2日制に加えて祝日、年末年始休暇、夏季休暇が制度として整備されています。
年次有給休暇や創立記念日休暇、リフレッシュ休暇などの各種特別休暇も用意されています。
新卒採用人数は増加傾向にあり、2023年入社が52名、2024年入社が58名、2025年入社が63名という推移を示しています。
例年、約1000名の応募者に対して内定者が50名から60名程度であることから、採用倍率はおよそ15倍から20倍となっていることが伺えます。
2025年3月31日時点における従業員の平均勤続年数は18.1年、平均年間給与は882万円となっており、長く安定して働ける環境が整っています。
求める人物像としては、自ら考え自発的に動ける人や、建設と地球環境の未来に興味と情熱を持てる人、そして多様な関係者と誠実に対話ができるコミュニケーション能力がある人が掲げられています。
株式情報
株式会社淺沼組の株式に関する基本情報をお伝えします。
証券コードは1852で、東京証券取引所のプライム市場に上場しています。
株式の売買単位である単元株数は100株に設定されており、決算期は毎年3月です。
株主優待制度については、配当金による直接的な利益還元を優先するという会社の方針から導入されていません。
その配当方針ですが、連結配当性向70パーセント程度を基本指標として掲げており、業績の向上に応じた積極的かつ安定的な配当を実施するスタンスを明確にしています。
株価水準については、2025年12月から2026年2月時点でおよそ3800円から4200円台で推移しています。
したがって、単元株数である100株から算出した最低投資金額の目安は、およそ40万円から42万円規模となります。
なお、株価や業績、株主還元施策などの数値は市場の環境や毎期の決算状況によって常に変動するため、実際の投資判断を行われる際は、ご自身で最新の情報を確認していただきますようお願いいたします。
未来展望と注目ポイント
最後に、株式会社淺沼組の今後の成長戦略と注目すべきポイントについて整理します。
同社は2025年3月期から2027年3月期までの3年間を対象とした中期経営計画「GOOD BUILDING 2030 / 中期経営計画(2024〜2026年度)」を策定しています。
この計画の最終年度である2027年3月期には、連結売上高1650億円、連結営業利益65億円、そして自己資本利益率であるROEを8.0パーセント以上に引き上げるという意欲的な数値目標を掲げています。
成長を牽引する注力領域として、既存ビルのZEB化やWELL認証の取得に向けた環境改修を強力に推進していく計画です。
これを実現するため、3カ年の累計で約60億円規模の設備投資を行い、建設現場のICT化や施工の省力化機器の導入を進めています。
さらに、年間6億円から8億円規模の研究開発費を継続的に投じ、環境配慮型コンクリートや新たな木質部材の技術開発を加速させています。
国内の堅調な環境改修需要へ経営資源を集中させることで、建設業の脱炭素化をリードする企業としての地位を確固たるものにしていくことが見込まれます。



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